大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第214話 ビッグ・マムの『食い煩い』

 

 

 とある日の午後のこと。

 

「はぁ……幸せ……♪」

 

 ここは、ビッグ・マム海賊団の本拠地『万国(トットランド)』の内部にある、いくつもの島のうちの1つ……アイス島。

 その町中にある、とあるカフェ。

 

 私はそこで、とろけるような美味しさのアイスクリームに舌鼓を打っていました。

 

 いやあ、ホントにこの島、っていうか国……食のレベルが高いんだよなあ。

 

 特にお菓子。こんな普通の町中にある、ごく普通の、特に高級店とかでもないお店で、これだけのレベルのスイーツが食べられるなんてな……なんていい国だ。

 

 多分だけど、これ他の国とかで食べようとしたら、高級店とかで桁が1つ2つ違うベリーがかかる味だもん。

 

 私、もう結構長いことあちこち回って取材して、そこで割と色々なものを食べ歩きとかもしてるんだけど……ホントこの国は食に、特にお菓子に関してはぶっちぎりであらゆる意味で充実してる国だと思う。

 美味しいし、味の割に値段も安いし、量もめっちゃあるしで……コスパ最強。

 ボスのビッグ・マムが一番こだわって力を入れているという分野だけある。

 

 ただ欠点として……今言った通り、ここは『ビッグ・マム海賊団』のナワバリ、というか本拠地なので、気軽に食べに来られるような場所じゃない、っていうのがあるんだよねえ……。

 普通にちょくちょく食べに来たいところなんだけど、今日みたいに用事がないと部外者はそうそう立ち入れないんだ。

 

 あ、言うの遅れたけど、今日こうして私がここにいるのは、例によってビッグ・マムの『お茶会』に招待されたからです。

 

 数年前、最初に招待され……そこで、結婚話を持ち掛けられつつも、どうにかかわすことができたあの時から、私は何度かこの『お茶会』に呼ばれている。

 そのたびに結婚話は出てくるんだけど、最初の時と違って『結婚しろ(意訳)』って感じじゃなく……『もしそうなれたら嬉しいねえ』とにおわせてくるだけ、程度にとどまってる。

 諦めていない、という圧力は感じるものの、そこまで追い込もうとしてる感じじゃないんだよね。……少なくとも、今はまだ。

 

 パパの予想では、『金獅子のシキの娘』というバックグラウンドに加えて、元々狙っていた『海賊文豪』というネームバリュー、そして新たに手にした『王下七武海』の地位まで含めて、最大限に活用できる形で私を迎えるために、今は様子を見つつ、色々と準備をしてる段階なんだろうとのことだ。

 私が感じた通り、『あきらめてはいない』わけだから、この先いつになるかはわからないけど、準備ができた段階でまた『結婚しろ(意訳)』って言ってくるだろうとのこと。

 

 そしてその時までに、パパも反撃のために準備をしておく……ということらしい。

 

 全くもう……パパといいビッグ・マムといい、海賊だからそういう感じが当たり前なのかもしれないけど、普通に仲良く付き合って、楽しく美味しく過ごそうって気にはならないのかね……。

 そんな謀略やら暴力やらが渦巻く展開に持って行っても、全然楽しくなんかないのに。

 

 ……そんなんだったらそもそも海賊になんかなりゃしないか。

 やめよう、こんなこと考えるの。無駄だし、せっかくのお菓子がまずくなる。

 

 今は何も考えず、ただ美味しいお菓子を楽しもう。

 そのために今回は、お茶会の前々日のうちにこうして現地入りしたんだから。当日を待つ間に、お茶会の招待客という立場を利用して、『万国』の島々をあちこち回って色々なお菓子を食べ歩きして楽しむために。

 

 もちろん、お茶会当日に食べられる色々なおかしも楽しみだけど、それはそれとして……本当にこの『万国』は、いくら味わっても味わい足りないくらいの、お菓子の遊園地だからさあ。

 何度も思うけど、自由にちょくちょく来れないのが残念で仕方ない。……だからといって、政略結婚してビッグ・マムの家族になる気はさすがにないけどね。

 

 そんなわけなので、残り2日、私はまだまだ食べ歩きを楽しむつもりだ。

 ここ『アイス島』で楽しんだら、次はお隣の『ビスケット島』、さらに『キャンディ島』、という風に回っていって、最後に大本命の『チーズ島』。思う存分楽しんだら、お茶会に遅れないように『ホールケーキ島』に戻って、というスケジュールで、『万国』観光を楽しむつもりだ。

 

 ……楽しむつもり、だったんだけど……

 

 

『緊急事態発生! 緊急事態発生!』

 

『女王様の“癇癪”です! 現在、この島に向かっている模様……島民の皆さんは、直ちに避難の準備を進めてください! 繰り返します……』

 

 

 突然、町中にそんな放送が響き渡った。

 そして、それを聞いた、ここ『アイス島』の人達が、顔を青くして逃げまどうように……すごい勢いで町中に混乱が広がっていく。

 

 ……え、何今の放送? 何コレ……『癇癪』?

