大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第219話 変わっていた歴史

 

 

 新マリンフォード。

 1年前に起こった『頂上戦争』において、マリンフォードそのものが壊滅的な被害を受けたわけだが……要塞を建て直す際に、より凶悪な海賊達に近い位置にその本拠地を置くべきだという考えから、この町そのものの移設が行われた。

 

 かつてのマリンフォードが『楽園』……すなわち、『偉大なる航路』の前半の海にあったのに対して、新マリンフォードは『新世界』にある。

 そして当然、新たな『海軍本部』もそこに建設された。

 

 旧マリンフォードがあった場所には、今は海軍の第一支部がある。場所をそのまま交換したような形だ。

 

 その新しい海軍本部の一室……『元帥執務室』。

 引退したセンゴク元帥の跡を継ぎ、新元帥に就任したクザンは、部下から1つの報告を受け取っていた。

 

「あん? 『海賊文豪』が動いたって? しかも……『セカン島』に?」

 

「はっ、前線からはそのように報告が!」

 

 それを聞いて、クザンは眉を顰める。

 

 今現在、彼のみならず、海軍本部全体がピリピリとした、張り詰めた雰囲気になっていた。

 理由は……つい先日起こった、とある、色々な意味での大事件ゆえだ。

 

 元・海軍本部大将……『黒腕のゼファー』の離反。

 そして、その名を『ゼット』と変えた彼率いる武装組織『NEO海軍』の発足と……それによる『エンドポイント』の破壊という凶行。

 

 『新世界』3つあるエンドポイントを破壊すれば、『新世界』全体を巻き込んだ大破局噴火により……そこにある全てが焼き尽くされる、とされている。

 この事実は、ごく一部の政府関係者しか知らないことではあったが……ゼファーもまたそこに含まれていたがゆえに、知っていた。そして、それを利用された形だ。

 

 海賊達だけを排除するようなものではなく、何の罪もない市民を巻き込むような大破壊を容認できるはずもない。

 海兵達は、恩師としての大恩あるゼファーを相手取らなければならない事実に動揺を隠せない様子でありつつも、ゼットを捕縛、あるいは討伐すべく、2つ目のエンドポイントである『セカン島』へ兵力を派遣し、有事に備えていた。

 

 しかしここに来て、予想外の名前がそこに絡んできたことに、クザンはやや困惑する。

 

「なんだってあのお嬢ちゃんが……いや、確かあいつもゼファー先生に世話になった口だったな……あの人の離反をどっからか聞きつけたか」

 

「電伝虫で連絡の上、海軍が作戦行動中である旨を伝えて、近づかないよう要請したのですが……『そんなこと言ってる場合じゃないでしょうが』と取り合わず……。時間的に、もう間もなく上陸すると見られています」

 

「どういう意味で言ってんのかね、それも……ゼファー先生のことを考えてか、それとも……『エンドポイント』のことを知ってんのか……」

 

 しばし考えて、クザンは指示を出す。

 

「今、『セカン島』にはどのくらいの戦力がいるんだっけか?」

 

「本部中将が3名ほど……『NEO海軍』の出現が確認されてからは、黄猿大将が向かうと言っていただけましたが……」

 

「間に合わねえか。まあ、近くまで行けばともかく、単独で海渡って移動するのはさすがに黄猿も無理だしな……しかし、中将クラスじゃゼファー先生を止めるのは無理だな。そうなるとむしろ……都合がいいかもしれねえ。間に合うかどうかはともかくとして……利用する方がいいな。おい、もっぺん電伝虫を『海賊文豪』に繋げ、俺が直接話をする」

 

 

 ☆☆☆

 

 

『つーわけで、今こっちからも戦力が向かってるところなんだが、間に合うかどうか微妙でな。舌の根も乾かないうちに悪りーが……ちっとそこで暴れてるおじいさんのお相手頼めるかい?』

 

「元からそのつもりですよ。……ちなみに、ゼファーさんの扱いって今、海軍ではどうなってるのか聞いても?」

 

