まあ元ネタわからなくても問題ないと思いますが……
苦手な人いたらすいません。どうぞ。
さて、と。
前回はレオナの提案でスノーレジャーを満喫したけど、今回は……
「よく来たなお主ら、わしのナワバリへ!」
いつもの服ではなく、作業用の動きやすい農民スタイルに着替えたスズが、仁王立ちして私達を出迎えた。
今回は、スズ発案の『この時代の』レクリエーションだ。その内容は……
「聞く限り、未来の世界は食糧事情もアレじゃったみたいじゃし、それなら美味いもんを食う喜びってもんを存分に味わってもらわんとの! 皆でバーベキューじゃ!」
それを聞いて、皆それぞれの理由で目を輝かせる。
純粋に食べることが好きなレオナ、スズ主導のバーベキューと聞いて、さぞ美味しいものが出てくるだろうと期待するアリス。
そしてある意味主賓の2人……イリスとスノウは、スズが言う通り、元の世界ではまずなかったであろう『食事そのものがレクリエーション』というそれに、驚きつつも期待を隠せない様子。
しかし、スズがそこに『あ、ただしちょっと待て』と何か付け加える。
「皆に2つほど注意事項がある。1つ目、前回のスノーレジャーは家族水入らずってことでわしらだけじゃったけど、今回はわしら6人以外にも何人か参加を認めておる」
「え、そうなの?」
「うむ。バーベキューは大人数で楽しくワイワイ食べたほうが楽しいからの。ただ、飲んで食って騒ぎたい時にいらん気を遣うのもバカらしいから、一応参加は未来云々について話しても問題ない範囲に限ることとしておる。じい様とか、ビューティやブルーメとかじゃな。後で合流するぞ」
「なるほど。おばあちゃんは?」
「誘ったんじゃが、研究がいい所らしくての。『行けたら行く』って言っておった」
「それ、行かないときの遠回しな断り文句では……」
「えーそうなの? なんだ、おばあちゃんも参加すればいいのに……つまんない」
ありゃま、それは残念……まあ、ママ基本インドアだしな。
それに今はまさに、『オペオペの実』の能力を手に入れて、より一層研究に打ち込みたいところだって話だし……今日も元気に『ROOM』で色々切り刻んだりくっつけたりしてるんだろうな……
……でも、イリスが……いや、イリスだけじゃなくスノウも残念そうにしてるしな……
「じゃあさ、ゾロとかサガは?」
「あの2人は今回はダメじゃ。信用しとらんわけではないが、さすがに内容が内容じゃからの。特にゾロは、1年後にはこの海賊団から去る身……あまり多くを知らせるわけにはいかん」
「それは確かにね……」
「じゃが、他には……イリスの『ホーミーズ』はOKじゃ。関係者もなにも、思い切りイリスが作り出しとるわけじゃしな。ほかには『プレアデス』と……あと、ボニーも来るぞ」
「え、ボニーはOKなの? 彼女、同盟相手とはいえ『金獅子海賊団』じゃないけど」
「構わん。あ奴も相応に信用に値するのに加えて……あ奴の目的や出自を考えれば、今後、海賊団ぐるみで長く付き合っていくことになるじゃろうからな。それに……お主らもあのことを知って、今更ボニーを放り出す気にはなれまい?」
「なるほどね。ある意味『身内』ないし、運命共同体認定ってわけだ。確かに……手を組んだこと自体は成り行きとはいえ……」
「結果的に行くところまで行きそうな予感はするもんね、部下の人達共々」
「「…………?」」
まだ彼女についてよくは知らないスノウとイリスが不思議そうにしてる。まあ、後でね。
「それでスズ、注意点もう1つは?」
「うむ。もう1点は、今回のバーベキューの『レクリエーション』の一部としてなのじゃがな……バーベキューで焼く素材、肉や魚や野菜は、これから皆で狩猟ないし収穫する! 自分達で獲った獲物を使って料理、そして食べる! これがわしの考える『現代の遊び』じゃ!」
☆☆☆
スズがナワバリにしている空島はいくつもあり、しかも『春島』『夏島』『秋島』『冬島』が全部そろっているので、その土地その土地で、気候にあった様々な作物が育てられている。
