大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第240話 少しずつ、動いていく世界

 

 

 『王下七武海』なんて仰々しい地位がついていても、海賊は海賊。政府や海軍からああしろこうしろと言われたところで、それは『強制参加』でもない限りは、ほぼほぼ参加しない。断りを入れるか、返事すらせずに無視するか、だ。

 一部は、たまに気まぐれで参加したり、近くまで行く用事があるから受諾する……なんてこともあるみたいだけどね。

 

 その中にあって私は、海軍や政府からは『割とまともに要請に従ってくれる、真面目な七武海』として知られている。

 きちんと理由を話して、報酬ないし見返りも提示して要請を出せば、割と高い確率で従ってくれる。かつてのバーソロミュー・くまに続く、都合のいい海賊。そう見られている。

 

 

「お断りします。これから予定が入っていますので行けないです。……はい、失礼します」

 

 

 ―――ガチャ

 

 

 しかし私も、毎回それを引き受けるわけじゃない。断ることだってある。

 単純にめんどくさいから断ることもあるし、目的地があまりにも遠いから断ることもある。首を突っ込みたくない案件だから断ることも、パパに『それはやめとけ』って言われたから断ることもある。

 

 んで、今回も断らせてもらった。

 理由は、関わり合いになりたくない、めんどくさそうな案件だったから。

 

 通話が終わったあたりで、同じ部屋のソファでくつろいでたレオナが聞いてくる。

 

「何だったんだ、母ちゃん? 海軍からの要請って」

 

「『黒ひげ』と『ビッグ・マム』の傘下同士が小競り合い起こして厄介なことになりそうだから手を貸してくれないかってさ」

 

「え!? 四皇同士の小競り合いって……それやばいんじゃないの? 戦争に発展したりしない?」

 

 四皇、と聞いてレオナがぎょっとしてるけど、私は笑って、

 

「大丈夫だよ、傘下って言っても、どっちも末端も末端だから。『黒ひげ』は、直接喧嘩売られでもしない限りは、傘下がやられたところで動きやしないし、『ビッグ・マム』の方も多分同じ。同じく『四皇』と呼ばれるようになったからって、自分達と同格とは思ってないからね。よくあることだって流されるよ」

 

 最悪、ビッグ・マムの傘下によって『黒ひげ』の傘下の方が粛清されるかもしれないけど、今言った通り、それで黒ひげが報復に動くことはないだろうし。

 どこかブレーキがぶっ壊れた奴ではあるけど、さすがに『ビッグ・マム』との全面戦争に衝動的に動くほどではない……はずだ。何か思惑があるならともかく。

 

 ……あるならあるで余計にかかわりたくないしね。

 

 そもそも海軍だって、そのくらいのことはわかってるはずなんだよ。

 今回の話だって、その『小競り合い』の範囲に世界政府の加盟国があって、それが経済的に重要な国だから、万が一にも被害が及ぶことが無いように見張ってほしい、って感じの趣旨だった。

 そんでその『経済的に重要』ってのを正確に言葉にすると、政府への()()とか、天竜人への貢ぎ物的な意味でだからね。やってられるかそんなん。

 

 前にも言ったことある気がするけど、私はそもそも海軍はあんまり好きじゃないし、世界政府は明確に嫌いです。

 

 しかし、『黒ひげ』……また懸賞金額上がったなあ。

 『頂上戦争』で周囲にいた大幹部クラスも含めて、ここ1年と数か月でどんどん上がって……今朝届いた新聞に入ってた奴ではなんと、

 

 

 WANTED!

 四皇“黒ひげ”マーシャル・D・ティーチ

 懸賞金額 19億6千万ベリー

 

 

「ここ最近、前までにもまして『白ひげ』の元ナワバリを荒らしていってるのに加えて、『能力者狩り』で能力を奪い、配下の能力者を増やしていって……こないだ、『火拳のエース』を打ち破って退けた、っていう点も鑑みての額だろうね」

 

「その後からこいつも『四皇』扱いされるようになったんだっけ。実際には『打ち破って』なんかいないのにさ、モルガンズも適当書くよなあ」

 

「ま、あいつは必ずしも真実をそのまま伝える信条ってわけじゃないからね。政府からの情報操作の『お願い』でもあったんでしょ。小切手同封で」

 

 

 

 『黒ひげ』が四皇の一角と呼ばれるようになった一件。

 今言った通り、それは、世間一般には……『海賊王の息子』であり、『白ひげの後継者』でもあるエースを退けたことが大きな話題になったからだ。

 

 が、これも今言った通り……実はそんな事実はない。

 確かに、実質的にそう言えなくもない、かもしれないけど……厳密には違う。そもそも戦いらしい戦いは起こってないんだから。

 