 ……どゆこと?

 

 

 ☆☆☆

 

 

 四皇“ビッグ・マム”こと、大海賊シャーロット・リンリンには、『食い煩い』という持病が存在する。

 

 その時『食べたい』と思ったものが不意に頭の中に浮かび……それを食べるまで癇癪を起こして暴れ続けるというもの。

 意識はほぼなく、ただただそれを求めて全てを破壊し、むさぼりながら突き進む。『食べたい』と思ったものが口に入るまで、決して止まらない。

 

 今回の『お題』は……

 

 

「ガトーショコラぁあ―――!!」

 

 

 

「女王様は現在、ゼウス様に乗って海を渡り、アイス島に向かっています! 島民に避難勧告を!」

 

「既に出している! 何でガトーショコラ食べたいって言ってんのにアイス島に向かってるんだよ……せめてカカオ島に向かっていれば……」

 

「『食い煩い』だ、理屈など通じないさ。しかし、よりにもよってガトーショコラとは……」

 

「作るのに時間がかかる菓子だ。厨房に問い合わせたが、1時間から1時間半ほど見てほしいと」

 

「そんなに待っていられるか! 1時間も放置してみろ、運ぶ時間を考えても、アイス島は半壊……下手すれば滅んじまうぞ!?」

 

「だが半端な出来のお菓子でママが満足するはずもないだろう……待つしかないでポン」

 

「なら、作るよりもカカオ島に問い合わせて在庫のガトーショコラを回してもらった方が……」

 

「だめだ、どっちみち時間がかかりすぎる! アイス島とカカオ島はナワバリの中では逆方向だからな……ここで作ってアイス島に持って行った方が早い」

 

 本拠地『ホールケーキ島』の『スウィートシティ』、その中心にある『ホールケーキ城』にて、癇癪を起こしたビッグ・マムへの対処のため、部下達はてんやわんやの騒ぎだった。

 

 『食い煩い』を起こしたビッグ・マムは、町中だろうがどこだろうがお構いなしに暴れ回し、島民やホーミーズはおろか、自分の息子や娘達にすらその暴威を振るう。何を言っても止まらない、誰にも止められない。

 止める方法はただ1つ。望むお菓子を食べさせることだけ。

 

 だからこそ、彼女が望む『ガトーショコラ』をどうにかして、一刻も早く調達する必要があるのだが、それを待っていては被害が大きくなるばかり。

 頭を抱える部下達だったが……それから少しして、そんな彼らの元に、不思議な知らせが届いた。

 

「報告です! 十数分前にママが『アイス島』に到着……したのですが……なぜか町に向かわず、外周をぐるりと回るように明後日の方向に進んでいったと……現時点で、その途中にいたホーミーズ達には被害甚大、死者も多数出ていますが、それ以外の被害は皆無です!」

 

「道をそれて町に行かずに……? それは、ありがたいが……なぜだ?」

 

「わからんが、好都合だ。遠回りしてくれている間に、ガトーショコラを作って届けるんだ! 運搬班、用意をしておけ!」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ―――遡ること数分前。『アイス島』郊外の荒れ地にて。

 

 

 パパから話だけは聞いていた。

 ビッグ・マムの持病であるらしい『食い煩い』について。

 

 その時食べたいものが口に入るまで、際限なく暴れ続ける……という感じらしいけど、ビッグ・マム自身がそもそも滅茶苦茶な戦闘能力を持っているもんで、ただの癇癪、で済ませられるようなもんじゃなくなっている。

 そのことは、私が今見ている光景からも察することができる。

 

「……なんかもう、何アレ……ゴジラ?」

 

 身長9m近くあり、もともとモンスターじみた見た目なもんだから、それが全てをなぎ倒しながら進んでいくっていうのが……怪獣映画にしか見えない。

 途中に無数にいる、木とか岩とかの『ホーミーズ』達を殺戮しながら(せっかく徴収した寿命の無駄遣い……)町に向かっていく様子を見ることができた。

 

