大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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今回、とあるゲームとのクロスオーバーキャラが出てきます。

もっとも、再登場とかレギュラー化するかどうかは微妙な感じですが……たぶん知らなくても問題ないと思います。

では、どうぞ。


第221話 ややこしくなってきた

 

 

「報告はこんなとこですね」

 

『ご苦労さん。感謝してるよ……海兵達の回収や手当もしてくれて』

 

 船に戻ってからしばし。

 ひとまず報告だけでもしておくか、ってことで……専用回線でクザン元帥につないでもらい、『セカン島』であったことのあらましを簡単に説明したところだ。

 

 ゼファーさん……もとい、『ゼット』を名乗る彼と会い、戦ったこと。

 島の各所に『ダイナ岩』を設置してこの島を破壊し、さらにそのせいでもともとあった火山が暴走して島自体が吹き飛んでなくなってしまったこと。

 

 そして……戦いの最中に乱入してきた、謎の少女のことも。

 

「助けられたのは一部だけですけどね。……ところで、さっきは聞けなかった色々なこととかについて、できれば聞かせてもらいたいんですけど」

 

『あー……悪い、それはやっぱり無理だ』

 

 うん、だろうとは思ってたけども。

 

「またですか……色々事情があるのは察しますけど、情報共有くらいは最低限してもらわないと……秘密主義も過ぎると、勝てる戦いも勝てなくなっちゃいますよ」

 

『いやあ……ほんとに色々あるんだよ、こっちも。そりゃ、全部話して協力してもらいたいのはやまやまなんだけどな』

 

 声音に申し訳なさそうな感じをにじませつつ言ってくるクザンさん。

 情報は出さないけどこのまま協力はしてほしい、って、虫のいいことを言ってる自覚はあるみたいだ。やっぱこの人、根っこのところはきちんと善人なんだな、たぶん。

 

 それに……実のところ、大体の事情は聞くまでもなくこっちも知ってるしね。

 『エンドポイント』の件も含めて、イリスとスノウから聞いてるから。

 

 まあそれを言ったら『何で知ってるんだ』ってことになっちゃうから、一応、クザン元帥を含め海軍の人達の前では、聞かされた以上のことは知らない体でいくけども。

 

 ああでも、正真正銘私も知らないことについては……これもダメ元で聞いとくか。

 

「じゃあゼファーさんのことはひとまずいいとして……さっき私が話した乱入者については?」

 

「『パシフィスタ』みたいな特徴を持った子供、って話か? 正直それについては……少なくとも俺が知ってる限りの情報にはねえな。こっちは正真正銘、知らないから話せることがねえ。まあ……こっちから『SSG』に問い合わせてはみるが……あそこもあそこで基本秘密主義だしなあ。何か共有できそうな情報が入ったら話すが……期待しないで待っててくれ」

 

「……ホント頼みますよ」

 

 ダメだったか、とがっくり落胆しつつ、電伝虫の通話を切る。

 ま、期待はしてなかったけど……海軍からの情報提供はほぼほぼ皆無だったな。……最後の『謎の子』については、ホントに知らないっぽい声音だったけど……。

 

 ……さて、それじゃあ……報告も済んだことだし、本命の……身内での話に移りますかね。

 皆、もう会議室に集まってるはずだな。

 

 

 ☆☆☆

 

 

「以上が、先の海戦での被害状況になります」

 

「海軍との交戦による損害は想定の範囲内にとどまっているが、その後の『海賊文豪』の手の者達との被害がかなり大きかったな。想定にない交戦だった故に、当然と言えばそうだが……」

 

 ところ変わって、こちらは……『NEO海軍』の船。

 

 『セカン島』を脱出したゼット達は、先の戦いの被害状況を確認しつつ、今後どう動くかについて話し合っているところだった。

 当然ながらそこでは、先に交戦したスゥ達の話題も上ってくる。今しがた、幹部格の1人であるアインの報告にもあったように、『海賊文豪』とその一味との戦いは、相手が少数ながら精鋭ぞろいだったこともあり、直前に起きた海軍との戦いよりも、よほど大きな被害をもたらしていた。

 

 それでも、作戦行動が続行不可能なレベルの損害ではない。

 であれば、もとより覚悟を決めてゼットと共に歩む決意をしていた者達である。止まることはおろか、歩みを止めるなどという選択肢すら彼らの頭にはなかった。

 

