大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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この春から人事異動になりました。
今までは比較的余裕がある?部署だったけど、今回行くところは初めて行く部署な上に色々大変そうで……しばらく身動き取れないかもです。

まあどの道今はプロットとか色々継続中ですが……

そんな合間に書いた第212話、どうぞ。


第212話 ある船の中で

 

 

とある日の……多分、午後。

 

え、たぶんって何かって?

いや、午後だとは思うんだけど……今私達がいる場所、ちょっと普通じゃない場所なので……普通通りに時間が流れてるかどうか少し自信ないんだよね。

ママがきちんと計算した上で、対策も立ててここに入ってるから、大丈夫だとは思うんだけど……

 

ってことで私は今、ママと、それからアリスと一緒に……久しぶりにここ『エイプスコンサート』に来ています。

 

ここには、こないだママを回収した時に一緒に持ち帰ったものの他にも、他の時代の貴重な遺物ともいうべき資料やら何やらがわんさか眠っている。

なので、ママから『万全の準備を整えたうえでもう一回調査に行きたいのおおおおお!』っていう申し出があった。

 

それで、その『万全の準備』が先日ようやく整って……さらに今日ちょうど『虹の霧』が発生したという知らせを受けたので、急いでやってきたってわけだ。

 

霧の発生場所から近い『ルルカ島』は、その周辺海域ごと、既に金獅子海賊団のナワバリになっているし、統治自体も好意的に受け入れられている。

なんか、最近までここを治めてたなんとかっていう人が、どうも……重税あり、弾圧ありの悪徳政治家だったらしくて、その時に比べれば、海賊の統治下だけど全然平和だってさ。

そこに駐在させてる『金獅子』の傘下の海賊達に、見つけたら報告するよう言っといたんだ。

 

さらにそのルルカ島には、もともとこの『虹の霧』を研究していたという人がいて……その人に色々と話を聞いた。主にママが。

その結果、『虹の霧』の中を調査するには、中と外……つまりは、通常の空間と『エイプスコンサート』をつなぐ形で、橋みたいなものを物理的に通しておけばいいのだということがわかった。

 

それで、金獅子海賊団が持つ大規模工事作業用の船を動かしてここに来て、その船を外の海域に止め、そこから作業用の足場を伸ばして『エイプスコンサート』内部までつないだ。

こうしておけば、霧が消えて『エイプスコンサート』に取り残されることなく、内部を調査できる……というわけ。

 

また、『エイプスコンサート』には、伝承に語られているような金銀財宝的なものもわんさかあるので――財宝を積んだ海賊船なんかもたくさん眠ってるので当然ではある――それらを頂戴する、っていうのも今回の調査の目的の一つだ。海賊らしく、いただいていく。

 

 

 

財宝の捜索・運び出しその他は、部下達及び傘下の海賊達に任せて……私とアリスは、ママと一緒にあちこちの調査である。

ママのフィジカルは普通の人間程度しかないので、護衛と、あと移動のための足代わりとして。

 

なおアリスがここに来ているのは、さっき言った『橋』をかける際に、すごく長い距離をつなぐことになるので、その負担を軽減する補助要員としてだったりする。

アリスの『リバリバの実』の能力で、かける橋の一部で重力を逆転させることで、負担を大幅に抑えて長い距離を無理なく安全につなげるようになっているのだ。

 

で、その仕事は終わったので、あとはじゃあ私達と一緒に回るかってことで、今一緒にいる。

 

「思った通りだわあああああ! これも、これも、これも……どれも貴重な資料がいっぱいよおおおお! 私の専門分野じゃないものも多いけど、それはそれで生かし方もあるし、持って帰れるだけ持って帰るわよおおおおお! スゥちゃああああん、お願いねえええええ!」

 

「はいはい、わかってるって……『エニグマ』!」

 

ママに指示されるままに、そこらへんに転がっている廃船の中から見つけ出した本やら物品やらを、『エニグマ』で紙にして収納し、さらにその紙を私の体内に取り込んで収納してしまう。

ひたすらその繰り返しで……もう10個くらい船漁ったんじゃないかな?

