大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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今回はちょっと趣向を変えて、ショートストーリーをいくつか、みたいな感じにお送りします。
理由はありません。なんか書いたらこんな感じになっただけです。

では、どうぞ。



第211話 ゾロの3D2Y(4)

 

 

 

【恵まれた環境】

 

 『ルーボッツ島』で修行を続けるゾロ達。

 サバイバルとは言いつつも、サバイバル要素と言えばせいぜい、修行の時に使う場所や、食料を狩りや釣りで調達しているという、その程度。

 

 屋根があって雨風もしのげる快適な寝床はあるし、獲った食料はきちんとした腕を持つメンバーが、整った設備で料理するため、塩を振って丸焼きとかそういう雑、ないしシンプルな料理が毎回出てくるということもない。

 非常に快適で文明的な、『過酷』とは言えない環境で暮らしていた。

 

 変な話、正直なところを言えば、ここまで快適だと、逆に『こんな調子でいいのだろうか』と、全く思わないというわけでもなかった。

 さぞ過酷な修行になるだろうと覚悟していたゾロからすれば、この快適さはやや拍子抜けであったことは否めない。

 が、だからといって文句があるはずもない。

 

 そもそも、きちんと『覇気』の習得をはじめ、強くなれているのは事実なのだから、何も言うことはやはりないし、快適なら快適で結構とそれを楽しんでもいた。

 

 中でも、ゾロが個人的に一番楽しみにしているものといえば、

 

「っぷは……っと、もう空か。おい、酒ってまだあったか?」

 

「もう飲みおったのか? まああるにはあるが、飲むなら自分で持ってこい」

 

 呆れたように言うスズにそう教えられ、ゾロは『おう』と、そのとおりに自分で酒蔵に酒のお替りをとりに行った。

 

 日中、修行中はさすがにないにしても、夜になればこうして自由に酒を飲める。それも、ある分は好きなだけ飲み放題という太っ腹さ。

 

 酒だけでなく、食事は肉も魚も獲ってくれば食べ放題なのに加え、スズが持ち込んでくる野菜や果物、キノコや穀物もどっさりあって、空腹や渇きとは完全に無縁。

 なんなら、この点に限れば、船旅をしていた頃よりも恵まれているとすら言えるかもしれない。以前は海の真ん中で食料が尽きて、魚も取れず空腹のまま数日も耐えて……ということもしばしばあった(主に船長の食欲と、その他数名の盗み食いなどが原因で)。

 

 しかも、この島で酒を飲むのはほとんど自分だけなので、実質酒蔵の中身はほぼゾロの独占状態だった。ゾロ自身に別にその意図はないのだが、結果的に。

 

 レオナは全く飲まない。

 飲めないことはないが、お子様舌なため、純粋に味が好きではないようだ。

 

 ブルーメも同様の理由でほとんど飲まない。

 

 スズとスゥは、たしなむ程度。

 また、スズの場合は、自身が趣味で最近酒造すら始めたので(もちろん彼女が自分で育てた米やイモを材料にして)、その味見をするのも含まれる。

 

 サガとビューティは割と飲む方だ。夕食の席でも、ゾロ同様よく飲んでいる。

 量的にも酒豪と言えなくもないかもしれないが、毎度そこまで大量にというわけでもない。

 

 アリスは意外と飲める方だが、こちらもそこまで量は飲まない。

 ただ、肝臓は丈夫な方なようで、飲むときには色々な種類の酒をゆっくりと味わうように飲む。

 

 そんなわけで、生活の一部レベルで酒を愛飲しているゾロにとっては、恵まれた環境なのだ。

 

 そして、酒蔵に到着すると、そこに珍しい顔を見つけた。

 

「お、ゾロじゃん、また寝酒?」

 

「ああ。何だアリス、お前もか?」

 

 酒蔵にいるのは珍しいと言えば珍しい、アリスの姿だった。

 風呂上がりなのかナイトガウン姿で、酒を選んでいるようだった。ゾロとは違い、小さめの瓶をいくつか、程度のようだが。

 

 一方でゾロは、一切迷わず、小さめとはいえ、十リットル単位で入るであろう樽ごと持って行こうとしていた。寝酒と称して。

 もっとも、酒をはじめ食料の備蓄は潤沢なので、別に誰も咎めもしないが。

 

