大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第252話 ここショ〇カーだっけ?

 

 

 ある日。

 ママの研究室にて。

 

「「「あらいらっしゃいスゥちゃああああん! ごめんなさいねええええ、今ちょっと今手が離せなくてええええ、すぐ片付けるからそのへんで適当に待っててえええええ?」」」

 

「……相変わらずSAN値が削れる光景だ……」

 

 私の目の前には、かなり広々とした研究室の中を縦横無尽に走り回る……()()()()ママの姿が。

 

 ちょっと前にちらっと言ったと思うけど、ママは『シロアリ』の能力と『カビ』の能力の合わせ技で、自分の分身(クローン)を作り出して働かせることができる。

 なので、研究時に必要な人手の確保のため、最近しょっちゅうこういう光景を見ることができるのだ。

 

 『組み合わせて』っていうのがちょっと理解が難しい所なんだけど……これも前言ったかな?

 シロアリの女王は、自分と同じ遺伝情報と生体機能を持つ『クローン』を、卵を介して生むことができる。そういう生態だから。

 そして、カビは自ら根を生やして増殖したり、胞子を飛ばして落ちたところに根付かせたりして増殖することができる。

 この2つの増殖メカニズムを組み合わせて、『カビが広がって増えるように』『自分のクローンを生み出して増やす』という感じだそうだ。

 複数の悪魔の実を組み合わせるなんてことができると、よりいっそうわけわかんないことが可能になるんだな……。

 

 まあ、クローンママ増殖システムのことは置いといて、今日はママから報告と相談があるって話だからこうしてお邪魔したんだけど……何だろう?

 

 とか思っていると、ママの1人がとてとてと(見た目だけは)かわいく走ってこちらにやってきた。私の向かいのソファにちょこんと座る。

 

「用事っていうのは単純な話でねえええええ? 今やってる研究がひと段落したからその報告と、新しい研究というか実験に着手したいから、許可もらいたいのおおおおお! あとそれから、彼の治療と改造が終わったからそれも報告ねえええええ!」

 

 ふむ。研究絡みの報告と、次のやつの許可はまあいいとして……『治療と改造』ってことは……

 

「もしかして……アブサロム?」

 

「そうよおおおおお! 術後の経過も順調だから、数日後には退院できるわあああああ!」

 

 さて、どういうことかと申しますと。

 

 うちこと『金獅子海賊団』で面倒見てやってる間、モリアをはじめとした『スリラーバーク』の皆さんには、無駄飯ぐらいを置いておくことはできませんってことで、一応は『傘下』の海賊団として色々やってもらってる……ってのは前に話したと思う。

 

 ホグバックはその医療技術を生かして研究室でママの手伝い。

 ペローナは修行島こと『ルーボッツ島』で、本人の修行も兼ねて色々雑用。

 モリアは知らない。パパが連れてった。たぶんなんかろくでもないこと企んでる。

 

 そしてアブサロムは、『スケスケの実』の能力を生かして諜報やら何やらを任せてる。

 最近では、同じく隠密行動を得意としている……というか、思いっきり元・政府の諜報部員であるネロとコンビを組んで動くことが多いみたいで、割と活躍していて、新参ながら海賊団内部での評価も高かった。

 

 しかし、そんなアブサロムが先日……瀕死の重傷を負って帰ってきたのである。

 

 諜報任務に失敗したから……ではなく、それとは別にトラブルに巻き込まれてのこと。

 というか、ほぼほぼ一方的に襲われた感じだったんだけどね。

 

 結論から言ってしまうと、やったのは『黒ひげ海賊団』……の、傘下の海賊団だった。

 別件で行動していたネロとアブサロムがそいつらに遭遇し、襲撃された。アブサロムの持つ『スケスケの実』の能力は、シンプルながら強力だから、それを欲しがった……あるいは、ティーチにもっていけば褒められて評価が上がると考えたんだろう。

