大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第188話 スゥ、『王下七武海』就任

 

 

Side.三人称

 

「一体これはどういうことなのですか!?」

 

 咆哮とも取れそうな声が、元帥執務室の中に響く。

 電伝虫を相手に怒号を飛ばすのは、海軍本部元帥・仏のセンゴクその人である。

 

 そして、電話の相手は……自らの上司にあたる者達だった。

 

 世界政府最高権力……『五老星』である。

 

 上下関係も忘れたとばかりに怒鳴り声をあげて問い詰めるその理由は、今朝がた報じられたある『人事』が原因だった。

 

 “海賊文豪”と“千両道化”の2人の、『七武海』加盟。

 現時点の海軍トップの自分ですら、完全に寝耳に水の決定だった。

 

 誤報かと思い問い合わせれば、ただ海軍に周知していなかっただけで、事実だという。

 

 すなわち、自分達に何の相談もなく、政府が……それも一部が独断で協議・検討を進め、自分達の頭を飛び越えて全ての手続き等を進め、決定したことだったのだ。

 

『どうもこうも、新聞で発表のあった通りだ。現在、『王下七武海』は7つのうち3つが空席となっている……早急にその空席を埋め、三大勢力の均衡を取り戻すために動かねばならん。そのために日々協議を重ねていたが……それによって導き出した結論がこれ、というだけの話だ』

 

「海軍本部に何の通達もなくですか……!」

 

『決定権を持っているのは我々『世界政府』なのだ。通逹が遅れたせいで驚かせてしまったことはすまんと思うが、特段問題があるわけではあるまい』

 

 いけしゃあしゃあと……と、センゴクは奥歯を噛みしめてギリリと鳴らす。

 

 確かに、『七武海』の任命権を持っているのは政府である。

 しかし、その選定等に全く海軍が関わる機会がないかと言われれば、それも否なのだ。

 

 現に以前、クロコダイルが七武海から陥落した時は、その後任を決めるための協議を行ったこともあった。

 

 加えて、今回の『頂上戦争』のように、『七武海』と『海軍本部』は協力して動く場面も多々あるため、誰がその座に就くという事項は、決して他人事ではないのである。

 決定権こそなくとも、事前に情報の1つももらえないというのは到底納得できることではなかった。

 

『可能な限り迅速に事を進める必要があったのだ。『七武海』に要求される条件は満たしているのだ……何も問題はあるまい』

 

 嘘だ、とセンゴクは、口には出さず、心の中で断言した。

 

 いや、嘘を言っているわけではないのだろうが……正確に事実を全て述べているというわけでもないはずだ。

 

 確かに、条件を満たしてはいる。

 

 片や、元・ロジャー海賊団の一員であり、『四皇』赤髪の兄弟分であるという話題性。脱獄したインペルダウンの囚人達をまとめ上げる統率力。

 

 片や、共闘してとはいえ、大将赤犬を倒し、インペルダウンで署長マゼランを倒すほどの武力に加え、大海賊“金獅子”の娘であり、何より“海賊文豪”という名の持つ、世間への影響力。

 

 これだけの2名が『七武海』として、自分達の味方に付くというのなら、頼もしいのは事実だ。

 

 しかし……どちらも今回の『頂上戦争』で大暴れした海賊であり……特に“海賊文豪”の方は、大将赤犬の打倒をはじめとして、自分達に大打撃を与えた……いわば仇敵。

 加えて、そのバックにいるのは“金獅子”である。その世代を知る者なら誰でも知っている……策略家で名の通った男だ。

 

 それが突然味方になるなどと言われても、現場の混乱は果てしなく大きいだろう。

 

 もし、事前にこちらに通達があってその事実を周知していれば……反対意見も多く上がったはずだ。当然、世界政府に対してそういったものを打診することになっただろう。

 

(それを知って故意に我々への通達を出さなかった……恐らくは、“金獅子”と“海賊文豪”が敵に回る事態を何としても避けるために手を打ったな……! 少なくとも『七武海』という形で立場を与えてしまえば、最悪でも革命軍やその系列と協力することは避けられる、と……だが……)

 

 それでは問題を先送りにしただけ。

 

 たしかに、直ちに“海賊文豪”の影響力が敵対組織にわたり、政府に牙をむくようになる事態は避けられたが……引き換えに、政府も海軍も手を出せないという『立場』を与えてしまった。

 それを利用するのは……彼女本人だけではないはずだ。

 

 政府としては、その間にこちらも手はずを整えて『革命軍』その他の危険な組織を排除してしまえばいいと考えたのだろう。

 

