すごい間開いちゃいましたが、更新します。
ママがホームに帰ってきました。
あと、あとがきでちょっとした報告を上げております。
よければご覧いただければと思います。
「と、いうわけでママが生きてたんで拾ってきました。報告終わり」
「終わり。じゃねえよおめー……何とんでもねえ不発弾掘り起こして来てんだよ……いや確かに、下手な財宝より価値のある土産かもしれねえけどよ……」
「代償としてこちらも色々なものを削られることが確定してますので、素直に喜べませんね……」
『エイプスコンサート』でママことソゥを回収したので、そのまま連れてメルヴィユに戻ってきたんだが……私達をそこで迎えたのは、既にだいぶ疲れた様子のパパとDr.インディゴだった。
……まだ会う前からそんな感じだった。生存報告だけで、どんだけの心労だったんだろうか。
「……なんかじーちゃん、ちょっと老けた?」
「思い出話するだけで疲れた表情になる相手じゃからの……さもありなん」
「うん、まあ……そういう感じになってもおかしくない人だなー、って、ボクら自身もこの短期間の交流で割と思い知ってるしね」
娘達もそんなことを言っております。
レオナの言った通り、今のパパとDr.インディゴ、なんかこないだまでよりも10歳くらい老け込んだような雰囲気になってるんだもんな……。
部屋に入った瞬間、ワンチャン何かの勘違いであったことを祈りつつも、私に続いて入ってきたママを見た瞬間に『あ、本物だ』って理解して遠い目になって……。
人が全ての希望を失って絶望に沈む瞬間の目、ってああいう感じなんだろうな……って、見ててすごくよくわかってしまった。
「……いや、うん、よかったとは思ってんだよ? ホントに……俺だってコイツに死んでてほしかったわけじゃねーし? 研究者としてすっげえ役に立ってくれてたし? 病気なんて形じゃなくてもっとマシな最期とかあったんじゃないかって思ってたし? ……でもやっぱお前の顔見るとさ、あの、海軍やロジャー以上に胃痛の原因だった日々が蘇ってくるっていうかさー……」
「……? よくわかりませんけど、親分さんも大変そうですねええええ!」
「………………」
そしてその元凶である自覚が皆無であるママ。
自分が原因でパパがこうなってるとは夢にも思ってもいないんだろうな、って感じに見える。
「それで……ソゥ、お前また俺んとこに戻ってくるってことでいいんだな?」
「そうさせてもらえればありがたいですううううう! 別にどこかに行くあてがあるわけでもないですしいいいい、気になってた研究とかもありますしいいいい! それにいいいい、スゥちゃんの経過観察とかもしたいですのでえええええ!」
ちらっと私の方を見ながら言ってくるママ。
母親としてなのか、それとも、自分の『最高傑作』としての出来栄えを確認したいからか……。
失敗したと思ってたら、後から外的要因で叩き起こされる形で『超人』に進化しつつある、って話しちゃったから、気になってるんだろうな。
「まあ、能力だけ見ればお前が戻ってきてくれるのは心強いしな……わかった。Dr.インディゴ、研究室にソゥの籍を用意してくれ」
「かしこまりました。立場等はどうしますか? 彼女の能力であれば、各部門の主任以上の地位を与えても問題ないとは思いますが……」
「わかってて言ってんだろボケ。こいつに余計な権限なんぞ持たせたら暴走の元になるだけだ。一番新入りだってのもあるし、いち研究員にしとけ」
「いや、権限無くても別に構わず暴走しますよ多分」
「……そうだったな。まあでも大義名分与えちまったらそれこそ手ェつけらんねえから、とりあえずはヒラにしといて……職場になじんできた後に考えるか」
「そうですね」
とまあ、そんな感じでママがメルヴィユに帰ってきました。
さて、これからDr.インディゴの部下として研究その他の仕事に携わっていくことになるようだけど……果たしてどんな活躍を見せてくれるのやら。
『エイプスコンサート』の解析でも発揮して見せたとおり、頭脳と技術は本物だということはわかっている。ちょっと怖いけど……楽しみでもあるな。
……とかなんとかお気楽なことを言ってた数日前の私を殴りたい。
いやあ……ママ舐めてたわ。
パパ達がああなるのも納得できるレベルで変人だったわ。
いい意味でも、悪い意味でも。
「スゥちゃあああん、研究計画立てたから予算ちょうだああああい! あと許可もおおおおお!」
「早速か、元気だねママ。どれどれ……って何コレ!? 予想と桁3つくらい違う額書いてあるんだけど!?」
撤回前の私の手配額より高いじゃん! 遠慮の『え』の字もないな!?