「しかし、油断はできません。海軍はもちろん、今日の様子だと『海賊文豪』も……今後の作戦を阻止するために動くと思われます。『海賊文豪』……もとい、『金獅子海賊団』は、昨今急激に勢力を拡大させており、数多の海賊団を吸収していることによる人材の厚さも脅威の1つです」

 

「現に今日の戦いでも、先生が戦った『海賊文豪』本人に加え、幹部格とされる『霧の海の亡霊』や『冬空の料理人』、『濁流』に『万色』、『鉄獅子』……それに、情報にない戦闘員らしき者達も何名か確認されています。そのうち数名はどうやら何らかの能力者のようで……」

 

「ふ……随分と気合を入れて動いてくれるものだ」

 

 決して吉報とは言えない報告の数々を聞きつつも、ゼットは一切弱気になることなく、不敵に笑って見せる。

 部下達同様、彼もまた、歩みを止めない覚悟の元に、『ゼット』を名乗っている。相手が誰であろうが、どれほどの勢力をもって妨害に出てきていようが、構うものかと言わんばかりだ。

 

「計画に変更はない。予定通りこの後、物資の補充その他の準備を終えた段階で、最終目的地である『ピリオ島』に向かう。そこで……この腐った時代を終わらせる。総員、奮励努力せよ!」

 

「「「はっ!!」」」

 

 前途多難なれど、以前として士気は高い『NEO海軍』。

 彼らが目指す未来、信じる正義のために、迷いも躊躇いもなく、彼らはさらに進んでいく。

 

 その先に待っているものが、地獄と呼ぶのすら生ぬるい世界だったとしても、それがわかっていたとしても……そこに『正義』を見出した彼らは、わが身の破滅すら厭わず、ただただ突き進んでいくだけだった。

 

 

 

 

 

 ……しかし、

 

 そんな彼らでも、歩みを止めざるを得ない出来事が……そのわずか十数分後に迫っていることを……この時、まだ誰も知らなかった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 とりあえず、話し合い……の前に状況確認から。

 

 私がゼファーさんと戦っている間、一緒に来た他の面々もそれぞれ戦っていた。

 相手は、NEO海軍の……まあ、言っちゃ悪いけど雑兵の方々。一部幹部もいたみたいだけど、さほど脅威ではなかったみたい。

 

 幹部についての情報は、ギリギリでOKだったのか、クザンさんが教えてくれてたからね。

 

 主だった幹部は2名。

 『モドモドの実』の能力者で、触れたものの時間を12年分巻き戻す『逆行人間』アイン。

 『モサモサの実』の能力者で、周囲にある植物を自在に操る『植物操作人間』ビンズ。

 

 どちらも、ゼファーさんの元教え子で……彼についていく形で海軍を抜けて、今こうしてNEO海軍に参加しているんだそうだ。

 何がきっかけになって脱退したのかまでは教えてくれなかった。……情報統制の基準、どうなってんだろ。ほんともうちょっと情報欲しいわ……。

 

(まあでも海軍元帥も、世界政府の上層部と海軍の間に立つ中間管理職みたいな感じらしいけど……クザン元帥や、それこそ原作時空のサカズキも苦労してたのかな)

 

 んで、この幹部2名については、ゼファーさんと一緒に『セカン島』に来てたらしい。上陸したアリス達が戦ったって言ってた。

 それなりに強かったそうだけど、事前に能力の情報を知ってたから、苦戦らしい苦戦はしなかったみたいだ。

 

 アインの方は、アリスが相手をした。視界に入れたとたんに『ボクあっちね! スズもう1人の方よろしく!』って言ってすっ飛んでいったらしいけど……全くもー。

 まあ、戦闘自体は真面目にやったみたいだしいいとしようか。『モドモド』の能力は、相応の覇気を込めてガードすれば防げるし、そもそも極力近づかないようにすれば食らうことはない。3人娘の中で一番覇気の錬度が高いアリスには、相性的な意味でも適任だったわけだ。結果的に。

 

 一方、ビンズの方はスズが相手をしたわけだけど……植物を使って拘束や攻撃を行い、自身も忍者かと思うくらいに(実際コスチュームが、色彩の派手さを除けば忍者である)素早く、刀の扱いも巧みだったそう。

 が、剣術なら、ゾロを含む手練れの剣士達との修行でスズも磨いてるし、植物の波状攻撃にも泥で、物量で対抗できる。こっちも相性よかったみたいだ。

 

 幹部2人をうちの娘2人が抑え、なんなら圧倒している間に、同行したスノウとイリスが雑兵達を片っ端から蹴散らしたので、俄然こっちが有利だった。

 

