マリンフォード頂上戦争。
開幕からしばしの間、両軍の総力がひたすらにぶつかり合う様相を呈していたその大戦は、海軍本部側の『作戦』を皮切りに、大きく動き出す。
白ひげ海賊団傘下の海賊“大渦蜘蛛”スクアードが、大将“赤犬”から吹き込まれた甘言に踊らされ、白ひげを刺してしまう。
それと同時に、海軍本部はシャボンディ諸島に映像を発信していた全ての電伝虫を、囚人達に奪われたものを含めて全て停止させ、戦場の様子をうかがい知れないようにする。
その直後に、白ひげの行動によって、スクアードが吹き込まれたそれが、同士討ちを狙った海軍の嘘―――すなわち作戦のうちだったことが判明。
失意と罪悪感に崩れ落ちるスクアード。
怒りに燃える白ひげと、その傘下の海賊達。
「俺と共に行く者は! 命を捨ててついてこい!!」
「構えろォ! 暴れ出すぞ、世界最強の男がァ!!」
そしてついに、元帥・センゴクをして『世界最強』とまで言わしめる、伝説の海賊が戦場に降り立つ時が来た。
そこからさらに事態は動き、湾内に展開していた海兵達が全て広場に引き上げ、氷の足場の上に海賊達だけが残された状態となった直後……湾内をぐるりと一周して囲むように、巨大な鋼鉄の壁が地下、あるいは海底からせり上がり……湾内に取り残された海賊達を閉じ込める。
全ての壁には砲台が備え付けられており、全砲門が海賊達を標的に据えて向けられていた。
「何だ!? 囲まれた!」
「さっきから言ってた『包囲壁』ってのは……この鋼鉄の防御壁のことか!?」
「戦わねェ気かァ、海軍――ッ!?」
鋼鉄の『包囲壁』で前面を囲い、その砲台と、湾内に配備した軍艦、そして背後から回り込ませて投入した新型兵器『パシフィスタ』の軍団によって、逃げ場のない状態で全方位から攻撃。
合わせて、大将赤犬の攻撃で氷の足場を溶かして奪い、海賊達を海に突き落とす。
白ひげに裏切られたと思って動揺し、統率の崩れた海賊達を、体勢を立て直させないままに一網打尽にする。それが、当初の海軍の作戦だった。
しかし、海賊達の動揺はすぐさま静まった上、横側の攻撃を担当するはずだった軍艦は、白ひげの采配で壊され、戦力を喪失している。
それも、包囲さえ完成していれば、前後で挟み込んで徐々に突き崩していくことは可能だと見て、ゴーサインを出そうとするセンゴク元帥だったが……
「おい、どうなっている!? 完璧に作動させろ!」
完全に『湾内』を取り囲んで包囲するはずの『包囲壁』が、ちょうど真正面の1カ所に始まり、あちらこちらに歯抜けのように作動していない、あるいは完全に上がり切っていない個所があることを不審に思い、通信で檄を飛ばす。
「それが……包囲壁があのオーズの巨体を持ちあげきれず……どうやら、奴の血がシステムに入り込んでパワーダウンを起こしている模様で! 他の個所の動作不良については、現在調査中です!わかり次第報告すると現地の担当者達より連絡が!」
「っ……まあいい、不完全ではあるが、『包囲』する形になっているならば効果はある……少々締まらんが……始めろ赤犬! 氷を溶かして、足場を奪え!」
戦場に降り注ぐ、赤犬の放った火山弾の豪雨。
青キジが張った氷を溶かして、海賊達の足場を奪い、多くの海賊達が海に落とされ……そのまま、『包囲壁』の大砲で狙い撃ちにされていく。
いくらかの海賊達は、歯抜け状になっている包囲壁のいくつかの隙間から突破を試みるも……当然そこに戦力を集中させて通させまいとする海軍との壮絶な戦いになる。
その包囲壁を破壊しようと、白ひげが大気を殴って『地震』の衝撃波を飛ばすが……
「壁が……砕けねェ!?」
「おやっさんの能力が通じねえなんて、只の鋼鉄じゃ……い、いや、待て!」
大きく変形こそするものの、破壊されずにその場にそびえたち続ける『包囲壁』を見て驚く海賊達だったが……砕けこそしなかったが、少し遅れて異変が起こる。
徐々に、その『包囲壁』が……形を保ったまま、しかしゆっくりと傾き始めた。
「た、倒れるぞ~~~!!」
「退避だ、退避しろぉぉおおっ!!」
―――メキメキ……バキバキバキ……ズゥゥウウゥン……!!
