何でかって? まあ、それは本編で……
第180話、どうぞ。
「“火山爆発”!!」
赤犬が地面に手を叩きつけ、その衝撃と高熱で爆発が起こり……周囲にマグマが飛び散る。
周りにいる者に無差別に襲い掛かるマグマの雨を、主にマルコと私が払う。
マルコは再生する肉体を生かして翼で打ち払い、私は覇気と『翡翠の炎』をまとった剣を振るってひたすら斬る。
そのまま踏み込んで、その踏み込みの勢いも載せて……一直線に剣を突き出す。
「“
突きの衝撃波が弾丸のように前方に発射される。
マグマの爆発を打ち抜いて赤犬の胸に突き刺さり、そこを大きく吹き飛ばすものの……衝撃波にまで覇気は乗っていない、あるいはほとんど乗らなかったため、痛打にはならない。
せいぜい、ちょっと体勢を崩させるくらい。
むしろ今のでさらにイラついたらしい赤犬が、マグマの地面を踏みしめながら勢いよくこちらに飛び込んできて、赤熱した腕で薙ぎ払ってくる。
それを私が剣で防ぐ間に、青い炎をまとったマルコの蹴りが横から赤犬の頭に突き刺さる。
またここでも大きく削られるが……すぐにマグマがうごめいて頭が再生し、ギロリとマルコをにらみつけていた。
しかし、それを追撃する前に私の剣がマグマの拳を叩き落し、
さらに、後ろから……
「“神火・不知火”!!」
エースが放った炎の槍が2本。
それぞれ胸と肩口に突き刺さって燃え上がる。
「どいつもこいつも、鬱陶しいのォ……!! そんな攻撃……無駄じゃというのがわからんか……!!」
言いながら、両腕からマグマをあふれ出させ……勢いよく上空に噴出する。
その予備動作を見た時点で、私は勢いよく飛び上がって……大量に紙を出して周囲に収束させ始めた。
上空高く打ち上げられた無数の火山弾が、周囲にいる者達を――それこそ海兵すら巻き込みかねない広範囲で――無差別に焼き殺すために降り注いでくる。
「“流星火山”!!」
「“獅子・
落ちてきたらやばそうなのを秒で見切ると、私はそれらに向かって何発もの紙の獅子を放つ。
紙自体は高熱ですぐに燃え尽きてしまうけど、その前に作った竜巻、ないし空気の砲弾は消えない。そのままマグマの塊にぶつかって粉砕し、軌道を変えて降り注がせる。
撃ち漏らしたものや細かな破片は、イワさんやクロコダイルが吹き飛ばしてくれた。
そのまま急降下し……マグマの巨大な手でつかみかかってくるのを避けながら、赤犬の背後に回り込んで……
しかし、振り向きざまに殴ってくるのを読んで、さらに上に宙返りするように逃れて……目いっぱい覇気を込めた剣を突き立てる。
……手ごたえあり! 『
「ぬぅうぅぁあ!!」
傷口が広がるのも構わず、無理やり振り向いて腕を振りぬいてくる赤犬。
また間一髪急上昇して避けて……けどまた急降下!
追撃で振りかざされるもう片方の腕をあえて斬りつけて叩き落し、そのまま飛びながら……守りをがら空きにした状態で連続攻撃!!
「“
「ぬぐぅゥう……っ!!」
ひと呼吸のうちに5発10発と叩き込まれる斬撃。
その内のいくつかは確かに赤犬の“実体”を捕らえ、傷を作り、血を噴き出させる。
反撃が飛んでくる前にその場を飛びのいて離れ……というか射線を開けて……
「“神火・不知火”……“槍衾”!!」
さっきと同じ炎の槍が何本も飛んできてぐさぐさ刺さり、赤犬の前面が燃えるハリネズミ状態に……なったと同時に後ろからマルコの飛び蹴り。
「“鳳凰印”!!」
つんのめってマグマの地面に顔から倒れる赤犬。
同時に槍が全部、爆炎を噴き上げて爆発。
ダメージは大したことなさそうだけど……何から何まで邪魔されて思い通りにいかなくて、これでもかってくらいにいらだっているのがよくわかる。
頭の血管がブチブチ言ってそうなすごい憤怒の形相。……そのまま脳出血あたりでぽっくり逝ってくれてもいいのよ?
