大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第226話 三人娘&未来姉妹VSセラフィム×3

 

 

(じり貧だわ……このままでは……)

 

 場所は、スズとイリス、セラフィム『ゼロツー』、そしてアインが戦っている船の上。

 そこでアインは、自分が徐々にだが追い詰められてきていることを察していた。

 

 依然としてセラフィムは『ドクドクの実』の能力を使い、単純な力押しでこちらを押しつぶそうとしてくる。三本首の『毒竜(ヒドラ)』を伸ばし、うねらせ、薙ぎ払い……すこしでも触れればそれで終わりの猛毒を甲板全体に巻き散らす。

 

 それを泥や水で押し流せるスズやイリスと違い、アインにはその『毒』に対抗する手段がない。

 基本的に、逃げに徹する以外の選択肢がないのだ。

 

 アインは一応、短剣2本を使った二刀流での戦いに加え、二丁拳銃を使った中・遠距離戦も修めてはいる。しかし、常にその身に毒を纏っているゼロツーに近づくのは自殺行為だし、拳銃程度の攻撃力では全く痛打にならない。

 かといって、このまま手をこまねいて見ていても状況が改善するわけではない。

 

 というより、戦いに満足に参加することもできていないアインは……スズ達とゼロツーの双方から無視されている、ないし、気にされていないような状態だった。

 スズやイリスは、毒をかいくぐって、あるいは押し返して果敢に反撃している。しかし、先ほども言ったように、アインは逃げまわるだけで精一杯。

 

 この状況だけでも、アインには耐えがたい屈辱だったが……それでも、激情に駆られて判断を見誤るようなことはしなかった。アインとて、伊達や酔狂でNEO海軍の大幹部を務めているわけではない。

 

(だったら、利用するまでよ……! 私に注意が向いていない今なら、ちょうどいい『奇襲』になるかもしれない!)

 

 アインは意を決して……その身に宿す『モドモドの実』の能力を解放する。それは、手から発した『モドモド』のエネルギーに触れた相手を、12年分『戻す』能力。

 生物に使えば若返る。物質に使えば、12年前の状態に戻る。

 例えば、冷えて固まった溶岩に使えば、それがまだ『マグマ』だった頃の姿に戻るのだ。

 

 そして、今回アインがその力を向けたのは……

 

「むぉ!? な、何じゃ!?」

 

「これはっ……まさか!」

 

 次の瞬間、スズ達が立っていた船が……突如としてバラバラに分解された。

 アインが、乗っている軍艦そのものに『モドモド』の能力を使い……結果、素材単位でバラバラになってしまったのである。甲板に張られた板は、切り出されて間もない木材に、鉄の金具は、加工される前の鉄塊や鉱石にまで。

 

 素材という素材が『戻った』ことで、船はばらけて崩れ……スズ達は足場を失うことになった。

 

「ぐぅ、ぅ……っ……! 上手く、いった……!」

 

 アインは激しい疲労ないし消耗に襲われていた。

 個人差や能力自体の差、そして使い手の錬度によっても差は大きいが、『悪魔の実』の能力の発動は、ものによっては少なからず体力を消耗する。

 

 船1つを『戻した』ことで、アインは体力をごっそり持っていかれてしまっていた。もはや、まともな戦闘を行うことも困難というレベルだ。

 しかし、足場を失った以上、セラフィムもスズ達も、もう海へ落ちるしかない。全員が能力者である彼女達にとっては致命的なはず。

 

 そしてアインは、前もって甲板に備え付けてあった救命胴衣などのツールを用意していて、足場がなくなって海へ放り出されても自分だけは助かれるようにしてあった。

 もちろん、そのおかげで沈んで死ぬことこそないにしても、海に浸かってしまえば、能力者である自分も、力が抜けて身動きはできなくなる。もしかしたら、他の戦いの余波に巻き込まれて死んでしまうかもしれない。……その時はその時だ、仕方ない。

 

 そんな覚悟と共に、重力に身を任せつつも、少し前まで船だった瓦礫の山を蹴って遠くに飛ぼうとしたアインだったが……

 

 

 ―――ピュン!