 アレが町に来たら……うん、それこそ怪獣映画の蹂躙シーンみたいになるよな。

 

 しかも、この島、というか『万国』の町は基本的に建物部分の多くがお菓子でできてるから……食べながら前進していくというすさまじい光景が広がることになるだろう。

 今も、

 

「コレじゃねー! コレもちがーう!!」

 

「きゃー!!」

 

「助けてー!」

 

「ママ、やめてママ! そっち行くと町があるから!」

 

 森の中にも生息しているお菓子系『ホーミーズ』をむさぼりながら進むビッグ・マム。

 隣にいる、側近であるらしい雷雲のホーミーズ“ゼウス”が止めようとしているけど、耳に入っているようには見えない。

 

 このままいくとマジで町が滅ぼされるのでは……それはちょっと……

 いや、別に私に町を守りまでする義理はないんだから、普通に避難すればいいのかもしれないけど……下手したら人死にが出そうなパニックを放置しておくのもなあ。

 

 あと、まだアイス島のグルメを味わいつくしてないので、それも惜しいし……やれるだけやってみるか。

 

 まあでも、当然ながらそのままビッグ・マムの前に立ちはだかって、直接的な戦闘力で止められるとは思ってない。そこまで甘くないだろう。

 正気を失いながらも、狂暴性は元のままどころかひどくなってて、さらには普通に戦闘中に使う技や、覇気だって使うらしいし……自殺行為だ。

 

 だから、ここは、剣じゃなくて……ペンを使おう。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ズシン、ズシン……と大地を踏みしめて歩くビッグ・マム。

 一歩一歩、着実に町に近づいていく。建物がお菓子でできている結果、町からはお菓子のいい匂いがしてくるので……それがマムを引き寄せているのだ。

 

 隣にいるゼウスは、懸命に『ママ、そっち行っちゃまずいって!』と止めようとするが、聞く耳を持たず、そのゼウスをひっつかんで途中にいるホーミーズやらその他の障害物やらにぶつけて破壊して進んでいく始末。

 『雷雲』であるゼウスにダメージはないが、それをぶつけられたことで高電圧の雷撃を叩きつけられることになったホーミーズ達は、すべからく全滅してしまっている。まさしく怪獣が通った後のような惨状が、ビッグ・マムが通った後に道になって連なっていた。

 

 このままいけば、もう10分もすれば町に到達してしまうだろうというところまで来て……しかし、そこでビッグ・マムがふと足を止めた。

 

「んん!? 何だいこりゃあ……?」

 

 『食い煩い』の発作が起こっている間も、多少ではあるがビッグ・マムに意識はあるし、意思疎通もできないわけではない。

 ただ、ほぼほぼ理性的に対応するだけの頭がないだけで。

 

 そんなマムの目の前に現れたのは……1つの大きな看板だった。

 そこには、こう書かれていた。

 

 

『ガトーショコラ あっち →』

 

 

 簡潔な文章と、明後日の方向を指し示す矢印のマーク。

 なお、その矢印が示している先は、町とは全く違う方向だった。

 

 横から一緒にそれを覗き込むように見たゼウスは『なんだこりゃ』と思った。

 いや、意図はわかる。おそらくは、町の住民か誰かが、マムを誘導しようとしてここに設置したものなのだろう。一時的にでも、マムの注意をそらすために。

 

 しかし、こんなものでマムは止まらない。

 『邪魔だァ!!』と看板をなぎ倒して、そのまま先に進む光景が見えるようだった。

 

 が……ゼウスのそんな予想は、幸か不幸か外れることになる。

 

「(くんくん)……! そっちかぁ! ガトーショコラぁぁああ!!」

 

「えっ!? ま、ママ!?」

 

 なんとビッグ・マムは、その看板の指示通りに進行方向を変え、素直に矢印の示す先に向かって突撃しだしたのである。

 なぜ素直にこの看板の指示通りにしたのかわからず困惑しつつも、町にまっすぐ向かわなかったことはひとまずよかったと考え、ゼウスはそのままマムについていった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 私がやったことは単純である。

 

 私は実は、この『アイス島』に来る前に、すでに『カカオ島』に寄って観光を済ませていた。あそこって、ビッグ・マムのナワバリの中では一番外側で、入り口にあたる場所だからね。

 

 そしてそこでお土産用に大量のチョコレート菓子を買い込んでいた。

 その中には一応『ガトーショコラ』もあった。

 

