この拙作もはや200話となりました……ここまで来られたのひとえに読者の皆様のおかげと思っております。
感想や活動報告でのメッセージ、ご意見等、全て目を通して力にさせていただいております。
まだプロットその他が全然なので、本格的な再開の見通しは立っていませんが……
どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
「……まさか、こんなことになるなんてなあ……」
私は、ちょっとばかり途方に暮れていた。
目の前に広がっているのは……無数の船。
しかし、そのどれもが無事な状態ではなく……難破船、あるいは沈没船といった感じの見た目であり……まともに動かせそうもないものばかり。
さながら、『船の墓場』とでも言えそうな光景、ないし場所だ。
いや、実際にそう呼ばれてるんだけどね……ここ。一部で。
そんな場所に私は……娘達3人と共に迷い込んでしまっていた。
「ここがかの有名な……『エイプスコンサート』か。えらいとこに来ちゃったな」
「エイプスコンサート……母上、何じゃそれは?」
「コンサート? なんか楽しそうな場所だな……でも、そんな風には見えないけど」
「…………」
薄気味悪そうにしつつも、周囲を見回しているスズ。
あんまり状況がわかっていないっぽい。お気楽なレオナ。
……なぜか静かというか、ぼーっとして黙ってるアリス。
三者三様だけど、どうやらこの場所について知ってる人はいないようだ。……まあ、一部の物語とか伝承の本に出てくる程度の話だからな……無理もないだろう。
そういうの、あんまり読まないもんな。3人とも。
……私も実は、そんなに詳しくはないというか……前に何かの本で読んだことがあるのを覚えてた、程度の認識なんだけど……
『エイプスコンサート』っていうのは、船乗りの間で語られる伝承とか伝説の1つで……別名、『船の墓場』。
世界のどこかにある不可思議な海の迷宮であり、一度入ると絶対に出られない場所……なんだそうだ。バミューダトライアングルみたいな場所、かな?
迷い込んだ船はその海から出られずに朽ちていくしかなく、長い歴史の中で迷い込んだ無数の船がその亡骸をさらしている場所。
……今まさに、目の前に広がっている光景がそんな感じだな。見渡す限り、船、船、船、船……そして、どれもまともな状態じゃないと来た。だいたい全部朽ちていて……まさに『亡骸』だ。
どうやら……どういう理由でかはわからないけど、簡単に出られる場所じゃない、というのは本当らしいな。
さて、どうしたもんか……
☆☆☆
そもそも、なんで私達がこんなところに来てしまっていたのかというと……だ。
事の発端、というかきっかけは……私が、ちょっと娘たちを連れてある場所に出かけたことがきっかけだった。
『七武海』としての仕事もなく、『提督』としての仕事も、『作家』としての仕事もひと段落してちょうど暇だったので、ふと思い立ってね。
私が昔暮らしていた島にね、行ってみることにしたんだ。
私の生まれ故郷の……育ての親2人と暮らしていた、あの始まりの島に。
残念ながら、あそこにあった町は……海賊に襲われて滅んでしまい、今となっては何も残ってない。瓦礫すら風化して、ほとんど更地……というか、雑草とか色々生えて、自然に帰ってしまっている有様だ。
……前にも実は行ったことあるんだけど、既にその時そんな感じだったからね。
海岸近くの町だったから、近くにある特徴的な岩場とか、島の地形とかを目印にして『このへんかな?』ってあたりをつけないと、町があった場所ももうわからない状態だったよ。
その中で、私のもともとの家が大体このへんかな……ってところにあたりをつけて、簡単なお墓を作ってあったんだよね。前に来た時に。
長い年月の間に風化しちゃったんだろう。建物の残骸も……両親の遺骨も、そこにはもうなかった。
けど……よく家の窓から見てた海辺の景色がそのまま見れたので、ああ、ここだってわかった。
そして、その辺にあった大きな岩を持ってきて、紙吹雪で削って……墓標を置いた。
頻繁に手入れに来れるわけじゃないから、当然ながら苔むしちゃってたけど。まあ、仕方ないよね。
簡単に洗ってあげてから、お供え物を置いて手を合わせる。
一緒に来てた3人娘も……まあ、お父さんとお母さんに会ったこともないわけだけど、とりあえずって感じで手を合わせていた。
天国から見てくれてるかな。お父さん、お母さん、私、娘ができたよ。……血は繋がってないけど、3人とも自慢の娘だよ。
……内2人は賞金首になっちゃったけど。っていうかそもそも、私が賞金首で海賊だけど。
