プロットようやく直しました……けどもう2ヶ月くらいでまた単行本(電子)出るんだよなあ……怖ひ。
まだ本格再開はもうちょっと先ですが、とりあえず更新します。
一昨日の地上波初放送の『RED』見て執筆意欲が再燃してきたのですかさず書きました。
後編もなるべくすぐ書くつもりです。
どうぞ。
ある日のメルヴィユ。
「……何してんだおめー?」
用があってスゥの私室を訪れたシキとインディゴは、そこで……執務机に突っ伏してぐでーっと脱力しているスゥの姿を目にしていた。
執筆やら仕事で疲れているという感じではない。珍しく……何かに悩んでいるというか、落ち込んでいるような雰囲気だった。
そばにいて控えている側近2人……ビューティとブルーメも、何やら苦笑している。
「あ、パパ、お疲れ……ちょっとね、ひとりぼっちの寂しさに打ちひしがれてたとこ」
「いや、ひとりぼっちってお前、あたい達思いっきり一緒にいるんだけど?」
「揚げ足とっても仕方ないのですよ、ビューティ。それはそうとお疲れ様なのです、大親分さん。今日スゥ見ての通りなので、お仕事の話でしたら……すいませんがそのままお願いするのですよ。一応話聞くくらいはできるでしょうし」
「……まあ、いいけどよ。別に礼儀作法で小うるさく言うような間柄でもねえし……けどその前に一応聞きてえんだが、何かあったのかコレ?」
「寂しいとかおっしゃってましたが……そういえば、スズお嬢達がいませんね? というか、ここに来るまでに一人も会いませんでした」
「お、Dr.インディゴ、鋭い。いや、まさにその……スゥの娘達が原因でちょっとな。なんかのけ者にされちまって落ち込んでるんだわ」
「のけ者? あいつらが、スゥを?」
「そういう言い方すると悪く聞こえるのですが……要するに、スゥに内緒でなんか企んでるみたいなのですよ。いや、別に悪いことをじゃなくて、せいぜいイタズラ程度のものだと思うのですが」
「娘5人全員関わってるっぽいのに自分1人それに混ぜてもらえなくて、『母ちゃんはダメ!』って秘密にされてのけ者にされて落ち込んでるのが今のコレっす」
「あー……そういうことな」
納得した様子のシキとインディゴ。
普段からこれでもかというくらいにべったりでいつも一緒、『反抗期? 何それ食えんの?』とでも言わんばかりに良好な親子仲を築いている6人だが、それでも全てを共有したり打ち明けたりするほどではないらしい。あるいは、時期が来てそうなったのかもしれないが。
それでも、5人同時にそうなったというのは……しかも、未来から来た2人や、別な意味でもスゥのことが大好きなアリスまでもがそうなっているのを考えると、ブルーメの言う通り、全員で結託して何かを企んでいるというのが有力ではあるだろう。
それに、何を企んでいるのか……というのも、実のところ予想はついた。
(もうすぐお嬢の誕生日ですからね……そのプレゼントでも用意しているのでしょう)
(ああ、もうそんな時期だっけか。……相変わらず『
(季節感とかあってないようなものですからね)
島によって、あるいは海によって四季ごと気候がバラバラな『偉大なる航路』では、暦、ないし日付自体はあるものの、それに応じた季節感というようなものは皆無であり、例えば『熱くなってきたな、もう夏だね』というような感覚とは無縁である。島を渡れば、時期的に夏だろうが冬だろうががらっと気候が変わる。
そのため、今が何月何日か、という
スゥも、普段割と忙しく、『〆切まで×日』『取材旅行まで〇日』といった点くらいしか普段気にしないため、自分の誕生日など思いつきもしなかったし、そもそも気にしてもいない。
本人曰く、『30も過ぎたら1歳年取るだけの日とか別に嬉しくもないなった』とのこと。
まあ、そういうことならばれずに準備を進められるのだろうし、黙っておくか、とシキとインディゴがアイコンタクト。
見ると、ビューティとブルーメも気づいてはいるようだ。そういう目をしていた。
おほん、と咳ばらいを一つし、
「まー気にすんなって、スゥ。別に嫌われたわけじゃねえんだし……ちょっと親から離れて色々やってみたくなっただけだって。年頃のガキにゃよくあることだよ」
「そーかなあ……私が何か構いすぎてうざかったとかそういうアレじゃないよね?」