 その途中、ゾロはふとあることに気づく。

 酒蔵の端に、見慣れない壺がいくつか置かれていたのを、目ざとく発見した。

 

「ん? この酒、昨日はなかったな……」

 

「ああそれ、今日スズが運び込んだ奴だよ。自分の縄張りの『空島』で育てた芋で作った新酒だってさ。せっかくだしゾロ、飲んで感想とか聞かせてあげたら?」

 

「ほぉ……よし、そうするか」

 

 そしてそっちの壺も1つ、抱えて持つゾロ。

 すでに持っていた方の樽を置くことはしない。両方飲む気のようだ。

 

 寝酒どころか宴会で複数人でも消費できないであろう量の酒を持って行こうとするゾロを見て、さすがにアリスも呆れた様子だった。

 

「ほんと、お酒好きだねゾロ。インペルダウンでルフィが肉とか爆食いするの見たことあるけど、それにも負けないくらいじゃない? 食事の時ももう水代わりだし……禁酒とか絶対無理でしょ」

 

「おいおい、ルフィと同じってのはいくらなんでも……ああでも、禁酒だのなんだのは考えたくもねーな……」

 

 そんなことを言われたせいか、ふと脳裏に『これこれこういう課題ができるまで禁酒ね!』とか言い出すスゥの姿を想像してしまい、げんなりした顔になるゾロ。

 

 今の自由で束縛も特にない修行方針からすればないと思うが、もしそうなった場合、割と過酷な時間になるだろうと確信していた。

 

「というか、そんなに飲んで……明日二日酔いになっても知らないよ?」

 

「そんなやわじゃねーよ。稽古にも狩りにも支障は出さねーから安心しろ。というか、お前だってそれ……たしかかなりきつい酒だろ。大丈夫なのかよ」

 

「ボクも肝臓強いから平気。よく女の子と一緒に飲んだりするしね、このくらいへっちゃらだよ」

 

「そうかよ。ったく……女のくせにどこぞのアホコックと同じようなこと言いやがって」

 

 なお、アリスが手にしている酒は、かなり度数が高くてきついが飲みやすいため、ついつい飲みすぎて酔っぱらってしまうことも多い、俗に『レディキラー』と称される酒だったりするのだが、ゾロにはそんな知識はないので特に気にもしなかった。

 

「それに、お酒のせいでお母さんからの修行をないがしろにするような、失礼だしもったいない真似はできないからね」

 

 と、付け加えて茶化すように……しかし、その一方で、真剣さもにじませてアリスは言う。

 

「衣食住不自由なく、戦闘訓練や『覇気』の指導まで丁寧にしてもらってさ……普通じゃ考えられないくらいに恵まれてるもん。これで真面目にやらなかったらそいつ死んだほうがいいレベルだし……これだけ恵まれて、お母さん自身きちんと全力で教えてくれてるんだから、これで結果が出せなかったりしたら……」

 

 一拍。

 

「それはもう、言い訳のしようもなくボク達の自業自得、努力不足以外の何者でもないってことだもんね。そんなみっともないことできやしないよ」

 

「……ああ、もっともだな」

 

 軽い調子で言われたことだが、本当にその通りだと、ゾロは思った。

 

 アリスはまだ、スゥにとって『娘』という間柄であるし、海賊としては部下でもある。ゆえに、環境の充実具合はともかく、指導することに特段違和感はないとも言える。

 

 だが自分の場合は、『金獅子海賊団』に所属するというような見返りらしい見返りも提示せず、ただ頭を下げただけで、こうして全てが揃った環境での修行に加えてもらっている。

 スゥ曰く、『ゾロやサガとの修行はうちの娘達や私にとってもいい影響あるし』と、あっけらかんと言っていたが、この恩は決して小さいものではないことをゾロは認識していた。

 

 そして同時に、であれば自身も、彼女の期待や予想をはるかに超えるくらいに強くなってみせなければ……ここまでしてくれているスゥに合わせる顔がない、とも。

 そうきちんと理解し、そして同時に……誓っていた。

 

 ここでの修行で自分は必ず、この先の海を渡っていける力を手に入れると。

 2年後、仲間達と合流し、『麦わらの一味』復活後には、必ずルフィを『海賊王』にすると。

 そして自分は、かつて敗れたあの世界最強の剣士を超え、そして今師として仰いでいるスゥも超えて、世界中の剣士の頂点に立つ『大剣豪』になるのだと。

 