 “海賊文豪”は、それ単独であれば、そしてむやみやたらと手を出さなければ、危険度は小さい。

 自分から政府や海軍に敵対しようとする意思はほぼなく、むしろ民衆にも広く受け入れられているという、稀有な海賊だ。

 危険なのは、敵対してしまった場合、あるいは、その『影響力』が政府にとって有害な組織にわたってしまった場合である。

 

 それならば、飴を与えて飼いならし、最悪でも『敵対しない』状態を保っておけば問題ない……と考えてのことだろう……が……

 

(シキが黙っているはずがない! 下手をすれば、こちらの想定を明後日の方向に大きく超える何かをやらかしかねん……それこそ、“海賊文豪”を隠れ蓑に、時間をかけて準備をして……! いやもしかすると、この事態さえ奴の思惑通りという可能性も……)

 

 しかしそうは言っても、これは決まってしまったこと。

 世間に大きく知れ渡り、件の2名もそれを認めてしまっている。最早撤回はできない。

 

『後日、詳細な内容の突き詰めを行うゆえ、マリージョアに出頭するように。以上だ』

 

 それだけ言って切れてしまった電伝虫を、しばらく睨みつけていたセンゴク。

 電伝虫自身が『いや睨まれても自分メッセージ伝えただけなんで困るんですけど』とでも言いたそうな顔で冷や汗を流し始めた頃になって……大人しくそれを机の中にしまった。

 

 調子を整えて気分を落ち着ける意味で、大きくため息をつく。

 

 すると直後に、こんこん、とドアがノックされた。

 センゴクはそれを聞いて、そういえば呼んでいたのだった、と思い出し、ノックの主が誰かを察し……『入れ』と返事をする。

 

 ドアを開けて入ってきたのは、予想通りの人物だった。

 

「失礼します……センゴクさん。お呼びですか」

 

「ああ。少し、話があってな……まあ、座れ、青キジ。……いや、クザン」

 

「…………!」

 

 入ってきたのは、海軍大将・青キジ。

 わざわざ自分の名前が呼び直されたことに、何か意図を感じ取り……眉をひそめながら、青キジは言われた通り、センゴクと対面する形でソファに座って、話を聞く姿勢に入った。

 

「……それで、話ってのは?」

 

「ああ……もったいつけても仕方ないからな、単刀直入に言う。……クザン……」

 

 

 

「……お前に、次の『海軍元帥』になってもらいたい」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 私が政府に『王下七武海』加盟を了承する返事を出してから、数日後。

 

 本拠地『メルヴィユ』……に来るのは無理なので『金獅子海賊団』の縄張りの一つである島に、私は海軍の使者を招いていた。

 『七武海』加盟の手続きのためである。簡単なものだけど、色々書類のやり取りなんかが必要だそうで。

 

 一大イベントだってことで、モルガンズ(本人)をはじめとした報道陣も数多く押しかけて取材しまくっている。規制とかはかなり緩くしてあるので、地方ローカル誌の記者とかまで含めて大勢来ているようだ。

 さっきからカメラの音も鳴りっぱなしだし、さぞかし盛大に触れ回ってくれることだろう。

 

 そして、約束の時間。

 海軍の軍艦に乗ってその場にやってきたのは……普通の兵卒を除けば……大物2名。

 

(……ええ……この人選、嫌がらせか何か?)

 

「久しぶりだな……随分と、強くなったようだ」

 

「やれやれ……こんな形でまた顔を合わせることになるとはねえ」

 

 元海軍大将・黒腕のゼファー。

 海軍本部中将・“桃兎”ギオン。

 

 片や、私の命の恩人……片や、私をインペルダウンに護送した1人……。

 どんな顔して出迎えればいいか困ったんですけど!?

 

 ギオンさんの方は……なんだか気まずそうな、『やれやれ』って感じの表情になっているのに対して……ゼファーさんの表情が、ええと……か、感情、読めないんだが……?

 

 無理やり表現するなら……何か悟ったような……?

 ええと……諦観、失意、同情、期待、闘志、自責……いろんな感情、色んな意思がごちゃごちゃになってて混ざっちゃってるみたいな感じが伝わってくる……こ、言葉にできない! 作家として情けないけど、ホントにコレどういう感情だ!?

 

 自分が助けた命が海賊になっちゃって、ここまでの大悪党に成長しちゃったことに責任感じつつ……それも冤罪が元だから同情して……でもあれだけ暴れて自分の仲間の海兵達を傷つけたことは許せないっていう怒りや失望……!?