今回はそれらの土地で、好きなものを好きなように収穫して、焼いて食べる……という形になるわけだ。まだ未成熟で収穫しちゃダメなやつ以外ね。
なお、手分けして春夏秋冬の島を回ろうかって案もあったんだけど、せっかくなので皆で一緒に全部の島を回ることにしました。
1つ1時間弱くらいでささっと回れば……午前中で収穫、そのままお昼ご飯としてバーベキューって感じにできるしね。
最初は春島。
春が旬の食べ物と言えば、玉ねぎ、にんじん、ジャガイモ、キャベツ、ピーマン、アスパラガス……色々あるな。
バーベキューに使える食材となると少し絞られるかもしれないけど、それでも十分多い。
スズが管理している畑にお邪魔して、それらを収穫していく。相変わらず大きくてぎっしり身が詰まっていて、美味しそうだ。
イリスとスノウもびっくりしてた。……きっと2人の住んでいた未来には、こんな光景はなかったんだろうな。土壌汚染やら何やらで作物が育たなくて、食糧難だって聞いてたし。
……あと、優秀な出来だってことを差し引いてもなお『デカすぎるだろ』っていうサイズの物もいくつもあったけどね。異常なまでに。
言うまでもなく、ママが品種改良した奴なわけだが。
それと、何といっても春の食べ物の中で外しちゃいけないものはといえば……
「何ですか、これ、この……硬くて尖ってる……何かの若木ですか?」
「山菜、じゃないわよね……武器になりそうなくらい頑丈そうだもの」
「ん? 何じゃお主ら、タケノコ知らんのか?」
春が旬の食材の代表格『タケノコ』。(※個人的な感想です)
驚いたことに、2人はそれを知りもしなかった。なんと、未来ではすでに見ることのできない、絶滅した食材、ないし植物であるらしい。タケノコっていうか、竹自体が。
聞いたことはあるみたいだけど、見たのは初めてだそうで……『これがそうなのか』って、興味津々で触ったり、スズにやり方を聞きながら掘っていた。
そうそう、鍬をそう、根っこのところにね、生えてるところじゃなく、土の中の部分を狙って……そうそう、上手い上手い。
きっと驚くだろうなあ、めっちゃ美味しいよタケノコ。
何を隠そう、私も好物です。前世からずっと。
「『雨後の筍』という言葉は知っていましたが、その『タケノコ』を見たことはなかったので、何気に感動しています。しかし、スズ伯母様はこんなものも育てているのですね」
「いや、これに関しては別に育てとるわけじゃなくてな……勝手に生えてくるから適宜取っておかんとあっという間に竹林になってしまうんじゃよ」
「え、勝手に生えてくるの? お世話も何も必要なく?」
「うむ。今スノウが言っとったとおりでな、『雨後の筍』なんて言葉もあるくらいに、めっちゃ生えるしめっちゃ育つの早いぞ」
豆知識。気候や種類にもよるけど、竹って一日に1メートル以上成長することすらあるらしい。
ともあれ、これで春の食材ゲットだぜ。
☆☆☆
続いて夏島。
トウモロコシ、トマト、レタス、ピーマンなどを収穫。
え、ピーマンかぶってるって? 野菜によって、その品種によっては複数『旬』がある野菜とか、旬が長くて複数の季節にまたがってるものもあるんだってさ。
あとは、野菜以外にも、さくらんぼにパイナップルに桃といったフルーツも美味しい。
さらには、アユやスズキ、タチウオやクルマエビなんかの魚介も美味しいのが多い。
なので、野菜と果物を収穫した後は、船で釣りをすることになったんだけど……
「獲ったどー!」
後で合流すると聞いていた、私の側近の1人がもうそこにいました。
水着に着替えて、素潜りでモリ漁してた。楽しそうだなあ。
私達は能力者なので動けませんので、大人しく船の上から釣り糸を垂らして……という感じでやってたんだけど、
「あーだめだめご主人、餌はちゃんとつけないと魚に食い逃げされちゃうペン。面倒とか気持ち悪いとか考えないで、準備の手間を惜しまないのが釣りの成功の秘訣ペンよ」
なんか、知らない子が船に一緒に乗ってるんですけど……?
