大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第234話 一家団らん、平和な時間(その1)

 

 

 『NEO海軍』の一件からしばし。

 後始末その他も一通り終わり、私達だけじゃなく、海軍も政府も通常運転に戻った頃のこと。

 

「ほらほらお母さん、早く早く!」

 

「こらこら、そうせっかちにならないのイリス……雪山は逃げやしないんだから」

 

「だってせっかくこうして一緒にゆっくり遊べる日なんだから、一分一秒でも長く楽しみたいじゃない! ねえ、スノウ! レオナ伯母さま!」

 

「まあ。確かに……場所は逃げないが時間は割とスルスル逃げていくからな」

 

「そうそう、だからほら母ちゃんも、スズもアリスも早く! ……ってか未だに『伯母さま』って呼ばれるの慣れないなー……」

 

 ここは、金獅子海賊団のナワバリの1つにある空島。

 空島ではあるけど、そこまでぶっ飛んだ過酷な気候ってわけじゃなく……ちょっとした雪国程度に雪深い程度のところだ。

 

 強いて言うなら、メルヴィユの空域の一部なので、このへん特有の面白動物は色々生息してるけど、もれなくレオナの友達なので襲われたりする心配はなし。

 

 そして今日私達は、家族水入らずで楽しく遊ぶためにここを訪れています。家族水入らず。

 スキーやスノーボードなんかのスノーレジャーとか、その他色々、適宜思いついた遊びを思いっきり楽しむつもりだ。

 

 

 

 事の発端……というほど大げさなものでもないけど、きっかけは日常の何気ない一コマだった。

 

 未来には帰れないということで、この時代で一緒に暮らすことになったスノウとイリス。

 彼女達は、私の4番目、5番目の娘として迎えることになった。

 

 ……まあ、別な世界線のこととはいえ、実際に娘なわけだしね……。

 というか、娘兼孫なんだよね……アリスの娘でもあるから。

 何度も思うけど、特殊すぎるなこの関係性。

 

 まあでも、それで特に悪く思ったりするわけでもないし……NEO海軍の一件では協力して戦う中で絆も育めたと思うので、これから仲良くやっていければいいなと思っている。

 

 それに……最初は2人とも、血がつながってるとは言えまだ知り合って間もないわけだし、ぎこちない感じだったんだけど……数日経って徐々に慣れ始めてからは、

 

『お母さんお母さん! 仕事終わったんでしょ? ほら一緒に遊びに行こ! 今ちょうどいい天気だし、今日『キューカ島』でスイーツバイキングフェアやってるんだって! 一緒に行きましょ!』

 

『こらイリス! 母上は仕事で疲れてるんだからそんな……無茶言って困らせるんじゃない!』

 

『だってちょうど私達の予定とお母さんの予定がかみ合って一緒にいられるんだし、だったら普段一緒にいられない分遊ばなきゃ! スノウだっていつもお母さんと一緒にいられなくて寂しそうにしてるじゃない!』

 

『それはっ……し、仕方ないだろう。身内認定で受け入れられたとはいえ、私達は『金獅子海賊団』では新入りなんだから、きちんと精力的に仕事をこなして評価を勝ち取っていかないと……』

 

『家族なんだからそんな堅苦しくしなくていいの! もちろん仕事をおろそかにするつもりは微塵もないけど、だからって家族の触れ合いや楽しい時間もおろそかにしちゃいけないと思うの!』

 

 とまあ、こんな感じのやり取りが最近よく起こるんだよね。

 

 ぎこちなさが消えて以降、イリスはまるで昔からそうだったみたいに私に遠慮なく甘えてくるようになって……『家族』としての距離感で接して来るようになった。

 それこそ、出会った頃のレオナやアリスと同じかそれ以上って感じ。

 

 幼児退行すらしてるんじゃないかってちらっと思ったりもしたんだけどスノウ曰く『素のイリスはもともとこんな感じです』とのこと。

 そして、『素』の自分をこうも遠慮なく見せるようになったってことは、それだけ私や、この時代の皆に心を開いたってことなのだろう、とも言ってた。

 

 一方、スノウの方は……こちらもイリスほどではないけど、前よりも距離的に近くなったようには感じる。抱き着いたり甘えたりはしてこないが。

 こちらは、出会った頃のスズと同じかな。距離感を探っている最中であり、甘えていいのかちょっと迷ってる的な空気を感じる。ナチュラルにそういうのを態度に表すのに慣れてない感じ。

 

 けど、イリスが遠慮なく私に抱き着いてほおずりして、その反対側にアリスが同じように抱き着いてほおずりしてる(おい)光景を見て、うらやましそうにそれを見てる……なんて光景も何度か見ている。