 

 

「あ……っ……!」

 

 その足を、飛来したレーザーが貫いた。

 船の分解・消失をアインからの攻撃だと判断したゼロツーが、当然のごとく敵の排除に動いたのである。

 

 アインも油断していたわけではなく、周囲を警戒しながら逃げるつもりであった。なんなら、攻撃される直前にそれに気づきもしていた。

 ただ、体力の消耗と相手の反応・攻撃速度の問題で、かわせなかったのだ。

 

 幸い、浮き具は無事だが……足に傷を負ってしまった。出血したまま水に浸かれば、失血死一直線だが……そこまでいくまで命が持つかという点ですら微妙である。

 

 何せ、そのまま海に沈むと思っていたセラフィムは……何やら足の裏から炎を噴射して滞空している。自在に飛行が可能というほどの馬力ではないようだが、落水対策もしてあったようだ。

 そして、その体からまた『毒竜』を出して、首をアインに向けて伸ばし……

 

「“毒の道(ベノムロード)”」

 

 毒液の中を通って高速で移動し、あっという間に距離を詰めてきた。

 

 既に海に落下し……体の大部分が水に浸かったことで、力が出ない自分では、この後の追撃を防ぐ術はない。

 毒液をぶつけられてじわじわと死ぬか、それともレーザーで貫かれるのか……

 

(ここまで、か……)

 

 しかし、その毒の龍の首が……スパッと切断され、ゼロツーはそこから外へ投げ出されることになった。

 

 やったのは、スズ。

 2本の刀を振り抜いて放った飛ぶ斬撃。当然のように覇気を纏って放たれたその一撃は、毒の龍の首を容易く両断した。

 

 そして、そのスズの足元には、ぷかぷかと浮かぶ『島雲』が。

 まだ短時間だけではあるが、青海の環境でも『雲』を発生させられる、改良した『雲貝』……の、試作品を使ったものだ。

 万が一に備えて、スゥの母……スズにとっては祖母にあたる、ソゥから受け取っていたもの。

 

「わしら能力者にとって、海への落下は海戦における最大の懸念。対策しとらんはずがなかろう。『月歩』の習得は当然として……足場を作る手段なら片手の指ほど常備しておる」

 

「お母さんが心配性だもんね。この時代に来て早々、私も色々持たされたよ」

 

 そう付け加えるイリスは……こちらはこちらで足場を用意してそれに乗っていた。

 しかし、それはパッと見ると『島雲』に見えるが、よく見るとそうではない。人が乗れる、不思議な……『煙』だった。

 

 そしてその煙は、イリスの隣にふわふわと浮いている、不思議な見た目の美女によって発生し、操られていた。肌は色白で、ふんわりとした髪の、美しい見た目の……どことなく雰囲気もふんわりとしている美女だ。

 ……というか、本当に肌は普通に『白色』で、髪の毛も、なんなら体も、どこか人間みを感じないレベルで『ふんわり』しており……何より、足がなく、下半身が『煙』である。

 

 もうお分かりのことだろう。彼女もまた……例によって『美少女擬人化』して顕現した、イリスの『ホーミーズ』である。

 

「ま、私にはあなたがいるからそういうのは必要ないんだけど……ね、“えんらえんら”」

 

「そう言ってもらえると嬉しいですねえ、ご主人様ぁ」

 

 間延びした、やっぱりここでも『ふんわり』した口調でそう返す……『煙』のホーミーズ・えんらえんら。

 彼女の煙は、物体に物理的に干渉することが可能で、今のように足場にしたり、伸ばして触手のように相手を捕らえたり、煙幕に障壁にと変幻自在の武器である。

 

 そんな彼女に足場を任せながら、イリスは『さて』とセラフィムに向き直る。ちょうど、投げ出されはしたものの、足裏からの噴射でまた体勢を立て直したところだった。

 

