大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第245話 【?】の心【?】知らず

 

 

 予想通りと言えばそうなんだけど、やっぱ寝たら『ウタワールド』に引き込まれた。

 夜じゃなくお昼寝でもお構いなしだよ。食後のちょっと眠くなる時間に、ソファ借りて横になって寝てみたらこれだよ。

 

 昨日と同じ孤島……おそらくは、今いるこの島が『エレジア』なんだろうな。ここに連れてこられて、またあの怪物……魔王トットムジカに追いかけられている。

 昨日と同じように、ウタちゃんを抱えて、飛んでくる攻撃や、余波の瓦礫に気を付けながら。

 

 しかもなんか、昨日よりも顔が……笑みが深くなっているように見える。

 ただの気のせいか、それとも……私達を追い回して怖がらせることに、喜びでも見出してるのか……

 

(後者が案外ありそうなのがタチ悪いな……。心なしか、昨日より追撃の手が緩いような気もするし……わざと攻撃せず、手加減して逃げさせてるのか?)

 

 助かるっちゃ助かるんだけどね。ウタちゃん抱えたままだと、戦うの厳しいし。

 

 幸い、昨日あの楽譜柄の『どこ〇もドア』を見つけた場所は覚えてたから、最短距離でそこに向かったんだけど……

 

「……っ……やっぱないか!」

 

 昨日、確かにドアがあった場所に、それはなかった。

 逃げられないようにあいつが消したり、壊したんだろうか? 『ウタワールド』は本来、能力者であるウタちゃんの領域なのに……歌の魔王だけあって、ある程度干渉できるのかな?

 

 それとも……ゲームか何かみたいに、マップが毎回ランダムで……出口が別の場所にあるとか?

 うわあ……ありうる。

 めんどくさいけど……そのパターンなら、少なくともどこかには出口があるってことになるから、どっちかといえばこっちであってほしいかも。頑張って探せば脱出できるってことだし。

 

 とか考えてる間にトットムジカ追いついてきた!

 とりあえず走り続けて探す! 探す!

 

「っ……ごめんなさい、スゥさん……やっぱり、私……私が……!」

 

「はい昨日も言ったけどそういうの今言っても仕方ないから言わないの! エレジアの一件も含めて、別にウタちゃん悪くないしね! わざとやったわけじゃないんだし……」

 

「でも……でも、私が歌ったせいで、エレジアが、みんなが……シャンクスも……犯人ってことにされちゃって……!」

 

「それも含めて、ウタちゃんは悪くないから! 例えばそれが10割ウタちゃんの能力由来の災害だったとかならまだしも、ウタちゃんの歌はただのトリガーで、大本の原因はあの特級呪物!」

 

 どっちかっていうと私、ゴードンさんの管理不行き届きの方が問題だと思うよ。いやマジで。

 呪物だってわかっててとっておいたんだから。さっさと処分するか、それかもっと厳重に封印しておくかするべきだったと思う。

 

 いや、さすがに『エレジア』の時のは仕方ないとしてもさ。『音楽に携わる者として』とかの理由で、楽譜を処分せずにいて……結果なんか私巻き込まれてるもんね。

 

「あともう1つ言うなら、その時に『全部俺達がやったことにしてくれ』って言ったシャンクスだって、ウタちゃんのことそんな風に悪く思っちゃいないよ絶対! じゃなきゃいくら彼でも、無実の罪を自分達で、海賊団ごと巻き込んでかぶったりしない! だからウタちゃん、あなたがそんな風に言っちゃダメ! 反省するなとも、気に病むなとも言わないけど、自分を否定して色々粗末ないし蔑ろにするようなこと考えちゃダメなの!」

 

「そんな、それは……でも……でも、私っ……!」

 

「デモも体験版もありません! 親ってのはね、いつだって子供に幸せになってほしくて、そのためならなんだってできる生き物なの! そのためなら自分がつらくたって怖くたって、たとえその子供に嫌われたって、会えなくたってへっちゃらなの! ……いやゴメンちょっと嘘。へっちゃらではないわ。私もしそうなったら多分泣く……でもまあ頑張ってギリ耐えると思うけど……」

 

 尻すぼみな言い方になってゴメン。でも多分実際そうだから……。

 

 仮にウタちゃんと同じようなことが起こって、スズやレオナやアリス、あるいはイリスやスノウを守るために、お別れしなきゃいけないとか、彼女達に嫌われることになるとか……そうなったら……あっやばい想像しただけで泣きそう。そんなのやだ。絶対抵抗するわ私なら。

 

 ……けど、ホントのホントにどうしようもなくなったら、その時は……我慢しちゃうんだろうなあ……。

 私的には死ぬほどつらいけど、それでも、彼女達が幸せになってくれるなら……って。

 

 『親の心子知らず』って諺あるじゃん? あれってさ、必ずしも子供がわがままだとか愚かだとか、そういうだけの意味じゃない気がするんだよね最近……親って時々、子供のためならそういうことしちゃうからさ。

 ホントに大事な時に、大事なことほど子供に教えなかったりするんだよ、親って。ひどいよね。

 

 でもね。親ってさ、やっぱそういうもんなんだよ。

 

「…………」

 

 そんな話を聞いて、ウタちゃんは……何も言わず、黙ってしまった。

 けど、ふてくされて黙ったとかそういう感じじゃない。むしろ……今、彼女は……絶望と失意の中で……懸命に、希望と勇気を探してる最中、に思える。

 

そんな風な、暗い闇をかき分けて必死に光を探してるような、彼女の意思を……『見聞色』越しに感じる。きっとこれは、気のせいじゃないはずだ。

 

「…………スゥさん」

 

「?」

 

「私……前に言ったよね。絶対また、もう1度シャンクスに会うって。もう1度会って、それまでに……前よりもっともっとすごい歌姫になって、見返してやるって」

 

「……うん、言ってたね」

 

「……もう1つ、やりたいこと、できた」

 

「そう……何?」

 

 

 

「蹴っ飛ばす。助走つけて思いっきりドロップキックする」

 

 

 

 あ、いきなり足で行くんだ?