 スズと同じで真面目な委員長タイプだけど、根っこのところはイリスと同じなのかも。

 

 それに加えて……これは、イリスとスノウの両方に言えることなんだけど、この世界が平和だから、より一層こうなってる一面もありそう。

 イリスは甘えん坊になって、スノウはちょっと戸惑ってる感じに。

 

 何せ、彼女達が生きていたのは、皆が必死で耐え忍ぶことを続けなければ生きていけない……いや、耐え忍んでもいずれ破綻・滅亡が見えてしまっている『滅んだ世界』だ。

 生活に余裕はなく、人々の心はボロボロになっていて、希望と言えるものはどこにもない。

 

 加えてその世界では、レオナは死に、私もスズも戦士としては再起不能。パパもママもなくなっていて……その他、挙げ連ねればきりがないほどに、掃いて捨てるほどそこらへんに悲劇が転がって渋滞を起こしているような有様だった。

 

 2人は、そんなギリギリの世界で、絶望や悲嘆にくれる人々を見ながら過ごしてきた。

 

 そんな時代を知っている彼女達からすれば、今の時代は天国みたいなものなんだろう。

 家族が生きていて、平和で安全な家もあって、美味しいごはんもあって……何より、自分達を受け入れてくれる『居場所』がある。

 

 たとえ一般的に『大海賊時代』なんて言われていて、なんならこれからさらに壮絶な『新時代』が訪れるとすら言われている世界であっても、十分に希望に満ち溢れた世界だ。

 

 きっと彼女達は、その時代では、子供と言える時期にさえ甘えることを許されなかった……甘えるだけの、子供でいるだけの余裕がなかった。

 

 だからこそ、イリスはその時の分を取り戻す勢いでこうして甘えてきて、1日1日を楽しんでいるわけで。盛大に私や、周囲の家族も巻き込んで。それが許される、余裕がある世界だから。

 これが『素』だとは言うけど、やっぱり大なり小なり幼児退行気味なんだと思うな。決して悪い意味じゃなくね。

 

 スノウは、楽しむ気がないわけじゃないけど、いまいち実感がまだわいてないというか、楽しみ方がわからないんだと思う。

 あれだ、普段から忙しすぎて休みがなさ過ぎて、いざ休日ができた時に、休日の過ごし方や遊び方がわからない、ブラック企業勤めの社畜みたいな……もっといい例え無いかな他に……?

 

 

 

 とまあ、新入りの娘2人がそんな感じ……『もっともっと、構って!』と『構ってほしいけど、でも……』みたいな感じなので、いっそ家族水入らずで思い切り遊ぶか、ってなったんだよね。

 イリスの希望通りにしつつ、まだちょっとぎこちないスノウへのアイスブレイク的な意味でも。

 

 そして、この時代で遊ぶにあたって……遊び方については、この時代を生きる娘3人に任せることにした。

 姉妹の交流に加えて、この平和な(?)時代を楽しんでもらえるとなれば、それが一番いい。

 

 で、今回のスノーレジャーはレオナの発案である。

 

「いィ~~~ヤッホーッ!!」

 

 イリスやスノウより楽しんでるように見えるレオナ。

 スノーボードを装着し、信じられないスピードで豪快に雪山を滑走していく。

 

 その後ろに負けじとついていくイリス。こちらはスキーで。

 それと並走するようにアリスがスノボーで。

 

 そのさらに後ろから、スノウ、スズ、そして私が追いかける。

 

 こういう、何も考えずに体を思いっきり動かす楽しさって確かにあるよね。

 疲れてる時だと『あんなんただ雪の上を道具で滑ってるだけじゃん……』とか思ったりするんだけど、それが楽しいんだよ。やってみるとわかるというか、理屈じゃないというか。

 

 まあ、体を動かすのが楽しいかどうかは個人差あるだろうから一概に『こう』とは言えないけど……見る限り全員楽しんでるし、いいんじゃないかな。

 

 ちなみに、ここはスキー場じゃないので、山の上まで運んでくれるリフトみたいな気の利いたものはない。

 なので、下まで滑り降りたら私が能力で都度山頂まで運んで、また滑っておりて……というのを繰り返してます。

 

 この時のポイントは、さっさと運んでしまったりせずに……それこそスキー場のリフトみたいに、あえて時間をかけてゆっくり運ぶこと。

 じれったさがないわけじゃないが、これはこれで風情があるし……あの待ってる時間って、今度はどんな風に滑ってみようかとか、『次はあそこ滑ってみようよ!』みたいに、上から見てルートを物色するのにいい時間だと思うの。

