メルヴィユ空域の一角にある、特に何もない空島。
ここは昔、パパが適当に青海から持ってきた空島(仮)のうちの1つであり、特に何にも使っていないし、動物も住んでいない。
なので、模擬戦とか火力実験とか、そういう……なんていうかこう、雑な感じの目的に使用するのにちょうどいい島なのだ。
そう言う意味では、『使ってない』わけではないのかもね。
そして今日も、ここでちょっとばかり色々な実験をすることになったんだが……
「はいっ! それじゃ、さっそく発表の方始めていきますねえええええ! お気に召したものがありましたら、さらに力を入れますので予算の増額よろしくお願いしまああああす!」
「「「…………」」」
今日の実験はちょっと……刺激的なものになりそうだ(精一杯の婉曲表現)。
☆☆☆
こないだ、『プラーガ』と『カドゥ』について発表してからまだそんなに経っていないっていうのに、また『新発明』を発表するっていうんだから、この人の開発のペースってやっぱおかしいよな……。
発明って普通、何か月、何年もかけて試行錯誤を繰り返してその末に……って感じで作り出されるもんじゃないの? いや、まあ、一部の天才にそれが通用しないのは知ってるけども。
けどまあ、悔しいことに、彼女が作り出す発明は、こちらへの精神的負担と比例して、有用性も極めて高いものばかりであることは、今迄の経験でわかっている。
なので、そういう申し出(発表会したい!)があった場合、無視することはできない。
そんなわけで、私、パパ、インディゴ、それに5人娘と、私の側近2人というメンバーで――あの日の会議室とほぼ同じメンバーだな――今日の『発表会』を迎えたわけである。
ただ前回と違って、ママだけじゃなく、研究室所属の人達が何人か、助手的な立ち位置でせわしなく動いている。自分だけじゃないってことは、今回の発表は、そこまで秘匿性が高いものではないというか、きちんと『研究室』として動いて開発したものであるらしい。
いや、それでもきちんとトップシークレット級ではあるんだろう。
けどまあ……あの2つや、ママの体の秘密に比べればそりゃね……。
「ソゥ主任、準備できました」
「ありがとおおおおお! それじゃ、さっそく始めますねえええええ! まず最初はこちらですううううう!」
そうこうしているうちに、助手の方から準備OKを告げられ……待っていたかのようにママは懐に手を入れ、何かを取り出した。
手に持っていたのは……貝殻? あ、『
「そうよおおおお、私が開発したオリジナルの『貝』については、今までも何度か報告したわよねえええええ?」
「うん。ママってば、すごいいっぱい作ったもんね」
植物性繊維を蓄えて『紙』を吐き出させる『
シャンプーとしてもボディソープとしても使える成分の石鹸を出す貝『
海水や汚れた水を吸い込ませると、飲料水として使える真水にして吐き出してくれる『
水と熱を同時に蓄えて高温の水蒸気を発生させる『
こんな感じで、色々なオリジナル品種改良『貝』を開発したママ。
しかしどうやら、また新しく貝を生み出したようで……それが、今手に持ってるやつかな?
小さな巻貝型だ。やや平べったくて丸っこい。一回り小さいけど、『衝撃貝』に形は近いかも。
ママはそれを、助手の人が設置した的に向ける。
大きくはないけど、金属製でそこそこ頑丈そうだ。
そして、ママがその『貝』の殻頂を押すと……
―――ピュン!!
