大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第178話 スゥVS赤犬 ROUND-2

 

 

「“犬噛紅蓮”!!」

 

 赤犬が腕から放ったマグマが、牙をむいた犬の形をとって向かってくる。

 

「“魔海象(まかいぞう)”!!」

 

 それを私は、下からすくい上げる軌道の一撃ではじいて反らす。

 受け止めるのは流石に……無理とは言わないけど消耗するしきついから。

 

 このくらいなら、『翡翠の炎』と『触れない覇気』の併用で十分可能だ。

 

 スズに見せてもらった『黒炭家秘伝ノ書』にあった、この覇気の使い方を習得してなかったら、これは無理だった。

 どんな人、どんな家か知らんけど、足向けて寝られんなこりゃ……ワノ国に行くことがあったらホント何かお礼しなきゃ。

 

 それに……どうやらこの『七星剣』由来のオカルトパワーの一種と思しき、『翡翠の炎』についても同様だ。

 依然、よくわかんない能力ではあるんだけど……どうやら『七星剣』には、私の気合、あるいは覇気を吸い上げてこの不思議な炎に変える力があるらしい。

 

 インペルダウンの中で、『七星剣』との対話でそれに気づき、使えるようになった力だ。

 

 こいつはそのまま、炎として攻撃手段にも使える上に……この身にまとうこともできる。そしてそれは、相手の熱とか炎に対しての強力な防御手段になる。今の私にまさに必要な能力だ。

 まあ、防御できるのは炎熱に限った話じゃないんだが、今はいいとしよう。

 

 これにより、普段の私なら近づいただけで発火あるいは煙が上がって、スリップダメージで勝負にならない相手である赤犬とも、そういうのなしで戦える。

 ……直撃食らったら普通に死ぬけどね。さすがにそこまでの防御力はない。

 

 あと欠点としては、その分覇気を消耗するってことくらいだな。

 強い覇気を剣に食わせれば、炎も強くなるんだけど……当然その分消耗も早まるから、長期戦に使うには厳しい能力だ。

 

 今私は、剣に覇気を集中させて触れずにマグマを斬ってる。

 同時に全身を、炎のような翡翠色のオーラで覆って戦っている。

 

 これにより何とか赤犬に食らいつけているけど……先に言ったように相手は普通に格上なので、このまま続けていてもじり貧だ。

 覇気の消費も激しいから長期戦は無理だし……そもそも私だって結構疲れてるんだよ! 海兵達相手にすんのそこそこ大変だったし、ハンコックとの『剣舞(ヤラセ)』も、動きは激しかったし能力は使いまくったから消耗はあったし。

 

 一応色々と『仕込んで』はいるけど、理想はそれらの出番の来ないうちにどうにか……っと、危ない!

 

「“冥狗”!!」

 

 その手をマグマに変えた赤犬が、恐ろしい勢いで引っ掻くように薙ぎ払ってくる。

 かすっただけでも体を焼かれて抉られそうなそれをいなしてかわして、出来た隙間に強引に剣を割り込ませ……突き出す。

 

「“(かん)地亥(ちがい)”!!」

 

「ぬぅっ……!?」

 

 突き刺した刃が、赤犬の体を……浅くだが、傷をつける。

 マグマの流動で無効化しきれずに、うっすらとだが血がにじんだのが見えて……しかし、マグマの赤い光に隠され、すぐに見えなくなった。

 

「おどれァア!!」

 

 怒りそのままに、『大噴火』クラスの大きさにまで膨張させた拳を振り下ろしてくる。

 その直撃を受けた私は、ひとたまりもなく消し炭になって……と見せかけて!

 

 

「“死喪鳥(しにもどり)”!!」

 

 身代わりの紙人形『代理雛』と一瞬で入れ替わり、飛翔して赤犬の背後に回る。

 そのまま首筋に剣を叩き込むつもりだったけど、赤犬がマグマの腕(巨大)をそのまま崩さずに振り向きざまに薙ぎ払ってきたので、慌てて急上昇して回避。

 

 赤犬の周囲はもう、地面もドロドロのマグマだらけだ。降りれないなあのへんもう……。

 

「ちょこまかと鬱陶しい……その……」

 

 

「“神火・不知火”!!」

 

 

 その瞬間、その横っ腹から、オレンジ色の炎で形作られた槍が遅いかかり……赤犬の首に突き刺さった。

 その槍は一瞬だけ、ボウッ!! と勢いよく燃えたものの……顔をしかめた赤犬がその部分のマグマを活性化させると、すぐに焼き潰されて消滅してしまった。

 