……よく考えると、あんまり胸張って報告できない事柄が多いな……私の人生。
まあ、今更だけども……。
その後、しばらくそのへんを散歩してから、さてじゃあ帰るかってことになって……4人で私の船に乗り込んだ。また新しく作った奴に。
そして、来た時と同じように、私の能力で飛んで帰ろうとしたわけだけど……その時にちょうど、海の真ん中に不思議な虹色の霧が立ち込めているのが見えて、びっくりしたんだっけ。
そして、随分前に本で読んだ、『虹色の霧』の伝承を思い出した。
虹色の霧の向こうには、金銀財宝が山のように眠る楽園が広がっていて……そこでは、老いも死もない永遠の幸せを手にすることができる……って。
まあ、よくある伝説とかおとぎ話みたいなもんだろうな、とは思ってたけど……こうして目の前にそれが来たとなると……私の悪い癖として、そこで得られる未知なる『経験』に興味が出てきてしまいまして。
娘3人も乗り気だったので、まあいざとなったらさっさと逃げるなり引き返せばいいか……とか軽く考えて、虹色の霧の中に突入してしまったのだ。
……で、行きついた先は、楽園でも何でもなく……この『船の墓場』だったと。
ちょっとばかりこの空間について調べてみたところ……割と伝承の内容は事実な部分も多かったことがわかった。
難破船の中には、商船や海賊船、あるいは……なんかお貴族様が乗ってそうな豪華なつくりの船も混じってたから……財宝自体はいっぱいあったんだよね。
中には、どこぞの王国で数十年前に盗まれて以来行方不明だった国宝の宝石なんかも。趣味でそういう秘宝のリストとか見たことがあったから、そうと気づけた。
しかるべき形で売れば相当な金額になりそうだし……国宝とかの盗難品は、海軍や世界政府経由で返却してやれば、その国の覚えが多少はよくなるかもしれない。色々使い道があるな。
おそらくはそういうのを扱っている闇商人の船や、奪ったのであろう海賊船のお宝だったわけだが……既にその船の持ち主たちはいないようなので、ありがたくもらってしまうことにした。
片っ端から回収して、私の体内に取り込んでしまう。
それからもう1つ……財宝については『虹色の霧』の方の伝承だったわけだが、『船の墓場』の方も……なんだか真実が紛れていたようで。
どうもこの海域、普通じゃないな……空間がおかしなことになってる……のか?
どう船を進めても、外に出られないのだ。能力を使って加速して、結構な距離を直線で進んだはずなのに……全然この海域を抜けない。
というか、本当に迷路みたいに、同じ場所に戻ってきてしまってる気がする。
『紙の翼』で船を飛ばせて脱出しようとしても……やはり無理だった。
横方向に飛んでもどこにも行きつかないし、上へ上へ飛んでも高度が上がらない。天井にぶつかってるわけでもないのに……まるでゲームの画面の上端に引っかかっちゃってるみたいに、そこより上に全然進めない。
しかも、『
より強い磁気で書き換えられてしまう可能性がある『記録指針』はともかくとして、1つの島の磁気を記録して永久にそこを指し続ける『永久指針』すら狂うなんて……普通じゃない。
電伝虫も通じない。誰に、どこにかけても電波が届かない。
挙句の果てに……『ビブルカード』すら反応がおかしい。
消滅こそしないけど、動かないのだ。どこに……どの方角にいるかを、指し示してくれない。
すぐそばにいるスズやレオナ、アリスの反応は、ある。
けど、メルヴィユにいるはずのパパや、シャボンディ諸島にいるはずのレイリーやシャッキー、女ヶ島のハンコックに、『グラン・テゾーロ』のテゾーロとステラ……それらの、この『虹の霧』の外にいるはずの者達の居場所に、反応しなくなってるのだ。
念のため、体内から取り出してテーブルの上に置いてみたけど……やはり動かない。
……本格的にコレ、異世界か異空間にでも来てしまったんじゃないかと思ってしまう。
ちょっとやばいな……帰り方がわからないぞ。
普通の遭難とはまた違う、初めての経験……これはこれで……いやいやそんなこと言ってる場合じゃないって。私だけならともかく、娘達も巻き込まれてんだよ。
「そんなこと思っとる場合じゃないぞ、母上。『永久指針』や『ビブルカード』も反応せんとか、明らかに異常事態じゃ。『新世界』でもこんなんないわ」
「うん、わかって……あれ? 私声出してた?」
「顔に出てた。『経験』に興味示した時の母ちゃん、わかりやすいもん」
……娘達にまでこんな風に言われるお母さんでごめんね。
と、ちょっと落ち込みそうになった……その時。
―――ぷほぉぉおおぉぉ―――っ!!
