大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第174話 スゥ、本格参戦。からの……

 

 

「い、今の話、本当なのか……!?」

 

「“海賊文豪”が……“金獅子”の娘!?」

 

「本社! 本社! こちらシャボンディ諸島……大ニュースです! せ、世界中に通信を!」

 

 “海賊文豪”ベネルディ・トート・スゥが、伝説の大海賊“金獅子のシキ”の実の娘。

 衝撃の事実に、シャボンディ諸島で見守る市民達も騒然となる。

 

 そして当然ながら、その衝撃は、戦場にいる者達の間でも同じ。

 

「キ……キキキキキキ金獅子ィィ!?」

 

 囚人達はもちろんのこと、その頭目的な立ち位置に今立っているバギーも……なまじ『金獅子』を直に見て、ロジャー海賊団時代に『エッド・ウォー』で戦った経験すらあるため、驚きもひと際大きいようだ。

 あの時会ったあの恐ろしい海賊に娘がいて、しかもそれがついさっきまで一緒にいた娘だと。

 

 あとついでに、その手料理をさっきまで食べてたのかと。

 

「文豪ガールが、“金獅子”の……し、知らなかっタブル……! 麦わらボーイ、ヴァナタは何か聞いて……」

 

「ハァ、ハァ……いや、何も……ってか“キンジシ”って誰だ?」

 

「なんと、あの娘にそんな出自がのォ……思いもよらんかったわい」

 

「親子二代にわたって『インペルダウン』を脱獄したわけか……クハハハハ、血筋ってのは面白ェもんだな。マゼランも災難だ」

 

「とんでもねえ事実明らかになったぞおい……どうするブルーメ?」

 

「いやどうと言われても……とりあえず後で色々話聞こうかな、って思ってる程度なのですよ」

 

 共に脱獄したインペルダウンの面々も、それぞれ驚きつつも(一部何で驚いているのか理解できていない者もいるが)……手と足は止めずに前へ前へと進んでいく。

 

 一方で、ごく限られた『もともと知っていた』者達は、当然冷静と言えばそうだった。

 

「まあ、当然と言えば当然じゃが……そこら中阿鼻叫喚じゃの」

 

「じーちゃんってやっぱ有名なんだな、コレ見るとわかるわ」

 

「あっはっは……そりゃーびっくりするよねえ、こんなこといきなりカミングアウトされたら」

 

(明かされてしまったか……これはスゥの周囲もしばらく騒がしくなりそうじゃの。しかし、それならば……ふむ……ならばいっそ……)

 

 驚愕しているのは当然、囚人達だけでなく……海兵や『七武海』、その他の面々にも同じこと。

 

「……ヒナ……驚愕……!!」

 

「“麦わら”といい、次から次へと……ここは凶悪犯二世の同窓会場か……!?」

 

「フッフッフ……! 『ロジャーの息子』に『ドラゴンの息子』、それに『金獅子の娘』か……時代の節目にふさわしい、とんでもねえ戦場になってきたもんだな!」

 

「ほォ……シキの奴の娘だったのか。てんで似てねえな……グララララ」

 

 それぞれが違った形で驚愕や動揺を示す中……その話題の正に中心といっていい位置にいる彼女……スゥは、抜き放った『七星剣』を振るい、何人もの海兵をまとめてなぎ倒すところだった。

 

 剣を構えて斬りかかってくれば、軽くいなして逆に斬って捨てる。

 

 盾を構えて防ごうとすれば、構えている盾ごと斬り倒す。

 

 距離をとって銃で撃ち抜こうとすれば、避けるか弾丸を切り払い、飛ぶ斬撃か紙の手裏剣で距離をものともせず斬り払う。

 

 全方位から取り囲んで数で圧殺しようとすれば、彼女を中心に発生した紙吹雪の竜巻がその全てを斬り刻んでなぎ倒す。

 

 翡翠色の刃が、刀身に輝く七星の軌道を描いて振るわれるたびに、海軍本部で尉官や佐官の地位につくエリートと呼ばれる者達が、一刀のもとに斬り伏せられて倒れていく。

 懸賞金額に見合わない、というセンゴク元帥の言葉通り、精鋭達をものともせずにスゥは歩みを進めていく。

 

「ええいどけ! 叩き潰してやる!」

 

