大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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あとがきにてちょっと解説というか言い訳みたいなものを載せてます。
もしお時間ありましたらご一読いただければと。


第19話 スゥ14歳、花火、そして執筆

 

 迷子になった結果として(ここ強調)港町に到着すると、予想どおり市民達は混乱に陥っていた。

 

 上役の人達がどうにか落ち着かせて避難させようとしているものの、さすがに難しそうだ。避難そのものはしてくれているようだけど、混乱してて我先にって感じだし……人によっては荷物をまとめるのに手間取ってたり、体が弱くて自力では避難できない身内を抱えて動きが鈍かったり。

 中には、『生まれ育った家を離れるくらいなら死ぬ!』とか言ってる人なんかもいて、必死で説得して避難させようとしたり、無理やり運び出そうとしたりしてる。

 

 ……避難訓練とか、普段からしてなかったのかな? まあ、そういうのしててもいざって時は混乱しちゃうもんだし、仕方ないと言えばそうなのか。

 

 この状況で海賊なんか攻めてきたら、そりゃあ自警団とかが出張っても悲惨なことになったのは間違いなしだろう。

 

 そう考えると、私がこうして『迷子』になり、それに引っ張られてスモーカーさんもこの町に来ることができたのは、やっぱり正しい判断……もとい、すっごい幸運、だったんだと思う。

 

 戦いそのものについては、特筆すべきこともない。普通に勝った。

 

 実際、私はいつも通り、傘ぶん回して海賊連中ぶっ飛ばしてただけだしね。

 

 スモーカーさんも同じ。海賊のど真ん中に飛び込んで無双してた。

 今はまだあのバカでかい十手は持ってなくて、普通に標準装備のサーベルを使って戦ってたけど……それでも強かった。

 

 が、力を入れすぎたのか途中でサーベルが折れた。

 そしたら一切怯まず素手で殴り倒して、敵から武器を奪ってまた戦い続ける。強い。

 

 絶対伍長程度の戦闘能力じゃないってコレ……新兵時代からこんな化け物だったんか。

 

 まあでも、小さい傷程度ならいくつか負ってたし、そこそこ手こずってはいたようだけどね。

 苦戦って感じじゃなく……ただ単に、手間というか労力と、時間がかかった的な意味で。

 

 倒した海賊の数の比率的には、私7、スモーカーさん3くらいかな?

 

 そして闘っている最中、ヒナさんが電話で言ってた援軍……つまりは見回りに出てた海軍船が到着。海賊船を直接強襲するとともに、私達とで挟み撃ちにすることに成功。

 そこからはとんとん拍子に話は進み、海賊の全滅で戦いは決着した。

 

 その後、当然というかスモーカーさんは命令違反をとがめられてたけど、そこはきちんと『言い訳』を用意してある。

 

 元々スモーカーさんの今日の仕事は、私の護衛。

 それが終わった段階で、上からの指令通りに海賊船の迎撃するために、2隻が向かっている港町に来る、というものだった。

 

 しかし、私が本来帰るべき街じゃなく、間違って別な街に……すなわち、残り1隻の海賊船が向かってきている港町に行きついてしまった。

 そしてそのまま海賊が襲来。とっさに私が応戦して戦闘が始まってしまったため、私を守るためにスモーカーさんも仕方なく戦闘に加わった。

 

 そのまま上手く退却することもできずに、結局最後まで戦い続けることになった……というわけ。

 

 ……まあ、これで騙せるとか思っちゃいないけどね。

 実際、上官さんも『白々しい……』とか言いたそうな目で、私とスモーカーさんのこと見てたし。

 

 しかし、カバーストーリーとしては十分なはずだ。スモーカーさんは『まだ終わっていないから』仕事を全うしただけなんだから。

 

 それに、ちらっと聞こえてきたけど、向こうの港の方も、結局何の被害も出ることなく収まったみたいだしね。そこまで大きな問題にはならないだろう。

 

