大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第189話 スゥと衝撃の人事 その3

 

 

 さて……ここ数週間、人事関係でめっちゃ色々なことがあったと思う。

 

 私達の懸賞金が更新されたり、新規に設定されたり、

 

 かと思えば、私が『王下七武海』に加盟したことで、あっという間に撤回されたり、

 

 元BWの面々や、インペルダウンの脱獄囚達(の一部)が、『金獅子海賊団』に加入したり、

 その中でも、ビューティとブルーメが私の『側近』になったり、

 

 挙句の果てに、パパが引退して私が『二代目提督』に就任したりね。

 

 しかし、そんな感じで色々あったわけだが……実はもう1つ、大きな人事が起こっていまして……

 いや、コレを人事と言っていいものかは、正直まだ微妙ではあるんだけども……

 

 その人が今まさに、目の前にいる。

 私の目の前で……地面に両手をついて頭を下げている。意地を棄てて、恥も承知で、頼みごとをするために。

 

 自分の命とも呼ぶべき()()()()を……目の前に並べて置いて。

 

 

 

「頼む……俺に剣を教えてくれ!」

 

 

 

 そう言って、床に額がつくほどに頭を下げている彼……ロロノア・ゾロの姿を……私は、果てしなく困りながら見下ろしているしかなかった。

 

 あ、ちなみにここ、アスカ島です。

 すぐそこには、戸惑っている様子のマヤさんと、ゾロの覚悟を見届けているサガがいます。

 

 ……ちょっとぉ!? くまさん!?(2回目)

 ブルックに続いて2回目だぞ、『2年間』の最中の麦わらの一味に出くわすの!

 

 この人、『鷹の目』のところに飛ばしたんじゃ……なんでここにいんのよ!?

 

 

 

 ……私に面倒見ろってのか!? 2年間! ゾロの!

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 もうちょっと時を戻して整理すると……だ。

 シャボンディ諸島の一件で、麦わらの一味はバラバラに世界各地に飛ばされてしまったわけだが……その時ゾロは、このアスカ島に飛ばされてきたんだそうだ。

 

 それを発見したのが、落下の衝撃と轟音に驚いて、様子を見に来たサガだったんだけど……なんとゾロとサガって、知り合い……というか、幼馴染だったことがここで判明。

 

 手当してしばらくした後、意識を取り戻したゾロも、目を覚ましたらサガがそこにいたことに驚いて……その後、しばし旧交を温めていた。

 

 けど、新聞で『頂上戦争』のことを知ったゾロは、ルフィの身を案じて海に出て、一刻も早くシャボンディ諸島に向かおうとした。

 この世界ではエース死んでないけど、それでも、そんなとんでもない戦いに巻き込まれた(巻き込まれに行ったというか、飛び込んだというか)ルフィのことは心配だろうしな。

 

 当然、重傷だったゾロをそのまま行かせることもできないと、サガとマヤが止めて……しかしそれを振り切って、ゾロは旅立とうとして。

 

 ……しかし、ここでも持ち前の方向音痴を遺憾なく発揮して、港までそもそもたどり着けず。

 森の中に行ったり、山の頂上に行ったり、七星剣が封印されていた遺跡に行ったりと散々に迷って……最終的になぜかサガの自宅前で力尽きて倒れているところを発見されるに至った。

 『結局帰ってきたのか?』と皆が首をかしげる中、サガ1人が事情を察して呆れていた。

 

 その後またしばらく療養中だったわけだが……今度は例の『3D2Y』のメッセージを新聞で見て……そこからゾロは、ルフィのところに行くのを突然やめて、強くなるために修行を開始。

 

 幸いと言っていいのか、実力的にも近いサガがいた上、互いに向上心は並々ならぬレベルだったこともあって、2人でしばらくは修行していた。

 けどゾロは、サガとの修行自体には手ごたえは感じつつも……このままじゃ足りない、という思いというか、漠然とした不安も同時に抱えていた。

 

 そしてそれを、一緒に訓練している身で失礼かもしれないとは思いつつ、サガに打ち明けて相談したところ……サガももっと上のステージに行くために、ある知り合いを頼れないかと思っていたところだったことが判明。

 

 ……まあ、それが私なわけで。

 