 事件後に『リノレコット事件』と呼ばれる事件の舞台になった島、その名の通り『リノレコット島』は、世界政府非加盟の国で、元は白ひげのナワバリだった。

 しかし、資源に乏しい貧困国で、支配する旨味もなかったために、黒ひげも特に奪おうとか考えてはいなかったらしい。

 

 そんな島でも、海賊やその他闇の組織による『人攫い』なんかの標的にはなってしまうので、白ひげに旗を借りていた。

 そしてそれは、エースが『二代目白ひげ海賊団』を率いるようになってからも。

 

 そして、その事件が起こったのは……実は、ほとんど全くの偶然だった。

 

 エース達『二代目白ひげ海賊団』が、そのリノレコット島に滞在していた時、その沖合に複数の海賊船が姿を見せた。『黒ひげ海賊団』の旗を掲げた船が。

 しかも、その確認できたうちの1隻は、ティーチ本人が乗っている本船だった。

 

 全く何の前触れもなく、怨敵が姿を現したことに驚愕しつつも、警戒のためにエース達は船を出した。

 『警戒』と言いつつも、その身の内には、機会あらば敵を討ってしまいたい、戦いたいという炎が燃え盛っていたことは、言うまでもないだろう。エースだけでなく、クルー達ほぼ全員がだ。

 

 理由は見当もつかないが、もしティーチがこの島を襲いに来るのであれば、迎え撃たなければならない。

 あるいは、自分の『メラメラの実』の能力を狙っているのかもしれない。

 たとえそのいずれかだったとしても、エース達は引くつもりは毛頭なかったそうだが。

 

 そして……海に出た後に、エース達はそれに気づいた。

 

 よく見ると船団は、全てが黒ひげ海賊団の船ではなかったのだ。

 2つのグループに分かれていて、片方がもう片方を追っていた。

 

 追っている方が『黒ひげ海賊団』。

 追われている方は、『新世界』でもそこそこ知られている、中堅どころのとある海賊団。

 

 これは後から明らかになったことなんだけど、その時のティーチ達は、いつもの(?)『能力者狩り』の真っ最中だった。

 追われていた海賊団に、『ワプワプの実』という、瞬間移動の能力を持つ能力者がいて、それを殺して奪うために追いかけていたみたい。

 そんで、追いかけていたらたまたま、『リノレコット島』に通りがかり、さらにたまたまそこにエース達がいた、というわけだ。

 

 エース達はここで、決断を迫られた。

 

 今、ティーチが引き連れているのは、『黒ひげ』としてティーチが率いている勢力のごく一部だけ。しかも、事前に行われたのであろう戦闘で、多少なり消耗しているらしい。

 ティーチとか大幹部クラスはともかく、手下達は手負いの者も多いようだった。標的にされた海賊団はそれなりに健闘したらしい。

 

 船団クラスの『勢力』を率いる立場となったティーチを相手取るにはまたとない機会だった。

 

 しかし、もしここでエース達が戦いを仕掛ければ……『リノレコット島』が無事では済まない。

 

 小さな島の、小さな町だ。『二代目白ひげ海賊団』と『黒ひげ海賊団』……勢力の大きさや、所属する人員の強さから、ともに『準四皇』と言われる1つである(当時は)2つの海賊団の衝突に巻き込まれれば、ただでは済まない。

 

 海上での戦いになったとしても、ティーチの『グラグラの実』の地震の力の余波が届いただけで町が吹き飛ぶかもしれないし、津波でも起こればやはり壊滅しかねない。

 あるいは、陸上戦になってしまいでもすれば、町1つなんて簡単に消し飛んでしまうだろう。

 

 幸いと言っていいのか、黒ひげ海賊団は……エース達を見つけて警戒はしているようだが、近づいて来る様子はなかった。というか、『ワプワプの実』を追撃する手を緩める気がないようだ。

 『瞬間移動』なんていう、とんでもなく便利そうな能力が目の前に転がってるんだ。何としても捕まえたいと思うのは当然だろうし。

 

 しかも、ワプワプの実の海賊団は島から離れるように動いていて――これでその船が島に近づくように動いていたら最悪だったが――しかも船足もかなり速そうだ。

 つまり、エース達の方から手を出さなければ、ティーチ達は追いかけっこを続けて、そのまま遠くに行くだろう。……当然、ティーチを討ち取る機会は逃すことになるが。

 

 白ひげの仇を討つために、ティーチに戦いを挑んで、リノレコットを見捨てるか。

 

 リノレコットを守るために、ティーチを……白ひげの仇を見逃すか。

 

 エースが出した答えは……

 

 

 