「「「……はい?」」」
レーザーが出た。
もっかい言おう。レーザーが、出た。『貝』から。
放たれたレーザーは、鉄板で補強された『的』を貫いて、その背後の地面に着弾して爆発を起こした。
「名付けて『
「お手軽に出していい火力じゃないと思うんじゃが……」
「世界政府の虎の子の『人間兵器』専用のはずの未来武器が手のひらサイズかあ……あいかわらずおばーちゃんすごいね」
「コレ量産とかできんの? だとしたらやばくね?」
いやホントそうだよ。銃より小さいのにこの火力出せる武器って、マジでヤバいぞ。
そんな風に考えてしまったんだが、ママは『それがねええええ』と何やら悔しそうに言う。
「放つのはお手軽にできるけど、作るのはコレ大変なのよおおおおお! 生育に時間がかかるし、丁寧に育てないとだめになっちゃうから労力やコストもかかるしいいいいい! それに、放つ前に光を吸収させなきゃいけないんだけど、ある程度の強さの光をそれなりの時間吸収させなきゃいけないから、継戦能力っていう点でも問題ありなのよねえええええ!」
なるほど、銃みたいに弾を込め直して即次弾丸を、ってわけにはいかないのか。
聞けば、目いっぱい蓄光した状態で、今の威力のレーザーを6発、が限度だそうだ。
それでも十分だとは思うが、ママからすると物足りないらしい。
「課題解決のためにはさらなる予算が必要なので、今回発表させてもらいましたあああああ! 案はもう一応既にあるので、OKを貰えればすぐにでも取り掛かれまああああす! どうですか親分さああああん?」
「……有用性は……認める。まあ、どんな風に強化されるかでちと怖くはあるが……いいだろう。採用。予算出すから研究して改良してみせろ」
「ありがとうございまああああす! それじゃ次行きますねえええええ!」
武器としてはホントに強力だからな。パパも認めざるを得なかった様子。
それに喜びつつ、ママは次の発明品の準備にかかった。
☆☆☆
しばし間をおいて、持ってこられたのは……え、ナニコレ?
「……葡萄?」
いくつもの果実が房に連なって実っている、立派なブドウ……のような『何か』だった。
見た目、というか形だけはブドウだが、ただの果物でないことは見て一発でわかる。
何せ、巨峰もかくやって感じに大きな1粒1粒の実の全てに……変な模様が浮かんでいる。
警察署の地図記号を思わせる、〇と×が組み合わさったようなマークが、ちりばめられてる。
それを見て私がまず思い出したのは、もちろん『悪魔の実』……ではなく、『SMILE』や『TABOO』といった、人造悪魔の実だった。
そういう、不思議な果実の中でもどこかいびつというか、人の手が入ったもの特有の気配?がする。……いや、気配も何もママが作ったものなんだから、人の手、入ってて当然なんだけどさ。
それでも、天然ものの『悪魔の実』よりも『人造悪魔の実』に近い気配がしたってのが……何か気になる。
しかし、そのふわっとした疑問は、直後のママからの説明できれいに解消されることになった。
……納得したことによるスッキリ感を超える衝撃がセットで叩き込まれてきたが。
「おいソゥ、そりゃあ、『人造悪魔の実』か? 『SMILE』とか『TABOO』みてーな」
「いいえ違いますううううう! 無関係ってわけでもないんですけどねえええええ! コレは一言でいうと、その『SMILE』の……『解毒剤』なんですよおおおおお!」
「「「解毒剤!?」」」
「そうですううううう! 例えば『SMILE』の場合、食べて能力を得られる確率はたったの1割で、それ以外はただカナヅチになるだけの上に、感情表現が『笑う』しかできなくなるっていうデメリットがあるでしょおおおおお?」
うん、それは皆知ってる。
そんなヤバい代物でも裏ルートでは大人気だって言うんだから、世の中ってわからないよね。
そのせいでたまに私も、海賊とかその他悪党の相手をする時に……その中に、攻撃されても何が起こってもゲラゲラ笑ってるやつに出くわす。……多分あれ、そういうことなんだよね。
「で、私が作ったこの果実……『
「それがホントならまた随分すげえもんを作ったもんだな……。その『CoPP』とやらには、何か危険とか、副作用はねえのか?」
「ありますううううう!」
「「「あんの!?」」」
「残念ながらあるんですよおおおおお! 何せ『SMILE』自体が欠陥品もいいところというか、無理矢理で無茶苦茶なつくりをしてるので、それを『治す』のも一苦労なんですううううう! 超複雑に絡まったスパゲッティコードを想像してもらえるとちょうどいいですねえええええ!」
ママいわく、『SMILE』は、無数の動物の『血統因子』を、薬品を通して果実に吸収させることで作られており、その実は果実としてひどく不自然で不安定、歪なものなんだそうだ。
まさに、血統因子という名の無数のコードがギチギチのグチャグチャに絡み合っている状態。
