今回から原作ブレイクとか捏造とか改変とか独自設定がより一層ひどくなります。
より一層、ひどく、なります。
大事なことなので2回言いました。
前にも言った気がしますが、苦手な方すいません。
どうにか脱出できたはいいものの、どうせまた今夜も寝たら呼ばれるんだろうなと思いつつ、私もウタちゃんも覚悟を決めて布団に入った。
なお、何かあった時のためにしばらくウタちゃん、私の『トゥルースイート』の部屋にお泊まりすることになりました。
一緒の部屋にいた方が色々都合いいからね。
一応ゴードンさんもすぐ駆け付けられる別室に控えててもらうことに。
あと、ウタちゃん達の許可を取った上で、うちの娘達(スノウ、イリス含む)に事情を話して来てもらうことにしました。万が一のことを考えてね。
別に寝てる間に不審者に襲われるとか、そういう心配をしてるわけじゃない。この『グラン・テゾーロ』の警備を抜いて『トゥルースイート』に来るなんて、至難の業どころじゃないし。
何せ、世界政府の諜報部員でも無理だったんだから。
心配してるのは、私達が寝てる間に『ウタワールド』内で暴れるであろうトットムジカの影響が、何かの形で現実の世界にも出てきちゃわないか、ってことだ。
ゴードンさんの話だと、トットムジカって本来、現実の世界と『ウタワールド』の両方に同時に現れて暴れるらしいし。
今のところ、私とウタちゃんのいる『ウタワールド』にしか出現してないけど……この差も何か意味があることなのかな?
本当なら、この『グラン・テゾーロ』で寝ること自体危険なのかもしれないけど、テゾーロ達は『気にするな』って言ってくれた。
そして、夜。
「そんなわけで、何かあったらよろしくね3人とも。大丈夫だとは思うけどさ」
「まっかせてよお母さん! 何が起こってもきちんとボクらで対処するから、大船に乗ったつもりでゆっくり眠っててね!」
「なあアリス、すごいいい笑顔で何でそんな風に手をワキワキさせながら言ってんだ?」
「このバカの管理もきちんとやっておくゆえ、安心して眠ってくれ、母上。いざとなったらどついてでも止める」
別方向の不安があるというか、違う意味で警戒が必要な怪物を招いてしまった気がしなくもないが……信じて託して寝ることに。
そんなわけで、今日から夜、私とウタちゃんが寝てる間、うちの娘達のうち2人が交代で見張りをしてくれることになりました。
負担かけちゃって申し訳ないけど、実はこういう感じでローテーションで寝起きするのって、割と慣れてるんだよね、私達。
だってほら、原作開始前の数年間、私と3人娘であっちこっち回ってた時期があったわけで……その時とかは、今みたいにローテーション組んで、誰かが起きてて進路とか海の見張り番をして……って感じでやってたわけだし。
なので、レオナなんて『なんか懐かしいな』ってちょっと楽しそうにしてたくらいだよ。
そんな娘達のご厚意に甘えさせていただきまして……じゃあ、お休み。
さて、どうやら夢の中に到着したようだ。
まだ周囲の空間はうすぼんやりとしててよく見えないけど、私とウタちゃんは意識ははっきりしてるし……互いの姿も見える。
夢でこうなるとわかった上で眠りについたからか……あるいは、今日は逃げずに戦う、って決意してここにいるからか。
しかし、周囲がそんな『よくわからない空間』だったのは本当に一時だけで……徐々にあたりが明るくなっていくのが分かった。
いよいよ始まる。そんな風に受け取って、私とウタちゃんは互いに一瞬だけ視線を交わし、無言でうなずいた。
何も今更言う必要はない。決意表明や、心細い部分の相談なんかは、起きてる間に全部済ませてきたからね。
だから今からやるのは、『トットムジカ』を倒すために、ただただ全力を尽くすことだけだ。
そして、周囲の空間に光があふれ、はっきりと見えるようになったと同時に……歌の魔王・トットムジカが姿を現し…………
現、し…………
現した……けど…………え?
「「…………は?」」
え、何これ?