その大きさゆえにゆっくりとした動きで、根元から破滅的な音を響かせながら……『包囲壁』の1つが、轟音と地響きを伴って倒れる。
その裏側で待機していた、大勢の海兵を……その下敷きにして押しつぶす形で。
「うぉおぉおおぉぉっ!! 流石はオヤジだ!」
「見たか海軍、これが『白ひげ』の力だ、小細工なんざ通用しねえ!!」
その光景を見て愕然としていたのは、センゴク元帥だった。
「ばかな……白ひげの攻撃にも耐えられる強度計算で作ってあったはず……!? システムの異常といい、一体何が……」
「せ、センゴク元帥、大変ですっ!」
「どうした、何があった?」
慌てた様子で駆けてきた兵士からもたらされた報告は、こちらもあまりに予想外なものであり……さらなる驚愕をセンゴクに与えた。
「電伝虫による各地への配信が……止まっていません! 今のこの状況もまだ、流され続けています!」
「……!? 何だと!? 映像電伝虫は、奪われたものも含めて全て止めたはずだぞ!?」
「理由は不明ですが……いえ、正確には流れているのは『音声』だけで、映像は出ていないようなのです。ただ、戦場の状況だけでなく、我々の通信内容までも一部漏えいして配信されているようで……まるで、電伝虫の通信が混線を起こしているような状態です!」
「っ……バカな……!?」
ところ変わって……シャボンディ諸島の広場。
エース処刑の映像が途中まで流されていたものの、『機材のトラブル』によって中継が中断してしまった……と、思われていた場所では、先程までにも増して市民達がどよめいていた。
「おい、今の音声……つまり、海軍が海賊を騙して白ひげを攻撃させたってことか!?」
「白ひげが海賊達を売ったってのも、海軍の作戦で、嘘……」
「さ、流石にそれはひどすぎやしねえか!? 仮にも親子の杯を交わした奴らを、そんな風に……」
「バカ言え、海賊達の戦力を上手く使って同士討ちに持ち込んだんだ。むしろ褒められるべきさ」
「それにこれは戦争だ。どっちがどんな手で仕掛けたところで、卑怯なんて言葉は通用しない」
「どちらにしろ音声だけじゃ……っ!? 見ろ、映像が復旧するぞ!」
「本当だ! モニターが3つともついた……でもコレ、さっきまでと景色が違うような?」
「ああ、なんか見え方も不安定だし、あちこち切り替わってる。これ……ひょっとして混線してるんじゃねえか?」
市民の一人が言ったことは当たっていて、今の状況は、海軍にとっても想定外のものだった。
映像も音声も完全に切るはずだったのが、ある理由で、戦場全体に配備されている、配信用ではないはずの『映像電伝虫』や、通常の通信用の電伝虫……それも、海賊・海軍のそれを問わずに、無差別に巻き込んで大規模な混戦を起こしていた。
結果、戦場全体が目まぐるしく切り替わって配信され続ける、という様相を晒している。
見ている側にとってはありがたいことかもしれないが、先程の『トラブル』と合わせて何も聞かされていなかった現場の海兵達は、どうすればいいかもわからず困惑するばかりだった。
その理由というのが……
「ねぇシズぅ、その電伝虫……なんか動作が変なんだけど、混線とか起こしてないぃ?」
「……起こしてる。Dr.インディゴも試作品だって言ってたし……要改良みたい。これじゃあ、一斉通信には使えない」
「でもぉ、色んな所の通信の内容が盗聴できるわねぇ。これはこれで、相手の出方を知れて役に立つんじゃないかなぁ? 黒電伝虫使うより音声が明瞭だしぃ」
「……それもそうか。じゃあ、お嬢様達への通信は、普通に秘匿通信用の電伝虫を使う」
「了解ぃ~。手間はかかるけど、確実だししかたないよねぇ」
戦場に直接は参加せず、裏方として色々な仕事をこなしていた『メイド隊』の末妹2人……シズとエントマ。