 キリがないとでも思ったのか、スゥが翼を羽ばたかせて飛び上がった瞬間……奥の方から2人の巨人族の兵士が前に進み出る。

 そのうちの片方は中将の地位につく者であり、『生まれながらの戦士』と称される巨人族の強靭な肉体も相まって、海軍本部でも有数と言っていい武力の持ち主だった。

 

 飛んでいる虫をはたいて落とすかのように、手に持ったそれぞれの得物……金棒と大剣を振り降ろし、スゥと撃ち落とそうとするが、紙に変化してあっさりと回避される。

 そして素早く少し離れた場所に移動したスゥは、ちょうどその2人が一直線に並んで見える位置に滞空すると、『七星剣』をもっていないもう片方の手に、紙の剣を作った。

 

 その切っ先が、巨人2人にピタリと向けられた……その瞬間、

 

 

「“紙殺槍(かみしにのやり)”!!」

 

 

「ぐおっ!?」

 

「ぐあぁあぁ!」

 

 矢のような速さでその刃が伸びて……巨人二人の体を貫通する。

 そのまま、向こう側の地面に突き刺さり……2人をまとめてその場に縫い留めてしまった。

 

「ぐ……っ、こ、これしきのことで、我らを止められると……っっ……!?」

 

 力ずくで紙の槍を、へし折るなり引きちぎるなりして脱出しようとするも、想像以上の強度にうまくいかず……しかも、片方が動けばもう片方の傷口が広げられて苦悶の声が聞こえ、思わず力を緩めてしまう。

 

 それに……スゥの攻撃はまだ終わっていなかった。

 動けずにいる巨人2人の目の前で、スゥは体から、瀑布のような勢いで大量の紙を出し……それを収束させて、何かを形作っていく。

 巨人族の背丈に匹敵しそうな『それ』を目にして、流石に巨人2人も驚きを隠せない。

 

 そして同時に、はるか遠く、処刑台の上からその戦いを見ていた、センゴク元帥とガープ中将も……それを見て、思わず顔をしかめていた。

 

「おいおいセンゴク、あれァ……」

 

「ああ……嫌なものを思い出させる……! あの男のインスパイアか何かか……」

 

 形作られたのは、大量の紙で形作られた……何体もの獅子の(かお)だった。

 牙をむき、獰猛さ・恐ろしさが伝わってくるようなその造形。まるで咆哮まで聞こえてきそうなくらいのリアルさで睨みつけられ、巨人2人も流石に戦慄するそこへ……

 

 

「“獅紙脅し”……“破榴巻(はるまき)”!!」

 

 

 襲い掛かる紙の獅子。

 縫い留められたままに、金棒と大剣を振り回して切り払おうとするが、もともと個体ではないそれを殴ったところで、一度ばらけて元に戻るだけ。

 しかも、1体を相手にしている間に反対側から別な顔が食らいついてくる。

 

「「う、ぉああぁああぁぁ―――…………!!」」

 

 あっという間に2人共、獅子の形をした紙の奔流に食らいつかれ、飲み込まれ、切り刻まれながら外側を囲われて包まれていく。

 数秒と経たないうちに2つの巨体は見えなくなり、まるでかまくらか何かのように全体を半球状に覆い隠され……

 

 …………そして、

 

 

 ―――ドォン! ドォンドォンドォン、ドンドンドドドドドォン!!

 

 

 紙の中に含まれていた大量の爆薬や砲弾――インペルダウンの武器庫や軍艦から根こそぎかっぱらって収納していたもの――が、内部で爆発する。

 

 隙間なく紙に包まれ、ほぼゼロ距離、かつ衝撃と爆風の逃げ場もない中で、絨毯爆撃に匹敵する火力を全身に、全方位から受けることになった巨人2人。

 ほどなくして、紙がはらりとほどけて解放された時には……全身黒焦げ・血だらけのボロボロで白目をむき、地響きと共に倒れ……ぴくりとも動かなくなった。

 誰がどう見ても、再起不能の重傷である。

 

 その上、密閉空間で大規模な爆燃が起こったためか、酸欠も起こしているようだった。呼吸の音がひゅーひゅーと浅く、頼りない。

 

「巨人族まで……あんなにあっさりと……」

 

「それに今の技、資料にあった『金獅子』の使う技とそっくりだぞ……やはり、本当なんだ!」

 

 海軍側の大戦力であり、飛行する能力者対策の空の守りの要でもある巨人族。

 それらがいっぺんに2人沈められた光景に、海兵達は戦慄し、海賊達は勢いづく。

 

