大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第183話 スゥと激励と決意表明

 

 

「終わった、のか……?」

 

 誰かが、そう呟いたのが聞こえた。

 

 聞こえてきた方向からして、海賊陣営の誰かだとは思うけど。

 

「ああ……終わったんだ、これで……」

 

「赤髪が、仲裁に入ってくれたか……」

 

「け、けどよ……本当にこれでいいのか!? オヤジの仇を……ティーチだってまだ!」

 

 ほっとしてるような声も聞こえてくる反面、納得いってないような声も聞こえてくる。

 血の気の多い、今までの戦いにも俄然乗り気だったメンバーは……“四皇”による介入とはいえ、強引に『手を引け』って言われたことが面白くないみたい。

 

 海軍を、黒ひげを倒して、白ひげの仇を討つんだって。

 

 見える範囲にも、ちらほらとそんな風に思ってそうな人がいるな……。

 ……すぐそこにいる、この燃焼系男子も含めて。

 

 でも『じゃあ赤髪と戦うのか?』って言われたら否だろうし、それがさっきみたいに燃え広がっていく様子はないのは救いだな。

 

「……っ……!」

 

 それでもまだ、何か言いたそうにしてるし、手も出したそうにしてる人もいる。

 何度も言うが、すぐそこに。

 

「エース……ここまでだ。手を引けよい」

 

「ほら、もう終わりだよ。ひっこめなってその炎」

 

「マルコ……スゥ……!? っ、だが……俺は……オヤジの……!」

 

「これ以上はさすがにきつい。それに、喧嘩を売ってきた海軍や、恩知らずのティーチはともかく……仲裁に入ってくれた『赤髪』まで敵に回すのは仁義じゃねえだろうよい」

 

「疲労だって溜まってるだろうし、あんだけ大規模に能力を使ったんだから、体力も相当削れたはず。それに、インペルダウンに閉じ込められてて……あそこほら、食事も満足に出ない上に、色々きついじゃん。そこからもうすでに色々くたびれてるまんまでしょ。……もう無理だよ」

 

「でも!! それじゃあ……オヤジは……こんな……こんな形で……!!」

 

 それ以上続かないらしいエース。

 

 ……彼にしてみれば、敬愛する白ひげを失ったのに加えて……自身がこの戦いの引き金の1つになってしまったっていう負い目もあるんだろう。

 それを思い返せば、なんとしても白ひげの仇を討ちたい、少しでも取り返したい……そんな風に思っちゃう部分もあるのかも。

 

 今のこの……エースの、悲しそうで悔しそうな顔を見てると、そんな風に思えてくる。

 

 マルコも、他の隊長達も……それがわかってるから、そしてその気持ちもわかるからだろう。何も言えないでいるみたい。

 

 ……仕方ない、ちょっとだけ口出すか。

 部外者がわかったようなことを言うな、って文句言われないことを祈りつつ……

 

「エース。わかったような口利いちゃうのは承知で言うけど……」

 

「……?」

 

「白ひげの名前とかそのへんはもう、今気にしても仕方ないよ」

 

「……!? おい、それは……どういう意味だ?」

 

 ……ちょっと違う風に受け取られてしまったのか、やや剣呑な雰囲気になるエース。

 周囲からも、今の私の声が聞こえて……怒ったり、責めるような視線をいくつか感じる。マルコとかビスタは、それよりも困惑の方が強そうだけど。

 

 ちょっとびびるけど、我慢我慢……ちゃんと言わなきゃ。

 

「……一緒に戦ったんだ。そうは思わねえし思いたくねえが……オヤジのことを軽く言ったり、バカにしてるわけじゃないだろう……?」

 

「もちろん。……というか、仮に私にどんな意図があったとしても……私ごときが口で何か言ったところで、何が変わるわけでもないし」

 

「…………?」

 

「白ひげの名前とか、偉大さとか、誇りってのは、さ……彼のことをよくわかってもいないような他人にあーだこーだ言われた程度で、どうにかなっちゃうものなの?」

 

 私……というか、赤犬や、その他大勢の海兵だってそうだ。

 

 彼がどう生きて来たのか、何を大事にしてきたのか……そんなもの、全然知らない。せいぜい、世間で伝え聞いていることのひとかけらくらいしか。

 それだって、海軍や世界政府がだいぶゆがめて伝えるもんだから……ホントにごくごく一部しか正確には知れていないんだろうと思う。

 

