大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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ちょっとアイデアが出たので閑話投稿です。

今回は過去話です。
以前ちらっと触れた、とあるイベントに参加した時のお話。


第193話 “招待状”

 

 

 これは、今よりも少し前……まだ『原作』が始まっていない頃の話。

 

 

 ―――ぷるぷるぷる……ぷるぷるぷる……

 

 

「もしもし? こちら世界経済新聞社、モルガンズだが……」

 

『あ、もしもしモルガンズ? 私だよ、スゥ。……突然申し訳ないんだけど……ちょっと相談というか……助けてもらえないかなって』

 

「おや、本当にいきなりだなスゥ。何かトラブルでもあったのか? 俺で力になれることだといいが……」

 

『……単刀直入に言うね。次の『お茶会』……モルガンズも呼ばれてるよね、お願い一緒に行って』

 

「! まさか……君も呼ばれたのか? “ビッグ・マム”の……『お茶会』に?」

 

『うん……初めて呼ばれた。勝手がわかんない、怖い。超心細い。お願い助けて』

 

「お、お、おう、わかった……うん。ガチでやばそうだな。よし、一緒に行くか」

 

『ありがとうございます……めっちゃ感謝……』

 

 

 さて、ちょっと時を戻して……説明から入ろうか。

 

 

 4つの海の漫遊の旅を終え、『偉大なる航路』に戻ってきて……しばらくのんびり旅をしていた時のことだった。

 ある島でリゾート気分を満喫しながらお菓子を食べていたところに、予想外過ぎる来客があったのである。

 

 ビーチチェアでのんびりハワイアンな(この世界ハワイ無いけど)ドリンクを飲んでいたら、なぜかやたらとビーチが騒がしくなって……しかも喧騒がだんだんこっちに近づいてくる。

 さすがに『何だ?』と思ってそっち見たら……

 

「見つけたぞ! お前が『海賊文豪』だな、ガオ!」

 

「…………え?」

 

 サングラスをかけた二足歩行のライオンがガッツポーズでそこに立ってた。

 ビーチに、きっちり服……というかスーツを着た、毛皮もこもこのライオン。

 

「……暑そうですね、大丈夫?」

 

「心配してくれてありがとうよ! ぶっちゃけクソ熱いが仕事終わるまで気合で我慢してるところだ、ガオ! ……ってことでさっさと仕事を済まさせてもらうぜ」

 

 えっと、この人たしか、ワンピース原作にも出てた……『ビッグ・マム海賊団』の戦闘員……。

 名前はたしか、ぺコムズさんだよね? 懸賞金三億越えの、結構な大物。

 

 そんな人が何でここに……ってか、何の御用?

 なんか鞄から手紙みたいなの取り出して渡してきたけど……何これ?

 

「『招待状』……?」

 

「ああ、うちのママ……“ビッグ・マム”からの、『お茶会』の招待状だ、ガオ!」

 

 その後簡単に説明してもらったんだけど、四皇“ビッグ・マム”は、定期的に『お茶会』という名のイベントを開いているらしい。

 各界の著名人――主に裏社会の権力者が中心らしい――を招待して集め、皆で楽しく談笑しながらお茶とお菓子をたらふく食べて、楽しいひと時を過ごす、というものだそう。

 

 もちろん単純に楽しむだけでなく、裏社会の大物達と顔をつなぐ機会でもあるから……そういう場として皆利用しているようで。社交会みたいなもんか。

 

 普通に談笑だけで終わる時もあれば、何かしらのイベントが一緒に行われることもある。有名な旅芸人一座のショーとか、ビッグ・マムの家族の結婚式とか。

 後は、ビッグ・マム海賊団に敵対してきたバカな連中の処刑とか、滅ぼした国から略奪してきた財宝のお披露目とか。

 ……楽しくておめでたいイベントと殺伐としたイベントの落差がひどいな。

 

 そんな『お茶会』の招待状が、私にも届いたわけなんだが……ぺコムズに聞いたら、コレ実質、参加を断れない召集令状に等しい代物らしい。

 欠席すると、後日、その人に関わりのある誰かの首がプレゼントとして届けられるとかなんとか……発想が容赦なく怖いし酷いな、さすが海賊。そりゃ確かに断れないわ……。

 

 選択肢は実質無かったので、『出席します』と伝えてぺコムズにひとまず帰ってもらった。

 その際、『作法とか色々不安があるならモルガンズを頼ればいい』ってアドバイスをもらった。私と交流があることもきっちり調べられてるようだった。

 

 ビッグ・マムの情報網は海賊界随一だと言われてる、ってのは聞いたことあったけど……ホントにやばそうだな、情報力。

 

 ……実際、色々心細いし、エスコート役が欲しい。素直にあいつを頼ることにしよう。

 

 

 

 そうして、冒頭にてモルガンズに相談し……あらかじめ色々聞いたうえで……

 

 当日。

 

(手土産は用意した、服装もきちんと正装でそろえた……大丈夫、大丈夫……)

