大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第182話 スゥと終戦

 

 

 赤犬に勝ったところまではよかったんだけど……その後、予想以上に海賊達がヒートアップしちゃって……撤退戦だったはずなのに、そのまま『てめェこら覚悟しろや海軍』とばかりに総力戦に移行しかけて……

 

 しかも、黒ひげが煽るもんだからエースまでまたプッツン行って……煽り耐性低すぎじゃなかろかこの燃焼系男子。

 

 このままマジで総力戦なんかやった日にゃ、マルコとビスタも言ってたけど、取り返しのつかないことになりかねない。

 

 けどもう言葉じゃ到底止まらないところまで、戦場全体があっという間にヒートアップしてしまって……けど無理矢理にでも止めないとホントにやばいことになりそうで。

 やむなく私は、最後にして最悪の手段で強引に戦争を終わらせなきゃならないか……と、覚悟を決めた……その時、コビーが咆哮。

 ああ、この展開すっかり忘れてた……そこまで頭もう回んなかったよ。

 

 原作と違って、エースが生きてたり赤犬がリタイアしてたり、色々状況に差はあるものの……おおよそ同じ感じで『もう戦うのやめましょうよ!』『命がもっだいだいっ!』って、涙ながらに訴える(誤字にあらず)。

 

 原作では、赤犬に粛清されそうになってたけど、この世界ではどうなんだろ、と思って見てたら……そのコビーにつかつかと歩み寄ってくる大柄な海兵が1人。

 

 ―――ガスッ!

 

「ぁがぁっ!?」

 

「甘っちょろいことを言うな! ここまで海賊を調子づかせておいて戦闘をやめるなど、海軍に恥をかけというのか貴様!?」

 

 そう言い放ち、隻眼の海兵……ドーベルマン中将が、コビーを叱責しながら殴り倒した。

 

 赤犬と同じように海軍内ではタカ派というか過激派に入るらしい彼からすると、コビーの決死の叫びも軟弱な弱音にしか聞こえなかったみたいだ。

 その剣幕たるや、その場で粛清でもしかねないくらいのそれだったけど……それと同時に歩み出てきた黄猿がそれをやんわりと止める。

 

 しかし、コビーの言うことを聞き入れるとかでもなければ、彼を助け起こすとかでもない。

 その横をすたすたと歩いて通り過ぎながら、すれ違いざまに、這いつくばってるコビーに声だけかけていた。

 

「お前さんたしか、ガープ中将が面倒見てる子だったねぇ? うんうん、聞いてた通りに優しくていい子だねぇ~。でも今はそんなことを言ってられないから……戦えないなら下がってなよォ」

 

 そんでそのまま黄猿、結局こっちに向けてビーム発射スタンバイしてくる。

 それに続こうという感じで、ドーベルマン中将以下の海兵達もそれぞれ武器を構えて、いつでも総攻撃に移れるように。

 

 やっぱり衝突はこのまま不可避だろうか、と私達は身構えることになったんだが……

 

 その、さらに直後のことだった。

 

 

 ―――ザンッッ!!

 

 

 すさまじい音がして……広場に一条の亀裂が入った。

 ちょうど、私達と黄猿を分断するかのような位置に、ざっくりと。

 

 そして……ついに、彼が登場。

 

 

 

「この戦争を……終わらせに来た!」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 四皇“赤髪のシャンクス”の登場に……さすがに戦っていた海賊達も海兵達も、動きを止めてその動向を見守るしかなかった。

 自然そのまま、彼の話を聞く形になる。

 

 それによって周囲を包んでいた殺気やら何やらも(多少)収まっていくのを感じて、私も……なるべく態度には出さないままで、ほっとしていた。

 

 よかった……過程はどうあれ、止まってくれた……助かった。最悪の手段を使わないで済んだ。

 

 ……ただちょっとびっくりしたのは……これも原作とは違ってた点なんだけど……

 

 原作では、『何もするな、黄猿』って言って、黄猿の眉間に銃を突き付けてた、副船長ベン・ベックマンが……

 

「何もするな。クロコダイル」

 

 になってたことと……もう1つ。

 

 

「おっと、お前さんもだぜ……“海賊文豪”」

 

 

(…………え、私も?)

