大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第241話 ゾロの3D2Y(6)

 

 

【真剣勝負……?】

 

「ハァ……ハァ……! くそっ……!」

 

 そこは、周囲に何もない、開けた荒野のような場所だった。

 

 その中心で、ロロノア・ゾロは……3本の刀を構えたまま、肩で息をしていた。

 全身は切り傷だらけになり、血に染まっている。

 

 口からも血液を流し、愛刀の1つ『和道一文字』の柄を赤く染めながら、彼が相対しているのは……長い白髪と、白い羽織を風にたなびかせて立つ、1人の女剣士だった。

 その手に持った翡翠の剣には、幾度となくその斬撃を受けて付いた自分の血が滴っている。

 

 満身創痍の自分に対し、その女剣士……スゥは、未だ無傷。

 あちこちの傷は決して小さくはなく、もはや万全のパフォーマンスを発揮すること自体絶望的ではないかと思うほどの状態だ。

 

 しかし、それでもゾロは、いささかもその戦意を衰えさせることはなかった。

 歯を食いしばって痛みを無視し、

 両手に持った2本の刀……『秋水』と『三代鬼徹』を、体の前で回転させ……

 

「三刀流……奥義……!!」

 

「……! 一刀流、秘剣……!」

 

 そして、それを見たスゥも、自然体で構えずにいた姿勢から動き……一歩後ろに引いて半身になり、手に持った『七星剣』を中段に構える。

 

 ……直後、

 

 

「“三・千・世・界”!! 」

 

 

 持てる力の全てと、ありったけの覇気を纏わせて繰り出した、ゾロの最大の技は、目の前にいる全てを切り刻んで薙ぎ払う勢いで繰り出され……

 

 …………しかし、

 

 

「“交界(クロス)王刃(オーバー)”!!」

 

 

 赤い光を……『覇王色』を纏って繰り出されたスゥの、『×』の字を描いた2連撃。

 その一太刀目で、ゾロの渾身の一撃は、切り払われる形で破られ、

 

 間髪入れずに繰り出された二ノ太刀が、ゾロの体を深々と斬り裂いた―――

 

 

 

 ―――というところで、ゾロは目を覚ました。

 

 

 

「っ……がぁっ!? ハァ……ハァ……あぁ、くそ……また勝てなかったか……!」

 

 

 目を覚ました場所は、いつもの修行場所である『ルーボッツ島』のとある草原。

 見渡す限り、緑のじゅうたんのように生えそろった柔らかい芝は、日向ぼっこしつつ昼寝するのに最適なスポットだった。

 

 そこでゾロは、寝汗をびっしょりとかいた状態で目を覚まし……

 

「よっ、お疲れさん。ほれ、水飲むだろ、汗すげーし」

 

「……! ああ、悪ィ、もらう」

 

 すぐそばで待機していたビューティに手渡された水筒から、ごくごくと水を飲んで水分補給。

 それと同時に、すぐ横に寝ていたスゥも『ふぁ~』と起き上がって、

 

「ビューティ、私にもお水プリーズ」

 

「わかってるって、ほれ」

 

「ありがと。あ、ノコもありがとね、ごめんねなんか、色々つき合わせちゃってさ」

 

「いえ、全然いいですよこのくらい。僕でお役に立てることなら、いくらでも言ってください」

 

 ビューティの隣で、嬉しそうに笑っている少年……ノコに笑いかけるスゥ。

 

「ちょっと休憩したら、次はサガの番ね。というわけでノコ、もうひと頑張りお願い」

 

「はい、任せてください!」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 説明しよう。

 

 今、ゾロは寝汗びっしょりで起きた。そして、その隣で寝ていた私も起きた。

 しかしこれは断じて、ただ修行をさぼって寝ていたわけではない。れっきとした『修行』だ。

 

 今、ビューティの隣にいる男の子……名前は、ノコ。

 他の子達と同じように、ビューティが拾って面倒を見ている孤児の1人なんだけど……彼、実は超人系の悪魔の実『ネムネムの実』の能力者で、人を眠らせてその夢を操る『睡眠人間』なのだ。

 

 その能力を使い、私とゾロは、夢の中で戦っていたのである。

 同時に寝て、同じ夢を見る……というか、夢を共有することでそれが可能になる。

 