「効かんというのがわからんのか……“火拳”……!」

 

 苛立ちそのままに赤犬はまたマグマの腕を突き出し、その槍を飛ばした下手人……エースを撃ち抜こうとする。

 食らったらただじゃ済まないのはエースも理解しているので、大きく飛び退ってそれをかわし……何を思ったか、赤犬に向けて不敵に笑う。

 

「無駄なことを繰り返しおって……そんなに死にたけりゃァ、今すぐに消しちゃろうか……!」

 

「無駄か……さて、そいつはどうかね? 今、一瞬だけだがきちんと俺の槍は燃えたように見えたが……その時、熱かったんじゃねえのかい?」

 

「何ィ……?」

 

 ……確かに今、一瞬だけエースの放った炎の槍は、きちんと燃えていたようには見えた。

 その後すぐ消されちゃったし、見た感じ……赤犬の首元には痕も何もないけど……

 

「能力の『上下関係』……どうにもそいつは本当らしいな。ただ……それは何も絶対ってわけじゃないだろう。世の中には、覇気なしでの肉体強度が、そこらの使い手の『覇気』を用いた攻撃をしのぐ例だってある……能力そのものに差があっても、やり方次第で結果は変わる」

 

「……何が言いたい?」

 

「俺の炎があんたのマグマに焼き尽くされちまうなら……こっちの炎をもっと強く、もっと熱くすりゃあいい……マグマすら焼き尽くせるくらいにな!」

 

 言いながらエースは両手を炎に変え、それを轟々と勢いよく燃え上がらせていく。

 周囲の酸素を取り込んで、勢いが凄まじく増していき……熱気がこっちまで漂ってくる。マグマと違う、明らかにエースの炎のそれだとわかる熱気が。

 

 それを見ながら、赤犬は……

 

「なるほどのう……道理ではあるな。あるいは、マグマよりも圧倒的に高温の炎、っちゅうもんを使えるならば、それも可能かもわからん……じゃが……」

 

 次の瞬間、エースのそれを上回る勢いで……腕に膨大な熱を発生させる赤犬。

 

「それをこのわしに対してやれると思うちょる時点で、現実になぞ成りえんと知れ!!」

 

 それを正拳突きの要領で突き出し……とっさにエースは、避けきれないと悟って炎の壁を目の前に作る。

 ほんの一瞬だけ拳を防いだものの……炎を食らいつくすように破って、マグマの拳はエースの顔面目掛けて吸い込まれるように……

 

 ―――ギィン!

 

 吸い込まれちゃ叶わないので強引に割り込んでどうにか防ぐ!

 

「……っ……熱っ!」

 

「お前……がっ!」

 

 声をかけてる暇も惜しいので、エースを蹴っ飛ばして後ろに逃げさせ、私もマグマの拳をいなすようにして回避し、距離をとる。

 直後、エースの炎の壁が全て消し飛んで、憤怒の形相の赤犬が姿を見せる。

 

「妄想妄言もここまでくると哀れじゃのォ……“海賊王”の息子。時代の“敗北者”を親父などと呼んでその影に隠れ、今もこうして女に、しかも父親の“宿敵”の娘に庇われにゃあ満足に身一つ守れん……そんなザマでわしの熱を超えられるなどと、片腹痛いわァ!!」

 

「てめェ……またオヤジをバカにしやがって……!!」

 

「挑発に乗るなってエース! つかあんた何で逃げてないんだよ!」

 

「あァ!?」

 

「言ったじゃん私『逃げろ』って! ここは私が引き受けるから早く行けって! あんた逃げないと私も逃げらんないんだってば!」

 

 さっきなんか熱そうな展開だからちょっと見ちゃってたけど、よく考えたらおかしいよね今ここにエースがまだいるの!

 私あんたとルフィを逃がすためにここに残ってこのバケモンと戦ってたんだけど!?

 

 確かにお礼参りしたいとは思ってたけどさ、それでも分が悪いからできれば戦わないに越したことはないんだってば! 悔しいけども!

 

 ていうか向こうの方にルフィもまだいるんだけどォ!?

 なに拳構えてんだよあんたまだ覇気使えないだろ、こいつ相手に戦うの絶対無理だよ! あと足ガクガク震えてるし……限界だろとっくにもう! 逃げろや!