 その戦いで、そこそこ強い上に数がいたために、戦って制することも難しく、透明になっても逃げきれず……重傷を負ってしまった。

 

 なお、その傘下の海賊団については……その後、一人も残さずきれいさっぱり消してある。

 

 これまた偶然なんだけど……その時丁度、別件で外出して、ある場所を訪れていた私とママが、その近くを通りがかってたんだよ。

 その時、秘匿回線電伝虫からの緊急連絡を受けて、2人を助けに行った。

 

 で、さくっと2人を回収した後……その黒ひげ傘下の船については、さっき言った通り、きちんと『消した』。

 悪いけど、生かして返すわけにはいかないので。

 

 無いとは思うけど、万が一、私が2人を助けたことをティーチに知られて、その際に『配下の船と交戦した』とかなんとか因縁つけられて抗争、ないしは戦争みたいなことになったら困るし……あまり大事になって、アブサロム、すなわちモリア一同の所在がばれるのもまずい。

 モリア、政府に消されそうになってた感じだからね。『七武海』である私が今匿ってるって知られると、面倒かもだ。

 

 いや、最悪モリアはいい。『死んでたと思われたけど生きてた。でも七武海じゃなくなったからおたくらもう関係ないでしょ?』って強弁すればどうにか通るし。

 その際に色々腹を探られて、ボニーやゾロといった『保護していることが知られるとまずい』面々の存在が知られてしまうのが一番まずい。

 

 なので、ママに『オペオペの実』の能力で相手の船全体を『スキャン』してもらい、電伝虫などの通信設備や、中身がわからない書類系の記録まで全てを能力で回収、というか没収。

 その後、『カビカビの実』の能力で、どこぞの『よ~~~しよしよしよしよしよし』の人のような殺人カビを散布し、最後に私が船底に穴を開けた。

 海の中に沈みながら、カビに食い尽くされて船も人も全てが朽ちて崩れていく光景は、まず間違いなく1人の生き残りもいないであろうことがよくわかる光景だった。

 

 そして、回収した2人について……さっき言った通り、アブサロムが瀕死の重傷。

 ネロの方は割と無事で動くにも戦うにも問題なかった。うちで修行して、新世界クラスの戦闘能力をきちんと身に着けてたからね。

 

 そのネロが……そこそこの期間一緒に組んで仕事をして、多少なり情が移ってたのかな。

 床に手をついて頭を下げてまで、『頼む、相棒を助けてやってくれ、お嬢!』って懇願してきたんだよね。

 

 そんなことしなくても助けるつもりではあったんだけど、そこまで必死になられちゃ全力で答えなきゃならないなってことで、すぐさまメルヴィユに帰って緊急手術と相成ったわけだ。

 

 ……ここまでで終わってればよかったんだけど、そこからちょっとね。

 

 ひとまず治療して一命をとりとめたアブサロムだったが、今回の件で実力不足を痛感したと。

 自分のためにそこまでしてくれた相棒のためにも、自分ももっと強くならなきゃいけないと。

 

 もちろん修行も力を入れてするつもりだとのことだが、それと同時に……自分の体をさらに強力に改造してほしい、という申し出を出してきた。

 

 アブサロムは今現在すでに、ホグバックによって全身を改造され、色々な動物の筋力や耐久力を凝縮して搭載したボディを持っている。だから、体にメスを入れて改造すること自体には抵抗感はないみたいなのだ。

 そしてホグバックを通して、ママが……というか、『金獅子海賊団』の研究部門そのものが、人体に限らず生物の改造・強化の分野に明るいことも知っていた。

 だから、自分が実験台になるから、もっと強くしてくれ、という申し出だったわけだ。

 

 それをママが承諾して――私とパパには事後承諾で――治療と並行して改造を行っていた。元々の主治医?であるホグバックと共同で。

 そして、それがつい先日完了したとのこと。

 

 どんな改造を施したのかについては、簡単にまとめた仕様書を見せてもらったんだけど……

 

