「2人が持ってきた『悪魔の実』を?」
「ああ。死蔵しておくだけじゃもったいねえ、色々と使い道を検討していくべきだろ」
ゼファーさんのお墓参りももう済んだ。
引き続き海賊の身の上で申し訳ないけど、本当にありがとうございました。
アインとビンズも、そしてツヴァイも、きちんと送り出した。これから、ゼファーさんの代わりにこの世界を見守って……時には戦って歩んでいくつもりだそうだ。
そんな感じで『ONE-PIECE-Z 人造人間・セラフィム編』も終局を迎えたことだし……私も、もうきちんと平常運転に戻さないとね……とか思ってた今日この頃。
呼び出されて、アジトの本邸に出向いた私達に、パパはそんな感じのことを切り出してきた。
ここは本邸にある、大きめの会議室なんだが……今この部屋にいるのは、パパとDr.インディゴ、私と三人娘、側近2人……そして、イリスとスノウ。以上10名のみだ。
話し合う話題が話題なので……ホントに信頼できる、身内と呼べる面々だけを集めている。
議題は今言った通り、『悪魔の実』の使い道について。
イリスとスノウがこの時代にやってきた際、手土産として持ってきた大量の……100個を超える『悪魔の実』。全部天然もの。
それらをこの先、どう使うかについてだ。
「ひとところにこれだけの悪魔の実が並んでるっていうのが……何というか、壮観どころじゃない光景なのですよ。これ1つ1つが、使い方次第で島1つ、あるいは国1つすら滅ぼしてしまえそうな『怪物』に変わるかもしれないわけですし……」
「そこまで行くと一部のやべーレベルの能力者だけだとは思うが……まあでもブルーメの言う通り、怪物を生み出しかねないものだってのは確かなんだよな。実際、スゥとか親分さんとか、やべー力を手にしてぶん回してるわけだし」
「こらこら、人をバケモノみたいにいいなさんな。ビューティ、今あんたが自分で言ってた通り、能力ってのは、きちんと鍛えて研ぎ澄まさないことには宝の持ち腐れでしかな……あー違う違う、脱線した。これらの使い道をどうするかって話だよね、パパ?」
「ああ。不用意に使っていい力じゃないのは確かだが……かといってこのまま倉庫の中に眠らせておいても、それはそれで意味がないしもったいねえだろ? 金や権力と同じだ……『力』は、用法用量をきちんと守って有効活用してこそ意味がある」
さっきちらっとブルーメが言った通り、この光景そのものがもう『爆弾』だと言っていいレベルなのは確かだ。
ひとところに、悪魔の実が100個以上。100人を超える『能力者』を生み出せる『力』がここに集められている。
立派な『火薬庫』だ。その存在だけでも、かぎつけられれば、いらんちょっかいをかけてくる奴らは必ず出る。海賊にも、海軍にも……政府にも。
『武器』としても、『宝』としても、『情報』としても……扱いには細心の注意を要するだろう。
しかし、かといって……パパが今言った通り、いつまでもしまっておいて隠したままにしておくのは、それはそれでもったいない。『有効活用』すべきだ。
「しかし、有効活用となると……当然『食べる』あるいは『食べさせる』ですよね?」
と、ブルーメが訪ねる。
まあ、そりゃね……『悪魔の実』なんだから、そりゃ食ってなんぼでしょ。
世間では『売れば1億ベリー』なんていう言われ方をしたりもするけど、そんな使い方、『悪魔の実』がどれだけの力になるのかを知っている者であれば、愚かにしか映らないだろう。
実の種類にもよるだろうとはいえ……食べて力を手に入れ、それを研ぎ澄ませば……1億くらい割と簡単に元が取れるもんだ。むしろそれ以上に価値のある力が手に入ると思えば、換金なんて論外としか言えない。
それこそ、よっぽど力に興味がないとか、『力なんてトラブルの元にしかならねえ! 俺はそんなもんいらねえ、平和に生きるんだ!』とかいう人でもなければ……いやそういう考えの人なら割といてもおかしくないか? この世界……
