大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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今回ちょっと長くなったので2話に分割して投稿しております。

この後投稿する(されている)第239話もあわせてどうぞ。

なお、ガッツリとパロディないしクロス要素が入っているのに加え、結構えぐいです。苦手な方ご注意ください。


第238話 禁断の研究

 

 

 ―――遡ること数日前。

 

 メルヴィユの本邸にあるアジトの一室。

 その奥の奥、特に秘匿性の高い内容の会話をする際に使う会議室にて。

 

「何、ママ、話って?」

 

「人払いをした上で、現提督(スゥ)最高顧問()にそろって聞いてほしいたぁ、また随分と物々しいじゃねえかよ。何企んでやがるんだ?」

 

「すいませんねええええ、何分内容が内容なものでえええええ! ちょっとやばい実験をしたいので許可が欲しかったんですよおおおおお!」

 

「……いつも勝手に事後承諾で色々やるママが、事前に許可を取りに来るほどやばい実験……!?」

 

「やべえ、もう30年以上前になるってのに、同じような話を持ち掛けられた時の胃痛が蘇ってきやがる……」

 

「あら親分さああああん、お腹の調子が悪いんですかあああああ!? 後でお薬出しておきますねえええええ! 仕事が忙しいからって無理しちゃだめですよおおおお、体が資本ですからねえええええ!」

 

「原因、お前」

 

「……それでママ、正直聞くだけでも怖いの我慢して聞くんだけど……その実験って何? ひょっとして……あの金庫の中にあった『本命』を使った研究?」

 

「さすがスゥちゃん、鋭いわねえええええ! そうよおおおお、半分正解いいいいい!」

 

「半分?」

 

「もう半分は何だ。いや、例によってコレも聞くの怖えんだけど、聞かなきゃいけねえ気がする」

 

「もう半分はねええええ……」

 

 

 

「もう1回私自身を改造しようと思ってええええ、その許可をもらいたいのおおおおお!」

 

 

 

「「…………は?」」

 

 

 ☆☆☆

 

 

「ばーちゃんが……自分で自分を改造する!?」

 

「ばあ様は病に蝕まれていた、とは聞いておったが……それを解決するためのものか」

 

「なるほどね、『オペオペの実』の能力を使えば、そんな突拍子もないこともできちゃうわけだ」

 

 ある日。

 私は、3人娘と……最近『娘』に加わった2人も一緒に、このことを話して聞かせていた。

 

 ママから相談された『やばい実験』……もとい、ママ自身の『治療』のための改造手術について。

 

 

 

 ママこと、ベネルディ・ソゥは、不治の病に体を蝕まれ、余命いくばくもない状態だった。

 

 それが、『エイプスコンサート』の中で、ちょっとした奇跡に遭遇したことによって、いくらか寿命が延び……それによって、体感数か月後に現れた私達に外に連れ出されることができた。

 そして、この『34年後』の世界に生きて来ることができたわけだが……彼女にとって、病魔の脅威は完全に去ったわけではなかった。

 その『奇跡』によって、病気が完治したわけじゃなかったからだ。

 

 一時的に病状は改善したものの、少しずつ、だが確実に病魔はまたママの体を蝕んでいた。

 このままいけば、あと数年でまた、ママの体は限界に来ると思われていた。

 

 が、それももう過去のこと。

 少し前、イリスとスノウが未来の世界から持ってきた、大量の悪魔の実。

 その中にあった『オペオペの実』を(勝手に)食べ、ママは『改造自在人間』になった。

 

 全員の認識が『やべー人がやべー能力持っちゃった……』で一致したわけだが、それでも、超が5、6個付くほどの天才科学者であり天才医師であるママが『オペオペ』の能力を持ったことは、それはもう大きかった。

 

 ママ自身の病気なんて、『改造自在』の能力をフルに使って秒で治しちゃったし、なんなら以前にママが自分の体を相当無茶やって改造した時に出てきてしまった副作用やら悪影響なんかも、()()全てきれいに取り除いてしまった。

 

 もちろん、ママ自身だけじゃなく、金獅子海賊団の中で、それまでの医療技術ではどうにもならない怪我や病気……後遺症すら含むそれらを片っ端から直してしまえたんだから(誤字にあらず)。

 認めるのはちょっとアレだけど、貢献度は間違いなく、オペオペの実を食べたという事実に見合った……あるいはそれ以上のものだと思う。

 

 ただ、そんなママだが……さっき『()()全て』と言った通り、病気や改造の影響を完全に全て取り除けたわけじゃないんだよね。

 『改造自在』とはいえ、どうしても治せないというか、不可逆の損傷ってものはあるからだ。

 ママの場合は、特に神経や内臓にいくつかそういうのがあってね……。

 