「コレ、よくアブサロムも承諾したもんだね……ほぼ全身にメス入れてるじゃん。移植手術だけじゃなく、ガッツリ兵器類も埋め込んで……パシフィスタ以上だよこれ」

 

 筋肉密度やら性質やらをいじって、腕力も頑丈さもより上の仕上がりにして……フィジカルだけでも前よりかなりレベルアップしている。

 筋肉だけじゃなく、骨も。骨格の一部に強化措置を施して超合金の頑丈さに。

 皮膚の下にダイラタンシー流体の性質を持つ素材を埋め込んで防御力もアップ。

 

 それに加えて、腕と口にはパシフィスタやセラフィム御用達のレーザー発射機構を搭載。原作でつかってたバズーカ砲ももういらないな。

 

 口……というか牙の部分には、鮫の構造を応用した機構を組み込み、たとえ牙が折れても、さらに頑丈な牙に何度でも生え変わるようにした。原作アーロンみたいに。

 

 さらに、全身各所に『貝』から作った兵装を他にもいくつも搭載。可燃性の毒ガスを吐いたり、不意打ちで『斬撃』を出して攻撃したりできるようになった。

 

 とどめに、生命力そのものの強化と神経伝達の強化のために『プラーガ』の組織を組み込んだ。このおかげで、多少の傷なら短時間で自然治癒してしまえる。

 

「途中でホグバックが『あの…もうそれくらいで…』って涙目で言ってた気がするんだけど、本人の希望だから。って言って押し通したわあああああ!」

 

 ……原作の中でも結構なゲス度合いだった記憶があるんだけどな、ホグバック……その彼が、仲間のためとはいえ、止めるレベルか……。

 もちろん、今言った機構全部使いこなせるようになればだけど……これはアブサロム、相当化けるかもしれないね。

 

「さすがに『血統因子』に手を入れるのは無理だったわあああああ! それをするにはスゥちゃんみたいに、生まれる前に手を加えるか、最低でもまだ小さい子供のうちに色々する必要があるみたいねえええええ! ある程度以上成長しきった肉体を『血統因子』ごといじるのは負担が大きすぎるみたいいいいい!」

 

 とのこと。そういうもんなのか。

 原作でシーザーが、周辺国から子供を攫って『巨大化実験』をやってたのもそれが理由かな。

 

「それとおおおお、大丈夫だと思いたいけど、万が一彼がこちらを裏切ったりした時にも備えてあるわあああああ!」

 

「え、何? 自爆装置でも埋め込んだの?」

 

「そんなの必要ないわよおおおおお! 彼の体には、意識喪失や知能低下が起こらない改良型とはいえ、『プラーガ』が埋め込んであるんだものおおおおお! である以上、『支配種プラーガ』の力を宿す私とスゥちゃんの命令には逆らえないわあああああ!」

 

 ……ごめん待って? 今何て言った?

 

 いや、ママが『支配種』を持ってるのはわかるよ。元々聞いてて知ってるから。

 けど、私……え? いや……そんなもん体に入れた覚えないよ?

 

「……まさかとは思うけど、黙って私に卵INしたりしてないよね、ママ?」

 

「そんなことするわけないじゃなああああい! というか、必要ないしいいいいい!」

 

「? どういうこと?」

 

「スゥちゃんあなた、自分が元々改造人間だってこと忘れてないいいいい? あなたをお腹の中で改造する段階で、神経系統の強化のために『支配種プラーガ』と同一の体構造を組み込んであるのよおおおおお!」

 

「そうだったの!?」

 

「そうよおおおおお! だからあなたは、改造人間とは言えきちんと人間だし、体内にプラーガが入っているわけでもない、元々の身体機能としてプラーガを支配する力を持ってるのおおおおお! それに、他にもプラーガ由来の力をあなたは既に体感してるのよおおおおお?」

 

「え、何?」

 

「インペルダウンで色々と拷問されたでしょおおおおお? その時に、だんだん痛みや疲労そのものに耐性がついていったんじゃないかしらあああああ?」

 