『海軍を出て武装組織を結成しちまったからな、海賊……というより、テロリスト扱いだ。賞金首になってねえのは、各所への影響ないし動揺が大きすぎるのと……急すぎて対応が間に合ってねえからだな。程度はともかく、いち犯罪者と同じ……お前ら『七武海』の獲物に該当する』

 

「なるほど……じゃ、いつもと同じで捕縛して引き渡し、でいいわけですね」

 

『ああ、そういうことだ。できれば現地にいる海兵達のことも頼まれてくれると助かる』

 

「善処します。……間に合えば、ですけど」

 

 今現在、私は船を出して海の上にいる。

 2つ目のエンドポイント……『セカン島』に急行するために。

 

 

 

 テゾーロとステラからの情報で、もうすでにエンドポイントの破壊が……すなわち『グランリブート』が始まってしまっていると聞いた時には、一体全体何ごとかと思った。

 スノウとイリスの話じゃ、今から一年以上経ってから始まるって話だったのに……軽く調査してみたら、既に1つ目の『ファウス島』が吹き飛んだってんだから。

 

 これには私達はもちろんだけど……スノウとイリスの2人が一番動揺していた。

 だって、彼女達からしてみれば……『1年後にグランリブートが起こる』というのは、予想とかではなく1つの『事実』、あるいは『歴史』だ。過去のこととして知っていることなのだ。

 そうなると決まっているんじゃなくて、すでに『そうなった』こと。……伝聞とはいえ、そうならないとおかしい、というレベルのことなのだ。

 

 なのに、ステラに問い合わせたら……もうすでに始まってるって言うじゃないか。

 起こるはずのないことが起こって、その理由もわからなくて、ひどく困惑してしまっていた。

 

 例えるなら、太陽が東じゃなく西から登ってきたとか……鶏が卵じゃなくて直でひよこを産んだとか……そういう、常識がぶっ壊れるレベルの衝撃だったはず。

 

 しかし、そこで思考停止しているわけにもいかないので、さっさと出発することにした。

 1つ目を既に壊した(しかも数日前にもう)ってことは、迅速に2つ目の破壊にも取り掛かるはずだから。

 

 で、今……向かってる途中に海軍から電話がかかってきたのだ。2回目。

 

 1回目は『作戦行動中なので近づかないでもらいたい』って要請だったんだけど、突っぱねた。そんな場合じゃないだろ……いやホントに。

 

 そしたら2回目、なんと、青キジ……じゃなくて、新元帥のクザンから直接通信が来た。

 

 内容としては『そのまま行っていいから、そこにいるゼファー先生の鎮圧を頼む』っていうのと、『そこですでに戦ってる海兵達をできれば助けてやってくれ』というもの。

 そして、『あまり深入りはしないでほしい』……この3点。

 

 3つ目は、エンドポイント関連の……表沙汰にはできない内容に関して、なんだろうな。大騒ぎして世界を混乱させるわけにはいかないからって。

 それ関連の情報はくれぐれも秘匿してくれ、と。それ以外は好きにしていいから、と。

 

 好都合だ。私としては……世界全体を巻き込む『グランリブート』さえ阻止できればいいし。

 

 まあ、できれば……私にとっても命の恩人で、今も尊敬しているゼファーさんのことを、止めてあげたいというか、助けたいというか……。

 ……いやこういう言い方は逆に失礼だな。ゼファーさんだって、何も考えずに勢いだけでこういう行動を起こしたわけじゃないだろう。あれだけ正義を掲げていた人だ……悩んで、苦しんで……その果てにこういう結論に至ったんだろう。

 

 それを理解できるかどうかはともかくとして……それでも……。

 

「……クザン元帥、そろそろ切ります。島、見えてきたので……私1人、飛んで先行して島に上陸しようと思います」

 

『わかった。気をつけろよ、先生は『スマッシャー』……科学班が作った、対能力者用の海楼石製の武器を腕に装着してる。つかまれたら抜け出せねえぞ』

 

「情報どうも。それじゃ」

 

 

 ―――ガチャ

 

 

 さて、じゃあ、そろそろ行くか……と、思ったところで、

 

「お母さん、行くなら私達も一緒に! 私もスノウも飛べるわ!」

 