 

 な、何か言ってくださるとせめて……

 

 しかし、ゼファーさんは最初の一言の後黙ってしまい、代わりにかどうかはわかんないけど、ギオンさんがさらさらと喋っていく。

 

「とりあえず、簡単に説明させてもらうよ。ほら、こいつが『敵船拿捕許可状』……あんたが『七武海』であることの証明であると同時に、海賊行為が黙認される免罪符だ。無くすんじゃないよ」

 

「あっはい」

 

 ギオンさんから、なんか豪華な装丁に入った……大学の卒業証書みたいな書面を受け取る。

 

 報道陣にちらっと開いて向けると、皆大喜びで写真を取り出した。

 ……まあ、こんな風にサービスしてくれる七武海なんていないだろうし、そもそも取材の機会さえないかもしれないもんね……わざわざ拠点に招いてくれる海賊とかいないから。そりゃ撮るか。

 

 え、何モルガンズ……ギオン中将と一緒に? ああ、手渡ししてる瞬間が欲しいと。

 って言ってますけど……ああ、だめ? 面倒? はい。

 だってさモルガンズ、諦めな。

 

「あんたが、およびあんたの部下達が行う海賊行為は、世界政府加盟国に対するもの、および海軍や世界政府に対して害のある形で行われるものでない限りは『合法』となる。対価として、収益の一部を定期的に世界政府に納めてもらう。その他、細かい要望・条件なんかがある場合は、別個に相談のうえ設定することができる……まあ全部が全部通るわけじゃないがね」

 

「なるほど……懸賞金の撤回や、部下への恩赦の波及については?」

 

「あんたの首にかかっている10億ベリーちょっとについては撤回。部下達についても、明確にあんたの部下であるとされた者については撤回、あるいは撤回されずとも追われることはなくなる……ってとこかね。その辺については、政府および海軍と協議の上決定されることになる」

 

「そういう相談の時に、世界政府や海軍と連絡を取る時は、窓口はどこにすれば?」

 

「基本的に特別回線の電伝虫を使ってもらうことになる。それについては別な書類に書いてある。それも渡すから、後で確認しとくれ」

 

 『他に質問は?』と続けて聞かれたけども、一通り聞きたいことは聞けたので……ひとまずはいいかな。

 特にない旨を伝えると……それまでずっと黙っていたゼファーさんが、ゆっくりと口を開いた。

 

「……1つ、いいか」

 

「! ……はい」

 

「……ここで言うわけにはいかないが、君の来歴は知っている。おそらくはこれまで、様々なことがあって今の立場にまで来た……来てしまったのだろうということもだ。自分から親を選べるわけでもないしな。だが、それでも俺達は海軍であり、君が海賊である以上、その関係が変わることは……ないだろう」

 

「……そうですね」

 

「今回の君の『王下七武海』加盟によって、その力が罪なき者に向けられることがなくなり、仮初であっても同じ方向を向けたことは喜ばしく思う。……どうか君は、あの時もらった手紙の通りに……道を誤らないまま進んでほしいと、そう願う。海兵としてではなく……1人の人間としてな」

 

「……肝に銘じます。ギオンさんも含めて……どうぞこれからよろしくお願いします」

 

 そう言って、軽くだけど頭を下げる。

 

 我が強くて高飛車な連中が多い『七武海』において、ポーズだけでもこんな風に丁寧にする人はいないだろうから、報道陣の中にも驚いている人が多くいたみたいだ。

 というか、ギオンさんも驚いてたし。さすがに、軽くとはいえ頭まで下げるとは思わなかったのかな?

 

 それに、海賊達にとっての『抑止力』となることを求められる『王下七武海』が……あんまり海軍に対して腰を低くするのもよくないことなんだろうし。

 元々『政府の狗』扱いされることも多くて嫌われる立場だからね。舐められちゃそのへんの意義に差し障るから……ある程度はわがままで傲慢なくらいがちょうどいい、ってことなのかな。

 

 ……っていうか……海軍に対して協力的過ぎても、非協力的過ぎても困るって……コレやっぱりだいぶ海軍とか政府に対して付き合いづらい、扱いづらい味方(仮)だよね……。

 大海賊時代の『抑止力』として、必要に迫られて作ったんだろうが、制度設計そのもののミスをひしひしと感じる。……悪用もされまくってるしね、色んな所で。

 

 まあでも、こうすることが……ゼファーさんに対しての誠意だと思ったからな。

 今でも感謝も尊敬もしてる人なのは変わらない。頭をきちんと下げて、よろしくお願いします、って伝えたかったのだ。

 

 

 ……それに……だ。

 

 

(これからやることを考えると……このポーズも、決して悪手でも何でもないんだよね)

 

 口には出さずにそんなことを思っていると……

 

「ああ……俺も、そうあれればいいと思う。願わくば、この先の…………っ!?」

 