 噓ついておいてったことに文句言うとか、あるいは(グー)とか平手(パー)くらいは出るかもなーって想定してたけど、足で行っちゃう? しかも両足飛び蹴り(ドロップキック)

 

「エレジアの時……私をかばってくれたんだって知った時は……不謹慎だけど、私、ちょっとだけ嬉しいって思ったんだ。シャンクス達が、私を捨てたくて捨てたわけじゃないんだって……それがわかったから」

 

 でも、と続ける。

 

「だからって私に何も言わないで行っちゃうなんて……やっぱひどいよね? それってつまり、私じゃそのことを受け止めきれないと思ったからで……いや、たしかに小さかった頃の私じゃ、無理だったと思うし、そもそも今だって罪悪感に押しつぶされそうになってるけど……それでも!」

 

「!」

 

 いきなり音量アップ。耳にちょっとキーンって響いてびっくりした。

 

 あ、ちなみに今私、ウタちゃんのことお米様抱っこで運んでます。

 お腹圧迫して痛いかもだけどゴメンね、片手で運ぶならこれが一番安定するの。

 

「それでもさあ! 私……私、娘だからっ! 『赤髪海賊団』の音楽家だったから! 辛くても……哀しくても、苦しくても……シャンクスと、皆と一緒にいたかった……っ……! もしそれで、余計に迷惑かけることになっちゃっても、話がごちゃごちゃにこじれちゃっても……!」

 

 

 

「一緒にいて欲しかった……一緒に乗り越えたかった……っ……!」

 

 

 

 ……すっごく真剣というか、ホントに心の底から絞り出してる感じがする声だった。

 単なる癇癪とかわがままとは違う……本当に心の底から、子供が親にぶつけてやりたい全力の我儘、って奴だなこれ、たぶん。

 

 そして、こういうのを受け止めるのも……うん、親の務めだな。間違いない。

 

(『親の心子知らず』って諺はもちろんあるけど、それと同じくらい、『子の心親知らず』も割とよくあるパターンなんだよね、実際……。というか、割と多くの場合、この2つって、むしろセットだったりするし)

 

 ちらっと一瞬振り向いてみてやると、ウタちゃん、ぽろぽろ涙をこぼして泣き顔で……

 しかし同時に、その目が……わかりやすく燃えていた。

 

 ……さすがはシャンクスの娘で、ルフィの幼馴染だ。こんな目もできるんだな。

 私の経験上、こんな風な目をした奴は強い。そして、怖い。

 

(まあ、それがいつになるのかはわかんないけど……その時が来たら、シャンクス大変だぞこりゃ……思春期の娘を放置してたツケだと思ってきちんと受け止めてもらわないとだね! 悪いけどその時は私も味方させてもらうってことで………………ん?)

 

 とか考えてる最中に、ふと気づいた。

 

 なんか、ちょっと前から……トットムジカからの攻撃が……来ない?

 

 ほんの数十秒前までは、会話するのも大変なくらいドッカンガッシャン景気よく街をぶっ壊してたのに……ちらっと視線だけ向けてやると……

 さっきまでと変わらない笑みのままではあるけど、追いかけてじっと見てくるだけで、腕を振り回したりはしていない魔王が見えた。

 

 その目も……睨んでるとか蔑んでる感じじゃなく……観察してる?

 存在そのものから悪意とか邪悪な気配を感じるのに、視線からは何も感じない。

 

 ……え、何コレ……どういうこと? 何が起こったの? いきなりでわかんな―――

 

「スゥさん、下ろして! 逃げるのやめた、私も……私も戦う! ここがウタワールドなら、私も戦えるし……シャンクスに向き合うなら、魔王(トットムジカ)からだって逃げてなんかいられない! だから……」

 

 

「あっごめんウタちゃんダメだ、今日はここまで! ドア見つけた!」

 

「え――!? ちょっとぉ!? タイミング―――!?」

 

 

 『せっかく決心したのにー!?』ってギャグ要素の強い悲鳴(?)を響かせるウタちゃんを背負いながら、私は目の前にタイミングよく? 悪く? 現れたどこで〇ドアに、蹴破るように突撃して飛び込んで……

 なぜかそんな私達を、何もせず『魔王』は見送ったように見えて……

 

 

 

「……おはよう、ウタちゃん」

 

「……おはよう、スゥさん」

 

 

 

 寝起きだってことを考慮しても、ちょっと目つきが悪いというか、見事な半目になってこっちをにらんできてるというか……色々と言いたいことがありそうなウタちゃんと一緒に、起床した。

 

 ……いや、うん、その……せっかく決心したところでごめんね。

 

 まあでもほら、たぶん今日の夜もまた出るし……戦うならその時にでも、ね。

 ……ゴメンて。悪かったって。

 

 

 

 

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