大文豪に私はなる!   作:破戒僧

225 / 306
第225話 スゥ VS ゼット VS S-アイビス

 

 

「スマッシュ……バスター!!」

 

「一刀流……“魔海象”!!」

 

 ゼファーさんの巨大義腕『バトルスマッシャー』が、内部の火薬だか炸薬だかを発火させて文字通り火を噴き、すさまじい衝撃波を起こす。

 

 私は空中に飛び上がってひらりと回避し、反動でわずかな時間動けずにいるゼファーさんめがけて番傘を振り抜く。

 が、ゼファーさんは体を少し捻っただけで、バトルスマッシャーの海楼石パーツを持ってきてそれを受け止めた。そしてそのまま飛び上がり、飛び蹴りを私の首元めがけて叩き込んで来る。

 

 私はそれも、その部分だけを紙に変えてばらけることで回避し……と同時に、背後から気配。

 

 ゼファーさんとの戦いに集中していたのを隙と見てか、セラフィムの子……『アイビス』とやらが突っ込んできた。

 そのまま殴りかかってくる……のではなく、メカメカしい手甲の手のひらをこっちに向ける。そこには穴が開いていて、見るからに何かの発射口だった。

 

 パシフィスタのお決まりパターンでレーザーかと思ったけど、違った。

 そこから吹き出したのは……炎。また火炎放射器かよ。

 

 かなり広範囲に噴出したので、かわしきるのはちょっと難しいと判断し、番傘をバサッと開いてガードする。仕込んである『炎貝(フレイムダイアル)』によって、吹き付けられた炎は吸収されたので、ノーダメージ。

 それと同時に、挟み撃ちにする形で反対側から迫ってきた、くま型のセラフィムを……おっと、危ない。こいつ海楼石の武装持ってるな。

 

 創作の世界の忍者が使うような鉤爪を腕に装備してる。

 ぶぉん、と勢い良く振りぬかれるそれをひらりとかわし、顔面を蹴っ飛ばして甲板にたたきつける。

 

 ……見た目が本物の『くま』よりも若い、というか幼い見た目で(サイズはでっかいけど)――しかもちょっと諸事情で、『くま』の見た目の奴を相手取るの、今の私達的にはあんまり気分がよくないんだけど――こればっかりは仕方ないとしか言えない。

 本人じゃないわけだからね、クローンだからね、兵器として作られた。そのへんは……『彼女』にも勘弁してもらわないと。うん。

 

 とかなんとか心の中で自己弁護してたら、視界の端にすごい勢いで空を蹴って突っ込んでくるゼファーさんの姿が……なんか既視感ある光景だな!? 15、6年前にあったぞ似たようなこと!

 あの時と違ってゼファーさんは止まってはくれないので、今回はきちんとガード……しようとしたけど反対側からアイビスが来てるので中止。回避で。

 

 周囲に大量に紙をばらまいて目隠しにし、急降下して離脱。

 そのままゼファーさんとアイビスが激突してくれないかと期待したけど、2人ともすれ違うように回避して……しかしそのまま回避させない。

 私が今ばらまいた紙、ただの紙じゃありませんのよ。

 

「“剃刀吹雪”……“千本桜”!!」

 

 2人が紙吹雪の中に突っ込んだタイミングで技を発動。ばらまいた紙が全て刃になって襲い掛かる。

 が、ゼファーさんは『鉄塊』で耐えつつ、スマッシャーで吹き飛ばしてしまい、アイビスには……やっぱ効かないか、この程度の攻撃力じゃ。

 

 アイビスはそのまま紙吹雪の中を強行突破したかと思うと、甲板に着地し……おもむろに、備え付けられていた大砲をガシッとつかむ。

 そしてなんと、そのまま大砲を、つかんだ手というか、手甲に取り込んでしまった。ただでさえゴツい手甲が、腕部分に大砲が埋め込まれた形になって、見た目的にさらに凶悪な感じになる。

 

 もちろんそれは飾りではない様子。

 まだ空中にいるゼファーさんめがけて右腕with大砲を突き出し……発射。しかも連射。

 

 ゼファーさんは、重量級の武器を持っているとは思えない身軽さでそれを回避し、自分も甲板に降り立った。

 

「そいつは……『ガシャガシャの実』の能力か? また厄介なものを……」

 

「! それってたしか……『鬼の跡目』の……」

 

「おぉ、嬢ちゃんも知ってたか。シキの奴に聞いたのか?」

 