 ……あ、うん。あった。めっちゃあった。よく覚えてる。

 

 何度も苦しい拷問が繰り返されて、最初のうちは苦痛に耐えられなくて泣いちゃったり、牢屋に戻されてもしばらく動けずにいる、みたいなことの繰り返しだったんだけど……だんだんと、痛みも疲労も空腹も気にならない、あるいは我慢できるようになっていった。

 腫れが引いたり、傷の治りも早くなっていった。

 

「治癒能力の向上は、そもそもの『超人』としてのスペックの覚醒によるものだから違うけどおおおお、苦痛や疲労感に対する耐性はプラーガの力による、劣悪な環境への耐性や、体質の最適化によるものねえええええ! 役に立ったでしょおおおおお?」

 

 …………悔しいけど、あの時は、うん……アレにめっちゃ助けられたわ。

 おかげでそこそこの期間の監獄生活にも耐えられたし……心が壊れたり歪んだりしないで済んだもの。

 

 それが寄生虫由来の力だって知って、ちょっと今微妙な気分だけど……まあ、感謝はしよう。

 ……できれば事前に知っておきたかったけど。

 

「にしてもコレ……ママだからここまでするにしても驚かないけどさ、思いっきりベガパンクとの面会で技術交換した内容も使ってるでしょ?」

 

「ええ、もちろんよおおおおお! さすがは世界最高の科学者、目から鱗の連続で、短かったけどすごく有意義な時間を過ごせたわあああああ! 面会をセッティングしてくれたスゥちゃんにはホントに感謝してるわよおおおおお! 私の方で開示した内容も驚いて喜んでたしいいいいい!」

 

「許可取るのけっこう大変だったんだけどね、まあ、喜んでもらえたならよかったよ」

 

 前にちらっと言ったかもしれないが……私は、かの世界最高の頭脳の持ち主『Dr.ベガパンク』に既に一度会っている。

 そしてその時、付き添いないしアドバイザーとしてママも連れて行った。

 

 しかし、相手側……『海軍科学班』の本拠地である、『エッグヘッド』とやらに行ったわけではない。同じように政府所有ではあるけど、また別な島で、取材と称して『面会』するにとどまった。

 

 理由は簡単。『エッグヘッド』とやらは、政府にとっての最重要施設の1つであり、いかに『王下七武海』だろうと簡単には入れる場所じゃないから。原作のインペルダウンと同じように。

 

 一応ダメ元で取材申し込んでみたら、『海楼石の手錠で能力を封じてなら許可する』って話だったけど……『じゃあいいです』って言って断った。

 今『七武海』で立場がある身とはいえ、基本的に私、政府嫌いだし信用してないので、そんなのの御膝元で無力化されるのはごめんだ。

 

 ただ本来は、無力化しようが何だろうが海賊に許可が下りるような場所じゃなかったらしい。

 なのに何で『条件付きOK』なんて返答が来たのかと言えば……そのエッグヘッドの中心人物である『Dr.ベガパンク』その人が、ちょうど私との面会を望んでいたからだそう。

 理由は、『NEO海軍』の一件の際に目撃された『セラフィム』について詳しく聞くため。自分達が今まさに研究中(らしい)のものが、突然別場所に現れてしかも『七武海』と『元海軍大将』と交戦しましたなんて、そりゃ気になるだろうしね。

 

 私としても、その辺は興味というか……気にはなってた。

 今の時点でベガパンクが『セラフィム』をどの程度形にしてるのかとか、どんな技術を使ってて、どんな信条で研究をしてるのかとか……そのへんもできれば確認したかったし。

 

 結果、『エッグヘッド』でも『メルヴィユ』でもない場所を会場にした『面会』になったわけだ。

 

 なお、その際に有識者としてママにも協力願ったことについては……目的を考えれば、人選は間違っていなかったとは思っているものの……いやでもやっぱ『混ぜるな危険』だったなとは思っている。