 

 ウソップパパことヤソップが、私の眉間に銃を突き付けていたことなんですが。

 

 いや、なんでこんないきなり……ああ、そうか。『コレ』に気づかれて警戒されたんだな……。

 万が一にも実行させないように、抑えにかかったわけだ。それなら納得できる。

 

 きょとんとしていた私に、特に悪意的なものがないのを悟られたのか、ヤソップさんはにやりと笑って、

 

「大人しくそのまま待ってな、お嬢ちゃん。なァに、心配しなくても、うちのお頭に任せときゃ……悪いようにはならねえからよ」

 

 とのことだったので、お嬢ちゃん(34)、その言うとおりにすることにした。

 

 うん、それなら全然いいよ。

 しつこいようだけど……この『最後の手段』は……使わないに越したことはないものだから、さ。

 

 

 ☆☆☆

 

 

Side.三人称

 

「これ以上の戦いは、いたずらに双方の被害を拡大させるばかりだ……。双方、ここまでにして……もう手を引け」

 

 シャンクスの言葉は、そんな1つの提案から始まった。

 

「海軍にとっては……この戦争で白ひげが死んだことは、大きな意味があったはずだ。ポートガス・D・エースの処刑こそかなわなかったとはいえ、これは1つの決着だと言える。……これ以上を求めれば、いかに海賊王の息子とはいえ……それに見合わない悲劇が起こる」

 

 要するに、『白ひげの首は取ったのだからそれで満足して、エースとその他の海賊はもう見逃せ』という提案ないし要請だった。

 

 当然、徹底抗戦を唱えるドーベルマン中将をはじめとした過激派の将校達は反発し、このまま終わらせれば海軍の面子やら何やらにかかわってくると判断した黄猿なども難色を示す。

 

 が、シャンクスが視線を向けた先にいる、海軍の総大将……センゴク元帥は、それを聞かされて……苦虫を10匹くらいまとめて嚙み潰したような顔をしていた。

 

「こういう言い方は少し卑怯かもしれないが……センゴク元帥」

 

「!」

 

「あんたなら……俺が今、言っていることの『意味』がわかるだろう……?」

 

「……っ……ああ、そうだな……」

 

 

 ☆☆☆

 

 

「……『火災旋風』? 何じゃいそりゃあ?」

 

「あんまり大きな声で言うんじゃないよ、ガープ」

 

 そのセンゴク元帥から少し離れたところにいるガープ中将と、その同期であり“大参謀”の名で知られるおつる中将が、何やら小声で話していた。

 

 周囲の者達……特に、血の気の多い海賊達に聞かれないように、音量に注意して説明する。

 

「『火災旋風』ってのは……文字通りと言えばいいかね、炎を伴ったつむじ風だよ。それも、能力で引き起こす類のものじゃなく……れっきとした自然現象であり、災害さ」

 

 現代日本においても発生のメカニズムが完全に解明されているわけではないのだが、市街地等における広範囲・大規模の火災などの際に確認される災害だ。

 今のおつるの言葉通り、『炎を伴ったつむじ風』が発生し……さらにこれが、燃焼に必要な大量の酸素を求めて、酸素のある方へ、酸素のある方へと動いていくため……結果的に被害地を満遍なく焼き尽くすような災害になる。

 そういう場所には、えてして避難民が集まっていることが多いのもその一因であろう。

 

 また、空気が乾燥していて火が大きくなりやすい、自然発火が起こりやすいなどの条件がそろっている場合、当然その被害はさらに大きくなる。

 

 ……ちょうど、今のこのマリンフォードのような状況だ。

 度重なる『マグマ』や『炎』、それに『砂嵐』……そして今のエースの超大技『炎帝』によって、空気が熱され、海浜の町とは思えないほどに乾燥した空気状態。

 しかも、戦いの中でこもった熱により、あちこちで自然発火が発生するほど。

 