「船がなくなっちゃったわけだけど……あれってあのアインって子の能力よね? たしか、12年分時間を戻すんだっけ。そんな無茶苦茶な手を使ったってことは……この船は最悪壊れてもよかったってこと。それはつまり……」

 

「この船にダイナ岩は乗っていなかったようじゃの」

 

「だったら話は早いわね。というか船自体ちょうどなくなっちゃったことだし……最大火力で吹っ飛ばしちゃいましょ。イフィジャール、出番」

 

「合点承知!! 消し炭にしてやるぜ!!」

 

 合図と同時に、同じようにイリスの横に浮いていた美女……炎のホーミーズ・イフィジャールが全身から超がつくほどの高熱と爆炎を放出し、それを収束させていき……

 次の瞬間、ゼロツーめがけて放つ。

 

 まるで極太のレーザーのように束ねられた炎が放出され……直撃。

 セラフィムの……『ルナーリア族』の肉体はその爆炎にすら耐える。多少肌があぶられて焦げていくが、痛打になったかと言われると微妙だった。

 

 しかし、その爆炎は……その勢いは……ゼロツーが足から噴射している炎よりははるかに強い。

 傷つくことがなくても、体勢を保つことは全く不可能で……押し出されるように、海面めがけて急降下していく。

 

 ゼロツーも……セラフィムもまた、『グリーンブラッド』による疑似的なそれとは言え『能力者』である。海は弱点であり……落とせば勝ちなのだ。先ほど、アインがそれを狙ったように。

 

 そのままなすすべなく着水するかと思われたゼロツーだが、直前で身をひねってどうにかイフィジャールの爆炎から離脱し、足のスラスター?をふかして再度上昇しようとして……しかし、

 

「―――捕まえ、たっ!」

 

 その背後の水面から……水中に潜んで待ち伏せていた、水のホーミーズ・プネーマが現れる。

 そして、とりこんだ大量の水を触手のように操り……毒液を出す暇すら与えず、包み込んで……水の牢獄に閉じ込めてしまった。それによって、完全に抵抗する力を奪われる。

 

「ご主人様! 捕獲完了よ!」

 

「よくやったプネーマ! とりあえずそのまま水に閉じ込めといて。いくら頑丈な『セラフィム』でも、水の中に何時間も閉じ込めとけば息できなくて溺死するでしょ。さて……」

 

 プネーマからの『りょーかい!』という元気な返事を聞いた後、イリスは振り返る。

 その視線の先には……どうにか浮き輪にしがみついて青い顔をしている、アイン。

 

 えんらえんらに自分を運ばせてそのそばまで行く。当然アインはそれに気づくが、拳銃を抜いて向ける程度の力すら残っていないらしい。

 もしもここでイリスが彼女を殺そうとすれば、抵抗することはできない。あっさりとその命は刈り取られてしまうだろう。

 

 それでも彼女は、たとえそうでも心まで屈するつもりはないとでも言いたいのか、強い意思と覚悟のこもった目つきでイリスをにらむ。

 ……しかし、それでも……恐怖や不安といったものを殺しきることは、到底無理だったようだ。

 

 それは……次の瞬間の光景が証明した。

 

 

LIFE(寿命) or OBEDIENCE(服従)

 

 

 イリスによる『魂への言葉(ソウルボーカス)』により、心の中にある不安や恐怖……生への執着がむき出しにされたアイン。その体から、アメーバのような見た目に具象化された『魂』が……彼女の『寿命』があふれ出す。

 それをイリスは、抜き放った剣を一閃させて……全て刈り取った。

 

 寿命を奪われたことで、がくり、と脱力し……アインは、絶命する。

 

「ん? 何じゃ、殺してしもうたのか? 幹部は一応、情報を聞くために捕獲する方針じゃぞ」

 

「大丈夫よスズ伯母さま。確かに死んだけど、『魂』を奪い取っての死なら、それを戻せばきちんと生き返るから。あ、プネーマこの子回収しといて」

 