 もっとも、戦闘の途中でダイナ岩の爆発が始まって、強制的に痛み分けで終了、双方撤退することになっちゃったわけだが。

 

 そしてもう1つ、私達の船の方も戦場になっていた。作戦エリアに近づく船は例外なく排除せよって言われてたみたいで、私達が出発した後、NEO海軍の船が大挙して襲って来たそうだ。

 が、そこにはレオナに加え、ブルーメとビューティの側近コンビ、さらにイリスが残していった『ホーミーズ』達が待ち構えていたため、なんならアリス達以上に一方的だったそうだ。

 

 当初私は、イリスが『船の防衛にホーミーズを使って』って提案してくれた時、難色を示した。

 何度か『ビッグ・マム』のお茶会に行って見てるから知ってるけど、『ソルソルの実』の能力で作り出される『ホーミーズ』は……相当に特徴的な見た目をしてる。

 なんというかこう……メルヘンな世界の住人って感じの、不思議生物というか……ぶっちゃけ、知ってる人なら『これはソルソルの実の…!』って一発で気づく。

 

 ビッグ・マムがいるはずもないところでホーミーズが目撃されればそりゃ騒ぎになる。

 下手したらその『ビッグ・マム海賊団』そのものの耳に入り、怪しんで調査が始まるかも。そういうのは避けたかったし、当初は遠慮しようとしたのだ。

 

 が……その直後にイリスが話してくれた、彼女のホーミーズなら大丈夫な理由を聞いて……納得せざるを得なかった。

 

 何せ、彼女のホーミーズ達は……

 

 

「何だよご主人様、そっちの方が随分歯ごたえある奴いたみてーじゃん、どうせならオレもそっちに行きたかったぜ」

 

「こらイフィジャール、文句言わないの、船の防衛だって立派なお仕事なんだから。大体あんた、十分楽しそうに片っ端から燃え散らかしてたじゃないの」

 

「けどよプネーマ、結構手加減してたからフラストレーションもたまってたんだよ、船の上だから火力も押さえなきゃだったし……」

 

「あれで抑えてたのあんた……その割には制御下手すぎでしょ。何度か私、船に引火しそうになったの止めてたんだけど?」

 

 

 そんな感じで言い争っているのは、それぞれ桃色の髪と青色の髪が特徴的な美女2人。

 イフィジャール、プネーマ、とそれぞれ呼び合っている2人は、どちらも露出多めの、舞台衣装みたいに見た目的に華やかで派手な服や装備を纏っている。

 方向性は違うけど。イフィジャールの方は鎧とかも纏っていて、服のデザインも合わせて戦士系な感じで、プネーマの方は魔法使い系というか……女神像が身につけてるみたいな静謐な服装。

 

 行きの船の中ではいなかったはずの2人だが、なぜか今、この船に乗っている。

 

 もう結論言っちゃうが……何を隠そう、この2人がイリスの『ホーミーズ』なのだ。

 

 はっきり言って、ビッグ・マムが作るホーミーズとはまるで別物。

 あっちがメルヘン系の謎生物なのに対して、こっちはまさかの美少女擬人化である。しかも、21世紀の日本の『大きなお友達』なら狂喜乱舞すること間違いなしの美麗ビジュアルだ。

 

「私が『ホーミーズ』を作ると、何でか美少女の見た目になるのよね」

 

「……いや、マジで何で?」

 

「詳細は不明です。が、あえて予想するなら……能力者の趣味、ではないかと」

 

「私、個人的にメルヘンよりこういうの好きだから、そういう感性に引っ張られてるのかもね。まあでも見た目的に華やかだから見てて楽しいし、別に誰も損してないからいいじゃない。2人共、とっても強いしね!」

 

 ……それ多分、未来のアリスの影響だよね……。

 

 この子は、同様の思考汚染によって、レオナの人獣形態を人型ライオンからネコミミ美少女に変化させ、さらに最近ではルプーやナーベのそれも獣コスプレ美少女に変えてしまったという前科があるので、間違いないと思う。

 ランブルボールもなしに悪魔の実の変身形態を変化させるこいつの煩悩に、私は今軽く戦慄しています。

 

 なおよく見ると、イフィジャールの体からは炎がちらちら漏れてるし、プネーマの長い髪の毛の先端付近が液体になっているので、人ではないとわかったりする。

 が、何も知らない第三者からしたら『能力者か!?』って思っちゃうだろうね。

 