 夢の中なら、現実ではできないような無茶苦茶な修行もできるし、生身でくらったら致命傷になってしまうような怪我も気にせず戦える。

 現に今回、夢の中で私は、ゾロを殺しかねない大傷を負わせたわけだが……所詮は『夢』。

 目覚めてしまえば、ゾロは普通に無傷でそこに寝ているだけでした、というわけ。

 

 まあ、もちろんあくまで『夢』だから、筋肉とかが鍛えられたりはしないけど、この『夢修行』の主目的は、普通の修行ではできないレベルまで踏み込んで、技術を磨いたり、戦いのイメージを掴むことなので、問題ない。

 数日前から続けてることだけど、ちゃんと成果も出てるんだよ。覇気が強くなったり、攻撃のタイミングがより秀逸になってきたりね。

 

 というか、ゾロ達だけじゃなく、私もこの修行、ためになってるというか、力になって強くなれて来てる気がするし。

 

 やっぱり、全力で戦える場、ないし状況があることや、そういう形で経験を積めるっていうのは大きいんだと思った。

 思えば、レイリーに鍛えてもらってた時とか、割といつもそんな感じだった。殺す気でかかっていっても軽くあしらわれて……けどその時は、本気でやればやるだけ成長できてた気がするし。

 

 最近では……自画自賛になっちゃうけど、私が本気で戦える相手ってあんまりいないからな。

 それこそ、新世界に名をとどろかせる大海賊クラスにならないと、って感じかも。……そんなのに喧嘩売りに行ったら大騒動間違いなしだからできないし、そもそも別に、そこまでして戦いたいわけじゃないからなあ。

 

 ホント、お手軽に真剣勝負ができるようになって、ノコ様々だ。

 

 さて、私も寝汗の始末して、水分も補給したということで……次はサガね。

 

 それじゃあ…………お休み。……zzz……。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

【継続は力なり】

 

 別な日。

 ゾロは1人、走っていた。

 ひたすらに走っていた。

 

 ……地面ではなく、空を。空中を。

 

「ハァ……ハァ……くそ、慣れたは慣れたが、これだけ続けるとやっぱまだまだきついか……!」

 

 今ゾロが走っているのは、『ルーボッツ島』よりもさらに高い空域にある、空島から空島への間。

 当然、橋も何もかかっていないし、海雲の道が続いているわけでもない……何もない『空』だ。

 

 空気も薄く、青海人が活動するには……それこそ、普段『ルーボッツ島』で修行しているゾロであってもかなり苦しいレベルで酸素が少ない。

 そんな高さで、島から島へ走って移動するという……単純だがかなりきつい修行である。

 

 ゾロの足には、いつかのビーチバレーの時にも使った、空を歩ける靴が装着されている。

 これを使えば、相応に体力は使うことになるものの、『月歩』が使えないゾロでも空を走れるというわけだ。

 

 しかし、空気が薄い中とはいえ、ただ走る程度なら、今のゾロならそこまで苦しいものではなかっただろう。

 今、汗だくになるほどにゾロを苦しめているのは、もう1つ……自分が今着ている服が、ひどく『重い』からだ。

 

 ウェイトトレーニングのようになるように、全身が満遍なく重くなる上、手足も動かしづらく、さらには空気抵抗も大きくなるような仕組みで作られている、特殊な稽古着を着て走っている。

 こうでもしないと、今のゾロの身体能力では『効く』稽古にすることは難しいのだ。

 

 そして、それとは別に……この、シンプルだが相応にきつくて効果的な修行をゾロに課す際、最も問題になったのは……言わずもがな、迷子対策である。

 

 何せ、異次元の方向音痴であるゾロのことであるため、フィールドを空にまで広げてしまうと、スゥが『ここからここまで、こういうルートで走ってね』と指示したとしても、5分後には『いや何でそんなとこに行けんの!?』と仰天するような場所を走っていたりする。

 実際に何度かそうなった。

 

 そのため、一度はこの修行自体を廃止にすべきか、割と真剣に検討されたのだが……ならば、下手に範囲やコースを指定せず、『この空島からあの空島まで走って!』という形にした。

 目的地がきちんと分かりさえすれば、あとはただそこ目指して走っていけばいいのだから大丈夫だろうと。

 