「それはまた……能力によるものとはいえ、不思議なもんじゃの……ならよいか。捕獲しようとして抵抗されても困るし、かえっていい手かもしれんな。……というかわし、あんまり出番がないままにイリスに美味しいとこ全部持っていかれてしもうたな」

 

「いーじゃないこのくらい。私だってせっかく遠路はるばるこの時代まで来たんだから……お母さん達のために活躍させてよね!」

 

「そうじゃったな。ま、勝てたのならそれでよかろ。さて、他の連中はどうなっとるかのう……?」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 一方こちらは、くま型セラフィム“ゼロスリー” VSアリス。

 

 最初に浮かせた艦とはまた別な艦を浮かせて攻撃しようとするゼロスリーだったが、それを許さず苛烈に責め立てるアリス。未だに両者は、空中にいた。

 

 ゼロスリーはグリーンブラッドによって『フワフワの実』の能力を持たされているため、他のセラフィムと違って足のスラスターによる加速や飛行はしていない。自前の能力で飛ぶことができ、その機動力はかなり高い。

 

 が、それもアリスほどではない。本来はホームグラウンドになるはずの空中での戦いだが、ゼロスリーは防戦一方だった。

 

 が、アリスにしてみれば当然である。アリスは普段から、本家本元のフワフワの実の能力者であり、目の前のゼロスリーなどとは次元が違うレベルにまで鍛えられたそれを使いこなすシキと稽古をしているのだから。

 ゼロスリー程度の力では、全く持って力不足だった。

 そもそもからして、レーザーであれ、『フワフワ』で浮かせた質量攻撃であれ、『リバリバの実』の能力で反射してしまえるアリスに対して、ゼロスリーには有効打足りうる攻撃がない。

 

 アリスも当初は、スゥから『セカン島』での戦いについて聞いた際に出てきた、毒ガスや海楼石の装備などを警戒していたが、そういったものを使ってくる様子もない。

 『武装色』によって能力を突破されるか、海楼石の武器でもなければ、アリスには効かない。

 

 それでもアリスが今まだこのゼロスリーを仕留めきれていないのは、ただ単に……

 

(ほんとコイツ頑丈だな……全然怪我しない。なるべくいい状態でおばーちゃんへのお土産にしたいのに……)

 

 そういう理由だった。

 戦闘能力では問題はないが、頑丈さは天下一品であるため、『なるべく破損を少なくして回収し、ソゥへの手土産にする』というアリスの目的に中々そってくれないのだ。

 

 当初、頂上戦争の時と同じように、小さな傷をつけてそこから『血流』に触れてそれを逆転させることで仕留めるつもりだったが、いつまで経ってもかすり傷1つつかない。

 瓦礫やレーザーを跳ね返しても、覇気を纏った攻撃でも。

 

 と、ちょうどその時……視界の端で、スズとイリスの方の戦いに決着がついたのが見えた。

 プネーマが水の牢獄でゼロツーを捕らえ、アインの方も捕獲したようだ。

 

(ナイス、イリス! 溺死なら保存状態も上々だ……これでこっちは遠慮なくぶっ壊して大丈夫! あとあのアインって子は後できちんと復活させるとして……)

 

「さて、じゃあ……ゼロスリー君だっけ? 悪いけど……お別れだね」

 

 直後、空を蹴って一気にゼロスリーの懐に潜り込んだアリスは、グローブを嵌めた手のひらを、ぽん、と押し付けるようにゼロスリーの胸に押し付けた。

 そして……

 

「とくとご覧あれ、おばーちゃん特製の新兵器―――」

 

 

 『衝撃貝(インパクトダイアル)』というものが存在する。

 空島に存在する『(ダイアル)』の一種であり、その名の通り、与えられた衝撃を吸収して自在に放出する性質を持っている。

 ただし、その反動はそれなりに大きく、一般人が不用意に使えば自爆ダメージでの負傷すらも起こりうる、諸刃の剣でもあった。

 