しかも、量も多い……新入社員が企画して持ち込んでくる仕事の量じゃないな……何だこの資料の分厚さ。電話帳?
クリップ止めが何カ所もあって……ええと……あれ? これ全部事業ごとに分けられてんのか。多いな無茶苦茶。
「やりたいこと全部並べたらこんな額になっちゃったのおおおおお! 『エイプスコンサート』に閉じ込められてた間もアイデアだけは色々出してたからあああああ! 結果を出す自信はちゃんとあるからハンコ押してえええええ! でないと会計係が予算くれないのおおおおお!」
「いやコレはさすがに無理だよ……パッと見たけど研究の種類一気に10個とか書いてあるじゃん。1つずつやってみて慎重に検討しないと……せめてどれか1個か2個にして。予算だって無限にあるわけじゃないんだから」
「えええええ、そんなあああああ!? 会計担当にも同じこと言われたのよおおおおお! だったら提督であるスゥちゃんのハンコがあれば誰も何も言えないと思って来たのにいいいいい!」
「いや断られてんだったら素直に改善して!?」
確信犯かい!?
どうりで一応ヒラ研究員のママが私に直接予算書なんか持ってくるわけだよ……こういうのまず部門ごとに取りまとめて責任者が持ってくるはずだもんね、組織の運営システム上。
そこに断られたからってこの人、私との血筋ないし繋がりを最大限活用するつもりで……
「……とりあえず有用そうなの1個許可するからこれで成果出して。そしたらママの信用にもつながって次からもっと出せるようになると思うから」
「わかったわあああああ! じゃあコレやるからお願いねえええええ!」
「はいはい……頑張ってね」
「ありがとおおおおお! 3日くらいで結果出せると思うからちょっとだけ待っててねえええええ!」
「……研究って数週間とか数か月、ものによっては数年スパンで地道に進めるのが当たり前の根気がいる分野なんじゃなかったかな……?」
そしてその3日後、ママは本当に『結果』を出してみせた。
内容は『ワポメタル』運用における、合金処理による硬度・強度の強化について。
難しい専門用語が並ぶので詳しくは省くけど、ママの提唱したやり方で検証したところ、最大で従来比1.7倍のパワーアップを確認できた、とのこと。
もちろん、他の研究チームも巻き込んで客観的に確認できる形で検証も終えている。
……すげえ、それなりに時間をかけてDr.インディゴが研究して明らかにした『最適な運用法』を、わずか3日の研究で更新してみせたぞこの人……。
しかも、『ワポメタル』はここ最近発見された金属だ。
つまり、30年以上『エイプスコンサート』にいたママにとっては名前すら聞いたことのない新種の物質で……この研究室で初めて目にしたもののはずなのに……それを3日で?
しかも、3日ってのは作業その他を含めた日数だから……『ワポメタル』に関する既存の情報を目にして、性質その他を見抜いて、計画立てるまでだと……半日かそこら……。
すげー……やっぱ天才だなこの人……。
……でも、その検証のために『ワポメタル』の在庫の半分以上を一気に放出して使ってしまい、別な方向のスケジュール再調整が必要になってしまったので、素直には褒められない……。
ワポルに生産させればいいとはいえ、せめて許可くらいは取ってくれ……
え、ちゃんと取った? 部門の責任者に?
でも研究途中で足りなくなるといけないから、念のため少し多めに保管庫から持ち出したって? 申請して許可貰った数より多く? ……おい、許可の意味ないじゃないか。
どのくらい多く……4倍以上じゃないか! 『少し』ってレベルじゃないよ!
あーもう、こういうところかパパ達が苦労してたのは……結果は出してるし、その損失分を余裕で補填できるくらいの大成果だから、素直に怒れない……。
ていうか……え、この先ずっとコレ続くの?
