大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第218話 『グランリブート』を阻止せよ

 

 

(未来人、か……とんでもないのが出てきたなあ……)

 

 『天国への扉』で読んで、さらに本人たちの口から聞かされた未来の話が衝撃的すぎた。

 まさかこの世界が、あと1年かそこらで滅びるとは……

 

 とても信じられない、と言いたいところだけど……直接『読んだ』結果だからなあ。

 やっぱり、彼女達が未来人だってところも含めて事実なんだろう。

 

 そして、その目的は……『グランリブート』の阻止。

 その為に力を貸してほしい、と今頼まれたところなわけだけど……

 

「もちろん、海賊であるあなた方にご協力をお願いするのに、タダでなどという虫のいいことは言いません」

 

 と、スノウ。

 彼女はそう言いながら、持ってきていた荷物の中から、何かを取り出した。

 

 それは……紙でできた筒だった。

 なんか、卒業証書とか入ってそうな形だな……結構大きめで、長さ1mくらい?

 

 そして実際に、それを外して中から……くるくると巻かれた紙を取り出した。

 

「未来のあなたが持たせてくれたものです……母上。この時代で戦うための武器として。そして同時に……あなた方に協力を仰ぐ見返り、ないし手土産として」

 

「血のつながった家族とはいえ、大海賊である『金獅子』や『海賊文豪』に頼みごとをするのに、空手じゃあまりに都合がいい、って言われてね。それ自体も、本気でこの問題に取り組むべきだっていう指標にもなるだろうからって……用意させてもらったわ」

 

「ほォ……きちんとわかってんじゃねえか」

 

 パパ、悪い笑みでそんなことを。

 さすが海賊。世界の危機だろうが何だろうが――それもまだ信じ切れていない部分もあるのかもしれないけど――きちんともらうもんはもらうつもりであるらしい。

 

 大海賊の金看板、その意味、ないし重みをこの中で一番理解しているのはパパだ。……そして、その生かし方も。

 だからこそ、事情に関わらずそういうのを安売りすることはしないし、最大効率で使おうとする。……総じていつも通りだな。

 

 そんな間にも、スノウは巻紙をくるくると広げていって……長いな随分?

 部屋の床にころころと転がしながら開いていくそれは、長さ数mにも及ぶサイズだった。ちょっとした横断幕くらいになるかもしれない。

 

 そして、その端っこまで全てが開ききった瞬間……ぽん!と子気味いい音を立てて、その紙の上に、何かが現れた。

 ああ、収納用の『エニグマ』だったんだな、と思いながら見ていたんだが……

 

 

「「「…………は?」」」

 

 

 そこに現れたものを見て、私たち全員……絶句した。

 絶句するしかなかった。

 

 私やアリス、側近2人だけでなく……パパすら唖然として言葉が出ない、目の前の光景が信じられない……っていう感じになってる。

 

 ……こんなもん見せられたら、そりゃ……こうなるよ。

 こうなってもおかしくないよ。なって当たり前だよ。

 

 だって、これ……

 

「スノウ……イリス…………これ、全部本物?」

 

「はい、もちろんです母上。全て本物の……『悪魔の実』です」

 

 大きく広げられた、横断幕みたいな紙の上。

 その一面に……グルグル模様が特徴的な果実が置かれていた。何十個も。

 

 売れば1つ1億ベリー。

 しかし、ものによってはそれ以上の値段が当たり前のようにつく。むしろ、それによって手に入る力を考えれば、1億ベリーなんて安いとすら言えるだろう。

 確か……ワンピース原作で、『オペオペの実』が50億ベリーで取引されたんだっけか……。

 

 そんな海の秘宝が、何十個もこんな無造作に……

 

超人系(パラミシア)29個、動物系(ゾオン)35個、自然系(ロギア)9個。その他、図鑑に載っていないため名称・分類不明のものが32個……合計105個。我々が未来から持ち込むことができた悪魔の実の全てです」

 

「もちろん全て、『人造』なんかじゃない……天然物よ。名前が判明しているものはここにリスト化してあるわ。お母さん達で、好きなように使って」

 

 そう言ってイリスが差し出してきたリストを受け取る私。手が震えないように割と必死です。

 

 とんでもないもん持ち込んでくれたな……この未来の娘達……!