『ゼハハハハ! そうか見逃してくれるのか、ありがたいねえ……だが、お前はそれでいいのかよエース? 俺は別にお前らとの戦争でも構わねえんだぜ?』

 

『うるせえ、言われなくてもお前はいつか必ず仕留める……だが今じゃねえ。さっさと消えろ!』

 

 

 

 ―――ガチャッ、ツー……ツー……ツー……

 

 

 

『……よかったのかよい、エース?』

 

『ああ、いいんだ。あんな奴のために、この島の皆を危険にさらしたりしたら……オヤジに怒られちまうからよ』

 

 

 

 この事実が脚色されて広まって、『黒ひげがエースを退けた』とか、『エースが黒ひげがとの戦いを避けた』って部分だけが広まった。

 その結果、あたかもティーチがエースを上回ったみたいな印象になり……それ以降、『四皇』と呼ばれるようになった、というのが真相である。

 

 そして、なんで私がこんなことを知ってるかって言うと、普通にエースに聞いたからだ。時々会って話したりするからね。

 『七武海』の立場? 知らないよそんなん。バレなきゃOK。ジンベエだってそうしてたじゃん。

 

 まあでも、いくらその部分がデマ多めだとはいえ、伊達や酔狂で『四皇』の名がつくわけじゃない。それ相応の実力と勢力があるからこそだ。

 

 まさか、デマや誤解だけで『四皇』になるような面白いキャラがこの先出てくるわけもないと思うし……ないよね?

 

 まあ何にしろ、それに見合った力をティーチは持ってる。

 そしてそれは、いつ何をきっかけにして、誰に振るわれるのかもわからない。

 あいつを認めるわけじゃないが、海の皇帝と呼ばれるにふさわしい暴虐っぷりは持ってる、と言っていいんだろうな。

 

(というか、一番危ないというか、注意が必要なのって、何気に私らだよね……所属する部下や、傘下の海賊団の中にも能力者多いし……それに、表に知られてはいないけど、天然ものの悪魔の実が、まだまだ何十個もあるし)

 

 知られたら迷わず戦争仕掛けてきそうで怖いわ。

 アイツの場合、『七武海』だろうがお構いなしだと思うし。無茶とか無謀とか、考えなしって言ってもいいくらいに、ブレーキがぶっ壊れてるやつだもんな……どうしてか知らんけど。

 

 

 

 まあ、『黒ひげ』の話はこれくらいにして……と。

 

「じゃ、そろそろ出かけようかな。留守番よろしくね、レオナ」

 

「りょーかい、気をつけてな、母ちゃん」

 

 さっき海軍の要請を断るために行った『これから予定がある』ってのは、嘘でもなんでもない。

 ちょっとこれから、ある島に『取材』に行く予定が入ってるのだ。

 

 より正確に、ぶっちゃけて言ってしまうと……実は、そこに行きたがってるのは、私ではなく、ママである。

 

 しかしそこは、政府が管理する島という扱いになっているので、『七武海』の傘下ないし関係者であっても簡単には入れない。

 なので先日、私の名前で海軍に届け出を出して無事に受理されたので、これから行くわけである。

 

 ……正直、私としては……興味はあるし行ってみたいとも思ってたんだけど……同時に『行っていいのかな』とも思ってた場所だったりする。

 何せ、今回の目的地は……

 

「あ、ごめんド忘れした。母ちゃんこれからどこ行くんだっけ?」

 

「ん? 『バルジモア』だよ」

 

 未来国バルジモア。

 かの天才科学者・Dr.ベガパンクの生まれ故郷にして……若い頃の彼が残した様々な発明品や設計図などの貴重な資料が残っている国。

 

 そして同時に、少し前……約1年前、『バルジモアの悲劇』という大きな事故……ベガパンクの研究所の爆発によって、それらの貴重な遺産が全て失われてしまった、という過去を持つ国だ。

 そのおかげで、守るものがなくなってしまったってことで警備が比較的緩くなって、簡単に滞在許可が出たんだけどね。

 

 そして、政府も海軍も知らないが……実はベガパンクの研究所はもう1つあって、そこにある資料やら何やらは無事だったりする。

 そしてそこに、麦わらの一味の船大工、“鉄人”フランキーが滞在して、自己改造その他パワーアップの真っ最中だったりする。

 

 そんなところに、うちの超問題児の天才科学者を放り込む……ふふふ、怖ぁい……。

 

 ……怖い、けど……ごめん、取材対象として興味あるから行ってみたいの。

 今回は私、海賊らしく欲望を優先します。

 

 

 

 そして、行った先のバルジモアで、何を見つけて、どのような交流があって、結果何を生み出すことになったか……

 

 そのへんは……また今度、語る機会があれば。

 

 

 

 

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