 我流の鍛錬じゃどうしても限界があるからっていう理由でね。相談受けてたんだよ。

 で、その時もう既にサガのところを訪問する予定が決まってたもんだから、アスカ島に私が来て……そしたらゾロがいるんだもん、びっくりした。

 サガもサガで、追加の連絡というか報告忘れてたから、私にまでそこの情報来てなくて……

 

 当然ゾロも、サガが言ってた『知人』が私だったことに驚いてたけど……この状況は彼にとっては渡りに船。

 

 自分で言うのもなんだけど、私は剣士としては……ぶっちゃけ相当いいところまで行ってる自信も自負もある。

 

 何せ、私に剣を叩き込んだのは……レイリーやパパだ。そのくらいの力は当然身についてる。

 その2人の顔を潰さないためにも、過剰に謙遜するつもりもなく言わせてもらうが……『新世界』でも相当な上位レベルにまで食い込んではいる、と思う。

 

 じゃなきゃ本部中将を瞬殺したり、赤犬にあそこまで食いつくこともできないと思うし。

 ……それらの戦いは能力や、『七星剣』の謎パワーもガンガン使ってたけどさ。

 

(てか……自分で自分の強さを分析するのってなんか恥ずかしいな……)

 

 とりあえず、能力なし、覇気なしで考えても、ゾロに負けないくらいには、私は強い。

 

 ゾロもそれを察して……強くなるために、私に師事するという選択をしたんだろう。

 『鷹の目』程じゃないにしても、自分よりはるか高みにいる剣士だと見込んで。

 

 ……見込まれる側としては困るんですけどね、そういうの……

 私にだって、立場とか色々あるんだけど……『七武海』とか『提督』とか。

 

 それでも、本当に必死でこうして頼み込んでくるゾロの姿を見てると……無下にする気にもなれないし……はあ、どうしたもんか。

 

(原作通り『鷹の目』に鍛えてもらった方が、絶対強くなれると思うんだけどな……まさか交流もないのに私から紹介するわけにもいかないし……)

 

 …………まあ、いっか。

 元々、サガの修行に何かしら手を貸してあげるつもりではいたわけだし……それを拡大させて、もう1人分ちょっと面倒見る感じでやれば。

 

 ただそれでも……色々きちんと設定ないし説明しておかないといけない部分はあるけどね。

 さっきちらっと言った通り……今の私には、『立場』があるから。

 

「……剣を教える云々の前にだけどさ……ゾロ、それにサガも、ちょっと確認」

 

「「?」」

 

「新聞読んだなら知ってるとは思うけど……私今、一応『金獅子海賊団』の二代目提督、っていう立場があるのね? 自分で言わせてもらうけど、『新世界』レベルでもかなり名が通ってる……伝説の海賊から受け継いだ立場であって、決して軽くない意味を持つ名前なわけで。……その私に世話になるってことは、それも本来、決して軽い意味で済むことじゃないんだけど……」

 

 とりつくろわずに言ってしまえば……『金獅子海賊団』の看板、ないし海賊旗を背負っている私の世話になるのなら、それ相応の見返りが必要だ、ということだ。

 一番ありふれた、わかりやすい例を挙げるなら……『金獅子海賊団』に入るとか、ね。

 

 私が与える力なんだから、私のために使え、という感じである。

 海賊に慈善事業なんて、そもそも期待しちゃいけないもの。当然と言えば当然の要求ではある。

 

 もっとも、この手の義理とか仁義にからむ話ってのは、私なんかよりゾロの方がよっぽど理解できてるとは思うんだけどね。

 原作で、ウソップの再加入の際に『けじめ』が必要だと主張した彼ならば……わかっていないとも思えない。

 

「けど……ゾロ、あんたはそうはしたくないんでしょ? ルフィのところを抜けたがっているようには見えないもんね」

 

「……ああ、そうだ」

 

「サガもそうだよね? 海賊になりたいっていう話は聞いてないし……そもそもこの島出るつもりもないんでしょ?」

 

「ああ」

 

「全く、2人そろってもぉ……随分都合のいいこと言ってるって自覚ある?」

 

「「…………」」

 