 

 

 ☆☆☆

 

 

 さっきも言ってた通り、未来の世界はもうすでに滅びかけている……いや、実質もう滅んでいると言っても過言じゃない有様だ。

 

 そもそも『敵』がいない。戦う相手が、奪い合う相手がもういないのだ。

 海賊や山賊どころか、環境破壊のせいで海獣や海王類すらいなくなったし、貴族とか天竜人とかの、文明的な世界だからこそ暴虐を振るっていた搾取階層なんかも、とっくの昔にいなくなっていた。

 

 人間同士の争いなんて、もう起こらない。起こすだけの力ももう、ない。

 争いなんか起これば、全部巻き込んで本当にすぐに『終わる』。協力しなければ滅ぶしかない……ってことを、皆、否応なしに理解している世界だったそうで。

 

 ゆえに、食べれば力を手に入れられる『悪魔の実』も……その『力』に需要がそもそもなくなっている上に、むしろ前述の理由で不要な『力』を手にすることを忌避するレベルになってしまったので、誰も欲しがらない、食べたがらない、という有様だ。

 

 加えて、世界中にいる人類のほとんどが死んでしまった世界では……当然、これらの実を食べた前任の能力者たちも死んでいるわけで。

 能力者が死ぬと、その『悪魔の実』は世界のどこかに現れる。なので、割とポンポン『悪魔の実』が見つかるわけなんだが……それを見つけても食べる者がいない。

 

 ごく一部、例外的に『力』に結びつかない、かつ生活に便利だったり、暮らしないしサバイバルを支える能力だけは重宝されていたようだ。そういう実が見つかった時は、食べて役立てていた。

 

 残りは、『とりあえずとっておくか』って感じで保管されていたそうだ。

 そして、死蔵していても誰も使わないってことで……今回、過去に行く二人に全部持たせちゃえってことになったわけだ。

 

「我々にとっては、持っていても使い道のないもの、という認識でしかもはやなかったのですが……まだ文明が力強く残っているこの時代であれば……価値は高いかと思いまして」

 

「高いどころじゃないよー……下手したら世界滅茶苦茶になるよこんなん……」

 

「そう? まあ、もうすでに世界が滅茶苦茶になってる時代から私達来てるから、活気があるうちに色々やるなら全然ありじゃない? って思っちゃうのよね……」

 

 しれっとそんなことを言うイリスだが、当のその2人以外は……もうなんか、全員何とも言えない顔になってるよ。そりゃなるよ。

 

 正直、扱いに困るレベルの手土産である。もはや爆弾だ……こんな、ひとところに大量の悪魔の実を……。

 しかも中には、今の時代にまだ能力者が生きているものもいくつもあって……これ、うかつに表に出すわけにはいかないよ。

 

 いや、使い方次第で、あらゆる意味でものすごい武器になるから、嬉しいのはそうなんだけどね?

 

 

 ☆☆☆

 

 

 さて。

 手土産のあまりのぶっ飛び具合から、この問題に対する2人の姿勢のガチ度合いを嫌でも思い知らされることになったわけだが……これからどうするか。

 

 とりあえず、スノウたちが言ってることは事実だとして動くよ。『グランリブート』の阻止ね。

 

 海軍や政府の掲げる正義に絶望したゼファーさんが、『すべて海賊が悪い』って極端な考え方を持つに至って……『新世界』の海賊を全削除するために起こした災害だったんだよな。

 