 あれ以来ママの研究がより一層加速してるからね。

 

 ……私の創作意欲も加速してるけどね。

 いや仕方ないじゃん、あんなもん見せられたらさ……仕方ないじゃん。

 だからこの件では私、ママをあんまり叱れません。

 

 本拠地であるエッグヘッドには行けなかったけど……こちらの気を引くためなのか何なのか、色々な発明品を持ってきて見せてくれたんだよ、ベガパンク『達』が。

 リアルビームサーベルとか、携帯型自動調理マシンとか(据え置き型とかもあるってこと?)……なんとかシューズっていう、軽くて履き心地いい上に空飛べる靴とかもあったな。

 その他色々、フィクション顔負けのラインナップで……いやあ、楽しかった。

 

 割と真面目な理由で面会申し込んだの忘れてはしゃいじゃったよ。

 

 なお、その際にポーズとして、ママにやってもらった技術交流ないし提供をやってもらったんだが、それは『貝』をはじめとした、比較的マシというか平和な分野のみに絞っている。

 『プラーガ』や『カドゥ』は論外として、その他いろいろな改造系の技術についても、表に出すわけにはいかないしね。

 

 その分、向こうからもそこまで踏み込んだ情報開示はなかったけど……ママ曰く、手に入った情報、目についたものを組み合わせて分析するだけでも色々わかったそうだ。

 

 その結果、証拠がないから確定的ではないものの、ママの予想としては……やはり近いうちに、この世界でも『セラフィム』はお披露目される可能性が高いと。

 それにつながる技術があちこちに既にあって、それら個々の開発時期とかから考えると……その集合体であるセラフィムの開発も、もう既に佳境と見ていいとのことだ。

 

 そうなると……原作で言えば、『新世界編』が始まってしばらくした頃あたりに、実践投入されて猛威を振るい始める的な感じだったのかな……。

 おそらく、私が最後に見た覚えのある、ドレスローザ編以降に。

 

 ……そうなるとちょっと気になってるのが……

 

「ねえママ、私のセラフィムって……実際のとこ、作られると思う?」

 

「スゥちゃんの、っていうと……『血統因子』を使って作った、スゥちゃんのクローンってことおおおおお?」

 

「うん。それに加えて……『GB(グリーンブラッド)』を使った『パサパサの実』の能力再現も。こないだの一件で『GB』で再現されてたの、どれも超人系の能力だったし……となると、同じく超人系の私の能力も再現できるのかな、って」

 

 その問いかけに、ママはしばし考えて、

 

「まあ、作るだけなら可能なんじゃないかしらあああああ? 『血統因子』の情報があれば、クローンは割と簡単に作れるしいいいい、予算や手間はかかるけど『GB』も同様ねえええええ! 特に『GB』は、もうすぐ私の研究室でも、類似品でよければ再現に成功しそうよおおおおお!」

 

 あくまでママ達のレベルからすれば『簡単』なんだろうな、とは思いつつ。

 

 しかしママ、『でも』と続ける。

 

「スゥちゃんのクローンにスゥちゃんの能力を持たせて……つまり『パサパサの実』の能力を持った『セラフィム』を作ったとして、それがスゥちゃんと同じように戦える可能性は0だと思うわあああああ!」

 

「? それはまた、何で? 剣術とか能力の修行してないからとか?」

 

「それももちろんあるけど、一番は中身よおおおおお! スゥちゃんがあれだけ自由自在に『紙』を操っていろいろできるのは、ひとえにスゥちゃん自身の世界最高峰の想像力あってのことだものおおおおお! もし中身まで完璧にトレースしてしまえるなら別でしょうけど、スゥちゃんが35年間の人生で、世界中を自分の目で、足で見て回って培ってきた力を、試験管の中で数年かそこら育てたくらいで持てるものじゃないわあああああ! 知識と経験は別なのよおおおおお!」

 