まあ無理だろうけど……と思いつつ剣を構えなおしたところで、赤犬は……その怒りをそのまま勢いに変えたかのような大量のマグマを出し、周囲にあふれさせる。
それを何とそのまま津波のようにこっちに押し出し、すさまじい勢いで殺到させる。自分はその中を泳ぐようにして一緒にこっちに突っ込んでくる。
「全員まとめて……骨も残さん!! “大溶岩流”!!」
しかし、そのすぐ後ろで、
「“
クロコダイルが手のひらを地面に押し付け、周囲一帯をすさまじい勢いで砂地に変えていた。
地面よりも柔らかい砂地になってしまったことで、大質量のマグマがかえって足をひっぱる。
進むよりも早く沈んでいってしまい、大量のマグマもろとも赤犬は地面に沈んで埋まりそうになり……しかし、さらに大量のマグマを勢いよく噴き出すことで、砂地を強引に脱出した。
その勢いのまま空中まで飛び出し、マグマを噴出する勢いで飛行する離れ業まで見せつける……が、あまりに隙だらけ。
「“
「っっ……おんどれァあぁあぁっ!!」
再び作り出した巨人。
その刃に炎をまとわせ、横向きに振りぬく。
ただし、剣の振り方じゃなくて……ホームランする振り方で振った。
『カキーン!』という小気味いい音じゃなく、『ドグォッ!!』という鈍い音だったけど、勢いよく吹っ飛んで……はいまだ終わらないよ! ちょうどいい位置に飛んで行ってくれたな!
今のホームランの衝撃で、体を包んでいるマグマの大半が吹っ飛んで、生身が露呈している赤犬。
その、真下の地面を突き破って……
「出て来ぉい! “
ずっと地下に忍ばせておいた、巨大な金色の、芋虫と地蔵を悪魔合体させたようなグロテスクな生き物(いや生き物じゃないけど)が出現。
赤犬だけじゃなく、周りにいた皆がぎょっとする中……『金色疋殺地蔵』が大きく口を開いて、ばくんっ、と赤犬を飲み込んだ。
しかし、1秒経つか立たないかくらいでその全身から炎が吹き上がり……焼き尽くされてしまう。
しかし、中から出てきた赤犬は……さっきまでよりも相当苦しそうに顔をゆがめていた。
そのまま、着地に失敗して肩口から落下する。
(よーしよしよし……相当量くらったな、毒……!)
おっと、毒煙に巻き込まれないように退避退避。
今の『金色疋殺地蔵』は……マゼランの毒を溜め込んだ紙で体を形作った『式神』だ。
その全身が毒であり……触れた部分が即座に『紙』から『毒』に戻るようになってる。マゼランの『毒竜』と同じようなもんだと思えばいい。
赤犬を飲み込んだ今の瞬間、体内の赤犬めがけて、全方位から毒をあふれ出させた上に圧縮して殺到させた。
一瞬で蒸発させられてしまったものの、その『一瞬』で相当量の毒液をくらったはずだ。
いくつもある傷口から入り込み、肌からもしみこみ、さらに今、荒く息をついている……その呼吸からも、気化した毒煙が吸い込まれて体内を侵食していく。
しかも、体のあちこちが赤黒いのは、あれ……内出血とかじゃなくて、『毒の巨兵』の毒だな。
マゼランが倒れたことで、感染する能力は失われたみたいなんだけど……同じ被毒者の体内であれば普通に広がるみたいだ。
……ちなみにホントはこいつ、さっきエース逃がすときに既に展開済みだった。地下に。
隙を見て今みたいに食いつかせて毒漬けにしてやろうと思ってたんだけど、出番ないまま今に至ってたんだよね。
『剃刀吹雪』として、体の一部をちまちま毒の紙吹雪に変えて飛ばすだけにとどまってた。
それでも一応解除しないでおいてよかった。
この毒は対赤犬の秘密兵器だし、燃えた後の毒煙が周囲の海賊達に害を及ぼすといけないから、流れ弾とかで燃やされないように乱戦では使えなかったんだよね。
さて……赤犬だが、さすがに苦しそうだな。
複数種類の毒を食らって――原作通りなら、解毒不可能――痛いし苦しいし痺れるしで大変だろうに……まだまだ戦意が衰える様子がないのは、さすがとしか言えない。
何十年もこの海で、凶悪な海賊達を相手に戦い、海軍大将にまで上り詰めただけはある。
掲げる『徹底的な正義』も、さぞかし重い、譲れないものなんだろう。
けど……その礎になってやるわけには、いかない。
最早素早くマグマを出すこともできないくらいに、体が言うことを聞かなくなっている赤犬めがけて……一気に距離を詰める。
剣に『翡翠の炎』と、こめられるだけの『覇気』をこめて、真正面から突貫。
当然それを認めた赤犬は、手をマグマの塊に変えて拳を握り、迎え撃とうとしてくるけど……
(……もう、怖くない! ……フラグとかじゃなく!)