 

ちなみにママが探っているのは、海賊船『以外の』船だ。

海賊船には、金銀財宝や武器なんかはあっても、学術的に価値のあるようなものはほぼないだろうということで、その調査はさっきも言ったが部下達に任せている。

 

ママと私達が探るのは、明らかに『海賊船じゃない船』だ。調査船とか、客船とか、貨物船とか……そういう感じの民間の船。

戦闘以外の目的のために運用されているような見た目の船を優先的に見ている。その船の『目的』にあった積み荷を積んでいるだろうから、と。

 

その見立てはおおむね正しく、海賊とか野蛮人系の人達は見向きもしないであろう、小難しい専門書や書類、研究資料っぽいものがいくつも見つかった。

 

(とはいっても……私やアリスじゃほとんど何書いてあるかちんぷんかんぷんだけどね……本格的に勉強でもすれば読み解けるのかもだけど)

 

ママに保存を頼まれた資料のいくつかを試しに見てみたけど、見事に専門的過ぎて『???』な感じだった。

……ママの書庫の蔵書を読んで、私もそれなりに色々知識をつけたつもりだったんだけどな……やっぱ専門家にはまだまだかなわないか。まあ、当然と言えば当然だけどね。

 

「にしても……なんか暗いし静かだし、辛気臭くて……この場所あんまり好きじゃないなあ。せっかくお母さんやおばーちゃんと一緒にお出かけなんだから、もっとこう……バカンス的な場所に行きたかったよ。キューカ島とか」

 

「いや一応仕事で来てんだってば……バカンスを求めるな」

 

「おばーちゃーん! コレ終わったら帰りにどっか寄って帰らない? 主に水着の女の人がいっぱいいそうなところとかー、きれいな女の人と触れ合える夜の店があるところか行きたい!」

 

「聞けよ」

 

全力で遊ぶ気満々かつ欲望を隠す気がないな、相変わらず……。

まあでも、仕事終わった後なら別にいいのか……ママが了承すればだけど。

 

「ダメよおおおお、コレ終わったらすぐラボに帰ってすぐさま研究に移るんだからあああああ!」

 

「えー、そんなー!」

 

「まあでも、私はまっすぐ帰るけどおおおお、アリスちゃんはそのまま分かれて遊びに行ってもいいわよおおおお? 帰り道はスゥちゃんに送ってもらえばいいしいいいいい!」

 

「それじゃダメなんだよー! お母さんとおばーちゃんの水着とかナイトガウンとか全裸とかその他諸々が見たくて行くんだから! 一緒に海行ってお風呂入ってご飯食べてその後もフフフ……」

 

ホント欲望隠す気ねーな……。

あとこないだスズも言ってたけど、アリスってばとうとうママも狙いだしたの……?

確かに実年齢からは想像もできないくらい若い見た目してるし、前にパパが言ってた通り『外見(と能力)だけなら完璧』だけどさ……。

 

というか、ずっと『エイプスコンサート』にいたから、肉体的にはホントに若いっちゃ若いんだよね……。

ええと、パパの海賊としての活動期間から計算すると……ああいや、そんなことしなくても普通に聞けばいいのか。

 

「ママ、今歳いくつだっけ?」

 

「? 34歳よおおおお? それがどうかしたのおおおお?」

 

あ、同い年だった。

……同い年の母親かあ……なんか変な気分だな。

 

「34歳か……じゃあまだ全然子供産めるよね?」

 

そして何こっちは本格的にロックオンしてんだ、おい、エロガキ。

母親と姉と妹に加えて祖母にまで手だす気か。

 

「あら何いいいいい? アリスちゃん私と子供作りたいのおおおおお?」

 

「うん! 今すぐじゃなくていいけど、ゆくゆくは。お母さんともスズともレオナとも作って大家族になるのが目標です! ってことでおばあちゃんもいい?」

 

『も』って何だ、『も』って。

私達だって別にそれ了承してないっての。スズなんかむしろ絶対拒否スタンスじゃんいつも。

 

「残念だけどそれは無理ねえええええ。私、スゥちゃんを妊娠した時に色々体いじっちゃってるからああああ、もう子供作る機能は満足に残ってないんじゃないかしらあああああ」

 

「えーそんな! じゃあそれ治せば……おばあちゃん自力で何とかならないの? それかほら、最近傘下に入った『死の外科医』の人いるじゃん、あの人に診てもらったりとかさ」

 

「さすがに元通りにするのは難しいと思うわあああああ! そもそも私あのまま死ぬつもりだったから、遠慮なくあちこちいじっちゃったからねえええええ! それに基本的に私の体は部外者に見せるつもりはないわねえええええ! もし見せたらその医者の人がむしろびっくりしちゃうと思うわあああああ! いろいろやばい技術も応用して投入したからああああ、今の私の体、見た目とは違ってあちこち割と人間とは呼びづらい構造になってるものおおおおお! それにそんな女の相手するのはアリスちゃんも嫌でしょおおおおお?」

 