 そこまで言って何かに気づき、突如、言葉を切って……気迫というか、もう殺気と呼べそうなそれを膨れ上がらせるゼファーさん。

 それにギオンさんはぎょっとしてたけど、直後にその理由に彼女も気づいて……腰にさしている刀に手をやった。抜きはしないものの、いつでも抜けるように手を添えて警戒し構える。

 

 その2人の視線は、上の方に向けられていて、その先には……

 

「ジハハハハ……そう殺気立つんじゃねえよ、ゼファー。別にてめえらと戦りに来たわけじゃねえんだからよ。そっちはギオンか? 久しぶりに見るが……相変わらずの年齢詐欺だなおい」

 

「……ウン十年ぶりに会って言うことがそれかい……相変わらず見た目も中身もひどい男だね!」

 

「貴様……なぜここにいる? 何をしに来た……シキ!」

 

「なぜってお前……いちゃ悪いかよ? せっかくの娘の晴れ舞台だ……この目できちんと見たくもなるってもんだろう?」

 

 そんなことを言いながら、空からふわりと降りてくるパパこと……“金獅子のシキ”。

 想像以上の大物の降臨に、大喜びでそれを撮る報道陣。しかし中には、ちょっと怖くなってしり込みする者もいるみたいだ。

 なお、モルガンズは平常運転です。むしろ大喜び。言うまでもないか。

 

 まあ……私は新たに『七武海』になったけど、パパはバリバリ現役の海賊だからね。怖く思われても仕方ないだろう。

 

 目の前にいるゼファーさんとギオンさんは、いつでも戦闘に移れるように油断なく構えている。

 同時に、パパがこの場に姿を見せた理由を推し量っているようだけど……特に何か思いついたわけじゃなさそうだ。警戒するにとどまっている。

 

 大丈夫です、すぐに明らかになるから。

 ……いや、内容は全く大丈夫じゃないかもだけど。

 

 ……さて、演技演技。

 いかにも『あれ、聞いてないよ?』的なきょとん顔を作って……と。

 

「……どしたの、パパ?」

 

「おう、ちっと悪ィなスゥ。重ねて言うぜ、警戒はしなくていい。てめえらと戦ったり、敵対するために来たわけじゃねえからな……ちと、この場を借りて伝えることがあったってだけだ」

 

 私の頭をぽんぽんと叩きながら、パパがゼファーさんとギオンさんに話す。

 

 なお、皆さん私の『パパ』呼びに驚愕している様子もあったが……まあさておき。

 

「……伝えること、だと? 俺達にか」

 

「お前達っつーよりは……『海軍』と『政府』そのものに。あるいは……世間に、だな」

 

 そう言ってにやりと笑うと、不思議そうにしている2人に向かって……

 

 あるいは、今言った通り……それ以外の、報道陣まで含めた全員に向けて、パパは言い放つ。

 

「さて、突然で悪ィが―――」

 

 

 

「―――俺ァ……引退することにした」

 

 

 

「「「……!?!?」」」

 

 驚愕。

 

 ゼファーさんとギオンさんも。

 その後ろに控えていた、他の海兵達も。

 報道陣の皆さんも。

 

 一様に絶句し……今のパパの爆弾発言を、理解するのに苦労している様子だった。

 

 私も(演技だけど)、ぎょっとしてすごい勢いでぎゅるん!と首を回して振り向き……パパの顔を見上げる。目を見開いて、表情も作る。

 声は出さずに『え、聞いてないよ!?』と仕草だけで見ている人に届ける……!

 

 すぐ振り向くんじゃなく、一旦フリーズした感じで『え?』で目を見開いて、その後首ぐるん!で『聞いてないよ!?』だ。

 頑張れ私! カリーナや、『グラン・テゾーロ』の劇団員の人達に指導してもらった演技を思い出して生かせ!

 

 なり切るんだ! 『本当に何も聞いていなかった自分』に! 相手だけじゃなく、自分も騙せ!