「やるじゃねえかあの姉ちゃん!」

 

「“金獅子”の娘だって話……こりゃマジだな」

 

「ロジャーの宿敵だろ? なのにエースを助けに来てくれたのか……いや、親世代の話だ……気にしてもしかたねぇな」

 

「巨人がいなくなってあの一角が手薄になったぞ、なだれ込め!」

 

「させるな! 陣形を組み直して海賊共をとめろォ!」

 

「くそっ……想定以上の戦力だ、“海賊文豪”……! 巨人部隊でも止められんとは!」

 

「固まりすぎるなよ! あの紙吹雪で一度にやられるぞ!」

 

 慄きつつも武器を手に取り、行かせまいと奮起する海兵達。

 

 しかし、兵卒どころか佐官レベルでも止めようがない実力なのは自明。

 自分達が動かねばならないかと、幾人かの中将が獲物を手に進み出ようとして……しかしその瞬間、海兵達の間を駆け抜ける1つの影があった。

 

退()け。あ奴はわらわの獲物じゃ」

 

「!」

 

 直後、地を蹴って飛びあがったのは……王下七武海の紅一点。

 “海賊女帝”ボア・ハンコックだった。

 

 しなやかな足が生み出す驚異的な跳躍力で、上空に浮いているスゥのところまで飛びあがると、覇気を込めた飛び蹴りを叩き込む。

 寸前で気づいて防御するも、立て続けに放たれた踵落としがヒットし、スゥは勢いよく地面に墜落した。

 

 土埃が舞うその中に飛び込むようにして、ハンコックが追いかける。

 

「おい、“海賊女帝”が行ったぞ!?」

 

「“海賊文豪”を撃ち落とした!」

 

「ていうか……なんか、すごい勢いというか、やる気でとびかかって行ったような……」

 

「自分の獲物だとかなんとか言ってたな……ひょっとして、敵対関係にある間柄なのか?」

 

「だとしたら好都合だ。“海賊文豪”は“海賊女帝”に任せられる……!」

 

「…………どっちもすげえ美人だったな」

 

「おい! こんな時に……いやまあ確かにそうだったけども」

 

 

 

 土煙の外で海兵達がそんな話をしている、まさにその時……

 

「痛ったいなあ……いきなりひどいじゃん、ハンコック」

 

「やかましいこの阿呆、あんな手紙一枚寄越していなくなりおって……心配させた罰じゃ」

 

「ごめんごめん……いや、流石に不意打ちもいいところで、しかも『赤犬』は無理だったんだって、逃げるのも……。心配してくれてありがと。ルフィから聞いたよ、私のことも気にかけてくれてたんでしょ?」

 

「ふん……後で『アマゾン・リリー』にも顔を出せよ? ソニアやマリー、ニョン婆らも心配しておった……顔を見せてきちんと安心させろ」

 

「りょーかい。それよか……何か理由というか、用事があって来たんだよね?」

 

「察しがよくて助かる。ルフィの……わらわの愛しき人の力になりたい。手を貸せ、スゥ」

 

「いいよ、もちろん。まあでも、大っぴらに協力して戦うわけにはいかないから……うまいことやる必要があるね」

 

「ふむ……ルフィ以外の男どもに何を言われようが気にすることなどないが、確かに面倒は少ない方がよいか。となれば……」

 

 ハンコックは言いながら、手にピンク色の光でできた剣を出す。

 そして……舞うような独特な動きで、切っ先をスゥに向けて構える。

 

 スゥも同じことを考えていたようで、にやりと笑って同じ動きで剣を構える。

 

 言葉は不要だった。

 練習はもちろん、たった一言の打ち合わせすら不要だった。

 

 彼女達の友情は……まさに剣舞(ここ)から始まったのだから。

 

「久しぶりに……舞ってみようか!」

 

「いいね、乗った! 派手に、激しく、カッコよく行こう!」

 

「たわけ、やるなら華やかに、流麗に、美しくじゃ!」

 

「じゃ両方で!」

 

「応とも!」

 

 

 

 ―――ガギィイィン!!

 

 

 

 次の瞬間、2つの刃がぶつかり合う轟音と衝撃波がまき散らされ、それらは遠巻きに様子をうかがっていた海兵達のところまで届く。

 周囲を覆っていた土煙が、一瞬で全て吹き飛んだ。

 

 

 

 

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