 

 現に5人とも、退屈してる様子微塵もなく、よくそんな続くなってくらいにマシンガントークをぶつかり合わせてたし。

 

 

 

 スキーで滑る以外にも楽しみ方は色々あった。

 

 例えば、童心に帰って、そり滑り。

 スキーやスノボーと違って、2人3人で一緒に乗って滑り降りたりもできるので、色んな組み合わせで楽しく滑って遊んだ。

 

 一部の猛者……というか主にレオナとイリスなんだけど、座って乗るそりなのに、スノボーみたいなアクロバティックな動きに挑戦したりもしてた。

 事前に雪で作ったジャンプ台から飛んで空中3回転半したりとか。

 

 なお、アリスと一緒に乗った時に、ラッキースケベに見せかけて色々触ってきたのは……まあ、もう逆に平常運転だから気にならなかった。

 そしたらその直後にスズの乗ったそりがツッコミがてら突っ込んできて大クラッシュ起こした。

 

 

 

 さらに童心に帰って雪だるま作ったり、雪合戦もやったけど……こっちはちょっと危険だったな。

 

 何が危険なのかって言うと……雪合戦やる時にね。

 雪合戦って、今更説明の必要もないと思うけど、雪を握って固めて、雪玉にして投げるじゃん?

 

 その時に、ある程度手加減してやらないと……

 

 

 ―――ドゴォン!!

 

 ―――バキバキバキ……ズゥゥウゥン……!

 

 

「……レオナ。何今の。鉄球でも投げた?」

 

「いや、普通に雪玉だけど……」

 

「力入れすぎなんじゃバカ者。巨木がへし折れて倒れたぞ」

 

 雪玉って、力いっぱい押し固めるとかなり硬くなるじゃん?

 それを私達が……特に、娘達の中ではフィジカル一番のレオナがやると、鉄球みたいな硬さになる上、それを力いっぱい投げつけるわけだから、普通に人死ねる威力になるんだよ。

 

 大砲の砲撃以上のスピードでそんなのを投げまくるレオナを見て、どっかの海軍中将を思い出してしまった。息子さんが革命家になって、お孫さんが海賊になったあの人を。

 ……今のレオナなら、大砲の玉使って同じようなことできる気がするな。今度やらせてみるか。

 

 

 

 そしてもう1つ、雪だるまを作ろうとした時。

 

 というか、雪だるまに限らず、各々好きなものを雪で作ってみたんだよね。

 数も1個と言わず、好きなように好きなものを好きなだけ、って感じ。さながら雪まつり。

 

 スズは、普通に1つ雪だるまを作った後、思い付きで何個か、野菜を作ってた。雪で。

 太くて立派な大根や、ずっしり重量感のあるかぼちゃ、さらには……野菜じゃないけど、いくつも積まれた米俵なんかを雪で作ってた。こんな時でも農家か……いや別に楽しければいいけども。

 

 レオナは、こちらは大体予想通りではあるけど、メルヴィユの動物達を。

 相棒である雲ウルフのドラも一緒になって(今まで書いてなかったけど一緒にいました)、結構細部までこだわって雪像に表現してた。

 

 アリスは……

 

「何作っとるんじゃお前はァ!」

 

「あ、母ちゃんだ。でも何で裸なんだ? 寒そう……」

 

「お父様ァ!? ちょっ、これはいくらなんでも……」

 

「にひひひ……いやあ、雪像作るとなったら真っ先に思い浮かんだのがこれでさあ!」

 

「お父さんすご……髪の毛の質感まできっちり雪で表現して……芸術だわ。一周まわって逆にエロくないんじゃないの、最早?」

 

 私の裸婦像作りやがって……いやまあ、これもある意味予想通りではあるけども。

 一応大事なところは隠したうえで、二枚貝から誕生している私がそこに。

 

 別にいいけどさあ……でも、こんな雪山に裸の私の象がたたずんでるのって……今レオナがぼそっと言ってたけど。何か見てるこっちが寒くなって来ちゃいそうだよ。

 

 けど、さらに度肝を(ある意味で)抜いたのが、スノウの作品。

 

 そこにたたずんでいたのは、太い柱のようなものの両脇に、きれいな球体に固められた雪玉が置かれている謎すぎる構造物だった。

 

「お、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか。完成度高けーなオイ」

 

「いやあ……苦労しました。砲身をきれいに太く長く作るのが難しくて、何度かやり直してしまいました。上手くできているといいのですが」

 