 …………そして、その見込みは、見事に……

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ……それにしても……あいつら一体どこ行きやがったんだ、世話が焼ける……全く、空の上で迷子になるってどういうことだ?」

 

 

 ……見事に、はずれた。

 

 

 先程、ゾロは『1人で』走っていると言ったわけだが……最初は1人ではなかった。

 というか、走り始めた当初は、メルヴィユの修行メンバー全員で走っていた。

 

 そして、5分後には1人になった。

 

『この期に! 及んで! 何すっとぼけた言ってんだお前は!? ゾロ!』

 

『いやどうしてこんな素早く誰にも気づかれずに迷子になれるの!? ボクら誰1人『見聞色』で気づけなかったんだけど!』

 

『こやつのこれは最早1つの才能ではないのか……暗殺術でも修めたらどうじゃ?』

 

『いや、標的のところにたどり着けないからダメだろ絶対。というかゾロ、今どこ!?』

 

 と、ゾロが耳に着けているインカムのような通信機から聞こえてくる怒号(ツッコミ)

 親友や3人娘がなぜそんな風に声を荒げているのか、当然ゾロにはわからなかった。

 

「あん? 何だよお前ら、全員一緒にいるのか?」

 

『当たり前でしょーが! あんたが迷……ああもうめんどくさい! アリス! やれ!』

 

『了解お母さん! おばーちゃん特製、風が吹いてもしばらくは散らない信号弾……発射!』

 

 そんな声が聞こえた直後、ゾロが今目指して走っている島とは全く別方向にある島で……赤い色のついた煙が勢いよく吹き上がった。

 

「あん? ああ、なるほど……あの島に行きゃいいんだな。ったく、最初からそう言えっての」

 

『『『言ったわ!!』』』

 

 かつて、アラバスタ王国での戦いの時、砲撃手を探すための『運命を決める10分』の際、なぜかアルバーナの外、巨壁を下った下にまで離れてしまっていたゾロだったが、ウソップが『赤蛇星』でのろしを空に打ち上げた際、それを目指して走ることで戻ってくることには成功していた。

 

 その為、何か目印があればゾロでも大丈夫だ、とスゥは知っていたのだが、その目印を見失ったり、目印がわからなくなってしまうと意味はないんだな、と今回学んでいた。

 

『次からは最初から信号弾打ち上げて『あの煙に向かって走れ』とかにした方がいいのかな……』

 

『なんでこんなシンプルな訓練内容でこんだけ頭を悩ませなければならんのじゃ……』

 

『なんか……本当にもう、すまんとしか言えん……』

 

「……? よくわかんねえが、大変そうだな」

 

『『『…………(怒)』』』

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

【新技……?】

 

 また別な日。

 

 ゾロは、誰も連れずに1人で、ルーボッツ島の一角にある岩山地帯へ来ていた。

 目の前には、かなり大きな岩が1つ、転がっている。

 

 覇気を覚えた今のゾロであれば、苦も無く両断できるであろう程度のものだが……その岩を前に、ゾロは意識を集中する。

 手に持つ刀は、1本のみ。親友から受け継いだ、『和道一文字』。

 

 それを両手で持って中段に構え、呼吸を整え……

 

 

「―――――ッ!!」

 

 

 瞬間、

 

 目にもとまらぬ速さで、刃が閃き……岩を両断する。

 それだけならば、先ほど述べたように、何も不思議はない。

 

 ……しかし、その直後。

 

 2つに斬れて、そのまま左右に崩れ落ちるかと思われた巨岩が……なぜか、逆に……まるでゾロに引き寄せられるように、重力に逆らって動いた。

 岩だけではない。周囲に転がっていた砂粒や小石の一部も、吸い寄せられ……

 

 すかさず放たれた2度目の斬撃が、それらを薙ぎ払った。

 

 4分割され、今度こそ崩れ落ちる岩。

 切り払われて散っていく砂、小石。

 

「…………ふぅ」

 

 ゾロは再び呼吸を整え、刀を鞘に納め……

 

 

「……なるほど、確かに食わず嫌いはよくねえな……人間、何でもやってみるもんだ」

 

 

 

 ぽつりとつぶやいて、笑った。

 

 

 

 

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