彼女達が通信用にその手に持っていた、Dr.インディゴ特製の、オープン通話用改造電伝虫……の、誤作動によるものだった。
市民が海軍に対して不審を抱いてはいけない。
また、ここから先の光景は刺激が強すぎる。
そんな配慮から映像の切断を決めていたセンゴク元帥だったが、最早それは叶わなくなったばかりか、その『刺激』の1つ……海賊同士を騙して仲違いさせる作戦についても、既に知るところとなってしまったことに動揺を隠せない。
戦争そのものに影響は直ちにはないだろうが、後始末が大変になることは今から予測できた。
加えて最悪なのは、これが『混線』だということ。すなわち……どれか1つの電伝虫が原因になっているわけではなく、ネットワーク全体の問題だということだ。
そうなると、どこをどう対処すれば解決する、という明確な解決法が存在しない、あるいは、あってもすぐにはわからない。
まさか全ての通信用電伝虫を切るわけにもいかない。そんなことをすれば、海兵同士の連携が取れなくなり、作戦が今以上に滅茶苦茶になってしまう。
加えて、海賊達はそんなことなどお構いなしに電伝虫を使うだろうから、どの道戦場の様子は……それも、海賊達の立場に立った一方的なものばかりが配信されてしまうことになる。
(包囲壁の問題も合わせて、想定外のことばかり起こる……だが、頭を抱えてばかりも……)
と、その時、
「センゴク元帥! 報告です、正面以外の『包囲壁』の異常個所の調査班から!」
「来たか……一体何が起こってああなった!? すぐに修繕は可能か?」
「いえ、それが……動作不良を起こしている包囲壁は、いずれも基幹部分に破損が生じていて……しかもその破損が、パーツの一部が丸ごと消失しているといった形のものでして……とても作戦中の修繕は不可能です! それどころか、自重を支えきれず圧壊する可能性すらあると! 技術者達からは、そうなった場合の倒壊等の可能性が示唆され、周辺から海兵を避難させるよう進言が……」
「バカ者! そんなことができるわけがなかろうが、今は戦争中だぞ!?」
包囲に穴をあけることなどできないと怒号を飛ばしつつ……しかし、頭の中でセンゴクはさらに頭を抱えていた。技術者達の懸念が現実になろうものなら、被害は甚大だ。
それこそ、今しがた白ひげがやってのけたのと同じことが起こってしまう上……その可能性があったとわかっていたのに、海兵達の命を蔑ろにすることになる。
万が一それが漏れれば、外部はもちろん海軍内部にも不信や動揺が広がりかねない。扱いに困ることこの上ない、質の悪い爆弾のような情報だった。
そのような情報なら、むしろ知らない方がよかったとセンゴクは思ったが、直ちに調査の上報告させるよう指示したのは自分なので、当然ながら何も言えない。
「そ、それと……もう1つ、気になる情報が……」
「……今度は何だ?」
「その破損個所のあちこちに……これも理由は不明なのですが、大量の『紙』が散らばっていまして……全く何も書かれていない白紙の上、作業員が置き忘れたとは思えない量でして……」
「……紙、だと……!? まさか!」
即座にセンゴクの頭に浮かんだのは……少し前、赤犬によって捕らえられ、インペルダウンに収監されたはずの……ある1人の女海賊。
『火拳のエース』や『麦わらのルフィ』に勝るとも劣らないほどの有害な『血筋』の生まれであり……それ以上に、血筋に関係ない本人の『影響力』の大きさゆえに、海軍のみならず政府でも非常に危険視されている存在。
拷問で心を折って、政府の『広告塔』としてこの戦後に利用するつもりだったところが、先に起こった大脱走でインペルダウンを抜け出し……この戦場にも姿を現していた。
しかも思い出してみれば、開戦からこちら、1度もあの女が何かをした、どこで暴れたといった情報が耳に、手元に入ってきていない。
(この事態を引き起こしたのは……あの女か!?)