 

「ふざけんな、俺は逃げねえ! 一度向き合った相手に……しかも、オヤジを馬鹿にされて、背中なんて向けられるか! 別にいいからお前だけさっさと逃げろ!」

 

「エースが逃げねえんなら俺も逃げねえ!」

 

「こんのバカ兄弟ィ―――!!」

 

 もういっそぶんなぐって気絶させて持ち帰るべきか、とか考えてた……その時、

 

 

 

「船長命令を聞かねえかこのアホンダラぁ!!」

 

 

 

 赤犬の背後から突っ込んできた白ひげが、覇気と地震の力を込めた一撃を叩き込んで、赤犬を吹き飛ばし、叩きつけた。

 そしてそのまま、エースやルフィ、そして私を庇う位置に立つ。

 

「俺は逃げろと言ったはずだぞ……エース!!」

 

「そんな、オヤジ……でも、でも俺はガッ!?」

 

 聞き分けのない息子に拳骨が落ちる。

 

「……スクアードの馬鹿にも言っただろうが……親より先に子が死ぬような親不孝、この俺の前でするんじゃねえ……!」

 

「っ……」

 

「小娘! このアホ2人をさっさと連れていけ!」

 

「は、はいぃっ!」

 

 言われるままに、エースとルフィをひっつかんで飛び上がり、私はその場から飛んで逃げ出し……熱っ、熱い! やめ、ちょ……燃えるなエース!(物理的に)

 無意識? 感情が高ぶってるだけ!? それともわざと!? ぶん殴るぞ後者なら!

 

 あとルフィも暴れるな! 何でまだ元気なのそんなに!? ボロボロだろもう!

 

 ちらっと後ろを見ると……立ち上がった赤犬と、白ひげが戦い始めるところだった。

 地震とマグマがぶつかり合う、地獄みたいな光景がそこに……

 

 ……熱い!! エース、火力UPすな! 興奮するな!

 

「放せ……頼む、放してくれスゥ! “海賊文豪”!! オヤジは……オヤジは、俺の……!」

 

「そのオヤジさんに逃げろって言われたんでしょうが! いうこと聞きなさい! めっ! 帰るよほらさっさと! ルフィも暴れるな……痛い! 噛みつくな!」

 

「やれやれ……駄々っ子2人引きずって大変そうだなスゥ」

 

「なんか……買い物に来て『買って買って』って駄々こねてる子供2人引きずって帰ろうとしてる母親的な光景なのです」

 

 あ、いつの間にかビューティとブルーメが合流してた。

 よかった、2人とも特に大きなけがもないみたい。普通に走れてるし。

 

「こんな大きくて聞き分けのない男の子2人も持った覚えはないよ! 子供はあの3人だけで割といっぱいいっぱいです! あとエースいい加減燃えるのやめろ! いい加減にしないと、もっかい海楼石の手錠で封じ込めるぞこらぁ!」

 

 翡翠の炎で守ってても熱いもんは熱いんだよ! 覇気食うし!

 

「いや、それお前さんも触れねえだろうよい、能力者なんだから」

 

「その時はビューティに頼む!」

 

「私かよ……はいはい。ほら火拳、もう大人しくしとけ。オヤジさんの意思なんだろ? 母ちゃん怒らすとこえーぞ」

 

「こら、誰が母ちゃんだ! ビューティ、あんたまで何をそんな……」

 

「どうどう、落ち着くのですよお母さん。もうちょっとで集団に合流できるから、そしたら割と楽になるのです。逃走も運搬も」

 

「おいブルーメも! あんた私より年上でしょうが! にやけてるぞ顔ォ!」

 

「放せよ母ちゃん……あっ、間違った。放せよスゥ!」

 

「あんたもかルフィ! 何つられてんの!」

 

 何だよどいつもこいつも母ちゃん母ちゃんって……私はまだ未婚で未経験で彼氏いない歴=年齢の奇麗な体だっつーのォ!!

 ちくしょー自分で何言ってんだ私は……目の前が滲む!

 

 あと、万が一を考えるとルフィ、あんただけは母ちゃん呼びマジでやめて。

 あんたと私の年齢差考えると『ワンチャンあるかも』って思われかねないから。(ルフィ17歳、私34歳)。

 事実無根だけど、もし記事にされでもしたら各方面の風評被害がひどいことになる。あんたの父ちゃんも当時16~17歳の私に手を出した疑惑持たれるぞ。

 

 ……そういやルフィの母親って原作でもまだ明かされてなかったよな……誰なんだろう?

 

「てかマルコいつの間に……いるんなら片方持ってよ! できればこっちの物理的に熱い方!」

 

 あんた不死鳥だし燃えてるし平気でしょ!

 

「へいへい、わかったよい。ほら、こっちよこせ母ちゃん」

 

「おいゴルァア!!」

 

 

 

 

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