 しばらくの間しかめっ面でこちらをにらんでいたけど、最終的にその上官さんは、はぁ、とため息をついて、『始末書くらいは覚悟しておけよ』と言い残して歩き去っていった。

 そしてそれに、何の感情もこもってない……申し訳ないとか微塵も感じられない声で『うっす』ってスモーカーさんも返して……それで終了。

 

 それで、よし上手くいったこれで終わりだな、と思ってたんだけど……その上官さんが去って行った後すぐに、別な人がスモーカーさんと私のところに近づいてきた。

 ピンク色の髪と、ふっくらした唇が特徴的な、若い女の海兵さんが。

 

「スモーカー君、あなたまたやったわね……」

 

「あ? 何の話だ、ヒナ?」

 

「とぼけるんじゃないわよ。全く、あなたは……命令違反に加えて、一般人を巻き込んでこんなこと……ええと、スゥさんでしたか? この度はこちらの者が大変なご迷惑を……」

 

「え? ああ、いえいえいえ、何もそんな……いや、危ない所を守っていただいて感謝してますよ」

 

「……ご厚意に甘えて、そういうことにさせていただきます。彼には私からよく言っておきますので……」

 

 深々と頭を下げるヒナさん。あれ、もしかしてスモーカーさんの方が私を連れ回して、言い訳に使ったと思ってる?

 いや、実際は逆で、私の方から私を『言い訳』に使うことを提案したんだけどな……ああでも、電伝虫でスモーカーさん、命令違反も辞さない的なこと言っちゃってたし、そう思い込んでも仕方ないと言えばそうかも。

 

 少しばつが悪い気分でスモーカーさんを見るが……あ、気にしてないなコレ。

 

 まあ……もともとカバーストーリーなしの命令違反してでもやるつもりだったもんなこの人。

 

 その流れで聞いたんだけど、スモーカーさん、普段からこんな感じらしくて……ヒナさんや直属の上司の人に迷惑かけまくって、何度も頭を下げさせてるらしい。

 自分の意地とか仁義的なものを優先して動きすぎるから、海兵として従うべき命令をたびたび無視して、そのせいで昇進にも悪影響出てるって。

 

 同期で、かつヒナさんより実績出してるのに、それが原因でいまだに伍長で……ヒナさんの方が出世してるらしいし。あ、今もう軍曹なんですか。

 

 原作でもそんな感じだったな。アラバスタの一件で英雄に仕立て上げられそうになったのが気に食わなくて、一切躊躇わず海軍と政府の上層部に『クソ食らえ』って嚙みついてた。

 この頃からそうなのか……原作まで20年くらいあるはずなのに。

 そこまでいくとなんか尊敬するわ。

 

 

 

 その後、ヒナさんとスモーカーさんとは別れて、私はそのまま宿に戻った。

 

 やれやれ、休暇のつもりで観光地の島に来たってのに、2回も海賊と戦う羽目になるとは……まあ2回目は自分から飛び込んでいったわけだから文句も言えないが。

 

 まあでも、得るものはたくさんあったなあ……花火工房の見学はもちろんとしても、それ以外の……海賊との戦いや、スモーカーさんとの交流でも。

 

 モチベーションがいい感じに上がって……書きたい話ができた。

 花火師の物語じゃないけどね。それ以外の経験で、思いがけずアイデアが浮かんできてしまった……悪いけど、こっちを先に書こう。私の中に熱があるうちに。

 

 花火大会までまだ数日ある。筆が乗りそうだから……それまでに書き終わるかもな。

 

 

 

 そして、それから数日後。

 

 盛大に行われた花火大会を楽しんだ後、私は翌朝の便で元居た島に戻った。

 

 その同じ日の午後、担当編集であるエディちゃんとの打ち合わせ。事前に……まだ『ファイヤーワークス』にいた時から、電伝虫でアポとってあったのだ。

 そこで、書き上がった原稿を渡した。

 

 内容が別段花火関係ないものだったことに少し意外そうにしてたけど、読み終えたエディちゃんは、すごく面白いので上に話をしてみる、と言ってくれた。

 よかった。ほんの2、3日で勢いのままに書いちゃった奴だけど。お眼鏡にかなったみたいだ。

 