「ないない、あいつら全員お前のこと大好きだし。……というか特にアリスの奴ならむしろそういうのバッチこいだろ。風呂場まで突撃して来るんだぞ、もう16だってのにだぞ。……まあスゥだけじゃなくてあたいとかブルーメの風呂にも時々乱入して来るけどさあのエロガキ」
「むしろ別な意味で心配になるくらいスゥのこと大好きすぎますよね……イリスとスノウっていう『実例』がすでにあるから余計に……」
「義理の母娘の貞操観念はともかくとしてだ。心配しなくてもきちんと元通り戻ってくるさ、ただちょっとそういう時期だってだけだ。子供ってのは急にというか、気が付くと大人になってるもんさ。その過程でちょっと複雑な時期があるんだよ」
「よく言われる『お父さんの洗濯物と一緒に洗わないで!』とかいうアレですね」
「全員娘だからそういうのないんじゃね?」
「なおこの前アリスが『むしろ洗わなくていいからお母さんの洗濯物が欲しい』と言っていた件」
「方向性が違う」
だんだんグダグダになり始めたのを押しとどめるように、シキが『んんっ!』と咳払いをして、
「まあアレだ、そう落ち込むことも難しく考えることもねえよ。さっきも言ったように、子供ってのは遅かれ早かれそういう時期が来て親を困らせるもんだ。親ならみんな経験することさ。お前の親の俺が言うんだから間違いねえだろ?」
「おめェ経験ねェだろ!!」(スパァン!)
「ハッ、そうだった! いきなりアラサーの娘が湧いて出たんだった!」
「「ハイッ!!」」
結局グダグダになった。
☆☆☆
一方その頃。
メルヴィユ空域内ではあるものの……アジトのある島を出た、別な空島。
万が一にもスゥに知られないために、ここまで場所を移して行われていたのは……シキ達の予想通り、スゥの娘達による、誕生日プレゼント対策会議だったのだが……
「こんな揃いも揃ってプレゼントかぶることとかある?」
「……まあ、仕方ないんじゃない? 選んだ動機は同じだろうし……」
アリスが呆れるようにつぶやいた前に並ぶのは……4本の刀剣。
事前に『かぶりをなくそう』という目的もあっての話し合いだったはずだが……ふたを開けてみれば、5人中4人が同じカテゴリのものを用意していたという、逆に見事なかぶり具合。
もっとも、今イリスが苦笑しながら言ったように、『理由』があって皆これを……刀剣をプレゼントに選んだというのはある。
その『理由』の関係で、何本プレゼントしてもスゥが困ることにはならないし、むしろ喜んでくれるだろうが……それとこれとは別というかなんというか、な心境だった。
「むしろ1人だけ剣以外を選んだレオナが意外なのかコレは?」
「レオナ伯母さまのそれ……本? かなり年季入ってるっぽいけど、何それ? ここまでくると逆に気になるわね」
レオナが用意したプレゼント。
何やら古びた本が何冊か。
「古文書だってさ。こないだ助けてナワバリに加えた島にあったのもらってきた。なんでもその島って、元々はもっと大きな国があって、そこに属してたらしいんだけど……世界政府に弾圧されて滅ぼされちゃったんだって。理由とか背景は政府がもみ消しちゃったから知られてないんだけど……この本、その時代の書物だから、そういうのも含めて色々やばそうなことが書いてあるんだって」
「……え、なんか普通に爆弾っぽいんじゃけど。それプレゼントにするのか? 母上の?」
「そういう歴史の陰に隠れたミステリーとかドラマ的な資料、母ちゃん好きそうじゃん」
「それはそうですが……無自覚ですごいものを掘り出して持ち出してきますね」
下手な刀剣よりもよっぽど危険かもしれない……少なくとも存在が知れたら政府から何かしらのアクションがありそうな代物を用意していたレオナに、あっけにとられる姉妹達。
して、残り4本は刀剣なわけだが……順に見ていくことにする。
イリスが用意したプレゼント。
妖刀“ひな”
位列:なし
「いやお前……誕生日プレゼントに妖刀ってどうなんじゃ?」
「大丈夫よ、ちょっと禍々しいオーラとか出てたりするけど、別にそんな、持った者を狂暴化させるとかそういうリアル呪いがあるわけじゃないから」
「そーなのか? ならいいのかな……でもなんか確かにやばそーな気配するぞ?」