いやまあ、イリスを『ご主人』って呼んでる時点で、この子が何者なのかは察せるけどね。
上半身は普通の女の子なのに対して、下半身は、あきらかに人間のそれじゃなく、毛皮……いや羽毛でモコモコ。さらに、足は水かきのついた鳥のそれっぽいものになってる。
まあ、さっきスズが『ホーミーズもOK』ってきちんと言ってたし。問題なかろ。
「あーごめんごめん、挨拶がまだだったペン。スズお嬢様とレオナお嬢様は会ったことあるけど、他は初めてだペンね。私はペンギンのホーミーズで、ペリリっていうペン。よろしくだペン」
「あ、スズとレオナは知ってたんだ」
「うん。動物達から聞いてるから。ほかの『ホーミーズ』も、このへんの島に住み着いてる奴ならだいたい知ってるぞ?」
「わしはまあ、このへんがわしのナワバリじゃからの。きちんとその辺は把握しておる。ペリリは釣りや漁が得意じゃから、頼もしい助っ人じゃぞ?」
「ここらの海は私のナワバリペン! 漁船に乗ったつもりでどーんと任せるペン!」
そうなんだ。さすがペンギン……でいいのかな?
すごくいい手際で、釣りにあんまり慣れていないイリスやスノウ――未来では海にも川にも食べられる魚はいないから、釣りもしたことなかったんだって――に指導してる。
なるほど、スズの言う通りだ。頼もしい。
釣りの素人だったはずの2人が、どんどん魚を、それも結構な数を釣り上げてる。
本人達の呑み込みが早いとか、そもそもこのへんの漁場?が優秀なのかもってことを差し引いても、きちんと一流のコーチングだ。
……ただ、気になることがあるとすれば……
「あー、引いてる引いてる! そうそう、リールを引くときは焦らず、魚の呼吸に合わせて……そうそう、上手い上手い、ご主人もスノウお嬢様も釣りの素質あるねー」
……口調に違和感。
えっと……さっきまでのアレはキャラ付けの一環か何かで?
「のうペリリ。お主また、なんか普通の釣り人っぽくなっとるぞ」
「何を言っているのかわからないペン。お、ほらスノウお嬢様のも引いてるペン!」
(((スルーした……)))
思い出したようにペンギンキャラをつけ足してくるペリリ。
てかスズ『また』って言ったな。前にもこんなこと……っていうか、いつものことっぽい?
……まあ別にいいけどさ。
「そうそう、魚が疲れたところですかさずリール巻いて……おっ、ハゼだね。釣りたてをさばいて天ぷらにしてビール飲むとウメーんだこれが」
「やっぱ釣り人でしかも中身ちょっとおっさんっぽくね?」
「どうしてそんなひどいことを言うペン? 何を言ってるのかわからないペン」
「「「…………」」」
まあ色々あったけど、こんな感じで夏野菜とフルーツ、それに魚をゲットだ。
☆☆☆
秋と言えば……『実りの秋』『食欲の秋』なんて言葉もあるくらいに『食』に対して結びつきが強い季節!
旬の食材ないし、秋に定番の美味しい食材なんて、並べればいくらでも出てくる。
キノコ、栗、ブドウ、柿、梨、レンコン、サツマイモ、カボチャ……
魚介類でも、サンマ、カツオ、鮭、牡蠣……
「あれ、今母ちゃん『カキ』って2回言わなかった?」
「言ったけど違う字の奴だから大丈夫」
ってかレオナ、地の文に反応しないように。メタいよ。
「……ん?」
そんな中、ふと何かに気づいたようにスノウが。
「どうしたの、スノウ?」
「いや、今なんか……見間違いか? その……そこに生えてる木が、動いたような……」
「えぇ? いやいやいや……いくら何でもそんな、生えてる木が動くなんてこと、いくらびっくり動物上等なこのメルヴィユでもあるわけが……」
「動くぞ?」
と、木が言った。
言って、動いて……っていうか、振り向いた。
「……動くんだってさ」
「ああ、うん、動いたな。てか、しゃべったな」
「あら、なんだレントープだったのね。ここにいたの?」
イリスがそう言うと同時に、目の前の木が動いて……思いっきり歩いてこっちにやってきた。根っこが何本もの足みたいに動いて。
同じような光景は、『ホールケーキアイランド』でも見たことあるけど……あそこの木々とは違って、もっと武骨というか……モンスターっぽい見た目だな。森の長老的な。
そしてその大きな木の上に、民族風の衣装に身を包んだ少女が1人。
今イリスが呼んだ『レントープ』ってのは、この子のことか?