 ……それを聞いて、なんか……すごく嬉しくなってしまった。

 ママからしたら、ただ単に事実を言っただけなのかもしれないけど、字面からさあ……私の作家としてのキャリアを『誰にもまねできないものだ』ってほめられた感じがしてさあ……うん。気分がいいです。

 

「ところでスゥちゃああああん、なんかいつの間にか脱線しちゃったけど、今日来てもらった私の用事の続きに移ってもいいかしらあああああ?」

 

「あ、うん、そうだね。ごめんねママ。ええと……アブサロムに関する報告はもう終わったからいいとして……研究に関する報告と、新しい研究の許可だっけ?」

 

「研究に関する報告の方も、今の流れでほぼほぼ終わったわねえええええ! 知らせたかったの、『GB』の研究がもう少しでひと段落しそうだ、っていう内容だったからあああああ!」

 

 あ、そうだったんだ。偶然。

 

 で、もうちょっと詳しく聞いてみると、類似した技術による人工的な『超人系』の再現という点については、『血液』に加えて、とはまた違ったアプローチでもできる見込みだとのこと。

 そのへんの詳細はまだ今度、研究内容がきちんとまとまってから、らしい。

 

「それと最後の『許可』についてだけど……これはむしろ親分さんに相談したかったのよねえええええ! 多分スゥちゃんじゃなくて親分さんの領分だからあああああ!」

 

「具体的に何?」

 

「今回のアブサロム君への改造手術で色々試して、本格的に先が見えてきた『改造人間』の技術についてなのよおおおおお! スゥちゃん、傘下の海賊達の中に、『自分もパシフィスタみたいに改造してほしい』って言ってる人達がいることって知ってるかしらあああああ?」

 

「え、そうなの? 初耳。物好きがいるもんだなあ……いや、あるいは……楽して強くなりたいと思ってるとか?」

 

「どっちもいそうねえええええ! 加えて、怪我とか古傷とか、何かの理由で満足に体が動かなくなって、それでも戦いたいっていう海賊もいるのおおおおお! そういうのはむしろスゥちゃんが生まれる前から結構いたわねえええええ! で、今回の件でそのへんの、汎用的に使えそうな改造技術がある程度めどが立ったから、もし本気で希望するなら受けられる体制が整ったけどどうしましょう?って親分さんに聞くつもりだったのよおおおおお! やるならやるで、どの程度見た目が変容することを容認できるかとか、色々確認もいるしねえええええ!」

 

「ショ〇カーみたいなこと言ってる……」

 

 ……さすがにそれだと、私の一存では許可出せないな……パパが復活するのを待とう。

 そんでその相談の時には、ママにはクローンはきちんと消しておくか、別室とかに待機させておいてもらわなきゃだな。でないとまたパパ倒れちゃうよ。

 

「それと、もう1つあってねえええええ! この間の『エンドポイント』破壊未遂の一件で、廃棄されたセラフィムを回収したでしょおおおおお? それについてなのおおおおお!」

 

「ああ……アリス達が回収してきたやつ? GBとか搭載されてて、研究材料にするって言ってた」

 

 未来技術の宝庫だからって狂喜乱舞してたね、ママ。

 

 まあ、鹵獲品だしそれは構わないけど……見た目が見た目だから、扱いには細心の注意を払うようにとは言っておいたっけ。

 クローンとはいえ、ボニーとかがそれを見たら……いい気分にはならないだろうし。

 

 まあ、ボニーがこの研究室に、というかこの島に来ることなんてまずないし、そもそも許可出してないから大丈夫だとは思うけどさ。

 

 ……と思ったら、

 

「そっちじゃなくて、『改造前の2体』の方よおおおおお! ほら、『S-アイビス』とかいうのが、エッグヘッドから奪った後に、おそらく不良品だとみなしてそのまま捨てたと思われる、近くの海に培養装置ごと雑に沈められてた奴ううううう!」

 

 ……ああ、そっちか。

 そういや、そんなのも見つけて回収したっけな……配下の魚人部隊に頼んで。ママ、そっちの研究も進めてたんだった。

 