食べた者は、その果実を通して自分の体に『血統因子』を取り込み、馴染ませることができれば、能力を手に入れられる。こんがらがったスパゲッティコードが上手くほどけてくれればこうなる。
失敗すると、その無茶苦茶に絡み合ってこんがらがったコードがもっとこんがらがって、自分もからめとられて身動きできなくなって、結果、力を手に入れるどころかデメリットだけをその身に宿してしまう、と。
で、ママの『CoPP』は、ものすごい力技でこれを解決する。劇薬的な成分で、不自然に取り込まれた血統因子を全部ぶっ壊すんだって。
全身を絡めとっているコードに硫酸をぶっかけて全部溶かすことで物理的に抹消し、絡めとられていた本人を解放する、というイメージだそうだ。
当然、そんなことしたら本人もただでは済まない。
『CoPP』自体に有毒な成分が含まれているため、食べれば本人に普通に害がある。
しかもこの毒、『血統因子の破壊』を担ってくれる成分とはコインの裏表みたいにセットなので、事前に解毒して安全に食べる、なんてこともできない。
幸いと言っていいのか、少量であればそこまで有害でもないので、1粒や2粒食べても死ぬことはほぼないらしい。毒耐性は個人差あるだろうから絶対じゃないが。
しかし、この『CoPP』を何粒食べれば解毒が完了するかというのも、これまた個人差がある。
1粒で治る人もいれば、何粒も食べても……それこそひと房丸々食べても治らない人もいる。
そしてもちろん、食べすぎれば、体内に毒を多く取り込みすぎて……治る前に死ぬ。
「なるほど。上手い話ってないもんだね」
「一生外れない『笑顔の仮面』を外すためには、自ら毒を飲んで命を削る覚悟が必要……か。色々な意味でろくでもないもんじゃの」
「そもそもろくでもない方法で力を手に入れようとした結果なわけだから、仕方ない感じもするけどな。……でもさ、もしもコレが『SMILE』と同じように、闇市場に出回ったりしたら……」
「売れちゃうんだろうなあ……」
「ママ、ちなみになんだけど……これ使って解毒に成功したとするじゃん? その後もう1回『SMILE』に挑戦することってできるの?」
あれ、『悪魔の実』扱いだから、失敗したとしても『2個目』が無理なんだよね。
でももし、これで解毒してまっさらな状態になったとしたら……
「できるわよおおおおお! それも実験済みなんだけど、実験体のうちの1人は、再チャレンジの『SMILE』で見事に能力をゲットしたわあああああ!」
「あー、確実に売れるわコレ。失敗したら解毒して再チャレンジすればいいとか考えるアホが絶対いっぱい出てくるわ」
「本当、ろくでもないのですねー……」
「ただ1つ補足すると、『成功』した方のSMILEの能力者が食べても、無能力者に戻ることはないわあああああ! そっちはそっちでもう安定しちゃってるから、ただ毒食べるだけになっちゃうわねえええええ!」
ちなみに、どうでもいいことだけど、『CoPP』の由来は、『Control Poison with Poison』の略らしい。『毒をもって毒を制す』……か。
「ちなみにもう1つ補足しておくと、使用済みの『SMILE』の食べ残しのせいで笑うことしかできなくなった人の症状にももちろん効果あるわよおおおおお?」
「? 何だそりゃ?」
「あら、親分さんご存じないですううううう? 『SMILE』って悪魔の実と同じで、食べた一口目にしか能力を与える力がないんですよおおおおお! だから、残った『二口目』以降はただの果実なんですけど、『笑顔』と『カナヅチ』の副作用は二口目以降も発揮されちゃうんですううううう!」
「つまり、一口目でチャレンジした残りを食っちまうと、その食った奴も笑うことしかできなくなっちまうと。またタチ悪ィな……まあ、そんなことする奴がいるのかどうかはともかく」
わざわざ誰かが食べた後の『SMILE』食べるなんてことする人はいないでしょ……。
それだと最早……『笑顔以外を奪う』っていう、ある種の拷問とか処刑になると思う。
……逆に言えば、そういう目的でならありうる、ってことにもなるか。聞いたことないけど。
で、そういう、『SMILE』の食べ残しのせいで笑うことしかできなくなった人に対しても、この『CoPP』は解毒剤として効果を発揮すると。
しかも、血統因子云々の影響が『一口目』の失敗者より小さいので、より少ない個数で治ると。
……まあ、そんな用途に使われる機会があるのかどうか、果たして疑問だけどね……。
☆☆☆
次の発明品は……また『貝』?
今度は、タニシみたいな小さな巻貝だ。親指くらいの大きさで、手の中にすっぽり収まる。
「それじゃいきますねえええええ!」
「? 行きますねって、ママ、今回は的とか用意しなくていいの?」
「いいのよおおおおお! そんなの要らないし、どんな『貝』かはすぐわかるわあああああ!」
どういう意味だろう、と思いつつ。
ふと見ると、なぜか研究者の皆さん達が……遠くに離れて避難している。なぜ?