 臓器の調子が悪いからって、臓器移植や神経縫合ではい治りました!とはいかないもんだ。人間の内臓は色々デリケートだからね。

 繰り返すが、『改造自在』でも……原作で、“ケンタウロス” なんてものを作り出せちゃうようなトンデモ能力でも、不可能は不可能、限界ってものはあるのだ。

 

 が、ママはそれを……これまたとんでもない技術でカバーして解決しようとしていた。

 それが、ママがあの『金庫』の中にしまっていた……『本命』の研究だ。パパと私が強権発動してでも中止・廃棄させようかと思ったレベルの、ヤバすぎる代物。

 

 丁寧に説明してもらった結果、たしかに実用性はありそうだし、ママの技術力なら十分成功するだろうと思えた。

 それでも抵抗がないわけじゃなかった……というか全然めっちゃあったんだけど……最終的に、パパと話し合ったうえで……許可を出しました。

 

 それが、今から1週間前のことだ。

 

 

 

「…………1週間前?」

 

 最後まで説明を聞いて、イリスがふと気づいたようにそう聞き返してきた。

 

「……ねえお母さん? おばーちゃんに改造手術の許可出したの、1週間前なの?」

 

「うん、そうだよ?」

 

「許可が出て……おばあ様は、いつその手術を行うということだったのですか?」

 

「許可さえ出れば翌日にも、とか言ってたね。奴隷……敵とか犯罪者を使った人体実験はもう済んでたらしいから」

 

「一週間前、の翌日というと……6日前だよね?」

 

「そうだね」

 

「……私昨日、めっちゃピンピンして元気に色々な実験とか研究とかして、ホグバックを振り回してるおばあちゃん見てるんだけど」

 

「うん、私も見た」

 

「……つまり?」

 

「きちんと成功して治ったってことだろうね」

 

「「「………………」」」

 

 しんみりした空気になる隙すら与えない。それがうちのママのクオリティである。

 

 唖然とした表情になってる娘達よ……わかる、わかるよその気持ち。

 私も。実はその翌日……つまり、手術当日の夜にママが執務室に突撃してきて『成功したわよおおおおお! まだもうちょっと様子見するけどおおおおお!』って超元気に言ってたの聞いて、ひっくり返りそうになったからね。

 

 ……ごめんね、言うの遅くなった上に全部まとめて事後報告になっちゃって。

 

 そして、もう1つごめんなんだ。

 今日こうしてあなた達に集まってもらったのは、ママに関する『治ったらしいよ』という報告を行うためと……もう1つ理由があります。

 

「……その理由とは?」

 

「そのママがこの後、その『改造手術』に関係する内容も絡めて、研究成果の報告をしたいんだって。ママの体調その他にも関することだから、ここにいる皆で聞こうと思ってね。家族だし」

 

「……本音は」

 

「やばい報告とか研究発表を聞かされて精神的に削られるのがわかり切ってるからせめて道連れを増やそうと思いました」

 

「「「ちょっとぉ!?」」」

 

 いや、ほら、こういうのって、苦しい経験を共有できて、後から愚痴とか言い合える人がいると乗り越えられるじゃん。

 いつもはママ関連はパパとDr.インディゴがその道連れなんだけど、今回の場合内容が内容だからちょっと3人じゃ受け止めきれない可能性が出て来てさ……。

 

「いや、ホントごめんなんだけど……お願い、黙って巻き込まれて」

 

「母ちゃんからこんな風な頼み事されんの初めてだな……」

 

「それだけのやばい内容、ということか……ばあ様が進めている『本命』の研究とやら」

 

「お母さんの我儘も、おばあちゃんの困った癖とかも、全部ひっくるめて受け止めて愛する覚悟ならある……あるんだけど、さすがに怖いなあ……」

 

「……ひょっとしたら、未来の世界に受け継がれずに滅んでよかったレベルのやばいものとか出て来たりしない……よね?」

 

「否定できないのが怖い……ソゥおばあさまも、我らの時代にはもういなかったからな……」

 

 さて、同意も得られた(?)ということで……いざ行かん、極秘会議室。

 そこでママが、資料を揃えてプレゼン、ないし論文発表みたいなやつの準備をしてるはずだ。

 

 

 ☆☆☆

 

 

「皆さーん! 今日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございまああす! アリスちゃん達も聞いてくれるとは初耳だけど、おばあちゃんがんばってわかりやすく説明するから、楽しんでいってちょうだいねええ!」

 

「これから話す内容のえぐさに反比例するように軽いノリで始まったな……」

 

「仕方ないでしょう。彼女がシリアスな調子で話すことなんて見たこともありませんし。己の死の運命すらいつもの調子で報告しつつ、それを利用した研究すら抱き合わせで発表した女ですよ」

 

 発表者、ママ。

 出席者、パパ、Dr.インディゴ、私、娘達5人。

 以上9人が、アジト奥の極秘会議室に集まりました。

 

 規模的にはなんというか……大学のゼミ発表みたいな感じ、かな?