 そのために具体的にやることとしては、これからゼファーさん率いる『NEO海軍』とやらが破壊するとされている、『エンドポイント』とやらを壊させないようにすること。

 加えて、ゼファーさん達を確保すること。この2点だな。

 

 といってもまあ、そのために彼が動き出すのは、2人に聞いた話だと……もうあと1年くらいは先の話らしい。

 であれば、割とまだ余裕はある。少なくとも、色々と情報を集めたり、それを元に作戦を考えるくらいの時間はきちんと残されていると見ていい。

 

(まあ、夏休みもテスト前も、そんなこと言ってると時間なんてあっという間に過ぎていくもんだから、それでもきちんと危機感は持って迅速に動かなきゃだけどね……コレ、対応ミスったら吹っ飛ぶのは成績じゃなくて世界そのものなんだから)

 

 そんなわけで……2人の身の上はわかったので、場所を移した。

 ナワバリの中の支部じゃなくて、本拠地の『メルヴィユ』に。

 

 本格的に動くなら、設備その他が全てそろってるここがいい。ここじゃなきゃダメだ。

 盗聴防止仕様の電伝虫とか、関係各所への連絡手段とか、色々あるし。

 

 で、まずは情報を集めるところからスタート。

 

 『七武海』の特権を使って、それとなくゼファーさんの様子や、『エンドポイント』についての情報を海軍に問い合わせる。

 せっかくの権力だ。ここぞって時にはきちんと使わせてもらおう。

 

 それと同時進行で、テゾーロ達に相談して、それらに関する情報を……些細なものでもいいから集めて報告してもらう。

 洋の東西裏表を問わず強力なパイプをいくつも持っている彼らなら、海軍でも調べられない――少なくともすぐには――情報でも持ってきてくれるだろう。

 

 とまあ、そういうわけで私達は、しばしの間それらの情報を待つ姿勢に入っている。

 すぐに動くこともできない以上は、ね。緊張感はある程度保ちつつも、緊張しすぎず、落ち着いてまずはその時を待たないといけない。

 さすがにずっと緊張しっぱなしじゃあ、疲れるだけだしね。

 

 そういう意味では見習うべきなのかもな……あそこにいる面々を。

 

「つ・ま・り! さっきは空気的にシリアス極まりない感じだったから流しちゃったけど、ボク、無事に未来でお母さんと結ばれて! その結果としてスノウとイリスが生まれたわけなんだよね!? やったぜ! よくやった未来のボク!」

 

「は、はあ……確かにそうなのですが……」

 

「あははは……この時代のお父さん、未来の倍くらい元気で明るくて賑やかなのね……」

 

「こ、こやつ本当にというか、とうとうというか……いや、今のこやつじゃなくて未来のこやつじゃというのはわかっとるけども、それでも……本当に母上を手籠めに……」

 

「アリスすげー……ホントに母ちゃんと子供作っちゃったんだ」

 

 ソファに腰かけてのんびりしつつ、未来から来た2人に色々と聞いている娘3人の図。

 

 ここに帰ってきたときに、待機してたスズとレオナにも、2人の素性は説明済みである。

 

 2人も、色々と気になってて聞きたいことはたくさんありつつも、説明中のシリアスな空気の中では、それを聞くどころか態度に出すこともできなかったようだった。

 

 しかし話がひと段落して、こうしてのんびり休む時間を取れる段階に移ったことで……我慢していた分も楽しく、遠慮くなくおしゃべりしていらっしゃる。

 

 そしてこれも予想通りと言えばそうなんだけど……話題は『家族』について、か。

 

「ええと……スゥとあの2人の関係って、親子なんだよな? 未来のことではあるけど、お腹痛めて生んでるわけだから。そうすると……義理ではあるけど、あそこの3姉妹とも姉妹なのか」

 

「でもあの子達、アリスちゃんの子供でもあるんですよね。そうなるとアリスちゃんとの関係って……親子兼姉妹……?」

 

「おぉぅ……口に出すと、中々にすさまじい間柄だな……」

 