 

「いやあ、この年になると色々ガタがきちまってきつくてなあ……一線で海賊やるってのにも限界を感じてきちまってたのよ。まだまだ若々しいおめーらがうらやましいぜホント。まあ幸いと言っていいのか、こうして優秀な後継ぎも育っててくれたわけだしな?」

 

 ぽんぽんと私の頭を叩きながら言うパパ。

 

 ギオンさんがこっちを見る。目が合う。

 ふるふるふる、と首を横に振る。

 

 ギオンさんの戸惑いの視線も、ゼファーさんの咎めるような視線も一切気にせず、パパはすらすらと喋っていく。

 

 

「そういうわけで……俺は、現在就いている『金獅子海賊団』船長、及び海賊艦隊提督の座を今をもって降り、後継者として、娘であるこのベネルディ・トート・スゥを指名する。このことは既にうちの最高幹部たちを集めた会議で決定済みだ。各権限の移譲に関しては、彼らの協力の元、数日かけて引継ぎを行い、万事滞りなく実施される予定でいる」

 

「ただ、急な人事であることを勘案し、しばらくの間は何人かの『顧問』をつけて、提督としての実務を補佐あるいは代行する体制を取る予定だ。なお『顧問』には、俺が選んだ、能力があり信頼もおける部下達に加えて……俺自身も当面の間就任し、こいつを助けていくつもりでいる」

 

「ま、早ェ話が……俺もこいつの部下になるってこったな」

 

 

「……っ……シキ、貴様最初からそのつもりで……!」

 

 怒りをあらわにするゼファーさん。

 その横でギオンさんも、『やられた……』とでも言いたげな表情になっていた。

 

 私は……『あ、あはは……』『どうしていいかわかりません』な表情(演技)。

 

 そんな私達を、戸惑いながらも大喜びで撮る取材陣。

 

 これで、『七武海』である私の部下ってことで……パパこと“金獅子”を含めた『金獅子海賊団』や、その傘下の海賊団全てに対して、海軍も世界政府も手出しできなくなった。なってしまった。

 

 しかも……見るからに何もわかってなさそうな私は、せいぜいお飾りの『提督』で……その実権は引き続きパパ達が握る。

 私の名前にくっついてる『王下七武海』の肩書による特権だけを利用しながら、『金獅子海賊団』は何も変わらず運営されることになる。

 

 無論、『七武海』の権限の範疇を超えるような無法をしでかしたりすればそれも別ではあるけど……そうはならないので問題ない。

 海軍からすれば、むしろこうなってしまった以上、そうなってほしいくらいに思ってるかもしれないけど……

 

 実際海軍も、バックにパパがいる私を『七武海』に指名することを決めた時点で、ある程度パパが出しゃばってくることは想定してたと思うけど……まさかここまで全面的に『俺部下だからよろ』って言ってくるとは予想してなかったみたいだ。

 

 ルフィみたいに、血筋ではあるけどここまでズブズブじゃないと思ってたのかな? だとしたら甘いと言わざるを得ないが……

 それとも、とにかく何をおいても私という『扇動者』が敵に回ることを避けたかったか……

 あるいは、パパのプライドが、形だけでも娘の部下になることを忌避するとでも思ったか……

 

 まあ、もう考えても仕方ないことだ。そう決まっちゃったんだから。

 

 なお、この後ギオンさんには『意にそぐわない場合は、指名して『七武海』の特権の庇護対象から外すこともできるよ?』って言われた。

 つまりは『シキをその対象外にして逮捕させろ。いやむしろ逮捕しろ七武海』ってことね。

 

 でも、『びっくりはしましたけど……それでも、たった1人の肉親ですから……パパを信じます』って、これもあらかじめ用意していた返答。

 

 痛々しい、心配するような目で見られてしまった。

 こーれ、私も完全に被害者で、『シキに乗せられたんだな』って思ってるな……まあ狙い通りだが。

 

 私の大根演技なんてばれてもよさそうなもんだが……それを帳消しにするくらいにパパの悪役ムーブ(いや演技でもないんだっけコレ)が秀逸なのでカバーしてしまえてる……気がする。

 生粋の悪党って、こういう『悪であることが武器になる』場面でも有用な才能なんだな……あまり使う機会はなさそうだけど、珍しいこと知ったわ。

 

 さて、じゃあそういうわけで……これからよろしくね、『海軍』さんに『世界政府』さん。

 

 冤罪で指名手配したくせに、私が有名になったら、今度は私のことを都合のいいように利用しようとしてくれたこと……そのために拷問やら何やらしてくれたこと……私は忘れてないよ。

 その上今度は『王下七武海』……あくまで政府の狗になれってことね。

 

 いいよ、なってやろうじゃん。

 ただし……利用されるのはどっちかわかんないけどね……!

 

 

 

 ……まあ、私は結局深いこと考えてなくて、その『利用』する方面の計画その他を進めてるのは全部パパで……私としては、『海軍に追われなくなる』『行けなかった場所への取材ができる』っていう部分だけ喜んでるに等しい状態なんだが……

 

 ……あれ? これ……知ってた・知らなかったの部分だけ除けば、今までの演技とか別に、そこまで実情と違う感じでもない気が……?

 

 

 

 ……まあいいか、深く考えんとこ。

 

 

 

 

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