 彼と一緒に旅をして、一緒に笑い、一緒に戦い、一緒に過ごしてきた……エース達と違って。

 

「言わせときゃいいんだよ……向こうは、そんな風に言ったり、情報を歪めて伝えることくらいしかできないでいるんだから。何を言われたところで、あんた達の知っている大海賊・白ひげの何かが変わるわけでもない。世界中の人が知っている、白ひげっていう男の何かが……それだけで変わってしまうわけじゃない。皆、それはわかってるはずだよ」

 

 白ひげを敵としか見ていなかった海軍ならむしろ、悪く言うのは当たり前だ。もともとそういう関係なんだから……気にしても仕方ないとすら言えるかもしれない。

 

 それよりも……彼ら『息子』達はもちろんのこと、今まで白ひげに守られてきて……その背中の大きさを、偉大さをよく知っている人達は、理解してるはずだ。

 白ひげは、そんな小さな男じゃない。尊敬に値する、偉大な男だってことを。

 

 そりゃまあ、大切な人をバカにされたら誰だって腹は立つだろうし、それに怒るのも何も間違いじゃない。

 白ひげを慕う彼らにとって、それは絶対に我慢できないことのはずだ。

 

 けど、それでも……白ひげならそのくらい、『好きに言わせとけ』って笑い飛ばしそうな気がするし……それよりも大切な、譲れないものを守ろうとするだろう。

 

「少なくとも、今のこの場で何かをどうこうして、白ひげの名誉がどうにかなることなんてない……良くも悪くもね。この場であんた達ができることは、もう全部やったはずだ。……だったら、名の次は……その意思と、何より……宝物を守らなきゃ」

 

「意思と……宝物……」

 

 それを聞いて、エースはもちろん……海賊達が次々に、はっとしたような顔になる。

 様子を見るに、きちんと意味は分かったみたいだ。

 

 よかった……これで『宝物?』とかきょとんとされて意味が分かってなかった日にゃ、でっかい鏡でも持ってきて目の前にドンと置いてやらなきゃいけないかと思ってたとこだ。

 『ほら、ここにあるだろ』って。

 

「それができるのは、あんた達しかもういないんだよ。あんた達が背を向けたら、白ひげは本当に何も残せなかったことになってしまう。1人で死ぬことになってしまう。あんた達だけが、白ひげが本当に守りたかったもの、大事にしていたものを理解していて……それをこれからも守っていくことができるんだから」

 

「……っ……」

 

「しゃきっとしろ! エース! いや、白ひげ海賊団! あんた達は……白ひげの何だ!?」

 

 

「……っ……それは……」

 

「そうだ、俺達は……俺達が……オヤジの……!」

 

「オヤジの、仲間で……『宝物』で……!」

 

 

 

「「「家族だ!!」」」

 

 

 

 皆の声が、そう、そろった。

 もちろん……エースも含めて、ね。

 

「わかってんじゃん。なら、私みたいな部外者がもう何も言う必要なんてないよね?」

 

 それを聞いて思わず、にっこり私も笑ってしまった。

 

 エースの後ろの方で、マルコやビスタもほっとしたような表情になってた。

 

 

「それがわかってるなら……何を迷う必要もないし、誰に何を恥じることもない」

 

「鬼の子だろうが何の子だろうが関係ない。白ひげが言って示してくれたはずだ」

 

「それでも足りないなら、あんた自身がこれから生きて示せばいい。あんたの行く道を……そして、白ひげが守り抜いた、彼の意思を。世界に、そして親父さんにね。その背中のマークと一緒に」

 

「誰の血が流れていようが、誰と血がつながっていようがいまいが関係ない。誰が何と言おうと、あんたはポートガス・D・エース以外の何者でもない。それ以外ではありえない。ゴール・D・ロジャーも何も関係ない、あんた自身の、あんた達の生き様を見せてやれ!」

 

「胸を張って生きろ!」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 吹っ切れてスッキリしたような、それでいて強く何かを決意したようなエースの表情を見れば……もう何も心配いらなそうだな、ってのはわかる。

 うん、もう大丈夫だ。

 

「さて……ごめんね赤髪さん、なんか出しゃばっちゃって」

 

「いや……むしろいいもんが見れた。ありがとうよ……文豪のお嬢ちゃん」

 

 ニヤリと笑ってそんなことを言われると……いや、さすがに恐縮する。

 さっきまで、私自身も結構勢いに任せて言ってた部分もあるので……へ、変なこと何か言ってなかったよね?