え、怖いんだけど、大丈夫なんだよね?
不安になりながらも待つ私の前で、ママが、カチッと貝の殻頂を押した……その瞬間。
―――ド ク ン !!
「「「…………っっっ!?」」」
突然、ママを中心に……間違いなく『覇王色』であろう覇気が迸った。
幸いというか、それで気絶するようなメンバーはこの中にはいなかったけど――『覇王色』ではあるけど、そこまでは強くなかったしな――でもそんなのは問題でもなんでもない。
……さっきのにもまして訳が分からないんだけど!? え、まさか……まさか?
「……ママ、何今の? 説明お願い」
「はいはーい! この貝は『
「……とんでもねえもん作りやがってまたコイツは……!」
額に手を当てるパパ。
感心とか困惑とか、面白いとか困ったことになったとか、色々な感情がごちゃごちゃになって、逆に表に何も出てこれなくなったと見た。
ちなみに私も同じ感じである。いや、ママほんとにとんでもないもの作ったな!?
前代未聞どころじゃないよ。そんなの作れるの!? 『覇気』だよ『覇気』、しかも『覇王色』!
「とはいえ、さっきの『光線貝』以上に生育が難しくて、今のところコレ1個しか成功してないんだけどねえええええ! 1回分しか蓄えられないし、蓄えた覇気は普通に使うより数段弱くなっちゃうし、使った本人ももれなく威圧しちゃうから自爆になりかねないし、課題だらけなのおおおおお! ちなみに今放った『覇王色』は、スゥちゃんにこないだ協力してもらって蓄えた奴よおおおおお!」
……あ、そういえばこないだママに『ちょっと
いや、それにしたってだよ……?
選ばれた人間しか使えない『覇王色』を、劣化コピーになるとはいえ、誰でも使えるように『蓄えて携帯できる』ようにするなんて……なんか色々壊れるなあ……。
「……っていうかおばーちゃん? もしかして……『覇王色』が可能なら、その……『武装色』や『見聞色』の『貝』もあったりする?」
恐る恐る、って感じでイリスが聞く。そうだ、そっちの方が重要だ。
威圧する爆弾よりも、ある意味……そっちの方が強力で……そして、危険だ。
それに対して、ママの答えは……
「半分正解よおおおおお! 『見聞色』の貝は、残念だけど今のところ難しそうとしか言えないわねえええええ! あくまで本人の感覚を鋭敏にする感じだから、『蓄える』っていう手段につながらないのよおおおおお! でももう1つの『武装色』の方はできると思うわあああああ! 『覇王色』よりさらに数段難しいけどねえええええ! その予算が欲しいのおおおおお!」
意外と言えば意外だが、『覇王色』が一番簡単なのか……って感想はさておき。
それを聞いたパパは、腕組みをして……真剣な表情で考え始める。
無理もない、そのくらい重要なことだ。
『武装色の覇気』は、ある意味、新世界で上を目指すなら習得して当然の、いわばボーダーライン的な能力であり、持っているかいないかで別次元レベルでその力が違ってくる代物だ。
それゆえに、これを習得した一握りの上級者は、その他大勢の雑兵クラスに対して絶対的な上の立ち位置に立つことになる。
これがないと、一部の超人系や、自然系の能力者にダメージを与える術がないしね。
そんな、一握りの上級者しか使えない『武装色』を……『蓄えて』『使う』ことができるというのは……『新世界』の、あるいはそれ以外の海の戦いすらも大きく変えてしまう可能性がある。
火薬や銃火器の発明に匹敵する、あるいはそれ以上の大事じゃなかろうか。
それだけに、パパがいつになく真剣(失礼)になるのもうなずけるってもんだ。
しばしの沈黙の後、
「……予算は出そう。だが、これに関してはお得意の『暴走』は許さん。進捗状況は逐一俺とスゥに報告し、何か問題や懸念事項があった際は必ず指示を仰ぎ、出された決定に従うことを徹底しろ。たとえそれが『直ちに研究を中止して全研究成果を破棄しろ』というものであってもだ。これが守れない場合は許可は出さんし、破った場合は……いくらお前でも覚悟してもらう」
「……了解しましたあああああ! 私の研究者としての安いプライドと、親分さんに拾ってもらった恩と、私にはもったいないくらいに優秀でかわいい娘や孫達に誓って遵守しまああああす!」