 実際は、山火事や洪水が動いて喋ってるに等しいわけだから、海楼石も覇気も効かないんだけどね。そのくせ『自然系』みたいに体を火や水に変えて流動して、攻撃を受け流したりはできるし、『メラメラ』や『トロトロ』みたいに炎や水を操って攻撃できる。

 ただ、その分、自然現象としての弱点である、水や乾燥なんかは普通に弱点になっちゃうそうだけど。

 

 いずれにせよ、彼女達を見て『ホーミーズ』を思い浮かべる人はいないだろうから、イリスのご厚意に甘えさせてもらったわけだ。

 

 彼女達の暴れっぷりについては、既にレオナ達から聞いてる。前評判通り相当強かったようだ。

 

 とまあ、イリスのホーミーズ2人に関する話はここまでにして……そろそろ本題に入りますかねっと。

 

「というわけでイリス、スノウ。ゼファーさんが言ってたことについてだけど……」

 

「……確かに、聞く限り、この時代のゼットも、まるで『未来』の世界、ないし歴史の存在を知っているかのような物言いですね。単なる偶然や勘違いとは考えづらい……」

 

「それに、その『謎の子供』も気になるわ。というか、お母さんの話を聞く限りだと、それ多分……『セラフィム』だと思うし」

 

「? 何それ?」

 

「世界政府が……というか、Dr.ベガパンクが開発した人間兵器よ。『パシフィスタ』の改良型にあたるんだけど……戦闘性能がとんでもなく凶悪で、政府の先兵として戦場に投入され、数々の海賊とか敵対する者達を滅ぼしたらしいわ。……もっとも、私達の『滅んだ未来』でのことだから、その相手は大体、生き残りの反政府勢力とか、略奪目的の奴らだったみたいだけど」

 

「というか、我々も直接は見たことがなく……伝聞でその存在を知っているだけなのです。一応、ひととおりの情報は知識として持っていますので、お話はできますが」

 

 

 

 ―――説明中……

 

 

 

 なるほど……そりゃとんでもないね。

 伝説の種族『ルナーリア族』の遺伝子……もとい『血統因子』と、『王下七武海』の『血統因子』を使って作られ、さらにその身に最新鋭の兵器や、人工的に再現した『悪魔の能力』まで搭載した人間兵器か。そりゃ確かに、政府の切り札になるような兵器だわ。

 

 同時に、生命倫理ってもんを色んな意味で蹴っ飛ばしてる兵器とも言える。クローン人間の上、遺伝子組み換えやらサイボーグやら、あと、子供ってことは少年兵的な意味もある……のか?

 まあ、『もともとそのために作った存在だから』と考えてしまえばそれまでなのかもだけど……よく公にそんなブラックな兵器使う気になったな、政府も海軍も。……いや、それこそ今更か。

 

「それで、今回お母さんが出くわしたのがその『セラフィム』だとして……見た目がお母さんにそっくりだったってことは……」

 

「母上の『血統因子』を使って作ったクローン、ということか……」

 

 そういうことになるだろうね。

 私、頂上戦争の前、『インペルダウン』に捕まってた時期があるから、遺伝子なんていくらでも採取できただろうし。

 寝ても覚めても拷問の毎日だったから、血も汗も、涙だって、なんならおしっこすら流したもんな、あの時は。それらを回収していれば……材料には困るまい。

 

 ただ、気になるのは……

 

「あの私モデルのセラフィム(多分)、海楼石の武器使ってたんだよね……それも、体内に格納してるみたいな挙動だった。ゼファーさんの『バトルスマッシャー』と同じで、多分、対能力者を想定した武装なんだろうけど……」

 

「人工的なそれであれ『悪魔の実』の能力が使えるなら、海楼石は弱点のはず……つまり、スゥがモデルのそのセラフィムは、能力者ではないということになるのです」

 

「イリス達が話してた内容と、どうも食い違うな……というかそもそも、スゥのセラフィムを政府が作ってたとして、このタイミングでゼファーとスゥを同時に狙う理由って何だよ? 表向きだけとはいえ『王下七武海』として真面目に働いてるし、今更スゥを排除してもメリットねーぞ?」

 

 そうなんだよね、私もそこが気になってた。

 あれが政府の兵器だとして、今このタイミングで何で私にけしかける? ビューティが言ってた通り、少なくとも今はまだ、私は政府にとって有用な存在のはずだ。

 