☆☆☆
その後もママは順調に暴走を続け……しかし、それに見合った、あるいは期待をすさまじく上回る成果を出し続けた。
問題行動は多かったが、それを差し引いても『この人は天才だ』と、見る者全てに認めさせてしまうほどの力量を、復帰後のわずかな時間でいかんなく発揮してみせたのである。
そしてそれは、『金獅子海賊団』として役に立つもの……薬品とか武器とか素材とか、そういうのばかりじゃなくて、日常で役に立つ技術とかにも及んでいる。
例えば、スズが栽培している農業に役立つもの。
空島適応の植物の品種改良とか、環境にやさしく有害性が極めて低い農薬や殺虫剤とか。
薬品に関してはこの人、3日かそこらで……最短だと1時間半とかで作ってしまうので、ホントに桁違いだなと思い知らされる。……単位おかしいよね明らかに。
しかもそれでいてきちんと効果は発揮されるし、副作用もないと来たもんだ。
『すごいぞばあ様!』ってスズがびっくりして懐いちゃってた。
今もうそれらをフルに活用して農園で楽しく栽培しまくってる。
……ただそれでも、途中経過を確かめる実験とか慎重な確認作業をほぼ全部すっ飛ばして実践に踏み切ろうとするのはやめてほしいんだけど。
『実験なしでも承認なしでも多分きっと絶対大丈夫!』じゃなくてさ……。万が一失敗とかして作物や土壌がダメになってたら、スズ泣いちゃってたぞ多分。そしたらさすがに私も怒るぞ。
その他にも最近は、どうもエネルとも接触して色々話をしているようで……彼女の知識や技術の探求が、『デスピア』をはじめとした気象兵器の分野にまで及ぶのも時間の問題かもしれない。
頼もしいような、恐ろしいような……恐ろしいなやっぱり。
エネルも……あいつもアレで結構研究者肌というか、工学とか気象の技術・知識に相当明るいから、割とノリノリで話したりしてるし。
混ぜるな危険、な事態にならないか激しく不安ではある……かも。
……そういえば、こないだ『空島』だってのにいきなりメルヴィユ空域の一部に雷雲が広がって、しかしすぐに晴れて消えた、っていう謎現象が起こったっけな。
『偉大なる航路』特有の滅茶苦茶な気候かな、とも思ったんだけど、もしかして……おい、実験の申請も報告も何もないぞ。もちろん許可も出してない。
そして、彼女本来のホームグラウンドである、医学とか人体改造、そして『血統因子』その他の研究にももちろん熱心に取り組んでいるようだ。
Dr.インディゴの作った研究資料や論文を片っ端から読んで知識を吸収しているのに加えて、私の『経過観察』と銘打って、色々検査とかさせられたし……。
失敗したと思ったら成功していた、あるいは成功しつつある事例ってことで、ことさら興味をそそられてるみたい。血とか汗とか唾液とか皮膚片とか髪の毛とか……尿まで取られた。さすがにちょっと恥ずかしかったわ。
ここからさらに改造、とか言い出さないでくれるとありがたいんだが……。
……あと、どうやら『TABOO』についても大いに興味を持っている様子。
現時点でも十分に規格外レベルの性能を発揮している『人造ヒトヒトの実』だが……もしかしたら今後、さらに上のステージに進んだ力を見せつける時が来る……のかもしれない。
……そんな風に非常識あふれる日々を送っているママなわけだけど……中でも一番驚かされたのは、やっぱり……
「ああ、ここですここおおおおお! やっぱりあの頃のままですねえええええ!」
そんな言葉と共にママがやってきたのは、以前ママが使っていた資料室。
私が初めてメルヴィユに来た時に、入り浸って色々読んでいたあの部屋だ。ママの日記とかも見つけて読んだ部屋。
その奥にある、金庫っぽいものの前である。
いや、『っぽい』っていうか、まんま金庫だと思うんだけどね。やたら大きくて重厚なだけで。
そこに、私とDr.インディゴ、それにママの3人で来ている。
「この中に私の一番大事な研究資料が入ってるんですよおおおおお! ちゃんと保管してあってよかったですううううう!」
「まあ、部屋の中の資料と合わせて、整理するのも大変な量でしたから、そのままとっておいたんですよ。しかし……そんな大事そうな資料、中に入ってはいなかったと思いましたが……」
(確かに……)