 本になるかな? なるといいな♪

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

Side.三人称

 

 その数か月後。

 新鋭小説家・スゥの新作が発売され……人々の間でまた大きく話題となった。

 

 主人公は、辺境の町に暮らす1人の賞金稼ぎの青年。

 無口で不愛想、友達も少ない彼はしかし、独特の道徳観と義侠心を胸に持ち、島に出没する海賊達と日夜戦いを繰り広げる。

 

 その強さや堅実さ、海賊退治の実績は海軍にも知られており、たびたびスカウトを受けるが、彼は海軍に所属することについては一切興味を示さず、ただその町にとどまって海賊を狩るのみ。

 入隊すれば、海軍将校、それもかなり上の地位も目指せるであろう力と素質を持っている……そう言われても、頑として首を縦には振らなかった。

 

 その彼の幼馴染であり、こちらは海軍に所属して順調に出世していきつつある若き女将校が、何度声をかけても、歯牙にもかけることなく、呆れ交じりに落胆させていた。

 

『君の力なら、ゆくゆくは必ず、世界を救えるほどの英雄になれるのに!』

 

『興味がない。世界を救う間に、海賊は町を、島を滅ぼす』

 

 

 

「おいスモーカー、読んだかこの新作の小説?」

 

「お前、前にコレの作者と会ったことあるんだってな! どんな人だった?」

 

「というか、コレの主人公のモデルがスモーカー先輩だって本当なんですか!?」

 

「あ? 俺が知るかバカ。読んでもねえし興味もねェよ」

 

 

 

「ヒナちゃんヒナちゃん! コレに出てくるヒロインのモデルがヒナちゃんだってマジ!?」

 

「うっそそうなの!? じゃあ、ヒナちゃんってスモーカーさんと……キャー!」

 

「そんなわけないでしょ! モデル云々もそもそも聞いたこともないし……ああもう、ヒナ迷惑!」

 

 

 

 どこかの海軍基地に小さな波乱を引き起こしながらも……不器用ながらも多くの人を救おうと、自分の正義を貫く主人公を描いたその小説は、多くの人々を楽しませた。

 単なる英雄譚ではない。巨悪を倒して偉大な功績をなすよりも、身近にある小さな、しかしかけがえのない幸せを粗末にせず、守り抜くことの大切さと難しさを現した小説。

 

 

 

作品名:パイレーツスレイヤー

 

『俺は世界を救わない。海賊を倒すだけだ』

 

 

 

 




Q.最後のコレ、ゴ〇スレでは?
A.まあ、元ネタではあります。

Q.スゥが作家として書く物語って、転生前の世界のパk……インスパイアがメインなの? 取材とかしてるのに?
A.これについては色々混じった結果こうなってる感じです。
本編でも近々触れる予定ではありますが、スゥが書く小説は大きく分けて、
 ①スゥ考案の完全オリジナル
 ②スゥ視点ではオリジナルだけど、読者から見れば元ネタあり
 ③スゥ視点でも元ネタあり
…の3つあります。
スゥが普段書いてるのは①と②です。②は元ネタはあるけどスゥは知らないとか、偶然似たような設定になった……みたいな感じに思ってください。
③はスゥが、オリジナルじゃないけど大好きな、いい作品だから絶対この世界でも広めたい、読んでほしい、って時にやるようです。
書くときはほぼネタ的に言及すると思うので、それがなかったら『たまたま既存の作品に似たんだな』的に思ってください。

Q.本音は?
A.作者の頭では毎度毎度違う、それでいて面白い創作内創作を考えるのは難しくて……力不足で情けない限りです。
あと、『コレ〇〇じゃん!』ってちょっと笑ったり楽しんでもらえた方がいいかなと。
あと、作者は個人的にクロスオーバーが大好きです。


こんな感じで、今後もスゥの創作として、見覚えのあるタイトルがたびたび出てくるかと思います。
もしそういうのご不快に思われる方がいらしたら申し訳ありません。

長々と失礼しました。
今後ともよろしくです。破戒僧でした。
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