 

 なんか途中で、センゴク元帥が『貴様っ……!』みたいな顔になってた気がしたけど、気のせいだよね!? 私、何かやっちゃいました!?

 

 と、とりあえずその後は、順調に後片付けに進んでいった。

 

 互いに要救助者を回収しつつ、海賊達は撤退の準備を進め、海軍は被害状況を把握していく。軍艦に乗ってどこかに出かけていく者達もいくらかいたみたい。

 その際、当然のように双方が近くに寄っていく場面もあって、恨みや怒りのこもった視線のやり取りをしてた感じだったけど……乱闘には発展しなかったのでよかったです。

 

 エースたちはどうやら、このまま傘下の海賊団達の船で帰るみたい。

 ……そういえば、湾内での戦いで、白ひげ海賊団の船、全部沈むか壊れるかしちゃったもんね。5隻目の船も、オーズが無理やり揚陸艦にしちゃったからボロボロで、海に浮かべられる状態じゃないみたいだし。

 

 あ、ちなみにそのオーズもきちんと生きてて、斬られた足と一緒に回収されてったよ。

 

 それから、ハンコックが軍艦を一隻ジャックして、ルフィの追撃……という名の救助に向かっていくのが確認できました。ここは原作通りだな。

 あとそのルフィ、私色々ごたごたしてて確認できてなかったけど、無事逃げられたみたいでよかった。……赤犬も黄猿も私達の方に来てたもんな(乾いた笑い)。

 

 さて、そうなると私達はどうやって帰ろうかな……と思っていたまさにその時。

 

 空から船がもう1隻降ってきた。

 落下じゃなくて、ちゃんとゆっくり……破損もしないような適度なスピードで降りて来て、湾岸にざぶん、と着水。

 

 無人のようだけど……そのマストには、『金獅子』の海賊旗が描かれている。

 

 ……ああ、迎えありがとパパ。これに乗って戻って来いってことね。

 

 そして、小船とかじゃなくて大型船をよこしたのは……

 

「姐さん! あたし達……あんたについていきます!」

 

「俺達もだ、金獅子海賊団に……伝説の海賊の船に乗れるなら、こんな光栄なことはねえ!」

 

「どうか、連れていってください!」

 

 これを予想してたからか?

 

 なんか……原作では割とバギー一択だった囚人達のその後の就職先に、私んとこも追加されちゃったみたいなんだよね。

 というか、行きの軍艦の中からもうそうだったんだけど……バギーじゃなくて私に心酔してる人が結構多くて。

 

 多分だけど、マゼラン倒したから……かな? あとは、金獅子のネームバリューもあるかも。

 

 それに加えて……

 

「2人とも……ホントにそれでいいの?」

 

「ええ……元々行く当ても特にない身ですし。さすがにこの先も独力でやっていくのは、限界を感じていたところだったので……ちょうどいいと思ったのです」

 

「あたいはまあ、後で残してきたガキ共を迎えに行きたいけど、当てがないのは同じだし……このままお別れってのも寂しいしさ。せっかく仲良くなったんだ……よろしくしてもらえれば嬉しい」

 

 ブルーメとビューティも、一緒に来てくれるって。

 私としても、もうなんか戦友的な感じがある2人なので、一緒に行けるのは普通に嬉しいし……頼もしい。

 

 散々な目にあったインペルダウンだったけど、いい出会いもあったし……ま、結果オーライってことにしておこうかな。

 

 そのまま、私についてくることを希望した囚人達(男女どっちも居る)と、ブルーメとビューティ、それに、娘達3人とメイド隊全員や、元・BW組も全員乗せて、じゃあそろそろ行くか……ってなったところで。

 

「待ってくれ……スゥ」

 

 最後に私が乗り込む直前になって、エースから声をかけられた。

 

 いや、エースからというか……なんか、白ひげ海賊団の主だったメンバーの皆さんそこにそろってて……え、何?

 

 特に何か意図があるわけでもなさそうだけど……それでも、面子が面子なので、圧がすごい。ごめん、ちょっと怖い。

 

 あの……帰らないの?