 

(というか、前説みたいに言ってたのは本気で言ってるのかな? 確実に『楽しんで』聞くような内容じゃないんだけども……資料以外にもやべーの教卓に置いてあるし)

 

「なーばあちゃん、始める前に質問いい」

 

「いいわよおお? 何かしら、レオナちゃん?」

 

「なんか今日、ばあちゃんの音量、結構普通じゃね? いつもすげー声大きくて響くのに、今日はこの狭い部屋の中でも大丈夫なくらいだし」

 

「あ、私もそれ気になってた。ひょっとしてママ、今その……耳につけてる何かのアイテムのせい?」

 

 今ママ、耳のところに……インカムみたいなのつけてるんだけど。

 この世界にインカムとかないはずだし、何だろうと思って気になってたんだよね。

 

「ご明察うう! 私、地声が大きくて皆にちょっとだけ大変な思いさせちゃってるみたいだったから、会話の音量を抑える道具を作ったのよおお! 普通の人間がきくのにちょうどいい音量になるようにねええ!」

 

「ちょっとだけじゃねえんだよな……いやまあ、配慮してくれるっていうなら助かるがよ」

 

「ええ。十数年目にしてようやくそこに思い至ってくれたことに軽く感動してます私」

 

 私が生まれる前からの付き合いの2人の、涙を誘う言葉。

 

 ママ曰くそのインカムもどきは、『音貝(トーンダイアル)』を組み込んで利用したツールで、今言った通り、装着者の声を、普通の人が聴きやすいレベルに抑えてくれるそうだ。

 

 正直それでもまだちょっと大きい気がするけど、十分、室内で耳が痛くならずに会話できるレベルなので、気にはならないかな。

 ……もうなんか普段がアレ過ぎて、『十分』の基準が残念なことになってる自覚はあるけど。

 

 まあ、そんな感じで前置きはこの辺にして……

 

「それでママ……今日の発表の内容ってのは、その……机の上に置いてある、見るからにやばい標本?についての、ってことでいいんだよね?」

 

 言いながら私は、ママが立っているそばにある……教壇、って言っていいのかな。やや大きめの机の上に置かれている、2つの大きな瓶詰めの標本を見た。

 中学校の時とかに理科室に置いてあった、動物の解剖標本とかを思い出すビジュアルだ……。

 

 片方の瓶の中には、クモとムカデを足し合わせたような見た目の虫が入っている。

 サイズは結構大きくて、しかも長い。中型~やや大型の蛇くらいはありそうだ。

 まあ、ワンピース世界ならこのくらいの大きさの虫がいてもぜんぜんおかしくはない。……っていうかメルヴィユにも普通にいるし。

 けど、それを差し引いてもなんというか……異質な不気味さがある虫だ。

 

 ラベルには……『プラーガ』。

 

 これは見覚えがある。あの……例の『金庫』の中に入ってた奴だ。

 

 そして、もう片方の瓶の中には……た、胎児……の、標本?

 人間の胎児みたいな形の、しかし明らかに人間じゃない、というか肉で体が形成されてないように見える『何か』が入っていた。

 変なギザギザとか、触手みたいなのもついてるし、普通に異形だ。エイリアンの幼体か何かだって言われても信じてしまうかもしれない。

 

 ラベルには……『カドゥ』。

 

 こっちには、さっきのと違って見覚えは……いや待て、あるぞ。

 そうだ、コレは確か……ママが『エイプスコンサート』から持ち帰ったものの中にあったやつだ……『ナニコレ気持ち悪ッ』とか思いつつも、我慢して『エニグマ』で収納した覚えがある。

 

 『プラーガ』と、『カドゥ』。

 

 見た目からしてやばそうな……というか、これでヤバくなかったら逆に詐欺だとすら言えそうなこの2つの物体が、ママの『本命の研究』であり……本日のテーマ。

 

 そして、この時はまだ私達は知らなかったんだけど……すでにママが、これらを使ってとんでもないことをやらかしていたということを、この後私達は聞かされることになるのだった。

 

 

 

 

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