その直後だった。
戦場の一角から……そこにいた海兵達を吹き飛ばしながら、何かが勢いよく飛び出した。
それは……空中で制止すると、その背中から大きな6枚の翼を広げ、その場に滞空し……戦場の光景を空中からじっくりと見渡していく。
地上から見えるその姿は、その周囲にひらひらと舞う紙も合わさって、幻想的に見えた。
「何だあれ!? 背中に翼が……天使!?」
「バカ言うな、きっと能力者だ……
「いや違う、この能力……あの顔、たしか……!」
空に飛びあがったその姿を見て、センゴク元帥は顔をしかめ、ぎりっ、と歯を食いしばるような音を立てた。
それはもちろん、彼女がこの事態を引き起こした主犯だと確信を持っていたからだが……あるいはその何割かは、姿を見せた彼女の、その身にまとっている装束を見てのものかもしれない。
その姿は、かつての『あの男』を……センゴク元帥自身が前線に立って追いかけていた、あの『空飛ぶ海賊』を思わせるものだったからだ。
黒を基調とした和装に、羽織。
羽織の色が黄色や橙色ではなく白であること。それに、動きやすいようにだろうか、足の部分が忍者装束のような脚絆になっている点や、羽織に袖がなく、どちらかと言えば『陣羽織』である点など、細かい差はあるが……それでも、かつてのあの男を思い起こさせるには十分だった。
人によっては、エキゾチックな魅力すら感じてしまいそうなその美貌を、センゴク元帥は忌々しそうに遠くから見上げ……
「やはり貴様か……“海賊文豪”……ッ!」
☆☆☆
Side.スゥ
あ~……空気が美味しい。
折角脱獄したってのに、何が悲しくってまた地下の狭苦しい空間に籠らなきゃいけないんだっていうね。
まあ、そうしなきゃいけないと思ったからそうして、ちょっくら破壊工作にいそしんでたわけなんですが……そして、その甲斐はあったみたいですが。
空中から『湾内』を見渡すと、歯抜けみたいにあちこちの『包囲壁』が動作不良を起こしていて……せり上がっていなかったり、途中で止まっていたり、という感じになってる。ざっと全体の……4分の1くらいかな?
即興でやった破壊工作にしちゃ上出来じゃなかろうか。
「おい、小娘」
「? はい、誰……うぉっ!? し、白ひげ……さん!?」
いきなり話しかけられたと思って振り向いたら、でっかい薙刀もったでっかいお爺さんがそこに。
顔には特徴的過ぎる三日月型の白いひげ……まぎれもなく“白ひげ”こと、エドワード・ニューゲートがそこにいた。
び、びっくりした……。
「な、何でしょう……?」
「取って食おうってんじゃねえんだ、警戒なんざいらねえよ。さっき俺の息子達から、『壁』の根本に紙が散らばってるって話が聞こえてきた。これァ……お前の仕業か?」
「はい、まあ……一応そうです」
「そうか。ってことは……センゴクの奴がやってくることが事前にわかってたのか?」
「いえ、何をしてくるかまでは流石に……でも、ホームで迎え撃つ以上は確実に何かはやってくると思ってましたし、地形を見た感じ、なんとも包囲しやすそうな、できたら楽そうな地形だなー……と思ってたので、湾の内淵部の地下を探ってみたら、案の定で」
なので、『紙』の体を生かしてその内部構造の部分に入り込み……『覚醒』能力を使って大事そうなパーツを片っ端から紙に変えて回収し、あちこちに部品欠損を引き起こしてきた。
全体の構造とか仕組みまでは、この短時間では把握できなかったけど、『この歯車重要そうだな』ってのはなんとなく予想がつくものもあったので、そういうのをすっぽり抜き取ったりとかね。