そのまま突っ込んで……私の顔面目掛けて放たれる拳を、横一線に振りぬいた刃で大きく弾く。
追加で繰り出そうとしたもう片方の腕も、出される前に弾いて落とす。
前ががら空きになった上、攻撃の勢いを殺しきれずに赤犬は体勢を崩した。
次の攻撃をよけきれないと悟ったんだろう。全身からマグマを噴出して身を守ろうとする。通常なら、近づくこともできない、攻防一体の無敵の鎧だけど……
「一刀流・秘剣―――」
溢れんばかりの量の『翡翠の炎』をまとい、剣自体が一回り大きくなってすら見える『七星剣』。
振るう軌道が、翡翠色の星空に七条の流星が輝いて見えるそれを握りしめ……一気に行く!
「“
煌めく翠色の軌跡を残して逆袈裟に一太刀。
赤犬の身を守っていた、マグマの鎧を全て吹き飛ばしながら深く切り裂く。
そこから一瞬の間も置かずに切り返して……さらに、刃にまた炎と……ありったけの覇気をまとわせる。
炎の翡翠色をも押しのけて、赤い光が辺りを照らし――あれ? 赤? 黒じゃなくて? ……まあいいや――バリバリと空気が悲鳴を上げるように鳴る。
その状態で放った袈裟懸けの二の太刀は、深紅の軌道を残して振りぬかれる。
一太刀目の軌道がまだはっきりと残って見える中、2つ合わさってちょうど『×』の字を描いて……赤犬の体を深々と斬り裂いた。
☆☆☆
Side.三人称
誰の目にも、『クリーンヒット』と言っていいように見えた一撃――あるいは二撃――だった。
マグマの能力でもって、あらゆる攻撃を受け付けず、海賊という海賊をことごとく焼き滅ぼしてきた、海軍大将“赤犬”。
時に何よりも頼もしく、時には味方からすら恐れられる男が……今、その身に深々と剣の一撃を受け……鮮血を噴き出した。
海兵はもちろん、海賊達すらその光景を信じ切れないような顔で見る中……胸から腹にかけて、『×』の字の大きな傷を受けた赤犬は、そのまま背中から倒れ―――
―――ザッ!!
倒れ、なかった。
すんでのところで踏みとどまり、強靭な肉体と不屈の意思のみでその大傷と激痛に耐え……体勢を持ち直す。
そして、それだけで人を殺せるのではないかと思えるほどに、恐ろしく鋭い、そして怒気のこもった目を向け……スゥを、そしてその後ろの海賊達をにらみつける。
こちらも、火傷を含め大小傷を負っているとはいえ、まだまだ余裕があるはずのスゥや……攻撃が届きえないほどに距離がある、マルコやビスタ達ですら、気圧されるほどの迫力。
『覇気』も何も関係ない……彼が『赤犬』であるがゆえの気迫。ただそれだけが、ここまで大きく……重い。
それを受けた者達は、彼が『海軍大将』である所以を、突き付けられた気分になった。
「フゥー……ゥウウゥゥウ……!!」
傷跡を焼きつぶすかのような勢いでマグマが噴き出す。
体がマグマに覆われ、体そのものもマグマに変わる。
呼気の代わりに、口から黒煙が噴き出る。
全身に赤熱と黒煙が広がり、まるでその姿は、火口の底から湧いて出た、地獄の悪魔のようなそれになっていた。
もう言葉はいらないと言わんばかりに、眼光のみを向けて1歩、また1歩とスゥに、海賊達に迫っていく赤犬。一歩歩くごとに地面が焼けて溶けていく。
(……でも、まあ……ここまでは想定内……!)