「あ、でもなんかこの刀、持ち主が『覇気』を使いやすくするというか、覇気を引き出すのを後押しする力みたいなのがあって……それでいきなり力を手に入れたバカが『自分は強い!』って野心抱いて暴走して自滅したり、悲劇惨劇を巻き起こす……みたいなのはあったみたいだけど」
「十分曰く付きじゃないか!」
「というか、勝手に持ち主の覇気を引き出す刀? そんなのあるんだ……覇気の練習するにはいい、のかな?」
スノウが用意したプレゼント。
名剣“クライスト”
位列:なし
「刀じゃなくてサーベルの類じゃな。比較的肉厚で……ナックルガードもついとるのか」
「刀身が黒いのね。ひょっとして……『黒刀』?」
「いえ、もともとそういう素材だというだけです。イリスの『クラウ・ソラス』のように、後から『成った』剣ではないようで……それでも、品質は極上のものだそうです。由来としては、とある国が滅んだ際に、一部の貴族やその私兵達が国外に脱出する際に、勝手に持ち出したその国の国宝だそうで……まあ、その連中は海賊かぶれになってたところをこの前潰したのですが」
「ああ、こないだ潰したあいつらから奪った奴なのか……ん? どーしたアリス、なんか難しい顔してるけど」
「いや、大したことじゃないんだけど……なんかこの剣、お母さんにすごく似合いそうだなと思って。なんか……昂る」
「……何で?」
「盛るな阿呆」
アリスが用意したプレゼント。
妖刀“
位列:大業物
「妖刀2本目なんじゃけど」
「ていうか『大業物』!? いやすごいの見つけて来たわねお父さん……」
「いやスズ聞いて、コレ別にさっきのイリスの『ひな』みたいにやばい特殊効果ある系の武器じゃないんだって別に。……まあ曰くはあるけど」
「あるんですか」
「あまりにも切れ味が鋭い上に、軽さと重心の位置やら何やらが絶妙な仕上がりで、使いこなせば強いけど使いこなせないと使い手が振り回されて、乱戦で味方ごと敵を斬りまくって、気が付いたら自分以外敵も味方も全部真っ二つになって死んでた……っていう程度のかわいいもんだよ」
「怖ェよ十分! 名前の通りじゃんもうそれ!」
「使いこなせれば強いし、逆に手加減して斬るのも得意だったらしいんだけどね。すごいきれいに斬れるから、多少切り傷突いた程度なら逆に治るの早いし後も残らないし、なんならスパッといっても上手くつながったって逸話もあるらしいし」
「どっちにしても一定の怖さが付いて回る」
スズの用意したプレゼント。
「……ちょっと待って、スズ……多くね?」
「ホントだ……ちょっと、何本用意したのさ。どんだけ気合入れて集めたの?」
「スズ伯母様ずるーい! こういうのって1人1個じゃないの普通?」
「しかも、どれも並々の刀剣ではないような様子で……よく集められましたね」
「ええい一斉にしゃべるな、説明できんじゃろうが。……いや、わしも最初はこんな沢山用意するつもりじゃなかったんじゃって。ちと理由があってな」
と、スズは……座っている自分の足元に並べた
「わしら……『金獅子海賊団』って、かなり広い範囲で島とか国を助けとるじゃろ? その中には、在野にあって知られてはいないが、腕のいい刀工がおる島があって……そこの者達が作った刀が、守ってくれた礼じゃと言って献上されてくることが割とある。これ
そう言ってスズは、置いてあった5本のうち、4本を手に取って少し前に置き、よく見えるようにする。残り1本は……丁寧に扱って少し離れた位置に一旦置いた。
その1本の方がむしろ気になった者は多かったが、まずは4本の方に目をやる。
「4本とも同じ刀工の作じゃ。わしと母上が共同戦線張って救った島に住んでおっての……その島は、その後も食料関係等含めてわしが今も面倒見ておるんじゃが、そこから献上された。ついでに『海賊文豪』のファンでもあるらしくて、『それになぞらえて作っちまった。よかったら使ってくれや』とか笑って言っておったよ」
「……その人、今は?」
どこか、スズの声が少し沈んでいることから、アリスがうすうす悟りつつも聞く。
「少し前にこの世を去った。腕利きの刀工が、文字通り人生をかけて作った作品なんじゃから、誕生日プレゼントなんぞにするのは……とも思ったんじゃが、ほかならぬその刀工本人からそうしてくれと言われてしもうた。70も超えておるのに母上の誕生日までしっかり勉強しとるとか、筋金入りじゃなと親族共々呆れておったわ。わしも呆れた。で、その刀工が打ったこの4本じゃが……作られたばかりじゃから当然『位列』はついとらんが、わしが付き合いのある他の腕利きの刀鍛冶達に見てもらったが……どれも『良業物』あるいは『大業物』に匹敵する出来だとのことじゃ」