もちろん、私の『原作知識』を生かした破壊工作なんだが、ここでは一応、
「何をしてくるかピンポイントではわかんなかったので、想定できる可能性全部を警戒してあちこち見て回ってみて……内、何個か予想通りの作戦の痕跡みたいなのがあったんですが、一番何とかしておいた方がよさそうなものがコレでした。まあ……破壊工作にしても不完全ですけど」
ということにしておく。
いや、でもこれ、全部嘘ってわけでもないんだけどね。
実際色々予想してみてはいたし、その通りの作戦が展開されてた部分とかきちんとあったし。
「グララララ……大した小娘だ。謙遜するこたねェさ、十分上出来だ……!」
言いながら、白ひげはすごい音を立てて大気を殴り……そこから走った衝撃波が、包囲壁の1つに飛んでいく。
その包囲壁事態を壊すことはできず、ベコォン!! と、またすごい音を立ててへこませただけだったけど……その直後、ゆっくりとその壁が後ろに倒れて行くのが見えた。
おー……きちんと成果出てるじゃん。えらいぞ私!
「防御壁として使うには不完全で、抜け穴を狙ってくる連中に備えるために兵力を余計に割かなきゃいけなくなる……かといって放置すれば迂回されちまうから無視もできねえ。陣形としては完全に失策というところまで持って行けた。おかげでやりやすくなったぜ……ありがとよ」
「あははは……光栄です。じゃ、私はこのへんで!」
そう短く挨拶して、私は翼を羽ばたかせ……急加速して前線目掛けて飛んでいく。
「こっちに飛んできたぞ!? あれは……“海賊文豪”か!?」
「インペルダウンの脱獄囚か……行かせるな、撃ち落とせ! 巨人部隊、空を警戒しろ!」
地上からすごい数のバズーカやら何やらが飛んでくるが、全部かわしつつ……こういう時にこの技って便利だよね!
はい、いつもの。
「“紙剃吹雪”……“千本桜”!!」
ばら撒いた紙吹雪が、大小様々な兵器を構えた兵士達を切り刻んで一網打尽にしていく。
剣を振り回してもどうにかできるものじゃない、数千枚の紙の刃。ホント、広範囲の雑魚掃除にすっごく都合がいい。
遠距離攻撃は潰したから、さてじゃあ前線に向かうかと思ったその時……前に見たことのある大柄な姿が、こちらへ向けて突貫してくるのが見えた。
「インペルダウンから出てきたか“海賊文豪”……だが、これ以上好きにできると思うんじゃねェんだらぁ!」
どうやらきれいに修復は済んだらしい『鮫切包丁』を振りかざして……『月歩』で空をかけて飛びかかってくる、“鮫切り”バスティーユ中将。
ここで会ったが百年目、とでも言わんばかりの剣幕で――鉄仮面で表情は見えんけど――覇気を刃に流し、真っ二つにするつもりで私目掛けて振り下ろしてくる。
しかし、私は体の中から『七聖剣』を取り出すと……
「今度こそ、てめェは俺が……!」
「―――今日は」
言い終わるのを待たず、私は呟くように言いながら剣を振るう。
振り下ろされる刃を、空中にいたままで、ガギン、と横に弾いて反らし……
即座に体全体を紙に変え、バスティーユ中将の体の周りにまとわりつくような動きで広がって、驚かせると同時に動きを鈍らせ、
「―――遊んでる暇」
その背後で耳元で囁くように。
とっさに反応してすごい勢いで腕を引き戻し、振り向きざまに薙ぎ払ってくる中将。
「―――ないんで!」
しかし、私はその体の回転にそのままついていく形で、バスティーユ中将の背後をとり続け……無理やり振り抜いたせいで体勢を崩した一瞬の隙間を突いて、
「一刀流……“