「……まあ、それはそれとして……もらうもんはもらってくがな」

 

 と、そこまで言って……酒の席(席でもないが)に似つかわしくないシリアスな空気を脱し、ゾロは樽と壺を抱えなおした。

 アリスも、何時も通りの『にひひ』という笑みを浮かべて、手提げ袋に酒瓶を入れる。

 

「そーだね。欲しいもん我慢するのも、それはそれで『海賊』らしくないし、うん、自己責任なんだから……その分きちんと明日も頑張るってことで! それじゃ、お休みゾロ」

 

「おう」

 

 恵まれている=楽している、生ぬるい、などということでは断じてない。

 過酷でないから結果が出ないなどということも断じてない。訓練の内容がしっかりしているのだから、これで結果が出なかったとしても言い訳などできない。

 なんなら、自分達が強くなれば、その分スゥはさらに訓練の内容を変えてくるだろうし、そうなればその『過酷さ』だって今とは変わってくるだろう。

 

 そもそもこの恵まれた環境自体、自分達のために用意されているのだから、この中でこそ自分達はより強くなり、より高みに登らなければならない。

 

 互いに笑顔ながらも、それを再認識した2人は、酒蔵を後にして別れ、それぞれの自室に戻っていった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

【習得する理由】

 

「なーエネル、頼みがあるんだけど」

 

「うん? 何だレオナお嬢。お前が私に頼むとは珍しい」

 

 レオナとエネル。『スカイピア』では不俱戴天の敵対関係にあった両者。

 

 エネルの言うとおり、2人はその過去のいざこざもあって……当然と言えば当然なのだが、他の面々に比べてややギクシャクした間柄だった。

 ……もっとも、ギクシャクしているのはレオナの方だけで、エネルの方は特段気にしていない、というのがより正確なところかもしれないし、そもそもそのせいでこの2人は、頼みごとどころか話すことすらかなり珍しいのだが。

 

 そんな珍しいことがあって、何かと思って聞き返すエネルに、

 

「前もちらっと言ってたけどさ、お前達が使ってる、『心綱』としての『見聞色』の使い方も教えてほしいなと思って。ほら、広い範囲をカバーして……広く浅く、誰がどこにいるかわかる奴」

 

「ふむ……」

 

 スゥに任されている『指導役』としての仕事の範疇でもあるし、エネル的にはそれは一向にかまわない申し出だった。

 もっとも、今すぐにそれはできない……というより、一朝一夕でできるようになるものでは当然ないので、

 

「もちろん構わんが、それは相応に『見聞色』の基礎ができるようになってからだぞ。付け焼刃で形だけ整えてもろくなものにならんのは言うまでもなかろう」

 

「わかってるよそりゃ。ただ、今後の修行の中で……範囲を絞って『未来視』とか、そういう方向に研ぎ澄ますだけじゃなくて、範囲を広くして探知するやり方も……同時進行で鍛えたいと思ったからさ。もともとそのつもりだったら、悪いけど」

 

「いや、希望として覚えておこう。……ちなみに、理由を聞いても?」

 

 エネルとしては、目の前の少女のことだから、空島にいる『友達』である動物達のことを把握したいとか、あるいは狩りの獲物の位置を見定めたいとか、そういった理由からだろうと予想していた。

 そして、その予想は実際にあたっていたのだが……実はそれだけではなく、

 

「……ちょっと、何というか……アレな理由なんだけどさ。最近、その……」

 

 

 

「おい、ゾロがおらんぞ!?」

 

「は!? えっちょ……さっきまでそこにいたのに、いつの間に……え、水飲みに行ったこの短距離の移動ではぐれたの!?」

 

「あのバカ、また……一本道でどうして迷子になれるんだ……!? くそ、手分けして探すぞ!」

 

 

 

「……迷子探しに有用なんじゃないかって最近思い始めてさ。この『ルーボッツ島』だけでもカバーできるようになれば……」

 

「…………切実だな」

 

 言われてみれば確かに、同じく『空島』では敵対していたあの剣士がいなくなっているとエネルは思った。

 

 そして同時に、『見聞色』を広げてみると……

 

(……水場とこことの往復でどうしたら島の逆側に行けるのだ?)