「君もイリスのホーミーズ?」
「うむ、初めましてじゃな。レントープじゃ。木のホーミーズじゃぞ」
この少女……レントープは、イリスによって、樹齢数百年の巨木が『魂』を入れられて誕生したホーミーズだそうだ。見た目は小柄な少女だけど、口調がジジイ口調なのはそのせいだろうか。
そして大きな特徴、というか事実として……実は、今私達が話している女の子のレントープと、彼女が腰かけているこの動く巨木……両方がレントープである。ホーミーズになった結果、木が動くようになったと同時に、木の精霊的な感じで美少女擬人化ボディも具現化したらしい。
なので、どっちも本体といっていいんだけど、しいて言うならむしろ木の方が本体なんだって。
ファンタジー風に言うなら、『トレント』とかになるのかな。森にいる木のモンスター。
「それでレントープ、何でこんなとこにいんの?」
「そりゃ、ご主人達がバーベキューやると聞いたからの。スタンバっとったんじゃよ」
そう言って、自分が座っている巨木の幹をぺしぺしと叩くレントープ。
すると、その巨木がゆらゆらその身を大きく揺らし……頭上から、大量に何かが降ってきた。
それは、栗だったり、柿だったり、梨だったり……え、すごい。木に成る系の秋の味覚がこんなにいっぱい……
「ほれ、しばらく『秋島』で過ごしとったからわしの木もすっかり実ってこの通りじゃ。遠慮せず持って行ってくれ」
「あ、その木そんな便利なシステムなんだ。私も初めて知ったわ」
イリスも知らなかったらしく、驚いてた。
季節に合わせていろんなものを実らせることができるとか……すごいなトレント娘。
……でもさ、ちょっと気になったんだけど……
「なんか、カボチャとかレンコンも落ちてきたんだけど……こいつら木になるやつだっけ?」
カボチャは畑で収穫されるイメージがあるんですが。
レンコンに至っては地中だよね。泥の中から掘り出すよね。
「ああ、まあのう……ん~、でもまあ、別にそんな細かいこと気にせんでもよかろ。全部植物系には変わりないんじゃし、美味ければ問題ないじゃろ」
「雑っ!?」
それでいいのか、森の長老ポジションっぽいのに。
レントープが雑にプレゼントしてくれたもの以外にも、秋の味覚はあちこちで手に入った。
いやあしかし、さすがは秋島……どこ行っても何かしらの旬の食材が手に入る充実っぷり。
なんだったら、タケノコと同じで、スズが特に何も育てていない場所に勝手に自生して豊作になってるし。ありがたいけどさ。
栗もキノコも、いくらでも採り放題だよ。……これ食べきれるかな……?
あと、個人的に一番楽しみなのが、そのレントープが気合入れて実をつけてくれた……シャインマスカットである。
『落とすとさすがにつぶれる』ってんで、レントープの巨木を登って皆でブドウ狩りしました。楽しかったし、めっちゃ美味しそう。楽しみ!
そして、陸の旬は取り終えたってことで、続いて海の旬も。
夏以上に美味しい魚が多い季節だからねー。特に牡蠣、私コレも大好物なんだよね。バーベキューでとれたての牡蠣を、バターと醤油で美味しく焼いてじゅるっと……ああ、楽しみ。
あーでも牡蠣は潜って取らなきゃだからまたビューティにまかせて、私達は釣りで……
「おっ、やっと来たペン。待ってたペンよ皆、さあさあ早く乗るペン」
「……あれ? なんでここに……夏島にいたはずじゃ……?」
「魚あるところペリリありだペン。というかさっき言ったペン。ここらの海は私のナワバリだって」
「あ、島複数個にまたがって釣り……もとい、ナワバリ設定してんのね」
「というかコレ、船とか漁船に見えるけど、飛行機能付きの『貝船』じゃん。これ使って島と島を行き来してるのか……どうやって手に入れたんだこんなの?」
「知り合いに頼んだら作ってくれたペン。そんなことよりほら、早くしないとお昼になっちゃうペン。さっさと乗り込むペン!」
あ、釣果は今回も大量だったよ。
☆☆☆
冬はさすがに、他の季節に比べれば『旬』の食材は多くはない。
でも、きちんと冬美味しい食材だってある。
鍋の具の定番の白菜とか、大根とか……あとはブロッコリーなんかも実は美味しいし。
そしてそれ以上に、冬に美味しくなるものと言えば魚介類!