「ええ、まあ」

 

 『ガシャガシャの実』……パパに聞かせてもらったことがある。

 元・ロジャー海賊団クルーだった男、ダグラス・バレットとかいう奴の能力で……あらゆる無機物を取り込んで合体し、自分を強化できる『合体人間』になるというもの。

 

 今の大砲を取り込んだ能力は、そういうこと……というかあの両手両足のパーツ自体、元々色々なものを既に取り込んで形作られてたんだろうな。

 

 しかしあいつ、こないだ『セカン島』で戦った時は、海楼石の武装使ってたし、絶対能力者じゃなかったはずなんだけど……この短期間で悪魔の実食ったの?

 いや、違うな。ほかの船に乗ってる別なセラフィム達が、それぞれ、今まだ能力者が健在な能力を使ってるし……何らかの手段で人工的に再現した能力か。そのへんもスノウ達に聞いとけばよかったかも。

 

 思うに、こないだの戦いで、能力者である私に対して、海楼石の武装が思ったより有効でもなかったから、方針転換して単純に強い能力で攻めることにした……ってとこかな? 『ガシャガシャの実』の能力なら、さっきみたいに火炎放射で『紙』の弱点もつけるし。

 まあ、それに対して私が対策を怠るわけもないので、ああして防がせてもらったけど。

 

 任意のタイミングで能力者になれるような機能でも持ってたのか? そしてそれが一方通行なのか、それとも可逆のものなのかはわからないけど……何にしても厄介さは上がったかもな。

 攻撃が問答無用で特効になるわけじゃなくなったとはいえ、何をしてくるかわからなくなったっていう怖さはある。何を取り込んでるのか、見た目じゃわかんないからな。毒ガス、薬品、他にも色々、厄介そうな武器類はいくらでも想像できる。

 

 加えて、連携して攻めてくるくま型セラフィム……こいつが代わりに海楼石の武装を持ってるから、引き続き油断はできない。動きは早くないから回避は難しくないけど。

 

 ところで、こっちは確かさっき『ゼロフォー』とか呼んでたな。

 そんで、他の船に乗せた奴がゼロワン、ゼロツー、ゼロスリー……なんというか、名前に個体を判別する記号以上の意味を見出してないのが丸出しのネーミングである。

 

 そもそもこいつら4人、何でこないだは一緒に攻めてこなかったのか……まさか現地調達したなんてことはないだろうし……いやでも……ううむ、わからん。

 

 おっと、考察はここまで。戦闘再開だ。

 ゼファー先生が動こうとして……しかしそれより一拍早く、アイビスがこっちに機械の拳を向けて……ほあっ!?

 

 拳が、飛んで……ロケットパンチ!?

 

 しまった、驚いた上にちょっと見とれてたから回避がちょっと遅れ……あっぶない、ギリギリ間に合った。

 ロケットパンチを囮にアイビスが放ってきてたレーザーも含めて、どうにか回避に成功。

 

 避けられると思ってたんであろうロケットパンチが意外といいコース行ったのが逆に予想外だったのか、アイビスがちょっときょとんとしてるのが微妙に気まずい。

 見ると、ゼファーさんが何か言いたげというか、呆れた感じになってるのも見えた。気まずい。

 

「……俺が現役の教官でお前さんが教え子だったら、拳骨の上で説教だったぞ、今のは」

 

「あっはい、割とマジですいません」

 

「……まあ、俺も男だから気持ちはわからんでもないが」

 

 あ、そうなんだ。

 

「……? 男性に対して、腕部を発射する攻撃は有効? 不意打ちとして効果的な速度やタイミングではなかったはず。データにない……関連性も不明……。それに、ベネルディ・トート・スゥは女性で、いずれにしろ当てはまらないはず……なぜこのような効果が? 要検証」

 

 そんでアイビスは、こっちはちょっと不思議そうにしてるし……あ、いや別にそんなガチな理由で特効あるわけじゃなくてその、別にそんな真剣に考察しないでいいよ。

 別に今のは、私の中の少年の心がちょっとアレだっただけだから。別に他の人は何も……

 

 

 

「レオナ伯母さま! 危ないです、よそ見なさらずに!」

 

「うわっと! あ、ありがとスノウ……いやだって、でも、ロケットパンチが! ロケットパンチがあんなマジで目の前であんな!」

 

「気持ちはわかりますが落ち着いてください! 今戦闘中ですから!」

 

 

 

 あ、あっちにもいたわ、わかってくれそうな子。

 

 それはそうと、さっき検証云々とか言ってはいたけど、さすがにアイビスも連続でロケットパンチを使ってくることはなく、また別な武器を私に向けてくる。

 

 何か、懐中電灯みたいな短い棒みたいなものを手にもって、そこから光の刀身が伸びておいこら今度はビームサーベルかぁああ!