「いや全然アリ。特に健康的な意味で害がなくて……あ、ボクにもおばーちゃんにもね? そんで心が人間で見た目も好みなら全然OK。……じゃあおばーちゃん、体の問題が解決したら……ボクの子供産んでくれる?」

 

「ん~……見通しは全然立たないし、正直絶望的だと思うけどおおおお、もし次のチャンスがあるなら、もう1人産んでみるのもいいかもしれないわあああああ! その時はじゃあお願いしようかしらあああああ! アリスちゃんも強いから、子供も優秀な子が生まれそうだしいいいいい!」

 

「よっしゃあ! 絶対おばーちゃん治す方法見つけるから待っててね! 燃 え て き た!」

 

……何つー会話だ……。

というかママ、相変わらずそっち方面の倫理観とか道徳観みたいなのぶっとんでんな……まさかの許可出しちゃったよ。条件付きだけど。

 

てか、文脈的に……また改造人間産もうとしてないかこのマッド……?

アリスいいのかそれで。子供、生まれてくる前に改造されるぞ。私みたいに。

 

「それよりスゥちゃああああん! 次はあの船までお願いねえええええ!」

 

「はいはい」

 

気のせいか頭が痛くなってきたのをこらえつつ、ママの小さな体をひょいと抱え上げ、背中の翼で飛んで、その船まで行く。

後ろからアリスも飛んでついてくる。能力で重力を逆転させて浮遊しつつ、『風貝』の推進力で。

 

「…………ん?」

 

その途中、アリスが何かに気づいたような様子を見せた気がしたんだけど……

 

「どうかしたの?」

 

「……いや、何でもない」

 

少しに気になったけど、まあ別にいいかと思って、そのままお目当ての船に降りた。

何かまずそうなことならきちんと報告してくれるだろうし。

 

「………………」

 

えーと、この船は……貨物船、かな? 船体も、内部の備品なんかもかなり痛んでる……かなり昔の船だな。

 

お、船長室っぽい部屋発見。

 

「ママー、航海日誌とかは私もらっていいんだよねー?」

 

「いいわよおおおおお! でも後で一応私にも読ませてねえええええ!」

 

私がここについてきている目的の一つがこれです。

もうだいぶ昔……それこそ、私がまだ賞金首になる前、10代前半の賞金稼ぎ時代から続けてる習慣。襲った海賊の船から航海日誌を頂戴して読むことで、そいつらがたどってきた道程を把握し、その経験やら知識を吸収させてもらうってやつ。

 

何気に今も続けてるので……色んな時代のいろんな場所の船が混在しているここなら、もしかしたら今まで見たことも聞いたこともない冒険をしてきた船があるんじゃないか、と思って。

一応、ここに来るまでに調べた船でも、それらしきものがあれば頂戴している。

 

けど……今回はハズレみたいだな。

この船、単なる輸送船だったみたいだ。何か変わった冒険をしたような記録は……ない。

 

……でも……

 

(! これは……めぼしい情報が全くない、ってわけでもなさそうだな)

 

長い年月で相当傷んでいるようなので、ページを破かないように注意しつつ、1枚1枚、慎重にめくっていく。

そうして読んでいくと、いくつか興味深いことも書いてあった。

 

まず1つ目。

この船はどうやら、『新世界』を行き来していた輸送船のようだ。

 

それなりの航海術と、相応の実力を持つ護衛さえいれば、新世界の海でも航海することは一応可能だし……それ自体はまあ別にいいだろう。珍しくはあるけど、特筆すべきことでもない。

 

けど問題は……今私達は、ルルカ島からこの『エイプスコンサート』に入ってきたということ。

そして、ルルカ島があるのは『楽園』……すなわち、『偉大なる航路』の『前半の海』だ。

 

そしてこの日誌には、『レッドポート』や『魚人島』を通って、航海によって『楽園』に渡った記録は残されていない。

ある日突然、嵐の中で『虹の霧』を通り、『エイプスコンサート』に迷い込んでしまったようだ。

 

つまり……『エイプスコンサート』の出入り口である『虹の霧』は、『新世界』にも出現する、ということになる。そうして行きつく先は同じ場所。

と、いうことは……出現場所や時間、内外での時間の流れの違いという諸問題を解決できれば……この『エイプスコンサート』は、『レッドポート』も『魚人島』も経由することなく、前半と後半の2つの海を行き来できる経路になり得る。

 

いや、もしかしたら……それこそ、他の……東西南北の海にだって行けるかもしれない。

今のところまだ見つけられてないけど、この船と同じように、『楽園』以外の海から流れ着いたとわかる船があれば、その航海記録をたどって、『虹の霧』の出現場所を洗い出せば……。