 ホントにね。

 有言実行……ホントにあの子、未来で母親(私)をモノにしてみせたってんだから驚きだ……。いやでも、あの子ならやってもおかしくないとも同時に思えてしまうんだよな。

 

 加えて言うなら、私は別に、それを不快とも何とも思っていなかったり。

 いや、さすがに積極的に受け入れるつもりはないけど……最終的にそうなったとしても、『まあ、アリスなら嫌じゃないかな』とか思えてしまいそうな自分がいます。

 

 ……インペルダウンの中でもちょっと思ったっけな。

 そしてそれぽろっと本人の前で呟いちゃった結果、そのまま襲われそうになってビビったっけ。

 

「それで! 無事にお母さんとは子供出来たわけだし、だったら次はスズやレオナの番だと思うわけでね?」

 

「思うな! 近づくな! ええいそれ以上こっちにじりじりと寄ってくるな! 妹と言えども容赦せんぞ! 本気じゃぞ! 今わしかつてないくらいに貞操の危機って奴を感じとるからな!」

 

「スズ必死だ……」

 

「お主も必死にならんかレオナ! コイツ少なくとも未来では本当に母上を孕ませおったんじゃから、油断するとわしらも本気で危ないってことじゃぞ! くれぐれもうかつにうなずいたりするでないぞお主! 繰り返すが本気でコイツ仕込みに来おるからな!」

 

 そしてあっちではまた何か……いや割とシャレにならない必死な感じでスズが戦ってますね?

 

 普段から言ってる『私と姉2人と子供作る』という言動……それが未来で有言実行されてしまったという事実がよほど衝撃だったらしい。

 つまりは、同じように言われてる自分達も……という感じに考えてしまうのも、スズの心配性な性格なら(そしてアリスの節操のなさなら)まったくもって無理のないことだ。うん。

 

 現にああしてアリス、もうなんかこないだまでよりはるかにマジな目でロックオンしてるし……スズもレオナも割と本気で注意したほうがいいのでは……。

 

 いやでも、何だかんだでアリス、本気で嫌がるようなことはしないからね……そこは一応安心できる部分……だと思うよ?

 もう何度も思ってることだけど、アリスは本当に家族を大事にしてくれる。それが、性欲より何より、一番根っこのところに来てる子だからさ。

 

「あ、でもお母さんともちゃんと作るから安心してね! スノウとイリスを作ったのはあくまで未来のボクで、今の僕は今のボクで子供欲しいし!」

 

「これだよ……」

 

 やれやれ、って感じで私が呆れていた……その時だった。

 

 

 ―――ぷるぷるぷるぷる……ぷるぷるぷるぷる……

 

 

 電伝虫が鳴ったので受話器を取る。

 電話に出たのは、ステラだった。どうやら、さっき相談したばかりの『エンドポイント』その他に関する調査に進展があったらしい。早いな……。

 

 で、それを聞いてみたんだが……

 

 

「……え、それマジ? ステラ」

 

『マジだけど……この島がどうかしたの? いや、私も聞いた時はびっくりしたんだけど……』

 

 

 

 そして、通話終了後。

 

「あー、お話し中ごめんね皆。ちょっといい? ……特に、スノウとイリス」

 

「? いかがなされた、母上」

 

「なんか電伝虫で話してたみたいだけど……もう何か調査に進展あったの?」

 

「うん、まあ……あったと言えばあったんだけどね……あのさ2人共? 例の『グランリブート』が起こったのって……頂上戦争から2年後なんだよね? つまり、今からだと……約1年後」

 

「そうですが……それが何か?」

 

「……あのね、今入った情報なんだけど……」

 

 

 

「『エンドポイント』の1つ……『ファウス島』……だっけ? そこが……数日前に起こった大規模な噴火で、島ごと消滅した……らしいんだけど」

 

 

「「…………え?」」

 

 

 

 

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