 それでも、燃えるものがなければそうそう大きな火災など起こらず、火災旋風が起こる危険も小さいのだが……この戦場には、その燃料を即座に、大量に、広範囲にばらまくことができる能力者が1人いる。

 言わずもがな……スゥである。

 

 『パサパサの実』の能力者で、紙を操る能力を持ち……しかも『覚醒』しているとなれば、地面を変化させて大量の紙を……すなわち、『可燃物』を一気に用意できる。

 それらをマリンフォード全体にばらまかれ、引火し、火災に発展するようなことにでもなれば……その被害は想像を絶するものになるだろう。

 

「……具体的には?」

 

「甘く見積もっても、マリンフォードの8割が火の海に沈むことになる。もちろん、この戦場だけじゃなくて……市街地やら何やらまで全部含んだうちの『8割』だね。しかも、自然発火が起こるほどに高温かつ乾燥している状況だ……消火も簡単じゃあない。消したそばからあっちこっちで火の手が上がるだろう……それこそ、マリンフォード全体を水浸しにでもしないとね」

 

「そんな芸当は……白ひげでもなけりゃあ無理じゃな。あるいは。クザンの冷気では?」

 

「可能だとは思うよ? マリンフォードごと、建物も兵士も全部氷漬けにすればだけどね……その場合、焼死者じゃなく凍死者が増えるだけだろうさ。何せ、避難してる時間すらないんだから」

 

「……奴ら、これを狙っとったのか」

 

「いや……それにしては動きに雑なところが多かった。おそらくだけど、こういう状況になったのは偶然だよ。……ただ、それに気づいて利用しようとはしていたようだ」

 

 それを聞いてガープは、センゴクが苦い顔をして返答に窮している理由を理解した。

 

 現状は色々な意味で最悪だ。

 

 今言ったように、もう一歩間違えれば『火災旋風』を起こされかねない状況。可燃物を町全体にばらまかれれば……マリンフォードは煉獄と化す。

 多くの海兵が炎に巻かれて命を落とし、またマリンフォードそのものも壊滅必至の状態に陥るだろう。家々は焼け落ち、物資は失われ、今既に半壊の様相を呈している海軍本部の要塞も、完全に文字通り焼け落ちて崩れ去るだろう。

 

 それに対処しようとすれば、戦場に出ている海兵の総力が必要になり――それでも足りないかもしれないが――その隙に結局、海賊達は逃げおおせる。

 

 かといって海賊達への攻撃を続ければ、今述べた悲劇が避けられないものとして襲い掛かる。それでは、下手をすれば海軍本部自体が再起不能レベルのダメージを負ってしまう。

 施設その他の焼失に加えて、兵員の喪失。しかも今ここにいる兵士たちは、本部だけでなく各地の支部などから集めた精兵達も混じっているのだ。それが大勢失われるとなれば、この海の平和を守る海軍そのものが機能不全に陥りかねない。

 

 そのどちらの悲劇も避けるためには、“赤髪”の言う通り、ここで刃を収めるしかない。

 

 しかしそれもまた、簡単な決断ではない。

 何せ、今のこの現状のまま戦争を終わらせ、海賊達を逃がす、ということを意味している。

 

 白ひげは死んだ。海賊側にも被害は甚大だ。

 

 しかし、エースは……『海賊王の息子』は生きている。『金獅子の娘』もだ。

 

 先程、潜水艦で駆け付けた救援によって、『ドラゴンの息子』もおそらくは逃げおおせた。海を凍らせて捕らえようとした青キジや、海中に潜航した潜水艦を撃ち抜こうとした黄猿の攻撃も、隊長達や“海賊文豪”によって防がれてしまったからだ。

 

 しかもこちらは、最大戦力の一角である『大将赤犬』を討ち取られた。しかも、敵方の重要人物である、エースとスゥ……『海賊王の息子』と『金獅子の娘』の2人の手で。

 この事実は決して小さくはない。

 

 ……もっとも、その赤犬も、今すぐに救助すれば助けられるかもしれない、という利点も、この提案にはあるにはあるのだが……。

 