 

「帰る前に……これだけは言わせてくれ。あんたのおかげで……俺達は、大事なものを見失わずにすんだ。親父が残してくれたもの……これから俺達が、守っていくべきものを……失わずに、この手にとりもどすことができた」

 

 そして、妙にぴしっと体側に手を揃えて、腰を90度に曲げて、

 

「ありがとうございました!」

 

「「「ありがとうございました!!」」」

 

 皆さん総出でそんな!?

 エースみたいにきちっと『礼』してる人もいれば、足を肩幅に体育会系的に『押忍!』って感じになってる人、軽く会釈程度の人もいるけど……何にしても白ひげ海賊団の皆さん揃ってそんな……圧がすごい(2回目)。

 

 きょとんとしている私に向けてさらに、

 

「その上で言わせてくれ……あんたにだけじゃない。これを見ている全ての奴らにだ」

 

「…………?」

 

「俺達は今回……大切なものを失った。この傷が……どれだけ時間をおけば癒えてくれるのかも、今はまだわからねえ。失ったものがあまりにも、大きすぎて……想像がつかねえ」

 

 けど、と続ける。

 

「俺達は終わらねえ……いつか必ず立ち上がる。どれだけ時間がかかっても、どれだけ苦しい思いをしても……絶対にまた立ち直って、やり直して……もう一度この旗を、世界で一番偉大な旗にしてみせる! オヤジは確かに、この戦いで……守り抜いて、遺したものがあったんだと……絶対に、俺達の手で証明してみせる! 俺達は……」

 

 

 

「“白ひげ海賊団”は!! 終わらねえ!!」

 

 

 

 ―――ウオオォォォオオォオ―――ッ!!!!

 

 

 

 さっきまでの『なんとなく』の圧の印象が吹き飛ぶような……そんな、彼らの強い意志が、決意が……伝わってきた。

 

 距離も何も関係ない、皆がそれを感じていた。

 

 離れたところにいる海兵なんかは、気圧されたり、恐ろしいものを見るような目、あるいは、忌々しいものを見るような目になったりしていた。

 ひょっとしたら、『こいつらをここで逃がしていいのか……!?』って思ってるのかもね。

 

 まあ……せっかく海軍との戦いが終わったとこだってのに、堂々と『これからも気合入れて海賊やるぜ!』って宣言したようなもんだからな……。ほとんど宣戦布告だよ。

 

 そのへんのことを思い至ってだろうな、シャンクスも『全くこいつら……』みたいな表情になりつつも……心から嬉しそうに笑っていた。

 

「そっか……楽しみにしてるよ。まあ、別な旗掲げといてなんだけどね」

 

 私も、そんな風に苦笑しつつも。きちんとにっこり笑顔で返して……船に乗った。

 

 ほどなくして、船が上昇していき……地上が、人が、建物が、船が……どんどん小さくなっていく。

 女囚達が『本当に飛んでる!』ってわいわい騒いでいる中で……私は、『頂上戦争』の舞台だったマリンフォードに、そして、ともに戦った戦友達に別れを告げた。

 

 

 

 ……そして、そのあとすぐに、

 

 雲の上あたりまで上がったところで……ふいに、船首のあたりに、ガチャン、というような音と共に……あぁ、来た来た。

 

「まったく、手間かけさせやがって……随分楽しそうに大暴れしてたじゃねえかよ、バカ娘」

 

「何言ってんのさ……マジで大変だったんだから。あー、おなか減ったし眠い……さっさと食べて寝て休みたいよ。報告とかいろいろ後でいい?」

 

「へいへい、わーったよ。まあアレだ……全員無事で帰れて何よりだ。色々とお土産も持ってきてくれたみてえだしな。んじゃまあ、とりあえず言っとくか……」

 

 そう言ってパパは、『き、金獅子……』『本物だ……!』っておののいている囚人達を楽しそうに見回した後、にやりと笑って私を見下ろし。

 

 

 

「おかえり!」

 

「ん! ただいま!」

 

 

 

 頂上戦争編、完ッ!!

 

 

 

 





都合によりしばしお休みいただきます。
次回の更新は……月曜日か火曜日になるかも。

あと、頂上戦争は終わりましたが、本章はもうちょっと続く予定です。
しばしお待ちくださいませ。
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