大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第179話 スゥVS赤犬 ROUND-3

 

 

 ちょっと目を離すと、本当に秒刻みで状況が変わるこの戦争。

 エース救出から撤退戦に移行してもそれは同じだった。

 

 私達を逃がすために白ひげと赤犬の戦いが始まり……結果は白ひげの勝利。

 赤犬の猛攻に耐えてさばき切り、地震の力を叩き込んで地面ごとぶち砕いて地割れに落とした。

 

 その際、マグマの爪で削り取られて顔半分を失うシーンがあったと思うんだが、こちらではわずかに頬をかすめるにとどまっていた。

 いやそれでも普通は火傷どころか死ねると思うんだけど……ちょっとの火傷程度で普通に無事だった。さすが白ひげ。

 これ、白ひげが上手く避けたのか、あるいは……ぼちぼち()()()()()のか……。

 

 そのまま、海軍の要塞とマリンフォードを本気で海に沈める気で1人暴れる白ひげ。

 しかしほどなくして、思わぬ乱入者がその戦場に現れる。

 

 “黒ひげ”マーシャル・D・ティーチ。

 白ひげの船を脱走し、エースを返り討ちにし、その身柄を海軍への手土産にした……この戦いを引き起こす原因を作った張本人が、仲間達を率いて現れた。

 

 このへんでまたエースが引き返そうとしたので、私とマルコで何とか止める。熱い。(物理的に)

 というか、エース以外にも引き返そうとする者がいっぱいいたので、それぞれ手分けして止めてるようだった。恨まれてるな……黒ひげ。当たり前だけど。

 

 その黒ひげは、そのまま白ひげと戦いになり……さすがというか圧倒的な強さを見せる白ひげだったが、その途中でついに力を使い果たしたのか、攻撃を止めてしまう。

 そこ、黒ひげ海賊団からの集中砲火をその身に受けて……それでもなお、倒れることはなくその場に立ち続け……

 

 

 

「“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”は……実在する!!」

 

 

 

 そう、言い残して……白ひげはその生涯を閉じた。

 

 

 その後、暗幕のような黒い布の向こうで『何か』したかと思うと……数十秒後、黒ひげがなんと『グラグラの実』の力を使ってみせる。

 どうやってかわからないが、死んだ白ひげからその力を奪い……『ヤミヤミの実』と『グラグラの実』の2つの悪魔の力をその身に宿して、それを戦場に、世界に見せつけた。

 

 そのまま、調子に乗ったんだか本性を現したんだかわからないが、『マリンフォードを沈める』とか言い出して……それが逆鱗に触れたらしいセンゴク元帥と戦いになり始めて……

 

 で、このへんでとうとう我慢ができなくなったらしく……

 

「マルコ……スゥ……」

 

「あん? エース?」

 

「?」

 

「悪い……後で、土下座でも何でもして詫びる……!」

 

 その瞬間、エースの体から……明らかに攻撃に使うレベルの火炎が噴き出して……私とマルコをはねのける。

 

「熱ぁあっ!?」

 

「……っ!? おいエース、行くな! 戻れ!」

 

 マルコの制止にも耳を貸さず、ブチ切れたエースが黒ひげめがけて突っ込んでいこうとして……

 

 しかし次の瞬間、エースの真正面で地面が爆発する。

 驚いたエースがさすがに急停止し、その目の前で……地中から、大量のマグマと共に……さっき地割れに落ちたはずの赤犬が姿を現した。

 

「殊勝な心掛けじゃのォ……自ら殺されに戻ってきたか」

 

「っ……そこをどけ赤犬! 今テメェに用はねェ!」

 

「貴様になくとも……わしにはあるんじゃい馬鹿垂れが!!」

 

 咆哮のような怒号と共にマグマの拳を繰り出す赤犬。

 頭に血が上っているエースはそれを炎で防ごうとして、しかしやはり……さっきよりも少しだけ長く防げはしたものの、貫かれる。

 

 そこでどうにか加勢が間に合って、さっきの焼き直しのように、私がその拳を剣で受け止め……マルコが横から赤犬の腕を蹴飛ばしてはじいた。

 

 鬱陶しい、と言わんばかりに不愉快そうに顔をしかめる赤犬だったが、何かに気づいたように……エースや私達の斜め後ろを見る。

 

 嫌な予感がして私も横目でそっちを見ると……っっ!!