寒い冬を乗り切るためにたっぷり脂を蓄えた魚がこの時期多いんだ!
寒鱈、ししゃも、ブリ、ニシン……あとはふぐやアンコウなんかも美味しいんだよな。
ふぐは毒あるけど、調理はビューティに頼めば問題あるまい。
というわけで……
「おーいこっちこっちー! 準備できてるペン!」
「うん、いると思った」
ペンギン娘、みたびあらわる。
ペンギンだからか、寒い中でもまー元気そうだ。夏と同じカッコで、船に乗ってぶんぶんこっちに手を振ってる。
すっかりこのへんの海の支配者だな。漁業的な意味で。
「てかここまで出てこられると、むしろ春はなんで出てこなかったのか気になる」
「あー、春ねー。私も出たかったんだけど、船とか色々準備してたらギリギリ間に合わなくって。何せ、このバーベキューのこと聞かされたの急だったからなー」
「あ、そうだったんだ……それはありがとね。ごめんね急に声かけて振り回しちゃって」
「あとまたキャラがただの釣り人に……」
「ぜーんぜん大丈夫だペン。気にしなくていいペン。まあ春の旬の味覚についてはまた機会があったらってことで、今日は夏秋冬の美味しい魚を存分に楽しむペン!」
もうキャラについてはツッコミ入れるのもめんどくさくなってきたので、言われたとおりに船に乗り込もうとして……でも大丈夫かなこの船で。
見た目より頑丈かつ高性能に作ってはあるようだけど、冬島の海は風も強いし、流氷が結構浮いてたり流れて来て危ないぞ?
「そのへんは抜かりなしだペン。助っ人を呼んであるペン」
「助っ人?」
アリスがそう聞き返すと同時に……ペリリが乗ってる船の背後で、大きな水しぶきと共に……何本もの巨大なタコ足が現れた。
『何だ!?』と皆が……イリスとレオナ以外が全員驚いてびっくりする前で、しかしそのタコ足は別に船を襲ったりするわけでもなく……それどころか、
「よっこいせっと。お待っとさーん、ご主人にお嬢様方。オキューちゃんの海鮮デリバリーやで!」
海の中から、足がタコのそれになっている少女が姿を現して、船によじ登った。
手には、色々な種類の魚が大量に入った網を持っている。
さらにもう1つ驚いたことに、タコ足の出現と同時にばっしゃーん、と立った波が……
「ようこそいらっしゃい、ご主人様達。冬の海の幸、たっぷり獲っていってねぇ」
その波そのものが寄り集まって人の形を成した。青い髪の大人のお姉さんって感じ。
波そのものもホーミーズだったのか。
2人はそれぞれ、クラーケンのホーミーズ『オキュー』と、渦潮のホーミーズ『リュプチェ』と名乗った。
クラーケンってたしか、ワンピース原作にも出てきた、『北の海』原産の海の怪物だっけ? タコだかイカがめっちゃ大きくなった感じの怪物。あれとは別個体なのかな?
そして、渦潮か……水のホーミーズのプネーマとは、似て非なる感じなんだろうか。まあ、こっちは海水でもあるしな。
なるほど、どっちも冬の海の釣り、ないし漁で頼りになりそうだ。
「あーちょっとオキュー、手伝ってとは言ったけど直で魚獲ってきちゃダメペン。釣りの醍醐味がなくなっちゃうペン」
「大丈夫やって、ほら、うちが獲ってきたん、もともと釣りじゃ取れへんような、深いところにいる魚ばっかやし。釣りは釣りで楽しめるて」
「あーまあ、それならいいかペン。じゃあ、リュプチェ」
「はいはーい、私が海流をいじくって魚の群れが来るようにするから、入れ食い間違いなしよぉ、好きなだけ釣っちゃってぇ。流氷もうまいことそらしておくから、安心してねぇ」
「よろしく頼むペン! さあ皆、ひと狩り……じゃなくて、ひと釣りいくペン!」