「……ああ、信用させてもらう」
発明そのもののぶっ飛び具合に比して、すごくシリアスな空気で結果が出て終わった気がした。
☆☆☆
その後も、気を取り直してママの発明の発表会は続いた。
『覇気貝』の発表でさすがにちょっとシリアスモードになってしまったものの、残念ながら(?)その空気も長くは続かず……残りの発表の間中、私やパパ、そしてその他の面々も、感心しつつも『コイツよぉー……』みたいな、適度に気の抜けた空気でそれを見ていることとなった。
そうなっちゃうくらいに『やべー』発明品が目白押しでさあ……。
またまた『ワポメタル』を改良して作り出した特殊塗料。あ、コレこないだ私が聞かされた奴の完成版だな。
それを拭きつけた普通の木の板が、剣や斧で斬りつけても壊れず、火を噴きかけても燃やせず、結構な強さの酸性の液体でも腐食せず……かなりすごいコーティング剤になっていた。船体の塗装に使うだけで防御力が爆上がりしそうだな。
電磁力を用いて弾丸を加速させて発射する『
とんでもない速さ、とんでもない威力で砲弾を打ち出して攻撃できるものの、普通の砲弾だと加速した時点で燃えつきてしまうので、専用の砲弾が必要になる。しかし、その威力はパパでさえ『えぇ……』って引くレベルだった。
また、その簡易版にあたる、火薬不要で砲弾を飛ばせる『
なお、電源にはこないだ開発した超伝導体と『
正式名称『多段薬室式加速砲』。
横文字に直すと『マスドライバーキャノン』。
長大な砲身の数カ所に、ガスの噴射……というか『
レールガンやコイルガンには劣るものの、こちらは普通の砲弾が使えるのが大きいかも。
そんな感じで、いくつもママお手製のやべー兵器を紹介してきたわけだが、そのトリを飾るのにふさわしい兵器がこの度お目見えしました。
自信満々にママが手にもって見せてくるそれは……
「……ラムネ?」
ラムネ、に見える。
駄菓子の食べる奴じゃなく、瓶の、飲むやつね。独特な形の瓶に入ってるやつ。
その『独特な形の瓶』を、今ママが手に持ってる。
「そうねええええ、私も一応コレ『ラムネ』って呼んでるわあああああ! まあ中身は全然違うんだけどねえええええ!」
あ、そうなんだ。それっぽいのは入れ物だけなのね。
じゃあ……実際の中身は何なの?
「どう説明したものかしらねええええ……一言でいえば、特殊な大砲を撃つのに使う『火薬兼砲弾』かしらあああああ?」
「……『兼』って、何?」
「説明する前に、スゥちゃん、こないだ私と一緒に『バルジモア』に行った時のこと覚えてるかしらあああああ?」
ああ、そりゃもちろん覚えてるよ。
『未来国バルジモア』。天才科学者Dr.ベガパンクの生まれ故郷にして……今現在、フランキーが隠れ住んでいる島だ。
こないだ、取材としてそこに行った私は、そこで自己改造中のフランキーと初対面した。『空島』の時はまだ、フランキー加入してなかったもんな。
仮にも『王下七武海』だから警戒されるかと思いきや……『天元突破グレンラガン』の作者ってことで、初対面から号泣されて『俺ァあんたの大ファンでよぉぉおお!』って握手とかサインとか……うん、いや、別に嫌な気分ではなかったよ? びっくりはしたけど。
加えてその直後、開発者気質では決して負けていないママと話して、秒で意気投合して……そのまま数日滞在する間に、色々と意見交換とか技術交流とかをしていた。してしまっていた。
ちなみにその時、ママから、『若手の成長を応援してあげたいのおおおおお!』ってことで、ちょっと我儘を聞くことになった。
と言っても、私の裁量でどうにでもなる程度の量、『ワポメタル』その他の材料を援助させてもらう……ってだけなんだけどね。
『2年後』に完成するはずの『フランキー将軍』が、原作同様強力なものになることを祈る。
……2年後っていうか、もうあと1年切ってるんだけどね。
あと、フランキーが暮らしてたラボの中に、やたらドリルがいっぱい作られて(試作品?)置いてあったのも気になったな……まあいいけど。
……ということがあったわけだが……それがどうかした?