 そうイリスが言ってきてくれるけど……さて、どうしたもんかな。

 これから行く場所には、海軍がわんさかいるんだけど……彼女達が戦う様子を見られると、ちょっとどころじゃなく大変なことになりそうだ。

 

 私としては、もし『グランリブート』対策のために彼女達と共闘するとすれば、身内以外の目がないところで……と思ってたんだけどな……。

 

「ご心配いただけるのは嬉しいですが、ここで自分達が動かず、母上だけに任せてしまうなど恥もいい所です。どうか同行させていただきたい! それに……」

 

「それに?」

 

「嫌な予感がします。すでに申し上げましたが、この展開は……私達の知る歴史と違う……歴史が変わっているんです。それをしようとしている身でおかしなことを言いますが、こんなことは本来ありえない……何か、私達も把握できていないことが起こっているとしか思えません」

 

 スノウとイリスが何か行動を起こす前に、既に歴史が変わっている。

 なるほど、確かに異常極まりない事態だ。

 

 歴史が変わるなんて、確かに、何かそれ相応の事情がない限りは……『歴史を変えるほどの何かの介入』がない限りは起こらない、と思う。

 それこそ、今目の前にいる2人と同じような『未来人』とか……。

 

 ……そういや、ドラ〇ンボールの人造人間編でも似たようなこと起こったんだよね。

 

 トランクス的には17号と18号と戦うつもりでいたのに、いざ来てみたら19号と20号がいたり……フリーザ親子倒した時にスパイロボットに細胞を採取されてセルが誕生してたり……

 つまり……彼女達がこの世界に来たことで歴史が変わった可能性が微レ存……?

 

 いやでも、来ただけでまだ全然活動とかしてないのにな……せいぜい雑魚海賊団を壊滅させたくらいじゃないか。

 それに、来てまだ1~2日も経ってないのに、こんなに劇的に事態が変わるなんてこと……それこそ、ゼファーさんの辞職とか『NEO海軍』の結成とか、今から数か月単位で前に『グランリブート』の計画が始まっていなければ辻褄が会わない話だよ。

 

 ……だめだ、色々予想はできるけど、考えても答えが出ない。

 だったら、考えすぎて躊躇するより……行動あるのみだ。

 

「わかった、一緒に来てもいいけど……騒動になるからなるべく『グラグラの実』と『ソルソルの実』の能力は使わないで、覇気と武器だけで戦って。どうしようもない時は仕方ないけど。それと……スズとアリスも一緒に来て、周りの雑魚掃除をお願い。ゼファーさんは私が相手する!」

 

「心得た!」

 

「うん!」

 

「母ちゃん、あたしは?」

 

「レオナは船を守って。海軍は大丈夫だろうけど、『NEO海軍』はこっちの船も狙ってくるだろうから、その迎撃。2人に聞いた話だと、幹部クラスは数人らしいけど……かなり強いみたいだからね。それに、砲撃とかもあるだろうし……ブルーメとビューティも一緒にお願い」

 

「「了解」」

 

「お母さん、それなら私の『ホーミーズ』を残していくから一緒に使って! 範囲攻撃も範囲防御も得意よ!」

 

 と、イリスが横から割り込んできてそう言ってきた。

 

 ありがたい申し出だけど……『ホーミーズ』ってあれでしょ? ビッグ・マムも使ってた、『魂』をものや動物に入れて『擬人化』させたやつ。

 あれ、見た目が独特だから、見る者が見ればすぐに気づいちゃうと思うんだけど……

 

 そう指摘すると、なぜかイリスは『ふふん』と得意げに笑って、

 

「それなら大丈夫よ! 私のホーミーズは……」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 そして、その数分後。

 

 一足先に、自前の飛行能力で飛び立った私、スノウ、イリス、アリス、スズの5人が、先行して島に到着。

 先に到着していた海兵達はすでに壊滅状態。NEO海軍の方も無事ではないようだけど……それでもまだまだ数が多いな。

 

 当然、飛んでる私達を狙い撃ちにしてくるので……先に話していた通り、他4人に雑魚掃除は任せて……いたいた。

 