 

 お茶会会場への行き方は、招待状にきちんと説明が書いてあった。

 

 普通の船で『ビッグ・マム』の縄張りに不用意に近づいても、入ることはできない。最悪、敵船と間違われて迎撃され、沈められる危険もある。

 なので、きちんと手順が用意というか、指定されていた。

 

 まず、近くの島までは自前の船でいけるので、そこまでは各々が手配して行く。

 そしてそこからは、お茶会参加者のためにビッグ・マム海賊団が手配している送迎船に乗って、会場である『ホールケーキアイランド』に向かうのだ。そうすれば、問題なく縄張りに入れる。

 

 私は今回、その『自前の船』の段階でモルガンズにご一緒させてもらった。

 

 ぴしっとしたスーツで決めたモルガンズの隣で、ちょっと……いやだいぶ緊張で硬くなりながらも、なるべく自然体な感じでついて行き……いざ、ビッグ・マム海賊団が用意した船に乗り込んだところで……いきなり面食らう。

 

(何だこのやかましい空間……)

 

(気にするな、すぐ慣れる)

 

 ドアが喋る。

 机が喋る。

 カーテンが喋る。

 紅茶のポットが喋る。

 軽食に出されたパンケーキすら喋る。

 

 ファンシー通り越して逆にホラーっぽく見えてきてしまう空間がそこにあった。

 

 ……事前に聞いてはいたけど……これが“ビッグ・マム”の『ソルソルの実』の能力か……。

 人の『魂』を様々なものに入れて擬人化させることができるっていう、とんでもない能力。

 

 絵面込みでやかましくて騒がしい以外は、特段何か害があるわけでもないからいいんだけどね……こんな空間に滞在する機会なんてないから、これはこれで不思議でいい『経験』になる。

 

 ……けどさすがに、口に入れるもん喋らせるのはやめない……?

 パンケーキとか、ビスケットとか……食欲失せるよ。皿の上で『食べて食べてー』って言ってるのとか、猟奇的なんだが……

 

 モルガンズその他の乗船客達はもう慣れてるのか、普通に食べてるな……

 

 わ、私も見習って、思い切って……ぱくり。

 

『ぎゃわー、食べられるー♪』

『おいしい? おいしい?』

『あー、飲み込まれちゃうー♪』

 

 ……く、口の中がうるさい。間違いなく人生で初めての経験だぞこんなの……

 かみ砕いて飲み込んだところで『さよなら、さよならー♪』って……胃袋の中に落ちるまで……

 

(一寸法師を丸のみにした鬼とかって、こんな気分だったのかな……似たような内容の絵本書いたことはあるけど、まさかこんな体験する日が来ようとは。……後で何かに生かそう絶対)

 

 ……しかし味はよかったな。普通に静かに食べたかったぞコレ……

 

 

 

 そのまましばらく乗っていると、ようやくパーティ会場のある『ホールケーキアイランド』に到着した。

 

 ここでも面食らった。

 町が全部……お菓子でできてる。全部本物で、食べられるっていうから驚きだ。

 

 童話というか、おとぎ話の中みたいな世界だ……。

 いや、おとぎ話だって、お菓子の家はあっても、お菓子の『町』は多分なかなかないだろう。少なくとも私は、丁度いい例が思いつかない。

 

 ……町中がすごい、甘い、いい匂いがする。

 虫とか湧いたりしないのかな……というか、食べ物なんだから痛むし腐ると思うんだけど……え、賞味期限来るたびに建て替えてるの!? すげー……

 

 そんな風にぜいたくに使えるほどに食材が豊富なのか……食料自給率何十万パーセントだ、この島……?

 

 そこから馬車にのって街道を行き、町の中心にある『ホールケーキ城』に到着。

 とんでもなく大きい、ホールケーキの形をした城の中を、案内に従って歩いていき……お茶会の会場である屋上に到着。簡単なボディチェックを受けたうえで、中に通される。

 

「クワハハハ、いつ来ても美味しそうな場所だ!」

 

 中に入って、そんな風にモルガンズが笑ってたけど……まさにそんな感じの光景だった。

 美味しい料理が食べられる場所というか店、というような意味じゃなくて……本当に場所そのものが美味しそうなんだもんな……

 

 ここに来るまでの町や、城の中もすごかったけど……ここはさらにすごい。

 右を見ても左を見ても、お菓子ばっかり……お菓子しかない。

 

 各テーブルに並んでる食べ物はもちろん、テーブルやら椅子なんかの家具も、パーティー会場の飾りつけも、全部がお菓子。食べられる。

 

 食器すら一部はお菓子だっていうんだからホントに驚いた。

 モルガンズがお手本を見せるように、給仕にもらったケーキを食べた後……手に持ったフォークをそのままパキッと食べてしまったのには驚かされた。

 キャンディでできてるんだって。マジかよ……どれだけ非日常的な空間だここは……。

 

 私も真似して、ホットティーと一緒にもらったスプーンで、砂糖をすくって中に入れてかき混ぜて……スプーン溶けた! これもキャンディだった!