でもまあ、私達には当てはまらないからね。
私達は『金獅子海賊団』。戦力に直結する『能力者』なんか、なんぼいても困らない。
まあその分、食べさせる人間にはきちんと注意しなければならないというか、慎重に選ぶ必要があるだろうけど。
「その辺の選定は、きちんと慎重に行うつもりだ。100個もあるとはいえ、1個1個が決して軽くも安くもねえ代物だからな……適当にそのへんの奴に食わせていいもんじゃねえ。ぼちぼち部下達の中から候補者を選んでいくつもりだが……お前らも気になる奴がいたら推薦してくれていいぞ」
「あたい達の部下や子分共の中から、見込みがありそうな奴を選んで食わせていいってことか?」
「もちろん、そいつに『資格』があるかどうかは、俺やスゥなんかも加わってきちんと審査ないし検討させてもらったうえで、だがな。忠誠心、向上心、将来性……色々と見なきゃいけねえことはある。そのへんは妥協しねえほうがいいだろ、お互いに」
それは確かに。
今パパも言った通り、いくら大量にあるからって、無駄遣いしていいもんじゃ絶対にないよね、1個1個の価値を考えたら。全部違う『能力』を持ってるんだから。
「つってもまあ、ここにいるメンバーのほとんどがもう『能力者』だからな。自分で食うっていう選択肢はねえわけだが。そうじゃねえのは……」
「ビューティとDr.インディゴだけだね。どう? 2人とも食べたい?」
2人なら、信頼やら何やら全然条件満たしてるから、希望するなら好きなの持ってっていいけど。
「いやあ……遠慮しとくわ。カナヅチになったり、海楼石に弱くなるのはごめんだ。海の中の食材とか取りにいけなくなるしな」
と、ビューティ。うん、彼女に関しては……そう言うと思った。
彼女、素潜りで海獣や海王類すら仕留めて、自ら食材調達するもんね。『冬空の料理人』は、今も日々成長し続けています。
それに、ちょっとアレな話……ビューティは私の側近として、万が一私やブルーメが海に落ちた時とかに助ける役割も担ってたりするし。
そういう意味でも、彼女にはこのまま泳げる立ち位置でいてもらった方がありがたい。
で、もう1人のDr.インディゴは……
「私も……興味がないと言えば嘘になりますが、今すぐに何かを、という気にはなりませんね……保留でよろしいでしょうか」
「いいんじゃねえか? 別に焦らなくても逃げやしねえんだしよ」
なるほど、やっぱりこの2人はひとまずなしってことね。
Dr.インディゴは……この先食べる可能性は、なくはないみたいだけども。
となると、とりあえず今後、ゆっくり時間をかけて、慎重に候補者を選んで、『悪魔の実』を……『下賜』って形になるのかな? 食べさせて、能力者を増やす……そして、戦力を増やすと。
向上心豊かで将来性のある部下がいれば……『力が欲しいか』的な感じで聞いてみてもいいな。頭の片隅にでも置いておこう。
……などと考えていた時だった。
「……ん?」
ふと、そんな声が。
見ると、イリスが……ずらっと並んだ『悪魔の実』を見渡して……なぜかきょとんとした顔になっていた。
隣に立つスノウがそれに気づいて、
「どうした、イリス?」
「……ねえ、スノウ。私達がこの時代に持ってきた『悪魔の実』ってさ……何個だっけ?」
「超人系29、動物系32、自然系9、分類不明35……合計105個だ。それがどうかしたか?」
「お母さん、おじいちゃん……その105個のうち、もう何個か使っちゃったとかある?」
「? いや、まだ1個も使ってねえはずだぞ? なあ、スゥ」
「うん。……というか、今の今までずっと私が体内に『エニグマ』で収納してたからね……最初にお披露目してからずっと。だから…………あれ!?」
そこまで言って……私も気づいた。
うん、1個も使ってないよね、と頭の中でパパの言葉を反芻しつつ、半ば反射的というか無意識に、並べられている『悪魔の実』を数えて……