 それに加えて、この『アイス島』の町にあるアイスクリームの販売店から、チョコ系のアイスを調達した。これも大量に。

 そうして、種類を問わず『チョコレートのお菓子』を大量に用意したのである。そしてそれを、解けないように『エニグマ』で収納して持ち運んでいた。

 

 なお、アイス店の店主は避難してしまっていたため、お金だけ一応置いて商品をもらってきた。

 怒られたら後で素直に『勝手に持って行ってごめんなさい』って謝ろう。

 

 そしてあの看板を設置し、その矢印が示す先に、大量のチョコ菓子とチョコアイスを設置。

 そしてその場所は、ビッグ・マムが到達するであろう看板の位置から見て風上であり、風に乗ってチョコレートの匂いがビッグ・マムに届くように計算していた。

 

 結果、よりご所望のガトーショコラに近い匂いがするこっち側に、ビッグ・マムはひきつけられた……というわけだ。

 

 そして今、距離を放して見つかりにくいところで、設置したチョコの山にビッグ・マムが到達したのを確認した。

 ぐるぐるお目目になり、よだれをダラダラ流し、明らかに正気じゃないモンスタールックスの老婆が、手づかみで大量のチョコを口に放り込んでいく。

 結構な量のアイスも一気食いしてるんだけど、頭痛くならないのかな。

 

 あ、今ちょうど私が用意してたガトーショコラも食べたけど……

 

「ガツガツ……違うちがーう!! コレじゃねー! コレも、コレもちがーう! ガトーショコラを食わせろォ!」

 

 いや、食ったよ今間違いなく……。

 

 まあでも、仕方ないっちゃ仕方ないか……あくまでお土産用に買った普通サイズのだから、ビッグ・マムの体格からしたら小さすぎて誤差だもんな……。

 悲しきかな、この展開も予想はしてた。量が足りなくて満足しない、あるいは気づかないんじゃないかって。

 

 だから、あの看板の位置で直接食べさせるんじゃなくて、ここまでおびき寄せて少しでも距離と時間を稼いだわけで。

 

 ……てか、違うって言ってる割にはきちんと全部食うのね。

 

 けど、満足しなかったとなると……

 

「やっぱりあっちだ……ゼウス! ゼウスぅう!」

 

(あぁ、ダメだったか……)

 

 やはり、さっきまでと同じく町を目指してきた道を戻り始める。……歩いて。

 

 最初は、さっきまでそこらへんにいたゼウスを呼んで、それに乗っていこうとしたみたいだけど……なぜだかゼウスがいなくなってて、呼んでも来ないので、めんどくさくなって自分の足で歩きだしたみたいだ。

 こっちとしてはありがたいけど……どこ行ったんだろ?

 

 なお、これはあとから知ったことなんだけど、ゼウスはビッグ・マムがチョコを食べている間に『ママ、おいらもちょっとおやつ食べてくるね』と言って、その辺に発生していた雷雲を食べに行ってしまったのだった。

 呼ばれても戻ってこずにおやつ(雲)優先とは……食い意地張ってるな……後で怒られない?

 

 しかし、それでもビッグ・マムは自分の足で町を目指し、ついにはさっきの看板の位置まで戻ってきて……

 

「あー……これは結局ダメかな……。さすがにこれ以上時間稼ぎはもちろん、ビッグ・マムを止める方法はさすがに……」

 

「いや……十分だ。よくやってくれた、『海賊文豪』」

 

「!」

 

 離れたところからビッグ・マムを見ていた私だったが、唐突にそんな声が聞こえた。

 

 振り返るとそこに立っていたのは……小豆色の髪の毛に鋭い目つきの男性。

 シャーロット家次男、“将星”カタクリその人だった。

 

 手には、どでかいフリスビーみたいな茶色の……あ、それもしかしてガトーショコラ!? いや、でかっ! サイズがバカでかい!

 なるほど、『食い煩い』のビッグ・マムに食わせるにはこのくらいのサイズが必要なのね。そりゃ普通の人間のお土産サイズじゃ足りないわけだわ。

 

「お前の行動は単なる時間稼ぎだったかもしれないが、それでもこの十数分は、滅ぶはずだった『アイス島』の運命を大きく変えた……後は任せろ!」

 

 どっかで聞いたようなセリフと共に駆け出すカタクリ。

 ビッグ・マムの背後からすごい勢いで駆け寄っていき……

 

「こっちだ、ママ!」

 

「あぁ!? 誰だぁ!? ガトーショコラはどこ……もがっ!?」

 