そこまで行って、改めて4本の刀を指し示すスズ。
順に“春雨” “蒼燕” “
「なるほど、確かに全部お母さんの本にちなんだ名前だ……大業物相当の作品にそんなネーミングつけちゃうなんて、ホントにお母さんの熱心なファンだったんだね、その人。……それでスズ?」
そこで一旦区切って、アリスは……残る1本の方に目をやる。
「そっちの1本だけ放して置いたってことは……それはこれらとは違う感じ? ……ボクの直感だけど……むしろそっちの方がなんかオーラ的にやばそうな感じに見えるんだけど」
「いつもながら変なところで鋭いのう、お主」
感心したような呆れたような言い方をしながら、スズは、とっておいた最後の1本を前に出す。
見た目からして確かに『名刀』であるが……細部を見ると、最近作られたものではなく、手入れはされているが年季の入った刀剣だとわかった。
「これもその刀工から献上されたものじゃが……その刀工自身の作ではなく、そのご先祖様が作ったという家宝だそうじゃ。そんなん献上してよいのかって何度も聞いたんじゃが、自分はもう長くないし、託せる相手もいないから……とのことでな」
「自分の傑作たちに比べて家宝まで……ファンとしてもいよいよ筋金入りね」
「まあ、母上を『託せる相手』と見たからこそでもあるのでしょうが……しかし、それだけの刀工が『家宝』としている品となると、相当な名刀なのでは?」
「うむ、文句なしにとびっきりの逸品じゃ。最上大業物『かぐや紫』……じゃと」
「「「最……っ……!?」」」
さすがに絶句する面々。
『最上大業物』と言えば、この世に存在する刀剣達の頂点として知られる存在である。
それを今の時代に持っている、あるいは持っていた者と言えば……いずれも世界にその名を知られる大物ばかり。
世界最強の剣士“鷹の目”が持つ黒刀『夜』。
大海賊“白ひげ”が使った大薙刀『むら雲切』。
“海賊王”ゴール・D・ロジャーが振るった愛剣『エース』。
他には……最近新たな『海軍大将』になったらしい剣士“藤虎”が持つ『やくざ火線』や、今の所有者こそはっきりしないものの、その名を知られている妖刀『初代鬼徹』などだ。
世界に12本しかないとされる、名刀の中の名刀。
その一振りが今、目の前にあるこの刀だというのだ。
「家宝とはいえ『最上大業物』とは……本人の腕もしかりだけど、結構ホントにすごい家だったのかもね。……その刀工さんについての情報は?」
「隠し通した。産地なんぞ知れてもろくなことにならんからな。……本人の墓も、刀鍛冶の『か』の字すら刻まずに普通の墓にしたそうじゃ。そういう遺言じゃと、家族が言っておった。じゃから……託されたこいつらは、きちんとわしが母上に渡す」
そう言ってスズは、まとめる。
「先ほど言った通り……この先の母上には、優秀な刀は何本あってもいい。これら5本……いや、お主らのも含めた全て、この先の戦いにおいて、母上の力になってくれるじゃろうよ。きっとな」
☆☆☆
その、すぐ後。
想像を超える大物がいくつも出てきたプレゼントの打ち合わせは、それで終わりかと思われたが……解散になる前に、『ちょっと待って』とイリスから声がかかった。
「ごめん、まだ帰らないで。1つ提案があるの、ここにいる全員に」
「提案? 何?」
アリスが不思議そうに聞き返すと、イリスは、
「あのね……今紹介したプレゼントは、各自のものとしてお母さんに渡すとして……その他に、私達『娘一同』からってことで、もう1つプレゼントを用意したいの」
「一応、我々に1つ考えがありまして……それを用意するのに、お三方の力をお借りできればと」
スノウも加わってのその言葉に、聞く姿勢に入る、『娘』として先輩の3人。
「面白そうだけど……具体的に何プレゼントすんの? 刀?」
「いや、剣はみんな個々で送るからいいとして……あくまでアイデアというか、さっき言った通り提案なんだけど―――」
「―――お母さん専用の……『ホーミーズ』をプレゼントしたいの」