風車のように大きく回転しながら前に回り込み……というか、今のバスティーユ中将の振り向きざまのぶん回しと同じ動きで……覇気を込めた私の刃が、深々とその身を切り裂いた。
「ぐ、ぁ……!?」
それでも気合で意識をつないで刃を握り直そうとしていたバスティーユ中将に……悪いけど追撃させてもらった。
せっかくだしコレ使ってみよう。
手のひらを中将さんの胸元あたりにそっと向けて……体内に収納していたあるものを、手のひらに取り出して出現させる。
そして……はい、せーの……
「“
相当鍛えている戦士でも余裕で死ねるレベルの衝撃が叩き込まれる。
空島の時に、エネルの箱舟に積み込まれてたものをかっぱらった中にあった『
胸に向けて撃ったのに、その余波で顔の部分の鉄仮面までバカッと割れて……そのままぴくりとも動かなくなったバスティーユ中将は、自由落下で戦場のど真ん中に墜落した。
あ、『衝撃』とはいえ所詮は物理的なものに違いはないので、私に反動はないです。腕が紙になって吹き飛びはしたけど、秒で元に戻ったし。
原型留めない系の能力ってほんとこういうとこ得だよねー。
落とさないようにまた体内に『排撃貝』をしまうと……地上にいて、今の数秒の攻防を見ていた海兵達が、見事に顔を青くしているのが見えた。
「嘘だろ……!? バスティーユ中将が、瞬殺された……!?」
「か、“海賊文豪”って……あんなに強かったのか!? 懸賞金7600万だろ!?」
ふと向こうの方を見ると、前線の方にいる海賊や海軍の皆さんの何人かも、こっちに目を向けているのが見えて……うげ、赤犬もいた。こっち見てる。殺したそうな目でこっちを見ている。
そしてその更に奥にいるセンゴク元帥も、顔をしかめてこっちを見ていたかと思うと……手元の電伝虫を手に取って……あ、これはやばいか? とうとう来るか?
『動揺するな! 懸賞金額に見合ってこそいないが……その女もまた、“火拳”や“麦わら”と同等かそれ以上の危険因子! 舐めてかかっていい相手ではない!』
響くセンゴク元帥からの業務連絡(違)。
『海賊王の息子』や、『革命家ドラゴンの息子』と同等かそれ以上という言葉を聞いて、なんだか一気に注目度や警戒感が増したのを感じる。
となるとアレだな、この後バラされるのはやはり……
見てみると、処刑台の上にいるエースや、前線をひた走るルフィも……その周囲のインペルダウンから一緒に来た人達も、『?』な感じの表情になっている中……
『その血筋は……『海賊王』ゴールド・ロジャーの時代からの生き残りにして、『白ひげ』と同様に幾度もロジャーと渡り合った宿敵!』
『そして……20年前、大監獄インペルダウンから脱獄した唯一の存在たる“空飛ぶ海賊”!』
『“金獅子のシキ”の……実の娘だ!!』
「「「えぇえェェエ~~~!?」」」
あーあ、バレちゃった♪
Q.黒い和装に白い羽織って……『死覇装』と『隊長羽織』では?
A.まあそんな感じでOK。
ただ、最初からそのつもりで考えたわけじゃなかったりします。
せっかくの頂上戦争だし、シキがプレゼントする一張羅なら、やっぱシキと同じ和装かな……と思って考えて、参考にするためにシキの画像をまず検索して……
「ふんふん……割と色々バリエーションあるんだなシキの衣装。でもこの、黒い着物に金色の羽織が一番雰囲気いいかも。これにしよう」
「あ、でもスゥのイメージカラーって、髪の毛白いし、金じゃなく白だな。よし、内側の着物は黒のまま、羽織は白にしよう」
「(脳内でイメージしつつ)……あれ、なんかコレどっかで見たことある…………あっ」
こんな感じで決まりました。