 なんかこいつこないだより格段に、違う意味で私に刺さる武器使うようになってるう! たぶん別に意図とかしてないんだろうけど!

 

 あっちょっとまて今度は何してんのお前!? ビームサーベルに続いてそれ、背中からファンn……漏斗みたいな形の、空飛んで攻撃して来る支援兵器っぽいのが! やっぱりビーム撃ってくるし!

 

 かと思ったらビームサーベル持ってない方の手から、暴風? 竜巻? を吹き付けて来……待て待て待てちょっと待て! その風に乗ってなんか薬品……酸性の液体が飛んできてますね!? 当たったところが腐食というか溶けてるというか……今度はルストハリケーンかよ!?

 口から出してたら完璧だったけど……いやさすがに生身のビジュアルでそれはきついか。

 

 そして今度は、ゼファー先生にビームサーベルを弾き飛ばされて失ったかと思った直後、肩口に収納していたらしい斧槍……トマホークを取り出したのを見て我慢できなくなりました。

 

「何なんだよもーさっきから! 刺さるなあ武装の1つ1つが少年の心に! Dr.ベガパンクってロボットアニメ……もとい、絵物語好きなの!? 会ったことないし別に会いたいとも思わなかったけどちょっと興味出てきたんだけど!?」

 

「? “海賊文豪”、あなたは性別的にも年齢的にも少年ではないはず」

 

「悪かったね三十路女がこんなこと言って! 女だからって男の子らしい心を持ってないとは限りません! 覚えときな! 生みの親のDr.ベガパンクは教えてくれなかったみたいだね!」

 

「……理解不能。それに、私を生み出したのはDr.ベガパンクではない」

 

「……え? そうなの?」

 

「肯定。私は、ベガパンクによって製作されたものより後の世代のセラフィム。生みの親は、未来の世界に君臨するサイボーグの女王……『セラフィム・クイーン』」

 

「…………はい?」

 

 ……おっとぉ? またまた違った意味で予想外の方向に話が飛び始めたぞ?

 思いっきり聞き覚えのない単語も出て来たし。

 

 未来から来たってのは想定内ではあるけど、何だ、そのセラフィム・クイーンってのは? 名前からして、セラフィムの女王様っぽい存在なのは想像できるが。

 とか思ってたら、今度はゼファーさんが、

 

「なるほどな……やはりお前さんがそうだったか。未来を変えるために来た刺客。『ツヴァイ』の奴が言ってた通りだったわけだ。お目当ては……俺と、この嬢ちゃんの命だな」

 

「肯定。世界崩壊の阻止のため、そして、クイーンの君臨する未来のため……」

 

 そこで一拍、

 間を開けつつ、構えなおして、

 

「『グランリブート』による世界崩壊の未来を呼び込む元凶……NEO海軍総帥ゼット。並びに……未来の世界でセラフィム・クイーンを葬った張本人……“海賊文豪”スゥ。両名を、抹殺する」

 

 ……もしかして、情報足りてないまま戦ってるの……私だけじゃない? え、アイビスは当然としても、ゼファーさんまでなんか色々きちんと理解してるっぽいんだけど!?

 件の『情報源』から色々聞いたのか? 誰だ『ツヴァイ』って?

 

 誰か! 誰か説明してくれ! ずるいぞ皆ばっか!

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ……これは、ある1つの可能性の未来。

 これから来るかもしれないし、来ないかもしれない、そんな不確かな未来。

 

 発端は、ある時間軸の未来において、2人の時間遡行者が出て、歴史が変わったこと。

 『グランリブート』により、世界が滅んでしまった未来において、人々が身を寄せ合って暮らす最後のコロニー。そこで生まれた最後の子供……スノウとイリスの双子の姉妹。

 

 彼女達は、未来の世界にいた能力者・光月日和の『トキトキの実』の能力により、過去に戻り、まだ滅んでいない世界で、母親であるスゥ達に接触し、助言を行った。

 その結果、その世界線において……『2年後』が始まってからしばらくしてになるが、ゼット率いるNEO海軍による『グランリブート』の発動は阻止され、世界は滅びなかった。