 そして、白ひげとて、海兵が討ち取ったわけではない。横槍を入れる形で乱入してきた、黒ひげ達によってかっさらわれたのだ。

 

 さらにはその黒ひげは、どうやったのか白ひげの『グラグラの実』の能力を奪い、『地震』の力の脅威がまだ終わっていないことを示して見せた。

 

 とどめに、ここまでの全ては……『混線』した電伝虫によって世間に配信されてしまっている。

 

 今ここで終われば、白ひげの死という『功績』を上回る、海軍の失態の数々をそのままにして……挽回の機会を失うことを良しとすることになる。

 黄猿やドーベルマン中将らが懸念しているのは、それもあるだろう。

 

 今よりも何倍もの多くの兵を死なせ、未来を捨てマリンフォードを滅ぼしてでも名誉を守るか。

 名誉を捨てて、兵士達とマリンフォード、そして未来を守るか。

 センゴク元帥が迫られているのは、究極の二者択一だった。

 

 

 ……そして、もう1つ。

 

 

 ふと、何かに気づいたセンゴク元帥が上を見上げると……愕然とした表情になる。

 何かと思った多くの海兵達や海賊達が、同じように空を見上げると……そこには、信じられない光景が広がっていた。

 

 センゴクだけでなく、おつるも、ガープも、青キジも黄猿も、

 エースも、マルコも、ハンコックら『七武海』達も、黒ひげも、

 

 そして……スゥも、

 

「……な、何だあれは!?」

 

「……おいおい、これは……」

 

 

 

「……っ……イカれとる……!」

 

「こんな真似ができる奴を……わしゃ一人しか知らん……!」

 

 

 

 そこには……10隻を超える海軍船が、ふわふわと空中に浮かんでいる光景があった。

 ちょうど、マリンフォードの直上。何もない空中にだ。

 

 ガープが呟いて言ったように、こんなことができる男は……この世に1人しかいない。

 

 

 

「これは……警告だ」

 

 

 

「……来ていたか、金獅子……!」

 

 

 

(あー……パパかぁ)

 

 

 

「ありゃあ、万が一に備えて付近を哨戒させていた船じゃな。途中から連絡が取れなくなったとは聞いていたが……」

 

「あの男……娘の送り迎えにでも来たのかねえ……」

 

 その男自身は、姿を現さない。

 

 しかし、その男の合図1つ、意思1つで、あれらの船がすぐさま『能力』による支えをなくし、落下して来るだろうことは、最早想像に難くない。

 

 その内部に積まれているのであろう、火薬や砲弾といった、大量の可燃物……そして、船に乗っているであろう大勢の海兵達もろともに。

 

「……全員この場は、俺の顔を立ててもらおう。それと白ひげの弔いは、俺達に任せてもらう……戦いの様子は世間に配信されていたんだ、これ以上、彼の死をさらすような真似はさせない!」

 

 センゴク元帥は……決断を迫られた。

 

「……全兵に通達を。戦闘行為を……直ちに停止せよと」

 

「元帥殿!? しかし、それは……」

 

 驚いたように聞き返すドーベルマン中将。しかし、センゴク元帥の言葉は変わらない。

 

「全責任は私が取る。これ以上の継続は不可能だ……戦いは、ここまでだ……!」

 

 そう、はっきりと言って、目線をシャンクスに送るセンゴク。

 それを受けて、シャンクスも『すまん』と、こくりとうなずいた。

 

 同時に上を向いて、

 

「戦争は終わった! これ以上の破壊も、犠牲も、必要ない!」

 

 そう声を張る。

 

 それに応えるように……浮かんでいる軍艦が降りて来る。

 ただし、自由落下ではなく……ゆっくりと、海面に着水する形でだ。船は破損することなく無事で、乗っていた海兵達も助かったようだった。

 

 答えは聞いた、とでも言わんばかりに、ゆっくりと……見せつけるように。

 

それを見届けて……センゴク元帥は、声を張った。

 

「負傷者の救助を急げ! 戦争は……終わりだァ!!」

 

 

 

 

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