☆☆☆
その、1時間後。
スゥとウタは、同時に目を覚まし……待機していたゴードン達が心配して合流した。
特に2人に何か異常があるようすはなく、また寝ている間に何か……トットムジカの影響かと思うような怪奇現象の類も起こらなかったが、目覚めてしばらく……2人の様子がおかしかった。
何か、信じられないものをみたような顔で、しばしの間、茫然としていた。
数分ほどして、どうにか戻ってきたスゥは、恐る恐る、といった感じでゴードンの方に向き直り……
「あの……ゴードンさん。トットムジカについて、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
「? 何だね? 私に応えられることなら何でも教えるが……夢の中で何か気になるものでも見たのか?」
「はい。その……自分でもよくわかってないんですけど……すいません、変なこと聞くんですが……」
「…………トットムジカって、テニスのダブルスで勝負仕掛けて来たりします?」
「「「……は?」」」
☆☆☆
あ……ありのまま今起こったことを話すぜ!?
私達はウタワールドに呼び寄せられて、エレジアに降り立つのかと思ったら、いつの間にかテニスコートに降り立っていた……
私とウタちゃんは動きやすいテニスウェアに着替えていて、手にはラケットを持っていた。
反対側のコートには、人間サイズに縮んだトットムジカ……というか、首から下が成人男性、首から上がトットムジカって感じの謎生物が2人並んで立っていた。手にはラケットを持っていた。
そしてそのまま、剣でも歌でもなくテニスでの勝負が始まった……。
な、何を言ってるのかわからないと思うが、私達も何が起こったのかわからなかった。
頭がどうにかなりそうだった。
新展開とか番外編とか4月1日とか、そんなチャチなもんじゃ断じてない。
もっと意味不明な原作ブレイクの片鱗を味わった……!
……いやホントに何だったのアレ?
ガチバトルするつもりで飛び込んだら、テニスの試合させられたんだけど。最初から最後まで何一つ意味わかんなかったんだけど。
まあでも、何か流されるままに私もウタちゃんもそのままテニスしちゃったけどさ。
そこそこ楽しんじゃったけどさ。
あと気のせいじゃなければ、トットムジカもなんか楽しそうだった気が……え、あいつ全てを滅ぼす『歌の魔王』なんだよね?
歌要素も魔王要素も何一つないまま、ただテニスして終わっちゃったよ今回の夢。何で!?
あ、いやゴメン、ただのテニスじゃなかったわ。
途中からテニヌになったから。
2ゲームやって1勝1敗になったあたりから空気が変わってきて……ただラケットでボール打ってるだけじゃ絶対出ない威力の球が飛んで来たり、炎や竜巻を纏ってたり、どう考えてもあり得ない軌道で飛んで来たりしてたし。
でもそれはトットムジカだけじゃなくて、私達もやろうと思えばできてさ。
直角に曲がるボールとか、着弾と同時に地割れが起こるボールとか、相手がどんな風に撃ち返しても自分のところに戻ってくるボールとか、色々好き放題やったわ。
そんな感じで5ゲームフルセットでやって、どうにか私とウタちゃん勝ったんだけど……そしたら目が覚めて……で、色々思い出して『何だったんだ今の』ってなったんだよね。
「「「……いや何それ」」」
だからわかんないんだってば。
事前に聞いてた情報と……なんなら、直前に寝た時に私とウタちゃんが味わった経験とすら全く違う変な展開が起こって……全然私も理解が及んでないんだよ。聞かれても推測すら説明できん。
…………ただ、しいて言うなら……
「……のう、母上。その、母上達が夢の中で繰り広げたという、テニスの皮をかぶった何かにしか見えない競技についてなのじゃが……母上の著作の中に、そんなのがなかったか?」
「あ、それあたしも思った! たしか、『テニスの貴公子様』……だっけ?」
「あー、あの、冒頭の注意書きに『この物語の登場人物がやっているのはテニスですがテニスではありません。現実のテニスと混同しないようにしましょう』とか書かれてるやつね……言われてみればそっくりじゃない? トットムジカってお母さんのファンだったのかな?」
「いやそれはないでしょお父さん……ずっと封印されてた、っていうか人間ですらないんだから」
「まあ、普通に考えて人間が読む本に興味を示すような存在ではないでしょうし……仮にそうだったとしても、それらを読む機会などないでしょう」