 『見聞色』で気づけていた、ひと際大きな存在感を放つ何かがいたところに向かってみると……見知った紫頭の巨漢がそこにいた。

 しかし、記憶の中にある、がっしりした体躯ながらも理知的な雰囲気も同時に感じられる姿とは違って……眼下に見えるゼファーさんは、なんというか、荒々しい雰囲気になっていた。

 サングラスをかけて、素肌にコートを直接羽織って……アウトローっぽさがすごい。

 

 ……まるで、意識してというか、わざとそう見えるような服装になってるみたいだ。

 

 当然、向こうもすぐにこっちに気づいたかと思うと……右手に装備したバカでかい土管みたいな武器をこっちに向けて、ガトリング砲みたいに連射してきた。

 

 縦横無尽に飛んで動いてそれらをかわしつつ、一気に距離を詰める。

 しかし全く動じることはなく、ゼファーさんは大きさに見合わない速度でその腕を引き戻すと、私が降りぬこうとした番傘をガキン、と受け止めた。

 

「久しぶりに会って挨拶もまだだっていうのに、いきなりひどくありません?」

 

「そいつは悪かったな……だが、その面を見れば何を考えてここに来たかなんてのはわかっちまうもんさ。だったら先手必勝、やられる前にやるしかないだろう」

 

 喧嘩腰だなあ……まあ、実際喧嘩しに来たんだけど。

 

 ガキィン、と弾かれるように離れて距離を取る。

 ちょっとでも飛びのくのが遅かったら、あの巨大な腕……『スマッシャー』とやらに捕まってたたかもしれない。ホントに油断大敵だね。

 

「早いものだ……『七武海』就任から1年か。もう随分、貫禄も出て来たんじゃないか? 『海賊』としての貫禄がな……!」

 

「褒められてるように聞こえませんケド」

 

「ああ、褒めちゃいないからな……お前の過去は知ってる。だが、『海賊』である限りは……我が『NEO海軍』にとって、討伐すべき敵であることに変わりはない。説得するつもりだと顔に書いてあるが……やめておけ」

 

「…………」

 

 ……取り付く島もない、って感じだな。

 

 口調こそそこまで激しい、重苦しい感じじゃないけど……一言一言に込められている意思が、とてつもなく強いのがわかってしまう。

 

(一体、本当に……何があってこんな……?)

 

 ……ダメだこれ、説得とか無理な感じだ。

 もうなんか、色々覚悟決めてここに立ってるよこの人。

 

「……と、言ったはいいが……言って引いてくれるなら苦労はなさそうだな」

 

「そーいうことです。……悪いけど、こっちもこっちの都合とか事情があるので……ここで止めさせてもらいます」

 

「ふふふ……そうか、なるほどな」

 

 含み笑いをするようにして、ゼファーさんはそう言ったかと思うと……小声で、

 

 

 

「そんなに不都合なものだったか? お前が知った『未来』は」

 

 

 

「…………! それは、どういう意味で……っ!?」

 

 一瞬。

 その『言葉』に動揺したその一瞬の隙をついて、ゼファーさんは距離を詰めて……海楼石の巨腕を薙ぎ払ってきた。

 

 反応するのが間に合ったので、番傘で受け流すことに成功したけど……速いし、重い!

 全然まだまだ現役じゃないか……こりゃ油断なんてできないな。

 

 できれば今言った言葉の意味聞きたいところだったけどな……明らかに、『未来』っていう単語に何か意味を含ませた言い方だった。

 まるで、私が『未来』を知ったからここに来たって知ってるみたいな……!?

 

 でも、それも含めて……今は聞くの、難しそうだな!

 

「……っ……戦いが終わったら色々聞かせてもらいますからね!」

 

「心配はいらん……その頃にはもう、そんなことを気にすることもできなくなっているさ!」

 

(……本気だな、この人……!)

 

 ひとまず、全力でこの人鎮圧してからだ!

 そうしないと、何も止められないし、何も始まらない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――最優先討伐目標、『海賊文豪』スゥ、確認。

 

 ―――NEO海軍総帥・ゼットと遭遇、戦闘開始。

 

 ―――全標的補足完了。S-アイビス、これより任務遂行に移ります。

 

 

 

 

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