一番手前でその気迫を受けているスゥは、しかし……冷や汗を流しつつも、怯まず、下がらず……にやりと笑って見せた。
そして、
「そろそろ、用意できたか……エース!!」
「ああ……任せろ!! “大炎戒”!!」
その瞬間、エースの体からすさまじい勢いで炎があふれ出した。
この戦いの間中……スゥが時間を稼ぐ間、ずっと体の中で燃え上がらせ、温度と勢いを高め続けていた炎を……エースは全て一気に放出して、頭上に集めて収束させ……巨大な火球を形作る。
それはまるで太陽のように、掲げる右手の先に浮遊し、輝く。
「“炎帝”……!!」
それを確認したスゥは、翼を生やしてその場から飛び退り……エースの後ろにまで下がった。
「……自分では殺しきれないと踏んで、とどめの一撃は“火拳”に任せる腹か……!? 浅はかじゃのォ……多少火力を上げたところで、わしの『マグマ』はその程度の炎では揺らぎもせんと、まだわからんか!!」
「見くびるなよ、赤犬……そのくらい俺にだってわかる。さんざっぱら焼かれちまったからな……あァ、そうだろうな……このままじゃ……俺1人の力じゃ、お前を焼くのは無理だ」
だが、と言いながらエースが横に視線を向ける。
その先で、スゥがばっと手を上に振り上げると……
赤犬の視界の端で……戦場の片隅で、何かが動いた。
「…………?」
距離がかなりある上に、『それ』はひどく小さく見えづらかったが……どうやら動いたのは、鳥のようだった。
しかも、ただの鳥ではない。紙でできた……おそらくは、スゥが作ったのであろう『式紙』だ。
その鳥は……戦場のどこかで引火したのか、その身を炎に焼かれている状態で飛んでいた。
すると次の瞬間、炎をまとった鳥は、一直線に飛んで、エースの方に……いや、エースが掲げる火球めがけて飛び込んでいった。
当然ながら、紙の鳥は、飛び込んだ瞬間に燃え尽きて灰になり……
しかし、その身にまとっていた炎は……その火球を形作る炎に溶け込んで、ほんのわずか、火の勢いを増す助けになったように見えた。
「…………?」
何がしたかったのか、と首をかしげる赤犬。
しかし、その視界の端で、また何かが動く。
『何か』は、また鳥だった。紙でできた、火が付いた鳥。
その、燃える鳥が……
「……何……!?」
戦場全体から一斉に飛び上がり……その身にまとった炎で、空を埋め尽くし、オレンジ色に照らさんばかりに飛翔した。
赤犬はもちろん、海兵達も、海賊達も……マルコやクロコダイル、イワンコフ達も唖然としてみる前で……その全てが、エースの持つ火球めがけて殺到する。
次々に飛び込んで……その身を燃料にし、纏った炎を火球に溶け込ませ、火の勢いに変える。
1羽、10羽、100羽、1000羽、
1万羽、10万羽、100万羽、1000万羽……
スゥが戦いながら戦場にばらまいていた、数えることなど不可能な数の鳥が、炎が……エースの炎に合流し、力になる。
まるで、戦場全体から流星群がひとところに降り注いでいるような……あるいは、橙色の銀河が広がっているような……幻想的にすら見える光景が広がった。
その中心に、まさしく太陽のごとく君臨するエースの『炎帝』。
どんどん炎の勢いを増して巨大化していくそれを、エースがたちまち片手では支えきれなくなったのか……両手を使って掲げるようにし、さらに炎をコントロールして圧縮していく。
それでもなお、圧縮し密度を増してもなお、大きくなるペースの方が圧倒的に早い。
さらに、炎はその色を変える。温度が上がるに伴って、徐々に変化していく。
オレンジから黄色へ、白へ、さらに水色や青を経て……
ついには……色と呼べるようなものですらない、強烈な“光”そのものというレベルの輝きにまで至る。大きさももはや、海軍の軍艦を丸ごと飲み込んで余りあるほど。
放たれるすさまじい熱気は、離れた場所にいる海賊達が肌に痛みを覚え、放つ光は直視するのが難しいほどになっていた。
ここに至って、戦場全ての視線がその巨大な光球に集中する。
元帥センゴクも、他の2人の大将も、英雄ガープを含んだ中将達も、
“黒ひげ”ティーチと、その仲間達も。
映像電伝虫の向こうにいる、数多くの市民達も。
