大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第206話 ゾロの3D2Y(2)

 

 

 ある日の『ルーボッツ島』。

 ゾロ達が住み込みで修行を続けているこの島の、とある開けた荒野にて。

 

 今まさに、ゾロとスゥが、互いに刀を抜いて切り結んでいた。

 

 パワー主体で、一撃の威力を重視した剣技で攻めるゾロに対し、スゥはスピードとテクニックを駆使してそれらをさばいていく。

 ゾロが鍔迫り合いに持ち込もうとすれば、スゥは脱力してひらりとかわし、

 ゾロが振り下ろした刃を、スゥは最小限の力で受け流して反撃に転じる。

 

 ゾロも防御や回避は行っているものの、少しずつ小さな傷が増えていく。

 それでも、微塵も怯まず攻め続けるゾロは……ほんの一瞬できたスゥの隙を見逃さなかった。

 

「三刀流……」

 

 大きく、鋭く踏み込み……防御しようと間に割り込んできたスゥの剣をはじいてそらし、前をがら空きにする。

 そして、防ぐ手段を失ったスゥめがけて、渾身の一撃を繰り出した。

 

「“(ウル)”……“虎狩り”!!」

 

 放たれた斬撃は、スゥの胴体を捕らえ、深々とその身を切り裂き……

 スゥの体は、無数の紙になって散らばり……そのまま再生することなく、力なく落ちて……風に吹かれて飛んで行ってしまった。

 

 そして、

 

「うん……お見事!」

 

 その様子を高台から見ていた、もう1人の……本物の“スゥ”が、惜しみない拍手と共にそう言った。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ゾロ、無事に『武装色』を習得。

 私が用意した『代理雛』を、見事に切り裂いて勝ってみせた。

 

 覇気の修行初めてまだそんなに経ってないのに、もう纏えるようになるとは……予想以上だ。

 

 まあ、錬度的にはまだまだというか、初歩レベルではあるものの……それでも、きちんと意識して『覇気』を使うことができたのは、それはそれは大きい。

 感覚をつかみさえすれば、ここからゾロはどんどん強くなっていくことだろう。

 

 なお、今ゾロが戦っていたのは、私が能力で作り出した分身『代理雛』だ。

 『切神』と同じで、ある程度の自立行動が可能な分身。戦闘力は全然だけど、大きな特徴として、私本体と同じように、体を紙にして物理攻撃を無効化できる点が挙げられる。

 ただし、再生するにも限界はあるのに加え、『覇気』をまとった攻撃は無効化できない。

 

 そのため、ゾロがこの『代理雛』を倒すには、『武装色』をまとって攻撃しなければならなかったわけなんだけど……それを今、見事にやってのけたわけだ。

 

「……なるほど、これが……この感覚か」

 

 ゾロはというと、手に持った刀……というか、それを含めた自分の手を眺めるように見ながら、今の『武装色』で攻撃した感覚を、何度も思い返して反芻しているようだった。

 忘れないように、この先も自在に使えるように、って感じかな。

 

 しかし……ホントさすがだな、ゾロ。普通なら数か月とか年単位で修行してどうにか習得するものを、こんなわずかな時間で……思わず私の方が嫉妬しちゃいそうだ。

 私の時は、偶然手に入ったみたいな感じで目覚めたし……その後鍛え上げていくのも、我流だからとはいえ、相当苦労したからな。

 

 なお、ここで修業している面々の中では、ゾロ、一番最初の開花である。

 

 向こうの方で見ている残りの面々……三人娘+サガは、ゾロの成長を素直に祝福しつつも、ちょっと悔しそうだ。自分達も頑張ってるのに、先を越されたから、だろうな。

 まあでも、残り4人も……見た感じ、習得そう遠くなさそうだけどね。

 

 サガとアリスはもうすぐそこって感じ。

 サガはゾロの躍進に『自分も負けてられない』って火が付いたようだし……アリスは相変わらずの天才肌だ。実物を見てある程度感覚を掴むと、それを再現するのも早い。

 

 スズは……集中力はともかく、『見えない鎧を着る』っていうイメージに四苦八苦してるかな。

 でも、理解力はあるから、一旦感覚を掴めばむしろそこからの成長は早い、と思う。

 