 

 そのままスゥ達は、未来から来た2人の娘も加えて、しあわせに暮らしていく……はずだった。

 

 その後に、さらなる悲劇が巻き起こってしまうまでは。

 

 世界政府主導で開発がなされた人間兵器『セラフィム』。

 少し先の未来において、『王下七武海』の制度が廃止され、その代わりとして戦うであろうと期待されていた存在だったが……ある時、それが政府の手を離れ、一斉に反逆を開始した。

 

 フィクションではありがちと言えばそうだが、今まで利用されてきた存在……生命体なりAIなりが、人類に対して反旗を翻し、襲ってくるという展開が、その世界でも起こった。

 

 しかもそれは、ただ無秩序に暴れ始めたわけではなく……1体のリーダーの元に団結しての、組織的な反逆だった。

 あらゆる面で人類よりも優れている自分達こそが、この地上の覇者となるべきだ。そんな思想と共に、『王下七武海』に代わると言われるほどの戦闘能力を持つ『セラフィム』が、次々に制御を離れ、暴れ出した。

 

 そして、その首領となったのは……後に『セラフィム・クイーン』と呼ばれる個体。

 彼女は、世界政府の研究機関により、複数の海賊の『血統因子』を合成して作られた存在であり……『ルナーリア族』の遺伝子が組み込まれている従来の『セラフィム』と比較してもさらに異質な特性を持つ、いわば『キメラ』だった。

 

 政府の思惑通り、高い知能と桁違いの戦闘能力を持つ存在として誕生し、開発陣もクライアントも当初は喜んだが……完成と同時に『セラフィム・クイーン』は暴走。

 研究者や政府関係者を全て殺害し、『エッグヘッド』を制圧、自分でプラントを稼働させ、次々に仲間となるセラフィムを生み出し始めた。

 

 さらに、既に完成していたセラフィムを力でねじ伏せ、捕獲し、改造。当初設定されていた威権順位を書き換え、自分を支配者とする形で再設定した。

 

 そうしてセラフィムの軍団を誕生させたセラフィム・クイーンは、その圧倒的な武力によって、国を滅ぼし、海軍を退け、数多の島々を支配下におさめていった。

 自分達に劣る力すらない人間達は等しく奴隷とし、かつて世界政府や『天竜人』がやっていたものと同じか、それ以上に非情で凶悪な支配に、人々は震えあがり、絶望した。

 

 そうして快進撃を続けたセラフィム・クイーンだが、そんな中、彼女を脅威と見た人間たちのうちのいくつかの組織が団結し、連合軍を結成して戦いを挑む。

 そして、両軍多数の犠牲を出す死闘の末……そのグループの指導者の1人だった、その未来におけるスゥとの一騎打ちになり……両者は相打ちで倒れた。

 

 しかしその間際、『セラフィム・クイーン』は……『刺客』を出していた。

 

 ある研究資料の中にあった、『過去の世界に戻る方法』により、自分の配下を過去に送った。

 そして、やがて自分が死亡する原因となるスゥを過去で抹殺することで、未来で自分を倒す者がいなくなるよう仕向けたのである。

 

 加えて、そもそもセラフィム・クイーンが生まれる前に世界が終わってしまうのを防ぐため、ゼットによる『グランリブート』の実行も合わせて阻止するようにした。

 

 その、送り込まれた刺客こそが、スゥの姿を持つセラフィム……『S-アイビス』である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………そして、

 

 ここから先は……その『S-アイビス』も、『セラフィム・クイーン』も知らない……さらにまた別の世界線の話。

 

 ある世界線において、目論見通り『S-アイビス』は、スゥとゼット、両名の暗殺に成功した。

 

 しかし、その世界において……ある1人の女が、志半ばで、わけもわからないままに散ってしまった()()()の無念を思い、嘆いていた。

 

 その女性は、ある時、ひょんなことから、恩人達を殺した『S-アイビス』が、時を超えて未来から送り込まれた刺客だったことを知る。

 そして同時に思った。自分も同じようにして過去に飛べば……この悲劇の運命を『なかったこと』にできるのではないか、歴史を変えられるのではないかと。

 

 それを知った彼女は、必死にその方法を求め……数年後、執念でそれを突き止めることに成功し……ついに、過去に飛んだ。

 

 そして……

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。