 振り向いたと同時にガトーショコラフリスビーを、気円斬みたいな勢いでぶん投げて、ビッグ・マムの口に放り込む。見事IN。

 

 一瞬の沈黙。

 ビッグ・マムは、そのまま口に入ったそれをもぐもぐと咀嚼し……味わい……

 

「おォいし~~~!! これこれ~~~!!」

 

 満面の笑顔になって……今の今までまき散らしまくっていた殺気を、嘘のように霧散させた。

 どすん、と豪快に腰を下ろして、何度も何度も噛みしめて、待望のガトーショコラを味わって……ごくん、と飲み下すと、満足したように仰向けに横になった。

 

 こうして、アイス島の危機は去ったのだった。

 

 なお、あんだけの大暴れをかましておきながら、ビッグ・マムにはそれまでの記憶がほとんどなく、『なんかやたら島が荒れてるねえ……ちゃんと片付けておきなよ?』と言い残してさっさと帰って行ったらしい。

 ゼウスがあんまりにも来ないもんだから、代わりに呼んだプロメテウス(ホールケーキ島で留守番してた)に乗って。

 ゼウスは後でこっぴどく怒られて、泣きべそかいてたそうです。……まあ自業自得だけど。

 

 ……にしても、こんなセルフ怪獣災害(しかも自覚も記憶もなし、反省もなし)に毎度悩まされながらもこの国に暮らしてんのか、『万国』の国民達は……。

 それだけ『四皇』のお膝元っていう安心感は魅力的なのか……。税代わりに寿命を徴収され、時々起こる『癇癪』に耐えてでも暮らしていたいほどに。

 

 

 

 なお、その後のことなんだけど……ガトーショコラ気円斬で暴走を止めたカタクリに加え、ガトーショコラ完成までの時間を稼いで町を救ったとして、私もなんか英雄みたいな扱いで町に迎えられてしまった。

 お土産にどっさりアイスもらったし、勝手にチョコアイス持ってった店の店主さんからも『全然かまいませんとも! むしろもっと持って行ってください!』ってまたお土産もらっちゃった。

 

 それはよかったけど……なんか今回のことで、全体的にビッグ・マム海賊団から私への評価というか好感度がさらに上がってしまった気がする。

 いや、海賊団だけじゃなく、なんか国民達からすらも(特に『アイス島』の人達)そういう感情を向けられている気が……

 

 ところどころ聞き取れたんだけど、なんかひそひそ話で『ご結婚の』とか『早めて』とか『お相手は』とか話してたみたいだし……セルフで墓穴掘っちゃった感があるな……。

 けど、あそこで町を見捨てて、ってのも後味悪かったし……ううむ。

 

 まあ今回は、お礼としてビッグ・マム海賊団から、お土産にめっちゃいっぱい、色んな種類のお菓子をもらえることになったので、よかったと思うことにしておこう。

 

 ……政略結婚云々については、もともと懸念ではあったわけだしね。好感度か色々変わったかもしれないが、対策すべき危機だったことに変わりはないわけだし。

 

 

 ああ、あともう1つ。あんだけの大騒ぎがあった後だったにもかかわらず、普通にその後の『お茶会』は予定通り開催されました。

 まあ、人的被害はなかったわけだし、もうゲスト色々この国に到着しちゃってるし……そもそも中止にしたらビッグ・マムの機嫌悪くなるだろうからね。これは仕方ないか。

 

 マジでこの『癇癪』、この国の人達にとっては生活の一部なんだなあ……。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「……っていうことが前にあってね? そんでこれから見る舞台劇は、その時の体験をもとにして脚本書かせてもらった奴なの」

 

「へー、そうなんだ……またすごい経験してきたんだねお母さん……」

 

「聞きしに勝る化け物じゃな、『四皇』ビッグ・マム……そんなのといずれ……(ぼそっ)」

 

「お土産のお菓子は美味しかったけどなー」

 

 それから数か月後。

 私は娘達3人を連れて、修行の息抜きも兼ねて、『グラン・テゾーロ』の劇場に舞台演劇を見に来ていた。今言った通り、私が脚本手掛けた奴の試験公演が今日あるんだよね。

 

 どんな感じに仕上がってるかなー、娘達も楽しんでくれるといいなー。

 

 ……おっ、照明落ちた。始まる。

 

 

 

『ご来場の皆さま、お待たせいたしました! それではこれより、『舞台版“海の戦士ソラ”絶望の国の大怪獣』の試験公演を開始いたします! 最後までごゆっくりお楽しみください!』

 

 

 

 

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