「その時に聞いた技術の中に、コーラを燃料にして超強力な兵器を使うっていうすごい発想があったじゃなああああい? それを私なりに取り入れてみたのがこの『ラムネ』なのよおおおおお! まあこっちは炭酸飲料は名前だけで、中身はれっきとした薬品なんだけどねえええええ!」
ああ、そんな名前と見た目にしたのはそういう理由で……。
「簡単に説明しちゃうと、この薬液にはすごい量のガスが溶け込んでいてねええええ? これを瓶ごと、これまた専用の砲台にセットして、撃つとおおおお……」
言いながらママは、その『専用の砲台』――いつの間にか用意されてた――に、カートリッジみたいに『ラムネ』の瓶をカチャッとセットし、押し込む。
そして、レバーを引くと……
―――ズ ド ォ ン !!
砲口から、空気の砲弾が飛んで行って……用意されていた、的代わりに積まれた大量の木箱を粉々に粉砕した。
すげえ……アレじゃん、ワンピース原作でサニー号に積まれてる『ガオン砲』とか、フランキー将軍の『将軍砲』とかと同じ奴だ。超圧縮した空気を飛ばす砲撃。
しかもどうやら、ママのコレの場合はそれだけではないらしい。
粉々になって空中に散った木箱の破片を、全て巻き込むほどの大きな爆炎が上がった。
射出された空気が全て燃え上がったらしい。範囲内にあるもの全てを焼き尽くしていく。
その後のママの解説によると、今起こった一連の事柄は次のようなものらしい。
1.大砲に『ラムネ』をセット。瓶が開封される。
2.圧縮して薬液に溶け込んでいた大量の特殊なガスが気体に戻る。さらに化学反応で薬液そのものも気体になる。結果、大砲内部にやばい量の空気が充填される。
3.発射。大砲内部に供えられたいくつもの『
4.空気の弾が命中、爆散。ここで周囲の空気と混ざることで化学反応が起こり、特殊ガスが全て常温で爆発的に燃焼する可燃ガスに変化。
5.その可燃ガスが全て発火。爆発的に燃焼しあたりを焼き尽くす。
6.爆発の熱に加え、加熱により空気が急激に膨張し衝撃波となってあたりを吹き飛ばす。
ちょっと長くなっちゃったけど、こんな感じ。
そして、これだけの威力の砲撃を『ラムネ』1本で1発撃てる。……うん。やばいね。
しかも、専用の大砲にはいくつもの『貝』を搭載しており、反動とか負担が最小限になるように調整されているので、『残弾』さえ十分に用意しておけば、それなりのペースで連射すら可能。
そして、この『ラムネ』において、何よりも魅力的な点は……コストの安さだった。
なんとこの『ラムネ』、メルヴィユのスズのナワバリで自家栽培されている加工用作物でほぼすべての材料が揃うのだという。
そこにいくらか専門的な薬品を加え、加工こそ専用のプラントで、それなりに手間をかけて作る必要があるものの、ほとんど自家製で作ることが可能である。1発あたりの威力に加え、秘匿性や運搬コストなんかを考えても、普通の大砲とかを使うよりコスパが圧倒的にいい。
しいて言うなら、運用するために専用の大砲を用意すべき、という点が欠点と言えば欠点かもしれないけど、それを補って余りあるコスパの良さだ。
これまでの発明品のいずれよりも明らかな有用性に、普通にパパも嬉しそうにしていた。
快く予算を出して、『存分にやれ!』なんて言ってたくらいだよ。
純粋に戦力の増強につながるし、普通に兵器としての運用で大丈夫な……ママの発明品にしてはまともな部類に入る品物だからね。他の比較対象がアレすぎるとも言えるが。
ママも、褒めてもらえて、背中を押してもらえて、これまた嬉しそうにしてた。
まあ、おあとがよろしいようで……とか言えばいいのかな。ははは。
全然よろしくなかった、ということを私達が知ることになったのは……そのさらにしばらく後。
さらに数か月ほどが経ち、それこそ『2年後』に突入する寸前になった頃のことだった。
ママを調子に乗らせると、約150%(※)の確率で何かやらかすんだって、忘れてたよ……パパも、私も。
(※)1回は確実に何かやらかし、その後50%の確率でさらにもう1回何かやらかすの意。
具体的に何が起きたのか……ママが何を作ったのかは……また今度、ね。