「「「!?」」」
船に置いてあった電伝虫が……突如として大泣きし始めた。え、何!? 何事!?
「……コレ、『救難信号』じゃない? 周囲にある電伝虫に無差別にSOSを送るって奴……」
「いやでも、さっきいくら試しても電伝虫使えんかったじゃろ? なんで今になって……」
「ひょっとして……この近くにコレの相手がいるんじゃないか?」
……そうか、『霧』の外じゃなくて中に……か。
確かに、レオナ達のビブルカードは問題なく動作して、彼女達の居場所(方向)を指し示してるもんな……同じように、電伝虫も、すぐ近くにいるのなら、通信もできるのかもしれない。
つまり、ここからさほど離れていないところに……電伝虫を持った誰かがいて、助けを求めてるってことだ。
しかしながら、残念なことに……それでも通信状況が不安定だったのか、受話器を取って出る前に切れてしまった。
けど、この電伝虫はDr.インディゴが改造ないし品種改良した特別製の奴だ。短距離なら逆探知もできる。その機能を使えば……。
☆☆☆
で、その逆探知したデータをもとにやってきたのは……『船の墓場』の中にあった、1つの大型船。
周りのものに比べて比較的状態がマシだ。ちょっと古いけど、すぐに壊れそうな感じもないし……埃っぽくもない。
……もっとも、埃っぽくないのは……誰かがきちんと掃除とか手入れしてるからだろうけどね。
明らかにこの船、人が住んでる痕跡あるもん。
多分だけど、私達と同じようにここに迷い込んだ誰かが、この船を仮の拠点として使ってるんだろうな。作りもしっかりしてるし、それ自体は悪くない判断だろう。
海には一応、魚とかもいるみたいだから……釣りとかで食料も手に入るだろうし。
そして、電伝虫を使って救難信号を送っていた……と。
『見聞色』で見てみると……うん、人の気配があるな。1人だけだ。
そんなに強くはなさそう……だけど、こんな得体のしれない場所に住んでる人だし、悪いけどちょっとは用心させてもらう必要もあるだろう。
一応、何が現れても大丈夫なように身構えておく。
私は武器の番傘を手に持ち……レオナは拳を握り、スズは刀に手をかけ、アリスは腰の銃をいつでも引き抜けるようにした上で……
こんこん、とその船の扉をノック。
「もしもーし、誰かいますかー?」
まあ、誰かいるのはすでに分かってるんだけど、そんな感じで声をかける。
すると、少し間をおいて……ぱたぱたぱた、と子供の足音みたいに軽い音が聞こえて来て……ガチャリ、と扉が開いた。
その瞬間、私達に襲い掛かったのは……衝撃波だった。
……いや、違う。
衝撃波かと思って、錯覚してしまうほどの……『声』だった。
「はあああああい!! どちら様ですかあああああ!?」
「「「!? !? !? !?」」」
突然の衝撃波つき(と錯覚するほどの)超大声に、耳キーンになりながら呆気にとられる私達。
その私達の眼前に現れたのは……一人の小柄な女性? 少女? だった。
……ってアレ? この人、どっかで……
ええと……子供かと思うくらいに小柄な体格……
でも、声の感じとか気配からすると、そこまで子供じゃないな……ブルーメと同じで、子供みたいな見た目の大人?
白いふわっとした髪の毛に、けっこうかわいらしく整った顔……
服装は……白衣? まるで、医者か研究者……みたい……な……
(……あれ、待って? 白い髪、小さな体格、白衣、大声……そしてこの顔……)
ふと横を見ると……困惑した様子で、私とその子(子じゃないかもしれないが)の顔を見比べている娘達の姿が。
あ、やっぱりそういう反応になる? ……似てるもんね。
……私と、彼女の顔……似てるもんね。割と生き写しだもんね。
………………
…………え、マジで?
「…………マ…………ママ?」
「……はいいい???」
ベネルディ・ソゥ。
元・金獅子海賊団所属の天才科学者にして……私の実の母親。
30年以上前に死んだはずの彼女が……なぜか、その時のままの姿でそこにいて……不思議そうに首をかしげて、こっちを見返していた。
『虹色の霧』及び『エイプスコンサート』は、アニメオリジナルのストーリーで出てきたものになります。
アニメ版でルフィ達が出会った人たちとは、違う人と今回出会うことになりましたが……