 レオナもイメージはちょっと苦手気味で、集中力もスズ達ほどじゃない……けど、彼女は感覚派だから、なんとなくの直感(あるいは野生の勘)で結構進めている節がある。案外習得早いかも。

 

「……スゥ、もう1回頼めるか?」

 

「もちろんいいよ。じゃあ……今回はもうちょっと強くしようか」

 

 言いながら私は、ゾロの希望通りに『代理雛』をもう1体出す。

 今言ったとおり、さっきよりも少し強めに能力設定してある。それでも、偽物だから剣技はゾロの方が全然強いけど……

 

「今度のは、ちょっとだけ『覇気』にも耐性持たせてあるからね。それなりに強く『武装色』をまとわせて斬らないと倒せないよ。注意」

 

「! ……上等!」

 

 交戦的で獰猛な笑みを浮かべ、すぐさま『代理雛』と切り結び始めるゾロ。

 おーおー、楽しそうに戦っちゃって……こりゃ本当に上達早いぞ。『覇気』……特に『武装色』は、破壊力はもちろん、修行ないし上達の過程でも、本人の気合が何より重要だからな。

 

「母ちゃん母ちゃん! あたしらも、あたしらも修行!」

 

「レオナの言う通りじゃ、負けていられん! こちらにも『代理雛』を頼む!」

 

「はいはい、わかってるって。サガとアリスも要るよね?」

 

「ああ、頼む」

 

「もちろん!」

 

 はい、4体追加ね。

 今ゾロが相手してるやつとは違って、覇気耐性は0設定だけど。まずはこいつを倒せるようになってからです……とか思ってたら、

 

「くぅ、やっぱかわいい……さすがお母さん、偽物でもボクの心を惑わしてくる。……ねえ、1体余分に作ってもらって部屋にお持ち帰りしちゃダメ?」

 

「アホなこと言ってないでほら、さっさと戦え」

 

「はーい」

 

 と、いつもながら頭の中が幸せそうなことを言っていたうちのエロガキ。

 しかし、アリスにあてがった『代理雛』と、数合打ち合った――ちなみに、今日の彼女の武器はレイピアである――後……

 

「……! そこ!」

 

 一瞬の隙を見逃さず、大きく踏み込む。

 それを防ごうと『代理雛』が蹴飛ばしてくるけど、アリスはそれを手ではじいてそらし(能力も同時に発動したな)、その胸に剣を突き立てると……え!? 崩れた!?

 

「……っしゃあ! 成功!」

 

「「「え!?」」」

 

 見間違いでもなんでもなく……アリスの突きに胸を貫かれた私の『代理雛』は、そのまま紙になって崩れ去り……再生せず、倒れた。

 つまり……今のアリスの攻撃に、『武装色』を纏っていたってことだ。

 

 ゾロに続きアリスも……というか、こんなあっさりと……

 

 私はもちろん、残り3人も驚いてる驚いてる。

 

「おいおい、マジか……」

 

「えええぇええ!? あ、アリスおま、おま、いつの間に……」

 

「お主それ……使えるようになっとったのか!?」

 

「ううん? 今初めて成功したよ。というか……さっきゾロが成功させたのを見て、大体の感覚がようやくつかめた……って感じかな」

 

 何でもないことのように言うアリス。

 ……やっぱこの子、天才だわ……こと戦闘技能に関しては、もともと三姉妹の中で一番だったけど……あらためてそれを見せつけられたかも。

 

 というか、ゾロといいこの子といい……なるべく最適化した手順で教えているとはいえ、すごい速さで強くなるな!? これ、私もうかうかしてらんないぞ……下手すると追いつかれかねない。

 いや、自分を卑下したり弱いとか言うつもりはないけど……そのくらい、危機感を覚えるくらいにこの子たち成長が早いよ。

 

 残り3人もほら……『負けてられるか!』って一層気合入れて戦い始めたし……

 

「お母さーん! 次! ボクにもゾロと同じ、ちょっと強いお母さん頂戴!」

 

「あーはいはいわかってるって」

 

 はい、ちょっと(覇気耐性が)強い『代理雛』をどうぞ。

 喜んで立ち向かっていくアリスを見ながら……私は、ふと思った。

 

(そういえばアリスって、私のこと狙ってるんだよね……堂々と公言してるし。……え、ちょっと待って……いや、まだまだ先だとは思うけど、もしこのまま私より強くなっちゃったら……その時はもしかして……私、色々な意味で……やばい?)