全ての視線が集まる中で……
「もう1度言ってやる……! 耳の穴かっぽじって……よく聞きやがれ“赤犬”……!!」
「オヤジは……“白ひげ”は……! 敗北者なんかじゃねえ……! そんな……そんな小せェ次元で、あの人は戦ってねェんだよ!!」
「1つの時代を作り、それを駆け抜け、その背中で多くを導いてきた……多くの島を、命を、未来を守り抜いた! あの人の偉大さを何も知らねェ、知ろうともしねェ奴が……その生き様を馬鹿にするようなことは……いくらオヤジが許しても……!!」
「俺が! 許さねェ!!」
「……っ……!!」
「やっちゃえ……エース!」
そしてエースは、掲げる巨大な光球を、体ごとそらして思い切り振りかぶり……
「もう二度と忘れねェように……死んでも忘れられねえように……! その魂に、焼き付けて……刻み込め!!」
「この時代の名が!!! “白ひげ”だァアァ―――!!!!」
放り投げて、放たれる。
あまりの熱に、落下する前から周囲を火の海に変えながら迫る光球を前に、赤犬は全身のマグマを膨張させ……溶岩の巨人、あるいは魔人のような、より一層怪物じみた姿にその身を変えた。
黒煙を噴出し、赤黒く輝く巨大な双腕を前に突き出し、正面から受け止める。
触れた瞬間、炎とマグマ、2つの熱がぶつかり合ってせめぎ合い……
「……っ……バカ、な……!?」
マグマの両手が、ひび割れていく。
ひび割れ、裂け、亀裂から光が漏れて出てくる。
ひび割れながら……マグマそのものの熱とは違う、それを超える熱によって……手が、腕が泡立ち始め……あろうことか形を崩し、蒸発していく。
信じられない熱が腕を伝わり、その身を焼かれる感触が……赤犬にとって、およそ初めての『熱い』という激痛がその身を貫く。
それでも折れぬ、その強靭な精神とは裏腹に、肉体が悲鳴を上げる。
「おのれ……!!」
足が崩れる。膝をつく。
腕が割れる、ひびが肩まで届く。
纏ったマグマが蒸発し、鎧がはがされ、人の肌がむき出しになり……焼けていく。
「おのれェエ……!!」
腕が弾ける。
足が砕ける。
地獄のような炎の海の中心で……支える全ての力を失い、赤犬の体が背中から倒れていき……その頭上から、“太陽”はゆっくりと堕ちていき……
「おのれェェエ!! 海賊共がァァあぁあ―――!!!!」
背中が地面に着くよりも先に……“太陽”がその身を飲み込んだ。
一拍遅れて地面に着弾し……しかし、そこで爆発したりすることもなく、ひたすらに熱と光をまき散らし続ける。頭上に輝く、本物の太陽の光すら押しのけん勢いで。
しばしの時を置いて、ふっとほどけたように球体が崩れると……その中からすさまじい炎が立ち上り……天に届くほどの火柱になって噴き上がった。
数分か、あるいはほんの数秒だったか。
あまりに現実離れした光景に、時間の感覚すら曖昧になる者がほとんどの中……ゆっくりと炎はその勢いを弱め……消えていった。
ようやく見えるようになった地上は……地獄のような光景だった。
あたり一面、ドロドロに地面が溶けて、マグマの海と化している。
“赤犬”の能力によるものではない。堕ちた“太陽”の熱がもたらした、ただの結果だ。
それは……そのマグマの海の中心で、ぴくりとも動かなくなった赤犬が横たわっていることを見ても明らかだった。
仰向けに大の字に倒れ、傷だらけの上に焼け焦げて……意識は、あるようには見えない。
どころか、まだ命が残っているかすら見てわからない有様だ。
動かないまま……徐々に足の方から、マグマの中に力なく沈んでいく。
その際、反射か何かで体が動いたのか、それとも無意識の執念が突き動かしたのか。
焼けた右腕が上に延ばされ……何かを掴もうとするかのように動き……しかし、何もつかめず虚しく空を切る。
足が、腰が、腹が、胸が、肩が……マグマに沈む。
頭も沈んで見えなくなり……上に向かって伸びた腕だけが最後に残り……
それも、肘、手首、指と続き……
最後に、指の先がマグマの中に沈んで見えなくなり……静寂だけがそこに残った。
その瞬間、
悲鳴か、あるいは歓声か、あるいは……その両方か。
皆が絶句していたがゆえの静寂の戦場に、音が戻り……ドッと響き渡った。