 

 飲んでみる。……美味しい。

 キャンディと砂糖の甘みが紅茶の風味をまろやかにしてて……飲みやすくまとまってる。

 

(単なる思い付きや悪ふざけ的な『お菓子パーティー』じゃない。味も演出も、ものすごい高いレベルで計算されて作られてる……)

 

 紅茶一口飲んだだけで、それを悟ってしまった。

 

 さすがは『四皇』……海の皇帝が主催するパーティーだ。

 

(招待状をもらった時は、えらいもんに呼ばれちゃったな、って思ったけど……これは案外、いい経験ができる場に招待されてラッキーだったかも……! これでまだパーティー始まってないんだから……やばいな、何が起こるのか期待しちゃうよ)

 

「クワハハハ、いい感じに緊張が取れてきたようだな、スゥ」

 

 隣にいるモルガンズは、どうやらお見通しだったみたいだ。

 それとも、私の態度がわかりやすかったかな?

 

「考えてもみろ。『皇帝』とはいえ海賊だ、お貴族様がやるような、堅苦しくてお行儀のいいお食事会が好みなわけでもない。度を越えて無礼だったり常識のないふるまいさえしなければ、純粋に楽しく食事とおしゃべりができる場だよ、ここは。……まあ、各自様々な思惑をもって集まっているであろうことは否定できんがね」

 

 そんなことを言いながら、モルガンズは手元の懐中時計を見る。

 時刻は午前9時45分。お茶会が始まるのが10時だから……もうちょっとあるな。

 

 そう思っていると、向こうの方から2人、こちらに歩いてくるのが見えた。

 少し遅れてモルガンズもそれに気づき、その2人に向き直る。どうやら顔見知りみたいだ。

 

「あらモルガンズ、あなたも来ていたのね。それに、そちらは……」

 

「女連れとはいいご身分やネン」

 

 1人は、清楚でありながら高級なアクセサリーやドレスでまとめた、すごくきれいな女の人。

 もう1人は、大柄で丸顔、葉巻を加えて……顔に大きな傷のある、ちょっと堅気には見えなそうな感じの男の人。

 

「やあ、ステューシー、今日も美しいな。ル・フェルドは……全く、いつもいつも飽きずによくつっかかってくるものだな。生憎今日は、このパーティーが初めてのレディをエスコートしてるんだ……遠慮願いたいものだが」

 

 言いながら、ちらっとこっちに視線をよこして促されたので、簡単に挨拶して自己紹介する。

 どうも、スゥって言います。お見知りおきを。

 

「! やっぱり……あなた『海賊文豪』ね? 会えて光栄だわ」

 

「ほぉ……お前さんがあの……」

 

 すると、ステューシーさんもル・フェルドさんも、私のことを知っていてくれたみたいで、笑顔で握手しつつ挨拶を返してくれた。

 え、お2人ともファン? あら嬉しい、光栄だわ。

 

 ……というか思い出したんだけど、ル・フェルドさんって前に多分、ファンレターくれた人だな……だいぶ前だと思ったんだけど、ずっと読んでくれてるの? 嬉しい。

 ……ル・フェルドさんの異名は『闇金王』らしく……そして、以前ファンレターをくれた作品は『闇金タウロスくん』だったと思うんだが……アレの手口その他が悪用されていないことを祈る。

 

 そんでそっちのステューシーさんは、『歓楽街の女王』って呼ばれてる人……と。

 『ぜひ今度遊びに来て♪』なんて言われてしまった。歓楽街か……あんまり興味ないから、行ったことないんだよな。でも、未知の経験はできそうではあるな……。

 

 今しがた、どんな体験でも食わず嫌いはよくないのかもしれない、って思い知ったところだったし……今度ちょっと考えてみよう。

 

 なんてことを考えつつおしゃべりしていたら……会場前方の大きな扉の向こうに……すさまじく大きな気配が現れた。

 無意識で使ってるレベルの微弱な『見聞色』でもわかる。わかってしまう。

 

 思わず体がこわばって、そっちに視線が向いてしまう。

 

(……まだ姿も見えてないのに、なんて存在感……明らかに、パパ以上……!)

 

 そして、大きな扉が開き……そこから、何mもの巨躯を持つ、1人の女性が姿を見せた。

 この海に君臨する4人の『皇帝』の1人にして……お菓子の国『万国(トットランド)』全体を支配する女王。

 

 

 四皇“ビッグ・マム”

 シャーロット・リンリン

 

 

「遠路はるばる、よく来てくれたねェ~~! 初めての奴も来たことがある奴も、思う存分食べて飲んで、楽しんでおくれよォ~~! さあ、『お茶会』の始まりだぁ~~!」

 

 

 初めて参加する、『ビッグ・マム』のお茶会。

 怖くもあり、しかし楽しみでもあるイベントが幕を開けた。

 

 

 

 

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