大文豪に私はなる!   作:破戒僧

247 / 306

なんか筆が進んだので今日も投稿します。

今回の話は全体的に捏造というか、強引な改変を含みます。
え、前回からそうだったって? HAHAHA!
……というわけで苦手な方はご注意ください。



第247話 むかしむかしの『歌』と『紙』

 

 

 

 

 

 いつの頃かもわからない、はるか昔のこと。

 

 とある海のとある島、とある国にあった、とある小さな村のお話。

 

 

 

 今のこの『大海賊時代』でこそ、『悪魔の実の能力者』は、強大な力を持つ者として恐れられていますが、かつての昔、とある時代ではそうではありませんでした。

 『悪魔の実』というものがまだよく知られていなかった時代。明らかに人のそれではない力を使う『能力者』は、その人そのものが『悪魔』であると言われ、追い立てられ、迫害されていた時期があったのです。

 もちろん、一部の時代、一部の地域の話。世界全体でそうだったわけではありませんが。

 

 そんな時代に生まれた、2人の『能力者』がおりました。

 

 1人は、体を紙に変えることができる少女でした。

 

 1人は、歌で人を夢の世界にいざなうことができる少女でした。

 

 2人は親友同士でした。差別と迫害の中でも、互いに励まし合って強く生きていました。

 

 紙の少女は色々な物語を書くのが好きでした。また、歌の少女のために、歌を作ってあげたり、楽譜を書いてあげたりもしていました。

 

 歌の少女は、歌うのがなにより好きでした。自分の歌で幸せになってくれる人の笑顔を見るのが大好きでした。もちろん、紙の少女もそんな彼女の大事なファンでした。

 

 しかしそんなある時、これ以上『悪魔』を野放しにしておいてはいけないと、村の人々の一部が暴走し、紙の少女を手にかけてしまいます。

 殴っても斬っても殺せないと知られていた紙の少女は、閉じ込められて家に火をつけられ、焼き殺されてしまいました。

 

 彼女と一緒に、彼女が今までつづってきた物語も、楽譜も、全て焼かれてしまいました。

 偶然その時、その家にいなかった歌の少女を残して。

 

 歌の少女は、それを知って、限りない怒りと絶望を覚えました。

 

 そんな時、心の奥底から、自然と湧き上がってきた歌がありました。

 少女は、それを口にしました。

 今までずっと、人々の幸せと笑顔のために歌い続けてきた少女は、生まれて初めて、哀しみと憎しみ、怒りと絶望に身を任せて歌いました。

 

 親友を奪われた悲しみ。

 奪った者達への怒り。

 自分達を受け入れてくれない世界に対する憎しみ。

 もうあの楽しかった時間は二度と帰ってこないという絶望。

 

 それらがこめられた歌は形を持ち、夢の中から抜け出して、現実の世界に現れました。

 後の世に『魔王』と呼ばれる、破壊と殺戮の権化……トットムジカはこうして生まれました。

 

 

 

 その村にとどまらず、魔王は国を滅ぼしました。

 そして、そのまま世界を滅ぼそうと動き始めた時……燃えてしまった『2人の家』から、何枚かの『紙』が舞うように現れ、飛び出し……魔王の中に吸い込まれました。

 

 すると、魔王はぴたりと動きを止め……姿を消しました。

 

 あとには、真新しい4枚の楽譜が残りました。

 

 歌は、音楽は、楽譜に沿ってつづられ、奏でられるもの。

 ゆえに、歌から生まれた魔王であるならば、それを封じるもの、コントロールする楔は、楽譜をおいてほかになし。

 わずかに残った『紙の少女』の思いが起こした奇跡だったのかもしれません。『歌の少女』の歌に……これ以上、人を傷つけてほしくないと思ったから。

 

 こうして、『ウタウタの実』の能力によって、少女の絶望から生まれた魔王は、『パサパサの実』の能力によって、少女の思いによって封じられたのでした。

 

 

 

 封印された場所は、『ウタワールド』の中。すなわち、『ウタウタの実』と、その能力者の存在そのものが、封印の箱。

 『ToTMusica』の歌は、その鍵。

 それを記した『楽譜』は、現実の世界とウタワールド、その両方で魔王を抑え、とどめておく錠あるいは鎖のようなもの。

 

 ゆえに、封印を解くだけならば、『ウタウタの実』の能力者がいれば事足りる。

 

 しかし本来、この封印には『パサパサの実』も関わっている。

 ゆえに魔王は。楽譜という『紙』を通して、『パサパサの実』の能力者に干渉することができ……その影響で限定的に増した力でもって、スゥとウタを『ウタワールド』に呼び寄せることができた。