 またその上位互換に、その10倍の放出力を持つ『排撃貝(リジェクトダイアル)』というものが存在する。絶大な威力を誇る半面、その反動はさらに大きく、『使えば使用者もただでは済まない』とされ、半ば自爆兵器のような扱いを受けている『絶滅種』だ。

 

 それだけでも、普通の感性を持つ者であれば、使うことを忌避するような武器であるが……残念ながら『金獅子海賊団』には、普通ではない感性を持ち、そういったヤバいものに嬉々として手を出す問題児が存在した。研究部門に。

 

 その問題児……ソゥは、スゥが空島から持ち帰り、Dr.インディゴが養殖に成功していた『排撃貝』を材料にしてさらに研究を進め……1つの兵器を完成させた。

 グローブ内に複数の『排撃貝』を搭載。それらから放出される衝撃を増幅した上で収束し、真正面に打ち出すことで……それだけでも殺人級の威力を誇る『排撃』の、さらに10倍の衝撃を相手に叩き込む兵器。

 その名も……

 

 

 

「―――“鏖撃(エリミネイト)”!!」

 

 

 

 瞬間、すさまじい轟音と衝撃波がまき散らされ……ゼロスリーに直撃。

 無敵のはずのセラフィムのボディが大きく歪み……あちこちから出血し、内部の金属部品がいくつも破損してショートし始めた。『バキバキ』『ミシミシ』『ガガガ……』と、中々に破滅的な音があちこちから響く。

 

 未完成とはいえ、『ルナーリア族』の肉体をもってしても防ぎきれない威力の一撃は、ゼロスリーの体の芯まで届き……致命的な破損をいくつも発生させた。

 それにより、ついにゼロスリーは機能を停止し……能力を維持することもできなくなり、墜落していった。

 

 が、アリスはそれに追いつき……追い越し……スズ達がいる方めがけて蹴飛ばした。

 

「イリス! ごめん悪いけどコレもお願い!」

 

「え? お父さん何……ってちょっとお!? え、えんらえんら!」

 

「えっ、はい……アレ受け止めればいいんですねぇ?」

 

 突然こっちめがけてもう1つセラフィムが飛んできて驚いたイリスだったが、どうにか反応が間に合った。

 えんらえんらの煙で、飛んできたゼロスリーをキャッチする。

 

「ナイスキャッチ! あとイリス、その今溺れさせてるやつも捨てないでね! おばーちゃんへのお土産にするから持って帰ろう!」

 

「えー……」

 

「ばあ様への土産……いや確かに喜びそうじゃけども、また研究室周りがひっどいことになるんじゃないのかそれ。こいつらに使われとるのって、母上の小説とかで言うところの『オーバーテクノロジー』って奴じゃろ? 絶対狂喜乱舞するぞあの人」

 

「だからいいんじゃん! またコレみたいに面白い武器作ってくれるかもしれないでしょ?」

 

「コレ、って……お主さっきのとんでもない音、やっぱそれ使ったのか……大丈夫か? ばあ様の話だと、確実に使った奴も死ぬって話じゃったじゃろ、反動やばいから」

 

「平気平気、ボクには効かないもん。だからボク専用の武器ってことで持たせてくれたわけだし」

 

 スズの言う通り、『鏖撃掌(エリミネイトグローブ)』は、その反動の大きさゆえ、使えば確実に使用者が死ぬ……どころか、文字通り粉々になってしまうレベルの、完全な自爆兵器である。

 しかし、アリスが使えば……その『反動』すら『逆転』させて、むしろ相手への追加ダメージにしてしまえるため、全く問題にならない。

 

 先程それを直撃させたゼロスリーにも、10倍どころか、それプラスアルファの衝撃が襲い掛かっていたはずだ。

 そんなものをぶつけられてしまえば……いくら頑丈なセラフィムでもひとたまりもなかった。

 

「さて、これで2体目。残るはレオナが戦ってる1体と、お母さん達のところにもう1体、それと、親玉のお母さん型セラフィム……か」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 そして……ばらけたうちの、その最後に残った1体を相手取ってい()レオナはというと。