 

「……ルフィ!?」

 

 またこっちに走ってこようとしていたらしいルフィが、しかし……ふっとその場に倒れこむ姿が視界に入り……エースが動揺して声を上げた。

 

 なんかいかにも突然、ふっと力がぬけたような……糸の切れた人形、あるいは、ろうそくの炎が消える瞬間を思わせる感じの倒れ方だった。

 意識はない。受け身すら取れずに、べしゃっとその場に顔から崩れ落ちて、そのまま動かなくなる。

 

 とうとう限界にきたか……当たり前だ、インペルダウンからこっち、ずっと『テンション』で体を騙して戦い続けてきたんだから……ここまで持っただけでも奇跡だよ。

 

 そんでそのルフィめがけて赤犬がマグマの拳をっ……!!

 

「っ……ぐおぁあぁああぁぁっ!!」

 

 その間にエースが体を割り込ませ、ありったけの炎を放出してマグマを防ぎ……それでも防ぎきれずにその身を少し焼かれながらも、ルフィを守り切った。

 

 危ない! 今のホント危なかった!

 

 とっさに横から私、覇気全開で『獅子・千切谷』かましていくらかマグマ散らして勢いそいだんだけど……ちょっとでもタイミング遅れてたら、原作みたいなことになってたかもしれん。

 ああもう、ホント脊髄反射で弟守ろうとするんだからこの兄は……!!

 

「悟飯じゃなくてクリリンかばって死にそうになるなこの劣化ピッコロさんが!」

 

「あぁ!? ピッ……何だって!? 誰だそれ!? ご飯? 腹減ってんのか?」

 

「うっさい聞き流せ! 必死すぎて私ももうなんか上手く頭働いてないんだよ!」

 

 ごめん。でももうなんか今考えながらしゃべってる余裕ないのマジで!

 

「意味わかんねえぞ!? ……俺は腹減ったよ!」

 

「あっそう! 私もだよ! この戦い終わったら絶対チーズケーキ死ぬほど食べるんだ畜生!」

 

 もうなんか思い浮かんだことが勝手に全部口から出る。余裕ない。

 

 なんてことを考えてると、後ろから、

 

「エースさん! ルフィ君!」

 

「っ……ジンベエ、俺は大丈夫だ! それよりもルフィを頼む!」

 

「麦ちゃん! 麦ちゃん!! だ、大丈夫なのう!?」

 

「大丈夫じゃなっシブルに決まってんでしょうが! 麦わらボーイの体はとっくに限界を超えてたんだよ!? それを『テンション』で騙してここまで来て……これ以上は本当に命がないよ!!」

 

「一刻も早く治療を受けさせなくては……っ!?」

 

 と、今ちょうど赤犬に吹っ飛ばされた私が、そこに転がって落ちてきたせいで……イナズマの言葉を遮る形になってしまった。

 ああもう……ホントに強すぎ……!!

 

「っ……こんの……! イワさん、ちょっと!」

 

「あ!? 何、文豪ガール!?」

 

「急いでるとこごめん……私にも『テンション』お願い!」

 

「! ……もういちいち覚悟なんか聞きゃしナブルよ……行ってこい!!」

 

 ドスッ、と脇腹のあたりに、何本もの針が突き刺さる感触。

 衝撃はあったし、刺さってる異物感もあるんだけど……不思議と痛みはない。

 

 そして、数秒置いて……面白いくらいに全身の疲れが吹き飛び、力が湧き上がってくる。頭もさえわたってスッキリして、疲労と苦痛で思考にかかっていたノイズがさっぱり取れた。

 これは……すごいな。普通に『奇跡』だわ。

 

 まあ後で確定でひどい反動その他が待ってるそうだけど、そんなもん気にしても仕方ない……今この怪物から逃れられなきゃ、後も何もあったもんじゃないんだから。

 

「わしが『逃がさん』言うたからにゃァ……生きることは諦めんかい馬鹿垂れ共が!!」

 

 みたび飛んでくる、巨大なマグマの拳。

 しかも、私たち全員巻き込むためだろう、上空から打ち下ろすような形で、隕石のごとく落下して来るそれを……

 

 

「“黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう)”!!」

 

 

 一瞬で作り出した明王の剣に『翡翠の炎』をまとわせ、横なぎに切り払う。

 消耗を防ぐために、作り出して形を保たせたのは一瞬だけ。それに剣しか保護しなかったので、飛び散った火山弾で明王そのものはすぐ燃えちゃったけど……その間に後ろの方でルフィは逃がせたし、むしろ後ろにいる皆の盾になったのでよしとする。

 

 防ぎきれずに飛び散ったマグマは、“花剣のビスタ”をはじめとした他の隊長や仲間達が防いでくれていた。

 よく見たら、ブルーメも銃撃で撃ち落としたり、ビューティもそのへんの瓦礫を振り回して打ち払ったりしてくれてた。

 

 細かいのは……突然発生した砂嵐がまとめて吹き飛ばしてた。砂ワニさんナイス!!