 そもそも『扇動者』として危険視されていたとしても、今このタイミングで命を獲りにくるのは……メリットがない。デメリットしかない。……はず。

 もちろん、私達の理解を超えた思惑が何かある可能性もなくはないんだろうけど、それならそれで考えても仕方ないことになっちゃうし……

 

 あと……かなり突拍子もない内容だけど、1つ、予想みたいなことをできなくもないんだよな。

 

「予想って……どんな?」

 

 聞きたそうに首をかしげるレオナ。

 他の面々も大体同じような感じの表情なので、あくまで私個人の根拠も特にない推測であることをきちんと前置きしたうえで話していく。

 

「さっき、ゼファーさんが未来を知ってるっぽい話になったじゃん? ってことはつまり、ゼファーさんに未来の情報を教えた奴がいるってわけで……そいつも未来を知ってるわけじゃん? 早い話が、そいつも未来から来た可能性が高いわけよ。イリスとスノウ以外の『未来人』」

 

「……もしかして……その『セラフィム』も?」

 

「うん。ゼファーさんの反応からして、あのセラフィムがゼファーさんの情報源、ってわけではないと思う。けど、あのセラフィム自体は、その情報源とはまた別口で未来から来た可能性はある。あれが未来産だとすれば、イリス達の知識の中にあるセラフィムと一致しないのもうなずけるし」

 

 ターミネーターみたいなもんだ。

 未来から送り込まれ、歴史を変えるために、キーパーソンとなる人物を暗殺しに過去にやってきたアンドロイド……まあこっちは人造人間×サイボーグだけど。

 

 ……いやこれありそうだな。未来の世界から、理由はわからんけど、私とゼファーさんの2人……だけとは限らないが、ともかく私達を標的としてあの子が送り込まれた可能性、か。

 イリス達がこうしてここにいる以上、未来の世界から逆行してこの時代に誰か、あるいは何かが来る可能性自体はあるわけなんだし。

 

 というか、もし本当にそうなら、ターミネーターってより……イリスとスノウが来た時に反射的に思っちゃったことだけど、余計に『人造人間編』みたいだぞコレ……。

 

「けどそうなると、同じ未来から来たイリス達の知識と、お母さんが戦ったセラフィムの機能とかが違ってるのはちょっとおかしくない? いや、ただ単にイリス達が知らなかったタイプのセラフィムも開発されてただけかもしれないけどさ」

 

「……あるいは、『同じ未来』とは限らないかもしれないのですよ」

 

 アリスの疑問に、ブルーメは神妙そうに発言。

 ああ、確かに……こんなところもドラゴンボールと一緒か。

 

「スゥの著作のいくつかにも出て来てましたが、いわゆる『並行世界』……パラレルワールド、とか、そういうのも考えられるのです。分岐して生まれた別な未来の世界……イリス達が来た『滅んだ未来』とはまた別な未来が存在して、件のセラフィムはそこから来たのかも」

 

「つまり……『イリス達の未来』と『セラフィムの未来』の2つの未来の世界があって、その両方からこの時代に別々に来てる……ってことか」

 

「いや、もしかしたらだけど……ゼファーさんに何かを教えた『情報源』も、さらに違う未来から来てる可能性もあるよ」

 

「そうなったら未来3つじゃん……う~、なんか話がややこしくなってきた……」

 

 レオナの言う通りだ。いったん整理しよう。

 

 今回の事態のキーパーソン……推測も含めて『未来から来た』可能性があるのは、今私の陣営できちんと協力してくれてるイリスとスノウを除けば……2人。

 

 1人は、あの、私をモデルにしたと思しきセラフィム。

 もう1人は……ゼファーさんに何かを伝えた――そういやその『何か』が何なのかもまだわかんないんだよな――『情報源』である誰か。

 

 次に、その目的。

 時間を超えてまでこの時代にくるわけだから、何かそれも相当に重要な目的があるはず。

 

 イリスとスノウの目的は、ゼファーさんが起こす『グランリブート』を阻止し、世界の破滅と、私を含む『金獅子海賊団』の皆の悲劇的な末路を阻止すること。

 立場的には、ドラゴンボールの未来トランクス。

 

 あの未来セラフィム(推定)の目的は、私とゼファーさんの殺害。

 理由は不明だけど、私達が邪魔なのは間違いない。ゼファーさんの殺害は『グランリブート』の阻止が目的かもだけど、私の方は何でだ……? 未来の世界でなんか邪魔だったのかな?