Dr.インディゴがそんな風に言い、私の心の中で同感みたいに思ったのは……この金庫の中身を既に見て、知っているからだ。
確かに研究資料とか標本っぽいものは入ってたけど、そこまで重要なものじゃなかったと思う。
大事な研究の過程を記録したものに変わりはないだろうけど、それらからすごく重要な何かがわかるとか、ものすごい学説をまとめてある、あるいはその根拠資料になってる……みたいなわけでもなかったと思うし。
というか、どうしてDr.インディゴや私がこの金庫を開けて、中身を見ることができたのかというと……普通にDr.インディゴが暗証番号を知っていたからだ。
「あれええええ? 2人ともこの中身をもう知ってるんですかあああああ?」
「そりゃまあ……あなたが出て行った後に色々整理しましたし、お嬢がここに来た後に色々案内した際に見せましたからね。暗証番号は……あなた隠す気なかったから知ってましたし」
「そうなんですかあああああ? まあ、見られて困るものでもないので別にいいですけどおおおおお! それにいいいい……きちんと見れたのかどうかも疑問ですしいいいいい!」
「「?」」
ちょっと微妙に意図のわからないことを言いながら、ママは金庫に向き直り、そこに暗証番号を入力していくのだが……
「暗証番号! 5! 9! 6! 3! ご・く・ろう・さぁぁああぁぁん!!」
「……毎度こんな感じで叫びながら開閉するからバレバレだったんですよ。この部屋に出入りする者はソゥだけでしたが、廊下とか隣室まで普通に聞こえてきてたので、皆知ってました」
「暗証番号の意味……」
とか呆れながら見てたら、がちゃり、と音がして金庫の扉が開く。
中には、私達も前に見たことのある、研究資料や標本が入っていた……と、思ったその時。
その金庫の中……天井のあたりにママが手をかけて、なぜかぐいっと引っ張ると……
―――がこん!
「よいしょ、っと!」
「「……え!?」」
二重底ならぬ二重扉になっていた部分が前に開き……金庫の更に奥に、もう1つスペースが現れた。え、何それ知らない。
隣を見ると、Dr.インディゴも首をぶんぶん横に振っている。こっちも知らなかったらしい。
「ま、ママ? 何それ?」
「何って聞くってことはああああ、やっぱりこっちの保管庫は見つけてなかったのねえええええ! ここが私の本命の保管庫なのよおおおおお!」
「バカな……そんなスペースは、前に調べた時にはなかったはず……」
「このスペースの施錠にはああああ、私が開発した特殊なカギを使ってるんですよおおおおお! ただ暗証番号を入力するだけじゃなくてええええ、『私の声で』『一定以上の音量で』『音読しながら』入力しないと開かないようになってるんですううううう! 暗証番号だけで開く手前の保管庫はダミーなんですううううう!」
マジかよ……流石に気づけなかったわそんなん。
この金庫自体、壁に埋め込まれてる形だから、そんなデッドスペースがあること自体わからないようになってるし。
声紋認証に音量・内容認識とは……確かに防犯上はかなり有効な仕組みだな。
オーバーテクノロジーにも思えるけど……まあ、ワンピース世界そういうの結構あるしな。パシフィスタも、政府関係者や賞金首に対応した顔認証とか搭載してるっぽい描写あったし。
そして、そうして厳重に保管されている中にあった、ママの『本命』の研究資料は……
『別にみてもいいわよおおおおお!』というので、Dr.インディゴと一緒に見せてもらうと……
「…………やばっ……」
あらゆる意味で。
そして、この中身を用いてママがこれから研究を進めていくのだが……それが後に、世界を大きく変えたり揺るがしたり、その他諸々大変な事態に発展させることになるのだった。
それでは連絡です。
以前から検討しておりました、本作の『年齢制限版』についてですが、ちょっと食指が動いたので書いてみました。
本話と同時に投稿されているはずですので、ご興味ある方はよろしければ見にいってみていただければ嬉しいです。
お目汚しでしたらすいません。
なお、話によってばらつきはあるものの、場合によっては本編よりもどぎついことになりそうなので、苦手な方はご注意ください……
今後ともよろしくです。破戒僧でした。