 

(しかし……砂嵐、か……そういえば今……! そうだ、コレ……利用できるかも!?)

 

 その時、あることに気づいてふと思いついたことがあったんだけど……ひとまずそれは後回しにして、赤犬に向き直る。

 相変わらず殺意全開の怒髪天でマグマの拳を叩きつけてくるけど……

 

「…………!」

 

それ(・・)に、私は気づけた。

 

「……ん……!?」

 

 どうやら、マルコも気づいたみたい。

 エースは……気づいてないな。まだ頭に血が上ってるか。

 

 けど……間違いないな。

 赤犬……動きが悪くなってる。

 

 肥大化させたマグマの収束が悪い。

 狙いも甘い。

 熱……温度も、心なしか低い。

 

 もっとも、どれも『気のせいかな?』って思っちゃうレベルの、誤差程度のもんだけど……それでも、意識して見てみると、確かにそれは起こっている。

 

「……っ……!?」

 

 現に、赤犬自身も……上手く戦えていないことに気づき始めたみたい。

 怒りでわかりづらいけど……わずかに表情に困惑が混じった。

 

 つまり……

 

 

 

(ようやく効き始めたか……さっき食らわせた、マゼラン特製の猛毒が……!)

 

 

 

 今から数時間前……インペルダウンで、私がマゼランと戦った時。

 

 私は、そこら中に大量にまき散らされたマゼランの毒を、『エニグマ』で回収して大量にストックしておいた。

 『毒竜(ヒドラ)』の毒液も、石をも溶かす溶解液も、『毒の巨兵(ベノムデーモン)』の侵食する毒も……片っ端から全種類。

 

 この頂上戦争で……赤犬との戦いに利用するために。

 

 マゼランもそうだけど……私より明らかに格上だとか、正面から相手してもやばい相手に対して……馬鹿正直にぶつかっても勝率なんてお察しだ。

 使えるものは全部使って、打てる手はいくらでも打たなきゃ。

 

 どっかの誰かも、『海賊の戦いに卑怯なんて言葉はない』って言ってたし……その海賊と戦ってるんだから、赤犬にだって文句は言わせない。

 ……あの人も毒針使ってたなそういや。

 

 さっき、最初に赤犬と刃を交えた時に……効かないとわかりつつ紙吹雪を飛ばしたり、覇気で傷つけた傷口に殺到させたりしてたんだけど……それらにその毒を混ぜていた。

 

 もちろんどれも、次の瞬間にはマグマの熱で焼き尽くされてしまっていた。

 

 しかしそのわずかな隙間を狙って、少しずつ、少しずつ毒を傷口から体の中に入り込ませて……あるいは、気化したそれを吸わせ続けていた。

 こっちには来ないように、適宜背中の翼で風を起こして払いながら。

 

 その毒も、大半は熱で消毒かなんかされちゃったかもしれないし、ぶっちゃけ効果あるかどうかもイチかバチかだったんだけど……どうやら、賭けには勝てたみたいだ。

 

 逃げるな、逃がさない、って言ったのはあんただ……だったら……ぶっ倒して食い破るしかないよねえ……?

 

「何を、した……小娘……!?」

 

「さあ……何だろね……!」

 

 さぁ……ここからが本当の大一番だ……!

 

 

 

 とはいえ、これでも正直、赤犬に勝てるかっていうと……そこはちょっと微妙と言わざるを得ないんだよな……。

 そのくらいに、『海軍大将』という存在は強大そのものだし、そして『マグマグの実』の能力も、攻守ともに凶悪な力を発揮するそれだ。

 

 ぶっちゃけ私じゃあ……何より能力の相性も悪いし、覇気を組み合わせた上でもなお、決定打になるには弱いと見てる。

 

 しかし、私にないなら……他を頼ればいい。

 

 ……さっきは『さっさと逃げろ』とか言っといてなんだけど……そこまで戦いたいって言うなら……手、貸してもらおうじゃないか。

 

 

 

「……エース」

 

「……?」

 

「ちょっと耳……あと手も貸して。考えがある」

 

 

 

 

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