 

 しかし同時に、スゥに干渉したことで、スゥの経験や記憶、意識といったものの一端に触れることになり……

 

 

 

 魔王はそこに、在りし日の『紙の少女』と同じ、紙につづった物語という希望を見た。

 

 

 

 気の遠くなるほどの長い間、絶望と憎悪と破壊衝動だけで動いてきた魔王。

 何を見ても、誰に何を言われても効く耳を持たず……というよりも、そういったものを聞いたり、感じたりするという機能自体が備わっていないに等しかった魔王。

 

 その魔王に、『パサパサの実』の力を、『楽譜』を通して……初めて、何かが届いて、響いた。

 

 結果……

 

 

 

 

 

 ……なんか、色々とバグった。

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

「……っていうことみたい」

 

「「「えー……」」」

 

 えー……これまでのあらすじ!

 

 なんか、2日目の夜以降、『ウタワールド』に引き込まれるのは同じなんだけど……シチュエーションが特殊というか独特なもんばっかりになってきた。

 それは、3日目、4日目と日をまたいでも変わらなかったし……それどころかトットムジカ、どんどんいろんなジャンルに手を出し始めた。

 

 なんかもう、VRゲームか何かの世界に呼ばれてる気分だよ。最初の方の緊張感どっかに行っちゃったよ。

 

 ええと、2日目に見た夢がテニヌとブロードウェイ裁判で……

 

 3日目が釣りゲームみたいな感じで、どっちが大物を釣れるかっていう……

 船の上でやってたからだと思うけど、マグロとかカジキがぽんぽんエンカウントしてきた。不覚にも楽しかった。

 

 4日目が料理対決。どこで覚えたのか、あの見てくれで中華の達人みたいに鉄鍋を振ってパラパラのチャーハン作り始めたのには度肝を抜かれた。

 まあ、お母さんとして娘達の胃袋を満足させる過程で鍛えた腕があったからなんとかなったが。

 

 5日目はようやく戦闘。覚悟決めてからだいぶ日をまたいでようやく戦闘。

 しかし、期待していたガチンコ対決じゃなく、なんか……艦隊戦シミュレーションみたいな感じで……何隻もの軍艦を命令して大砲撃って……絶妙に肩透かしくらった。

 

 いや、ここまで初日以外まともに戦いが起こってないんだけど……アレホントに破壊と殺戮の魔王なわけ!?

 

 ……って思ったので、一瞬のスキを突いて、夢の中でトットムジカに『天国への扉(ヘブンズ・ドアー)』使ったら……さっき述べた内容が読み取れたんです。

 人に歴史あり、だなあ……いや、人じゃないけどアイツ。

 

 今まで並べた『ウタワールド』の内容は全て、私が『海賊文豪』として、何らかの形で執筆した物語に準拠した世界観だった。

 どうやら、『楽譜』と『パサパサの実』の能力を通して私の内面とか記憶とかに触れた魔王が、私がつづった数々の物語に興味を持ったらしい。

 

 結果、破壊も殺戮もそっちのけでなんか、こう……どうしてこうなったの……

 

 いや、平和的で結構なのかもしんないけどもね? どうしてもその……『そっち行くの!?』的な違和感がぬぐえないというか……相当強引に展開作ったスピンオフを読んでるような感覚になって『これ同じ原作ですか?』『タイトルが同じだけだろ』『人気にあやかろうとして事故る例です』『誰がここまでやれと言った』的なことを考えちゃうというか……

 仮にこれが小説だったら賛否両論だと思います。

 

 ……無理やり真面目、ないしシリアスな形で関連付けるとすればよ?

 

 読ませてもらった記憶の中に、『紙の少女』はもともと、私と同じで物語を書くのが好きだったっていうものがあったっけな……鍵はそのへんか?