 

 また素っ頓狂な位置にゾロの存在を確認し、『やはり青海は不思議なことが多い』と何も言わずに勝手に納得した。

 その上さらに、そこでゾロが『あいつら迷子か、全く世話がやける……』などとつぶやいているのを見て、呆れればいいのか逆に感心すればいいのかわからなくなってもいた。

 

 そして、『これもちょうどいい修行だ』と、ゾロの捜索も含めて『見聞色』の修行ということにし、ため息をつきながらも走り出すレオナを見送った。

 

 

 ☆☆☆

 

 

【これも修行……?】

 

「……何だ、ここは?」

 

「見りゃわかるじゃろ。書庫じゃ」

 

 修行の合間の息抜きだと言って、ゾロがスズに連れてこられたのは、屋敷内にある書庫だった。

 書庫と言っても、収められているのはほとんどがスズとアリスの蔵書だ。なので、収められているものも、ほとんどは彼女達の娯楽目的の本である。

 

 あとは一部、スズが読む農業関係の専門書が混じっているが、その程度だ。

 

 なお、アリスの所有する年齢制限付きの蔵書は、ここに収めることを許されていないため、彼女の自室にある。

 

 そして、なぜそんな場所にゾロが連れてこられているのかというと、

 

「本の整理でも手伝えばいいのか?」

 

「いや、言ったじゃろ息抜きじゃと。ここの本をどれでも好きに読め、という話じゃ」

 

「あ? ……いや、そういうことなら気持ちだけもらっとく。別に本読むの好きじゃねえからよ」

 

 これが、一味の中の知識人枠……ナミやロビン、チョッパーなどであれば喜んだかもしれない。

 あとは、ブルックやウソップもあれで本を読んだりすることもある。

 

 が……ゾロはというと、それよりなら酒でも飲むか、寝るか、トレーニングをするか……というような時間の使い方の方が有意義だと考える人種だった。

 少なくとも、好んで本を読む、という性格ではない。

 

 が、『まあそう言うな』とスズはゾロを連れて図書館を歩き、あるスペースに行く。

 

「本、ないし活字を読むのが嫌いだというなら無理にとは言わんが、『興味がないからやらん』というのはもったいないぞゾロ。やってみれば案外楽しいかもしれんじゃろ。それに……娯楽としてもそうじゃが、修行という意味でも有意義かもしれんぞ?」

 

「? なんで本読むのが修行になるんだ?」

 

 これも理解できない様子。

 知識が武器になるチョッパーやロビン、後は、技術者としての側面も持つウソップやフランキーならまだわかるが、ゾロ自身が本を読んで知識を蓄えたところで何が変わるとも思えなかった。

 

「知識じゃのうて、想像力じゃよ。ほれ、このあたりなんかどうじゃ?」

 

「いや、だから俺は……ん? 何だコレ……絵本か?」

 

 スズが広げて見せたのは、『絵物語』の本だった。

 

 『絵物語』は。ワンピース世界における子供向けの娯楽の形の1つであり、現代日本で言う『マンガ』と近いが、フキダシがなく、場面の一枚絵と、セリフやナレーションを含んだ文章が並べて書いてある形のため、絵本の形にも近い。

 読んで字のごとく、絵が描いてある物語、だ。字もそこまで多くなく読みやすいため、子供や、普段本を読まない大人にも人気である。

 

 実際、普通の活字だけの本はあまり読まないレオナであっても、絵物語はよく読む。

 特に、ここにある本は。

 

 こういうのもあるのか、と眺める程度に見ていたゾロだが、ふとあることに気づく。

 

「……ここにある本、どれもスゥが書いてる本か?」

 

「全部ではないが、それが多いの。いや、母上の本だからここに置いてあるのではなく……純粋に面白い本だから揃えたら、それがほとんど全部母上の本だったのじゃが」

 

「ほー、さすがは『海賊文豪』ってことか」

 

 ゾロ自身は知らなかったものの、その分野でのビッグネームと呼ばれているだけのことはあるのだな、と納得した。

 思えば空島で出会ったときも、ナミ達がスゥの素性を聞いて、驚き興奮していたのを覚えている。それも、これだけの本を――これらも氷山の一角でしかないのだろうし――書いて、しかも世界中で人気を博しているのであれば、当然なのかと。

 