 

ママが好きそうな情報だな。それに、もし実用化できそうなら……パパも喜びそうだ。

コレはあとできちんと見せないと。

 

そして、もう1つ……この日誌を読むと、どうやらこの輸送船は……かなりブラックな部類の積荷も運んでいたみたいだ。

武器、違法薬物、その他禁制品……そして、奴隷。

思いっきり、ブラックマーケットの取引用の船だな。非加盟国だけでなく、加盟国から違法に調達した奴隷の取引記録もある。……海賊と変わらないな。

 

荒稼ぎしてそうだし……後で金庫とかがないか探してみるか。

 

「ミストリア島、モガロ王国、ウオッカ王国……スフィンクスに……ドレスローザまで? こりゃ随分色々な場所を回ってるな……かなり大手か、この闇輸送業者。あーでも、日付がコレ……60年以上前だ。また随分古い時代に迷い込んだもんだ……今も残ってるかどうかはわかんないな」

 

ひとまず航海日誌は、過去のバックナンバーも含めて全部回収して、と。

 

「スゥちゃああああん! こっちに倉庫っぽい部屋あったわあああああ! 書類とかもあるみたいだからこっち来てえええええ!」

 

「はいはーい……って、アレ?」

 

ママに呼ばれてそっちに行こうとして……ふと気づいた。

アリスがいなくなってる。

 

……あ、でもすぐ近くにちゃんといるわ。『見聞色』ですぐ位置がわかる程度の……船の中の探検でもしてたのかな?

大きいとはいえ1つの船の中だし、はぐれたり居場所がわからなくなったりはしないだろうけど……一応声かけとくか。

 

「アリスー? 私とママ移動するから、あとで気配たどって合流してねー?」

 

『わかったー!』

 

よし、返事確認。大丈夫だな。

じゃ、行こうかママ。

 

 

☆☆☆

 

 

一方その頃。

その、ふいにスゥとソゥの前からいなくなったアリスはというと……船の中をあちこち歩いて回っていた。

 

しかしどうも、適当にあちこち見て回っているだけ、というわけではないようで……。

 

「……ここも……そう、ここもだ。全部……あ、ここの鍵……うん、進める」

 

甲板から入って……通路を進み、いくつかある扉の中から1つを選んで開ける。

その奥にあった通路を進み、突き当りに見つけた階段を下りる。

 

その先にあった重厚な扉。

鍵は壊れていて開いていたので、そこを開けて――扉がかなり重い上に錆びていて動きづらく、ギギギギ……と耳障りな音が鳴った――さらに奥に進む。

 

その足取りには、不思議と……迷いがないように見えた。

たまたまソゥの指示通りに来た船であり、その構造を知っているはずがないにも関わらず。

 

(……通路も、扉も……何で、見覚えがあるんだろう……?)

 

そして、行きついた先は……牢屋だった。

何も、誰も入っていない空の牢屋もあれば、白骨死体が転がっている牢屋もある。その骨も、時間が経ちすぎていて、触れば崩れてしまいそうだ。

 

その中の1つ……誰も入っていない牢屋の前に、アリスは立って……ふと、壁を見る。

 

何かでひっかいたような傷がついていた。

よく見るとそれは、文字のようにも……

 

アリスは、そこに顔を近づけて、よーく目を凝らして……

 

 

「……ア、ル……セ……リス……?」

 

 

「………………」

 

「…………ああ、そうか」

 

ふと、何かに気づいたように……あるいは、何かを思い出したように、

アリスは、すっきりした表情になって、ポン、と手を打った。

 

そして、あたりを見回し……今度は、今来た道をゆっくり歩いて戻っていき……甲板にまで出て……船の淵に立って、下を覗き込んだ。

今はここは『エイプスコンサート』ゆえ、割と近い位置に、穏やかな水面や、他の船の残骸が見えるが……もしも、これが海の上を走っていた時であれば……船の動きのせいで白波が立つ水面が見えただろう。

 

……かつて、彼女が必死の思いで逃げ出し……イチかバチか、浮き輪をもって飛び込んだ時と同じ水面が。

 

(この船、たぶん……ボクが売られた船だ……! 名前も覚えてないけど、どこかの島で攫われて……でも、売られる前に船が嵐に遭って、混乱してる中で逃げ出して……それで……)

 

「……ダメだ、これ以上は思い出せないや」

 

 

 

『アリスー? 私とママ移動するから、あとで気配たどって合流してねー?』

 

「! わかったー!」

 

 

 

 

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