 普通に感心するレオナと、額の汗をぬぐって『いい仕事した』感を出しているスノウ。

 2人とも、別に何もいかがわしい感じなど出さず、純粋に感心したり自慢している雰囲気。

 

 横で愕然としているスズが思いっきり置いてけぼりである。

 『え、何で? スノウお主こんなキャラちゃうじゃろ……』とか言いたそう。

 

 しかし、

 

「スノウー? そっちは何を作っ……あら、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃない。完成度高けーなオイ」

 

 と、イリス。

 

「え、ホント? わ、ホントだ、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃん。完成度高けーなオイ」

 

 こっちはアリス。

 

 2人とも普通に感心している。

 

 2人とも、『これとかきれいに磨いたわねー』『ほんとにね、大きくて立派だね』とか言いながら棒と玉を触ったり擦ったりするのはやめなさい。

 

「…………え? なんで皆普通に……え? ……わ、わしがおかしいのかコレ?」

 

 スズ、あんまり深く考えるな。無駄だから。

 

 そして最後に、イリス。

 彼女が作ったのは、単純に雪だるまなんだけど……

 

「イリス、お主コレ、どんだけ気合入れて雪だるま作っとるんじゃ……」

 

「あはははは……ごめん伯母様、楽しくなっちゃってつい」

 

「でけー……何これ。下手な船より大きいんじゃね?」

 

「雪玉2つでよくもまあ……というかよくこんだけのもの作れる量の雪あったな」

 

 イリス、1つあたり直径10m以上ゆうにありそうな雪玉を2つ重ねて、超巨大雪だるまを作った。

 ホントよく作ったなこんなの……雪玉だけじゃなく、手もちゃんとできてるし。

 

 え、さっきの雪合戦で、レオナが雪玉という名の鉄球でブチ折った木々を再利用した? ああ、それでなんか木が一本まるごとぶっ刺さってたりするのね。

 細かい部分の細工は……ああ、プネーマに水出してもらってそれを固めて氷にしてか。意外と手が込んでるな。

 

 見た目のインパクトはぶっちぎりだったその巨大雪だるま。

 ……このまま『すごいでしょ!』て追われればよかったんだけど……

 

「……ねえ、イリス。気のせいならいいんだけど……なんか、コレ、ぐらぐら揺れてない?」

 

「え? いや、ちゃんと固めたし、そんなはずは……あれ?」

 

「……あれじゃないか。あまりに重すぎて、乗せてる下の地面が崩れそうになってるとかじゃないのか。ほら、雪玉配置するだけでも『ドスン!』って結構な衝撃だっただろうし」

 

「え? ちょっとまってそれ、まずいんじゃ……あっ、頭が……上の雪玉が落ち……」

 

 

 ―――ドスゥゥウゥン!!

 

 ―――ゴロ……ゴロゴロゴロ……ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!

 

 

 わあ、上の雪玉が崩れて分離して落ちて、すごい勢いで転がり始めた。

 その衝撃で下の雪玉も固定が外れて動き出して、すごい勢いで転がり始めた。

 

 …………まって、マジでヤバいこれ。

 

「た、退避――――!!」

 

 

 

 この後、インディジョーンズ張りに転がってくる雪玉×2にしばらく追いかけられた。

 

 転がってる間も雪を纏ってどんどん大きくなる雪玉。

 転がるだけで起こる地響き。

 揺れる山。

 そして起こる雪崩。

 

 ……何だこの雪山ピタゴラスイッチ大惨事。

 

 今思うと、最初に雪玉が転がりだしたタイミングでぶった斬っちゃえばよかったんだよな……そのくらいなら私はもちろん、スズやイリスでもできるし。

 アリスだって『反転』で雪玉跳ね返せるから、うん、逃げる必要なかったわ。

 遊びすぎて知能指数が下がってただろうか……。

 

 最終的に、私の覇王色纏った極大斬撃と、スノウの薙刀+地震の一撃を、見よう見まねで『覇国!!』みたいな感じで放って、雪崩と雪玉をもろともに消し飛ばしてどうにかなった。

 偶然にも、それで消し飛んだ雪はそのまま上空に吹き飛んで、再度島全体に降り注いだので、結果的にだいたい遊ぶ前の状態に戻った。なんだこのどうでもいい奇跡。

 

 あー……疲れた。

 でもまあ……楽しかったし、いいか。

 

 

 

 とまあこんな感じで、本日はレオナ発案のスノーレジャーで家族団らんをお送りしました。

 

 次回は、スズかアリスか……さて、どっちの案で遊ぼうかな。

 

 

 

 

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