 

「なんだよあいつら……みんな揃って随分楽勝っぽい感じで倒したんだな」

 

 ボロボロになった軍艦の甲板。

 肩で息をしながらも、深呼吸を繰り返して呼吸を整えているレオナの姿があった。

 

 そして、その足元には……全身から火花をバチバチと散らせて、動かなくなったゼロワンが。

 

「疲れた……こいつ丈夫すぎ……めっちゃ時間かかったんだけど」

 

「……レオナ伯母さま?」

 

「あ、スノウおかえり。どうだった?」

 

 そこに戻ってきたスノウ。

 開戦当初はレオナと一緒にいたはずの彼女だが、戦闘の途中で離脱していた。

 

 なぜかというと……

 

「上々です。ダイナ岩を搭載した船を発見しましたので、乗員は、ビンズとやらを含めて全滅させた上で、舵とマストを壊しておきました」

 

「そっか……やっぱりね。あの面白忍者、どこにもいなかったもんね」

 

 2枚看板の幹部のうち、アインはスズ達の船にいた。

 しかし、ビンズがどこにもいないことを不思議に思ったスノウは、レオナに断ってそれを探しに行き……その先で、全く別な船を護衛しているビンズを発見。

 

 幹部が直々に守っているということは……と推察して中身を改めてみれば、予感は的中。『ピリオ島』の爆破に使うためのダイナ岩は、その船に積まれていた。ビンズはそれを守っていたのだ。

 もっとも、そのせいでダイナ岩の乗った船を特定されてしまったわけだが。

 

「我々の船にいる、ビューティ殿とブルーメ殿には連絡済みです。制圧とダイナ岩の回収のために人員をよこしてくれるとのことで……あ、霧が出てきましたね」

 

「ブルーメのカモフラージュだな。仕事早いな……さすが母ちゃんの側近」

 

「……ところで、1ついいですかレオナ伯母さま」

 

「うん、何?」

 

「その……足元に転がってるセラフィムなんですが……」

 

「ああ、うん、大丈夫、もう倒したから。いやー……めっちゃ時間かかっちゃったよ。まだまだ修行が足りないなー……じーちゃんとかに今度相談しなきゃ」

 

「ええ、あの、そのようですけども……どうやって?」

 

「? どうやって、って何が?」

 

「どうやって倒したんですか? セラフィムは『ルナーリア族』の血で強化されていますから、尋常ではないタフネスを持っていると聞いていましたが……」

 

「あー、うん、めっちゃ硬かったしめっちゃタフだったよ……1000発くらい殴ってやっと倒れた。あーもう、疲れたなあホント……こんだけぶっ続けで全力で『武装色』使ったの初めてかも」

 

「拳だけで倒したんですか……」

 

 勉強家であるスノウの記憶によれば、かつて読んだ資料において……セラフィムは、覇気使いが相手でも、どれだけ苛烈な攻撃にさらされても傷一つ負わずに戦い続けるレベルの防御力を持っていたとあった。

 それこそ、かの『女ヶ島』へ派遣されたこともあったと聞く。その時も、少なくない被害が出るレベルの戦いが起こり……九蛇の戦士の覇気をこめた剣や弓矢にさらされつつも、平然とセラフィムは戦い続けた、と。

 

 戦いが始まった当初、スノウがそれなりに力を込めて『地震』の一撃を叩き込んだ時も、ほとんど効いている気がしなかったレベルだったのだが……

 

(レオナ伯母さまは、フィジカルはともかく、戦闘の技能ないし手腕においては、父上やスズ伯母さまには劣ると聞いていたのだが……全然そんなことはないのでは……? むしろ、小細工なしの単純な殴り合いでここまでの結果を出せるのは、それこそ……)

 

「……? スノウ、どしたの?」

 

「い、いえ何でも……ともかく、これで散らばった3体のセラフィムは全滅ですね。残るは……」

 

「うん。……母ちゃんのとこにいる1体と、親玉だけだ」

 

 

 

 

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