 ばつが悪そうな表情になってるところを見ると、きちんと自覚はあって理解もしてはいるんだよなあ……2人共。

 撤回するつもりもないようだけど。強くなりたいっていう意思は、このくらいじゃ揺れない……変わらないか。

 

 片や、この先の海を共に戦い抜いていく仲間のため。

 片や、恋人や、守るべき島の、そしてそこに住む人達のため。

 

 今のままじゃ戦い抜けない海を渡り、勝てない敵に打ち勝ち、やってくる『新時代』を戦い抜くための力を求めている。

 こまったことに、そういう若人のやる気ってやつが、私は嫌いじゃない。

 

「……まあいいや。ちょっと意地悪な言い方しちゃってごめんね。君ら2人の望みがそれなら……それでもいいよ。『金獅子海賊団』には入らなくていい。ただし、きちんと他の形で何かしらの対価は支払ってもらうからね」

 

 それを聞いてゾロは頭を上げ、ほっとしたような、嬉しそうな顔になっていた。

 サガも大体同じ。

 ……あと、物陰からこっちをうかがって心配そうにしてたマヤもだ。

 

「それと一応言っとくけど、基本君ら、表に出すわけにはいかないから、そのつもりで。サガはまあいいかもしれないけど……ゾロは思いっきり『麦わらの一味』の所属だからね。私も『七武海』って立場があるし、配下でもない海賊を公然と庇ったり鍛えてるのはまずいわけ」

 

 ゾロ自身が『金獅子』に入るわけでもなく、『麦わらの一味』そのものが『金獅子』の傘下になるわけでもないわけだからね。

 しかも、今回の『頂上戦争』や、その前の『インペルダウン脱獄』の両方で、ルフィは台風の目的な活躍を見せて、一躍海軍本部に危険視される存在になったから……そういう立場の海賊を庇うとかする行為は、流石にまずいわけよ。

 

 それを考えると、原作の『鷹の目』も結構ヤバいことやってたんだな、とは思う。

 ……まあアレの場合、単にいちいちそんなこと気にしちゃいなかったんだろうが。

 

「詳しいことはこれから決めるけど、どっかに籠るなりなんなりして鍛えることになると思うからそのつもりで。あと当たり前だけど、どこでどうやるにしても、まずその大怪我が治ってからになるからね……さっさと治しなゾロ。急がば回れ、だよ」

 

「……ああ、わかった。悪ぃサガ……もう少し、世話になる」

 

「気にしなくていいさ。お前は昔から……普段からトレーニングが過酷すぎなんだ。これからもっとキツイ鍛えられ方をすると考えれば……今くらい体を休めていてもバチは当たらないだろ」

 

 ……ああ、そうそう。一応……これも聞いとくか。

 

「ゾロ、最後に1つ」

 

「……?」

 

 

 

「“海賊王”になるのは……誰だと思う?」

 

 

 

「……!」

 

 またちょっと意地悪な質問をさせてもらった。

 ゾロはそれを聞いて、少し驚いた風な表情になったものの……その直後に、一切迷わず言った。

 

 うちの船長だ、と。

 モンキー・D・ルフィ。彼が、海賊王になる男だ、と。

 

 それに関して、特に私から何も不満はない。

 私自身は、海賊王には興味は微塵もないし……なんなら原作ファンでもある私なので、どちらかと言えば応援してるくらいだ。

 

 ……それでも、もしその夢をかなえたいと本気で思うなら……まだまだ実力は全然足りてないわけだからね。頑張らなきゃだよ。

 この先の海は……さらに腕を磨くのはもちろんのこと、『覇気』も習得しておかなきゃ、とても生き残れたもんじゃない世界だからね。

 

(……まあ、それに関しちゃ丁度、うちの娘たちを含めて……何人か、鍛えなきゃいけない子達がいたところだったし……それを考えれば、案外今回のコレ、都合よかったかもね)

 

 約束通り、ゾロの面倒は見るよ。

 けど、面倒みるのはゾロだけじゃないし、手段も色々、他と兼ね合いした上でやるよ。

 

(ちょうど今時点であれば、互いに実力も近いし……競わせて互いに刺激する、っていう意味でも丁度よかったかも。さあて……誰がどのくらい強くなるかな、ここからの2年間弱で……?)

 

 

 

 

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