 立場的には、ドラゴンボールのセルか、あるいはターミネーター。

 

 そして、謎の『情報源』の目的は……わからないけど、どうもゼファーさんに協力してるっぽいから、彼を助けること……なのかも。

 

 そしてこの三者が、それぞれ別な未来から来た可能性がある……と。

 

「でもさー、何でこの時代にそんな3つもある未来から同時に集まるんだよ……偶然にしちゃできすぎてないか?」

 

「そりゃ多分、偶然じゃないからでしょ」

 

「? どういう意味じゃ?」

 

「イリスとスノウが来たこの時代に、並行世界2つか3つ分の『未来人』が集まったのは……その並行世界がどれも、この時代をターニングポイントにして関わりがあるから……じゃないかな? だから誰もかれもこの時代に集まって、それぞれの目的のために何かをしようとしてる」

 

 と、アリスの予想。

 珍しく真面目モードで頭を回転させているらしいうちの末娘は……どうやら、私と同じ仮説を想像しているようだ。

 

「例えば……イリスとスノウが来て歴史が変わったとする。その先の未来では……まあ2人の目的が達成されて、『グランリブート』は阻止されて、お母さんもおじいちゃんも死なずに、世界も滅ばずにさらに歴史は続いていくわけだ」

 

 けど、と続ける。

 

「それが、他の誰かにとっては不都合だった……あるいは、その先の未来で、お母さんかゼファーさん、あるいはその両方が原因で不都合なことが起こったとしたら……」

 

「それをどうにかするために、過去を変えにこの時代に? そして、母上とゼファー殿を殺して、また歴史を変えようとする……」

 

「んで、それをまたさらに誰かが不都合に思って、この時代に来て『情報源』になった……?」

 

「……つまりこの、複数の未来が絡んだわけのわかんない状況は……私達のせいで?」

 

「我らがこの時代に来て、歴史を変えてしまったことが原因で起こった可能性が高い……ということですか?」

 

「あくまで可能性の一つだけどね」

 

 とはいうものの、こんだけ時空を超えて『並行世界』の人物が揃ってるわけだし……この予想、割と間違いないだろうとも思っている。

 変わった歴史の影響で生まれた並行世界から、さらに歴史を変えようと……という、いたちごっこみたいな状況が、おそらくは今……この時代で起こってるんだ。

 

 となると今後、『グランリブート』を阻止しようと動く私達に対して……それを阻止しようとする者達がでてきたり、ゼファーさんもそれに合わせて動きを変えて来たり……そしてあのセラフィムはその両方を邪魔して、かつ私とゼファーさんを消そうとしてくる……

 イリスとスノウがもたらしてくれる『未来の知識』も役に立たないどころか、むしろ先入観が邪魔になってしまう可能性すらあるな。これは今後……対応が色々と難しくなりそうだ。

 

 ……なんてことを考えていた、その時だった。

 

 会議室のドアがやや乱暴にノックされ……部下の海賊(女性)が入ってくる。

 

「会議中失礼します、お嬢! 情報部門から報告が入りました! 『新世界』のとある島にて……大規模な爆発が確認され、島そのものが崩壊したとのことです!」

 

「「「……っっ!?」」」

 

 その報告を聞いて、私たち全員、思わず凍り付く。

 否が応でも、最悪の未来の可能性を突き付けられた。

 

 予想が外れていてほしいと願いつつ……恐る恐る、聞く。

 

「……その島って、どこ? まさかとは思うけど……『ピリオ島』って名前じゃない、よね?」

 

 もしこれが当たっていてしまった場合……世界の終わりが……

 

「え? あ、いえ、そういう名前ではないと……全然違う島です」

 

 あ、なんだ、よかった。

 いや、こんなタイミングでそんな知らせ持ってくるから! びっくりしたなあもう! 紛らわしい……

 

 私達が全員一度にほっと息をついていると、その兵士は『?』になりつつも、報告を続ける。

 

「ええと、『ピリオ島』ではないのですが……情報によりますと、その島はどうやら、ここからかなり近い位置にありまして……聞いていた島とは違いますが、念のため一応ご報告をと」

 

「そっか、うん……ありがと」

 

 まあ、そりゃ……さっきも『セカン島』が爆発して消滅したばっかだもんね。

 立て続けに同じような情報が入って来たりしたら、そりゃ気にもなるし、報告したほうがいいと思うか……

 

 ……けど、確かにタイミングがよすぎるよな……偶然か? ……多分違うな……

 

 

 

 

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