「母上の書く物語は子供にも受けがいいものが多くての。そのせいで、結構な数が『絵物語化(コミカライズ)』されておるんじゃ。というか、母上の本を『絵物語化』するために、当時そこまで多くなかった物語絵師が増えたとすら言われとるな。わしらからすればありがたい限りじゃ」

 

 さらに言えば、作家人口が増えただけでなく、『絵物語』の連載を主に掲載して販売する雑誌……日本で言う『マンガ雑誌』のようなものも、ここ最近生まれて売られ始めていた。

 

 その誕生のきっかけもまた、スゥの書く物語が……『絵物語化(コミカライズ)』されて面白いものがあまりに多かったためであり、またそれによって『絵物語』自体の数が増え、スゥに影響を受けた絵物語作家が増え、ジャンル自体として大きく成長したためだとすら言われている。

 

 ゾロはもちろん、スズですらそこまで把握はしていなかったが、彼女達の母親は、この世界に一つの大きな『文化』とすら呼べるものを育て上げ、確立させていた。

 

「そりゃ大したもんだな……それで、これが『修行にもなる』ってのはどういう意味だ? 想像力がどうとか言ってたが」

 

「ああ、脱線してしもうたの。何、そのまんまの意味じゃよ。母上の書く物語には、剣士が主人公になっておるものも多くてな、そういうのを読んで、色々と想像を働かせることで、修行……というか、自分の力に変えることもできるのではないかと思ってな」

 

「いや、さすがにそれはねえだろ……いくら面白い本だからって、空想と現実をごっちゃにするのは……」

 

「そうとも言えんぞ? 母上の物語の完成度は高いからの……あちこちに、現実にやるとしても参考になる要素が意外と多い。実際わし、いくつもそういうの修行や剣術にも取り入れとるし」

 

「ホントかよ」

 

「ホントじゃって。というか、ある意味それも当然なんじゃけどな。だって母上、実際にあちこち旅して、時には戦って、取材の末にこういう物語書いとるわけじゃから……そりゃ戦闘とか設定、修行風景……そういうのも含めて現実に近いというか、真に迫るもんができあがるじゃろ」

 

「そう……なのか?」

 

 スゥが小説を書くために、あちこち旅して経験を集めて糧にしている、というのは、付き合いも長くなり始めたゾロも承知しているため、スズの行っていることもまったくのデタラメではない、かもしれない、という程度には受け入れつつあった。

 

 しかしそうはいっても、普段から文章に触れる機会などないし、ましてやそれを修行に生かそうと思ったこともないゾロは、今こうして無理やり手に押し付けられた数冊の本が、果たして本当に自分の役に立つのかと疑問でしかなかった。

 

「ま、騙されたと思って読んでみよ。案外ハマるかもしれんぞ」

 

「……まあ、試すくらいなら……いいか」

 

 そうは言いつつも、正直、絵があったとしても途中で飽きない自信がないゾロ。

 手に持った本のタイトルを、改めて見る。

 

 

『覇海の刃』

『DECOLOR』

『キングオブシャーマン』

『るろうに刀心』

『猫夜叉』

『銀(たま)

『戦極・刃叉羅』

 

 

(多いな……)

 

 どうやら、剣士が出てくる、剣で戦う物語を中心に選んでくれたのであろうことは絵でどうにかわかった。

 が、それでも普段本というものに全く触れないゾロは、はたしてコレを何冊目まで寝ずに読めるか……と、修行の時でも感じない不安を覚えていた。

 

(……まあ、合わねえようだったら別にやめてもいいらしいし、文字ばっかの本よりはいいか。暇つぶし程度に考えて読んでみるか……酒もらって飲んでばっかってのもアレだしな)

 

 そして、自室に戻り……ひとまず1冊目、『覇海の刃』を開いたゾロ。

 

 この『経験』が、今後のゾロの振るう刃に、どのように影響して来るのか来ないのか……それはまだ、誰にもわからない。

 

 

 

 





Q.スゥの書く本って、元ネタの名前そのままのやつと、ちょっとだけ捻った名前に変わってるやつがあるけど、何か理由あるの?

A.ちょうどいい感じのパロディネームが思い浮かばなかった時とか、あるいは『この物語はこの名前で出したい!』って思った場合はそのまま使ってる感じです。
特に明確な基準とか意味みたいなものはないですね。
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