「……いや、あながちそうとも言い切れんかもしれん」
「「「え?」」」
余りにも予想外な言葉が聞こえて、聞いていた全員びっくりして、その発言者……ゴードンさんに視線を集中させる。
そのゴードンさんは、さっき一瞬、イリスの言葉に『お父さん?』って不思議そうな顔になってたものの、顎に手を当てて何やら思案しつつ……話を続ける。
「もちろん、トットムジカがそのままの意味で、スゥさんの本を読んだというわけではないだろう。だが、どういうわけかトットムジカの楽譜は今、スゥさんの体内にあり……ある種の『繋がり』ができてしまっている。ならば……」
「……その『繋がり』を介して、スゥさんが書いた本の内容を知った? 本を読んだんじゃなく、記憶とか経験から『読み取った』……みたいな感じ?」
「あくまで仮説になるがな……そしてこれもどういうわけかわからないが、その中の……何だ、テニスの物語に興味を持って……自分が支配する『ウタワールド』の中で再現したのだろう。そして、そのルールでスゥさんとウタを迎え撃った」
なるほど……推測に推測を重ねたような話だし、理由はさっぱりわからないけど、ファンタジー的にとらえて色々目をつぶれば……ありっちゃありそうな気もする。
それに……今のゴードンさんの言い方の中に、もう1つ気になるものもあった。
「その推察が正しいとすると……今回、トットムジカは明らかに私達を『迎え撃った』んだよね? それも、明確にルールがある『競技』というステージを用意して」
「……あ、そうじゃん。言われてみればそこも変だわ……トットムジカって、ただただ破壊と殺戮を繰り返す『魔王』なんでしょ? それが、関係が深いとはいえ特定の個人を指定して『迎え撃つ』形をとって、しかも戦闘じゃなくてテニスで……改めて言葉にしてみると、色々な意味で前情報と違ってきてるのね」
「従来の……それこそ、一昨日の夜に母上達が『ウタワールド』で遭遇した時と比べても、何か大きな変化が起こっている、ということでしょうか……まさかとは思いますが、母上の記憶の中にある『テニス』の物語を読んで感銘を受けて、戦いや破壊より優先してテニスがしたくなった……とか?」
んなアホな……ああいやでも、全然何もわからない以上、全く『ありえない』と言い切ることもできないのか……。
いやでも、それにしたって、国一つ滅ぼす力を持った『魔王』なんて存在がテニスが実は好きだなんて超展開……ねえ?
……それとも何? 私の本は魔王の心すら動かすの?
そうだったとしたら、それはそれで誇らしいけど……でもさすがに扱いに困るな……。
「……とりあえず、まだ暗いし寝る時間あるから、もっかい寝て……そしたら多分また呼ばれるだろうし、そこで何かわからないか調べてみるよ」
「どうやって?」
「……どうにかして」
意思疎通……できんのかなあのピエロと。
人間のそれらしい言葉とかは何も言ってこなくて、咆哮とか笑い声……その他色々よくわからない叫び声だけだった気がしたんだけど……うん、ああいうあたりはやっぱり、人間じゃなく怪物なんだな、って思ったし。
『グオオオオ!』とか『ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!』とか、『アツクナレヨォォ!!』とか……。
……一部なんかギリギリ人語っぽく聞こえる何かが混じってたような気もしたけど……。
まあでも、うん……やるだけやってみよう。
じゃあ、お休み!
――2時間後――
「(がばっ!)異議あり! ……はっ、夢?」
「おわぁっ、びっくりした!」
「……何じゃ母上……今度は裁判モノか?」
「スポーツですらないの……あ、ウタちゃんもおはよう。今回はどうだった?」
「法廷が……法廷がブロードウェイに……何アレ、裁判ってあんな機関銃みたいにトークバトルみたいな感じになる奴だっけ? あんま読まないジャンルだからわかんない……」
「ふぅ……スーツ姿に七三分けのトットムジカは強敵だった……」
「何なのコレ? ひょっとしてトットムジカ、まともに戦わないことでお母さん達の消耗を狙ってるとかそういう感じ?」
「いや、今回も母上の著作の1つをもじっているあたり、それ以外の意思を感じるな……案外、本当に母上の書いた物語が好きで、それを使って遊んでいるのか……?」
「…………(何も言葉が出てこないゴードン)」
……待って、マジでコレこの先どうなるの毎晩?