 『ピリオ島』近海での戦いに投入された、くま型のやつ4体を含めた、『アイビス』以外のセラフィムは……どうやら、急ごしらえで改造された補充戦力だったらしい、というのが、回収したものを分析したママの見立てである。

 おそらくは、エッグヘッドから試作品ないし失敗作の廃棄品を盗んで、戦えるように改造したんだろう、と。

 

 そしてその際……おそらくは盗めそうなものを手あたり次第に盗んで、その中から使えそうなものを選んだのが、あのゼロワンからゼロフォーの4体だった。

 そして、改造しても、一時だけ持てばいいというような扱いでも『使えない』と判断されたものは、そのまま捨てられた。

 

 それを見つけて回収したのだ。ママが『エッグヘッドからここに来るとしたら、最短ルートはこれで、その途中で改造その他を行うなら場所はここが一番……』みたいに分析して。

 その近くの海を探したら、ビンゴ。

 

 で、その廃棄セラフィム達は、培養装置ごと沈められていたことが逆に幸いして、戦闘後に鹵獲された4体よりも状態がよかったらしい。『セラフィム』としてのそもそもの完成度はともかく。

 とりあえずそれらを回収して保管しておいてる、って話は聞いてたけど……

 

「密閉されていた上で培養液で満たされていたから、状態はホントによくて、今にも動き出しそうに見えるくらいだったわねえええええ!」

 

「……ひょっとして、そのまま蘇生できたりするの?」

 

「いや、それはさすがに無理ねえええええ! 保存されてたとはいえ、生命維持装置からは外されてしまってたからだと思うけど、内側は多少劣化してた上、そもそも『欠陥品』だったみたいで、まともな生命活動はどの道期待できないっぽかったものおおおおお! ただ、それならそれで使い道はあると思ってるわあああああ!」

 

「具体的には?」

 

「これはまだ実験中、というか検証中のことなんだけど……機能停止した『パシフィスタ』ないし『セラフィム』って、何に分類されると思ううううう?」

 

「? 何、って?」

 

「兵器とはいえ生きていたわけだから、止まった後は『死体』かしらあああああ? それとも、改造されて兵器だらけだから『壊れた兵器』かしらあああああ? 人間扱いになるのかしら、ならないのかしらあああああ? それによって、使い道の候補が変わってくると思わなああああい?」

 

 それを聞いた私は、少し考えて……ため息をひとつ。

 

(相変わらずすごいこと考えるな……)

 

「仮に『死体』扱いなら、モリアの能力で『ゾンビ』にできる。『壊れた兵器』扱いなら、イリスの能力で『ホーミーズ』にできるし、あるいは『TABOO』を使う手もあるね。人間扱いされる場合とされない場合は……これも『ゾンビ』か『ホーミーズ』か『TABOO』を分ける要素か」

 

「『TABOO』に関しては、もう既にシズちゃんっていう前例があるから、期待大ねえええええ!」

 

 メイド隊『プレアデス』の1人、シズは……Dr.インディゴが開発した人型兵器を『TABOO』で能力者化したことによって誕生した。

 ゆえに、ルプーやナーベと違い、銃撃やスラスターによる飛行など、確実に生物ではないと言えるような特徴を持っている。

 

 元々は、メルヴィユの動物達をさらに強化するために、『パシフィスタ』のように体に埋め込んで改造する兵器の研究をしていたことによる副産物らしい。

 『TABOO』によって擬人化させることで、動力や制御する頭脳の心配をしなくてよくなったため、ただただ兵器を多く搭載した状態で能力者に変え、それによって『シズ』は誕生した……というバックグラウンドがあった。

 

 そしてママはそれを、今度は『セラフィム』を使ってやろうとしてるわけだ。

 結果的にどういう『活かし方』になるかはわからないけど……どれになったとしてもろくでもない何かが誕生しちゃうんだろうなあ。

 

 

 

 

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