「……ねえ、お母さん。私その……今ここに、悪魔の実……104個しかないように見えるんだけど……数え間違い、かな?」
「「「え!?」」」
イリスの言葉に、全員ぎょっとして……慌てて、並んでいる『悪魔の実』を数える。
私も念のためもっかい数える。
ええと、縦に5個、横に……21個、規則正しく並んでるな。
5×21=105。……うん、105個だ。……105個になるはずだ。
……なるはずだった。
……ない。
5個×21列、並んでいるはずのそれが……1か所、ぽっかり欠けている。
イリスの言う通り……104個しか……ない。
「え……え……何で? 盗まれた!?」
「い、いやそれはありえんじゃろ! 母上が『エニグマ』で収納しているものを盗むなんてことは不可能じゃ! となると、イリス達の数え間違いで、最初から104個しかなかった……か?」
「い、いえそんなはずは! 確かに私とイリスできちんと数えましたよ!」
「というか、ボクも前の『お披露目』の時に105個あるのきちんと数えたから確かだし……ていうか今日、さっき出した時も数えたよ! その時は105個あったって!」
「ってことは……今さっき盗まれたってことか? ……あたしらの目の前で?」
「それこそ不可能では……この面子が揃っている中で忍び込んで窃盗なんて……というか、そもそもここに今これだけの悪魔の実が揃っていること自体誰も知らないはずで……」
「……待って、それよりもっとヤバいことに気づいた」
皆が口々に言う中で……『それ』に気づいてしまった私は、ブルーメのセリフを遮って割り込んだ。
確かに……アリスが言っていたことが本当なら、犯人?は今しがた、私達がそろっているこの部屋から、誰にも見つからず、気づかれずに悪魔の実を1つ、盗み出したことになる。それだけでも大変なことだ。
けど……今言った通り、私今、もっとヤバいことに気づいちゃった。
『誰が』とか『どうやって』じゃなく……持っていかれた悪魔の実が、『何の能力』の実だったか……という点だ。
悪魔の実が1つなくなった、と聞いた直後……私はとっさに『その実』を探した。
未来から持ち込まれた実の中でも、特にやばいものの1つだったから。
それについて話すと……全員、『やばい』って感じの顔になった。
特に、パパとDr.インディゴは真っ青になった。……私の顔も多分同じくらい青い。
そして同時に……哀しきかな、犯人の正体に目星がついてしまった。
間違いない、うん……『あの人』なら……『あの実』を欲しがる。絶対に。
いつもと同じように、無断で(正面から頼んでも断られるのを確信しているだろうから)持ち出して、強引に自分のものにするに違いない。持てる全ての手段、ないし発明品を使って。
「おい、お前ら全員今すぐ『あいつ』を確保してここにつれてこい! 大至急だ、手段は問わん! 万が一あいつがアレを食っちまったら、それはもうお前、もう、大変なことに……急g―――」
「“ROOM”うううううっ!!」
「「「お・ま・え・は・よぉぉォォオ!!」」」
部屋のすぐ外から、聞きなれすぎた大音量でそんな絶望的なワードが聞こえて来たかと思うと、壁一枚隔てた向こう側から『手術室』の『
遅かった……あの人の手に、一番渡しちゃいけない能力が渡ってしまった……。
いや、確かに……すごく相性いい能力だと思うけども!
鬼に金棒どころじゃない頼もしさで、相乗効果でえっらいことになる未来が目に見えるけども! あと本人の不治の病も自力で直しちゃいそうだけども(誤字にあらず)!
それでも、たぶん『やらかし』がそれ以上にひどくなることが間違いないから、喜べないし……最適解だと理屈ではわかっていても、私達の精神安定のために選びたくなかった未来だ……!
しかし、もう遅い。
こうして……私達『金獅子海賊団』に……新たな能力者が誕生してしまった。
〇金獅子海賊団 新規能力者登録
名前:ベネルディ・ソゥ
能力:超人系『オペオペの実』
(改造自在人間)