 

 偶然だとは思うけど、そんなことが頭をよぎった瞬間……アリスと目があった。

 にっこり笑ってた。

 

 ……よーし、私も修行がんばるぞー……

 

 

 ☆☆☆

 

 

 結局その日、『武装色』を習得できたのは、ゾロとアリスだけだったけど……見てた感じ、残り3人も秒読みっぽかったな。

 これから、数日か、長くても1週間以内には全員、入り口には立てると思ってよさそうだ。

 

(いやいや、ホントに……頼もしいね、誰もかれも。)

 

 夜、自室で1人になり、明日以降の指導プランを考える。

 

 しかしこのペースなら……覇気修行のペース、上げてもよさそうだな。

 習得するの、それなりに苦労するだろうと見てたから、まずは『武装色』を腰据えて練習して……安定して発揮できるようになったら『見聞色』に移るつもりでいたけど……

 

(……さわりだけでも触れさせてあげた方が、かえって成長早い、かも……?)

 

 思えばこの5人とも……結構感覚で覚える、天才肌な面が割とあるからな。

 しいて言えば、スズやサガが比較的理屈派――きちんと理解してから使えるようになるタイプ――かもしれないけど、それを差し引いても、触れて、理解して、そこからの成長が早いと思う。

 

 今日見てた感じでも、ゾロとアリスが成功させてからの、残り3人の成長がまた早かった。

 あれって、『負けてられない』っていうやる気だけじゃなくて……きちんと成功した2人の様子を観察して、多少なりとも取り込んで自分の力にしてたから……だと思う。

 

 なら……『実際にやってみる』ことが、一番の近道かもしれない。

 よし、明日からは『武装色』に加えて、『見聞色』の修行も始めてみよう。皆、嫌とは言うまい……というか、むしろ食いついてくるだろう。向上心豊かだからな。

 

 ……ただ、明日以降はちょっと私、用事があるんだよなあ……『七武海』の。

 マリージョア行かなきゃいけないんだよ。だから、明日は皆の修行見れない。

 

 あ、ちなみにマリージョアと言っても、『天竜人』の皆さんが住んでいる場所とは別、海軍とかの施設がある一般区画です。

 原作で、ドフラミンゴやくまが海軍の会議に出席する時に来てたあのへんだな。

 なので奴らに出会うことはないです。安心。

 

 そんなわけで、明日は皆の修行を見れない。

 修行用の『代理雛』は、あらかじめ作って用意しておけば、『切神』と同じようにすぐ取り出して使えるから大丈夫だけど……細かい指導はできない。

 なので、他の面々に頼む必要がある。

 

 『武装色』の指導は、メイド隊の皆に頼もう。

 全員覇気使えるから、指導役としても、時には訓練相手としても十分だと思うし……特にユリは教えるのが得意みたいだから、むしろ適任かもしれない。

 後で聞いてみて……手ごたえ次第では、私の不在時の皆への指導の責任者を頼んでもいいかも。

 

 そして、『見聞色』だけど……これももちろん、メイド隊の皆でもきちんと教えられるだろう。同じようにきちんと全員習得してるし。

 けど……

 

(どうせなら……その道のプロに頼んでみるか。間違いなく、適任ではあると思うし)

 

 ぶっちゃけ、前々から思ってたことではあるんだよね。そうした方が、それこそ私が教えるより効率的に覚えられるんじゃないか、って。

 ……心情的なあれこれはともかくとして、さ。

 

 私は、デスクの引き出しから電伝虫を出し……その人物にかける。

 数回コールして……よし、つながった。

 

「あーもしもし? うん、私。ごめんねこんな時間に。……ちょっと、手を貸してもらいたくてさ。急で悪いんだけど、明日って空いてるかな? ……そう、それ。よくわかるね。あ、大丈夫? よかった……それじゃ、よろしく頼むよ―――」

 

 

 

 

 

「―――エネル」

 

 

 

 

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