 

 魔王は元々、絶望と憎悪から生まれた存在。

 それを好んでいるというより、それ以外の感情を知らないから、それしかできない。

 

 けど、私の頭の中にあった物語の記憶には、必ずと言っていいくらい、幸せとか喜びの感情が付いて回ってる。私、基本ハッピーエンド好きだし。友情・努力・勝利、超好きだし。

 なんなら、そういう絶望とか憎悪とか、受け入れたり乗り越える方向の話、多いし。

 

 魔王としては、それ以外を知らないからそうしていただけで……自分が与えられる絶望や憎悪とは異なる何か……それも、かつての『紙の少女』が持っていたそれに近い何かを私から、そして、私の『物語』から感じた。

 だから、それを知るために……ちょっかいの出し方を変えた。

 私の頭の中にある物語を片っ端から再現して、それで戦ってみている。懸命に、自分にない何かを知ろうとしている。

 

 元をたどれば、その憎悪や絶望だって……間違いなく、『歌の少女』が『紙の少女』を大切に思っていたからこそのものなんだろうしね。

 その気持ちが……『全てを許せない』っていうゆがんだ形であれ、トットムジカの中に残っているのなら……『知りたい』『理解したい』と思っても不思議じゃない気がする。

 

(……トットムジカはつまり、悪意を持った魔王であるというより……悪意()()()()。悪意以外の感情を、人との接し方を教えてもらえなかったに等しい……ってこと……)

 

 今までは、『ウタウタの実』の能力だけ……封印を解く鍵だけだったから、今ある感情のみに従って暴れることしかできなかった。

 

 けど今回は違う。唯一トットムジカに干渉できる、言葉を届けられる『パサパサの実』の能力がここにあるから……聞く耳持()なかったトットムジカに、何かを教えるっていう選択肢が取れる……かもしれない。今、私達は、思いがけずそんな状況に立っている。

 

 だったら、私達がやるべきことは……

 

「……ウタちゃん」

 

「?」

 

「予定変更。このままトットムジカの遊びに、気が済むまで付き合ってあげる方向で行くよ。多分……時間と手間はかかるけど、それが一番確実に……現状を変えられる方法だと思う」

 

「え……えぇえっ!?」

 

 要するに、子供と同じだ。

 知らないからできない。

 教えられていないことを要求されても、それが何なのかわからないならできるわけがない。

 

 だったら教えればいい。

 今なら、私達の声は、気持ちは届くんだから。

 『楽譜』を通して、トットムジカが聞く耳を持っている、持てている、今なら。

 

 叱るにしても罰するにしても、まずは『教えてから』だ。

 

 悪意から生まれ、悪意を向けられ続け、悪意を向けることしかできなかった魔王。

 あの、純粋な悪意だけの目に……もっと違う何かがともったところを……見たくなった。

 

 何より……

 

 

 

(私はね……やっぱ、ハッピーエンドが好きなんだよ)

 

 

 

 知らないがゆえに、全てを憎んで暴れることしかできず、苦しむことすらできなかった悪ガキが……ようやく物心ついて、今の自分にない何かを知ろうとしてるんだ。

 色々なものに目を向けようと、手を伸ばそうとしてるんだ。

 

 だったらその手、取ってやろうじゃないか。

 

 元をたどれば私とウタちゃんの安心と安眠のためだった。いや、別にそれは今も変わらない。

 変わらない、けど……そこにプラスだ。この凝り固まったどうしようもない、ウン百年モノ(推定)の悲劇も……一緒にどうにかしてやろうじゃないか。

 

 うちの娘達は、皆聞き分けがよくて手のかからない子達ばかりだったけど、たまにはこういう悪ガキの相手するのも悪くないね!

 

「あーあ、なんか別方向にやる気になってるね、お母さん」

 

「やっぱり母ちゃんってこういうとこあるよな。あたしらを助けてくれた時もそうだったけど……困ってる子供を放っておけないっていうか、無自覚に世話好きっていうか」

 

「ああ、わかる気がするのう……こうなってしまったら止まらんぞ母上は。わしら全員、この母上に救われとるからな、よく知っとるんじゃ」

 

「でしたら付き合うしかありませんね……仕方がない、微力を尽くすとしましょう」

 

「そうね、こういう平和的というか、平和につながる振り回され方なら、私達としても望むところだし」

 

 娘達もまあ、好き放題言ってくれて……けど、どうやら協力してくれるようだ。

 

 よし決まり! きちんとした躾と教育の時間だ……やってやろうじゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ところでイリス、ちょっと相談があるんだけど」

 

「? 何、お父さん?」

 

「もしも、もしもだよ? ウタワールドでトットムジカを『ホーミーズ』にできて、美少女擬人化したら……存在自体は数百年続いてるけど、精神が未成熟でまだまだ知識も感情も足りてない存在だから……合法ロリないしロリババア的な子が誕生する可能性ってどのくらいあると思う?」

 

「…………っっ!? な、なんて発想力……さすがはお父さん……っ!」

 

 

 

 ……おっと、こっちにも十分やばいこと考える悪ガキ親子いたわ。要注意だわ。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。