大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第263話 ルフィVSパルフェ(前編)

 

 

 諸々の理由で、今月『ビッグ・マム海賊団』に納めるお菓子がない魚人島。

 本来ならば、ビッグ・マム本人の怒りを買い、滅びの運命をたどるであろうその国を救ったのは……またしても、国を既に一度救っている英雄『麦わらのルフィ』その人だった。

 

 電伝虫越しにとはいえ、ビッグ・マム本人に対して啖呵を切るのみならず、盛大に喧嘩を売り……それに興味を示したビッグ・マムによって、今回の『失態』の責任と標的を、ルフィ達に移す、という決定がなされ……結果、魚人島はまた救われた。

 

 その際にビッグ・マムにより、『少し遊んでやれ』と差し向けられた、その娘であり部下、シャーロット・パルフェ。

 

 場所を変え、『5分間』という制限時間を設けて行われることとなったその戦いは、魚人島のはずれの、そこらの岩やサンゴ以外に壊れるもののない、開けた場所で……

 

 

 

 ―――ドォン!! バリバリバリバリ……!!

 

 

 

 ルフィとパルフェ、両者が持った『覇王色』の衝突という形で幕を開けた。

 

 

 

 野次馬として集まってきていた民の幾人かが、その余波で、距離があっても気絶してしまう中……その最前列にいて戦いを見守っていた者達もまた、驚愕を隠せなかった。

 

「『覇王色』だと!? まさか、あんなガキが……ママやカタクリ様、パルフェ様と同じ……」

 

「王の資質、か……。なるほど、英雄ガープの孫にして革命家ドラゴンの息子……確かにそこらのルーキーとは一味違うようでソワール……」

 

「おいマリモ、『覇王色』ってのは確か、海賊共を気絶させたアレだろ?」

 

「ああ……それを持ってるやつ同士がぶつかると、ああなることがあるんだとよ。滅多に見れるもんじゃねえらしいが……だが、この先の海は……」

 

「なるほど……ああいうのがわんさかいるかもしれねえ海だってことか」

 

 

 

『武装色』で互いに黒く染めた拳をぶつけ合ったルフィとパルフェは、一瞬の拮抗の後、ルフィがその場から飛びのく形で離れた。

 

「硬ってえ……強えな、あいつの武装色……!」

 

「…………ふぅん」

 

 すぐさま構えなおすルフィに対し、感心したように笑うパルフェ。感触を確かめるように、握っていた手をぐっ、ぱっ、と握ったり開いたりしている。

 それをバカにされたとでも取ったのか、『にゃろ!』と勢いづくルフィは、体からドルルン……と音を響かせて、血流を加速。身体能力を引き上げる。

 

「ゴムゴムの……“JET(ピストル)”!!」

 

 武装色を纏って繰り出した自分の拳をやすやすと受け止められた時点で、ルフィは目の前にいるパルフェが、油断できる強さではないと即座に理解した。

 ゆえに油断せず、繰り出したのは……そこらの海賊では、防御や回避どころか、反応することもできない速さの拳。

 

 だが、不可視の速さで飛んだ一撃は……首をわずかに横に倒す程度の動きで、あっけなくかわされてしまう。

 続けざまに2発、3発と繰り出すも、今度は胴体を狙って放ったそれらは、添えるように出された右手の手のひらではじかれ、あるいはそらされて明後日の方向に飛び、その先にあったサンゴ岩を砕くのみに終わった。

 

「ゴムゴムの……“JET銃乱打(ガトリング)”!!」

 

 さらに数の多い拳を繰り出せば、今度はパルフェは何を思ったか、顔だけ守るように腕を顔の前でクロスさせると……そのまま、何十発と降り注ぐ拳の乱打を体で受ける。

 胸に、肩に、腹に、足に……『武装色』を纏った拳が雨あられと降り注ぐ。

 

 その光景を見ていた面々は、いくら海賊とはいえ、年若い少女がその拳で滅多打ちにされる光景にぎょっとする。

 中でも約1名、ルフィの味方であるはずの立場から『おいテメェいくらなんでもやりすぎだぞクソ船長!!』と怒号が飛んでいた。

 

 しかし、それに対して……少女の方の味方であるはずの2名は、何も言わず……あんな光景はなんでもない、とでも言わんばかりに沈黙を保って落ち着いていた。

 その理由は、土煙が晴れすぐに明らかになる。

 

「……!? 嘘だろ、あの子……あれだけの拳を……」

 

「屈強な魚人を容易く仕留める、麦わらさんの拳を受けて……無傷!?」

 

「全然、怪我もしてねえ……どころか、最初の位置からまだ一歩も動いてないぞ!」

 

 土煙の中から出てきたパルフェは、多少服こそ乱れている様子ではあるが……怪我どころかアザの一つもその身に作ってはいなかった。

 平然として、ぱんぱん、と服についたほこりを払っている。

 

「何だアイツ……? 効いてねえのは別にいいけど……殴った感触がなんか変だったぞ……?」

 

 当のルフィは、野次馬達とはまた少し違う理由で困惑ないし不思議そうな顔をしていた。

 パルフェはというと、服を直した後、変わらず涼しい顔でルフィに向き直る。

 

「なるほど、大した威力ですわ。並の海賊なら、今の拳を一発でも……いえ、掠っただけでもリタイアでしょう。4億の首……その名に偽りなしということのようですわね」

 

 褒めはするものの、どこまでも余裕で上から目線。

 挑発しているようにも見えるその態度にいらだった……というわけではなく、ただ単に攻め続けているだけだろうが、ルフィは今度は、鞭のように足を延ばして薙ぎ払う。

 それもパルフェには、片手で容易く受け止められた……が、

 

「まただ……やっぱコイツ、なんか感触が変だ!」

 

 伸ばした足から伝わってくる、パルフェの手の感触。

 そこに、普通の人間を殴ったり蹴ったりした時にはない『何か』を感じていた。

 

「おいお前、何で攻撃してこねえんだ! ビッグ・マムに言われてただろ、ちゃんと戦え!」

 

「あらよろしいんですか? じゃあ……遠慮なく」

 

「え……ぶべっ!?」

 

 伸ばした足を元通りに縮めたと同時に、突然ルフィが、まるで顔を殴られたように大きくのけぞった。

 パルフェは……やはり、元の位置から動いていない。ただ、手のひらをルフィに向けて突き出しているだけ。

 

 いきなりのことで、何が起こったのか……ルフィを含めた、見ている面々が理解できない中、

 

「ふふふ……ほらほら、避けるか防がないと鴨打ちですわ」

 

「ばっ!? びっ! ぶっ……べっ、ぼっ!?」

 

 パルフェが手のひらを、ボタンを押すように何度も軽く突き出す。

 それと同時にルフィに不可視の『何か』が当たり、のけぞったり、体を『く』の字に曲げたり、つんのめって転びそうになったりと……殴る蹴るされているようなリアクションが続く。

 両足を払われ、その状態で大きくのけぞって……盛大に後ろにすっころんだ。

 

「ハァ、ハァ……何だ!? 別に全然痛くねえけど、何されてんのかわかんねえ……いやでもコレ、どっかで見たことあるような……?」

 

 ダメージにはなっていないようだが、攻撃の正体がわからず困惑するルフィ。

 そのルフィに向けて、再びパルフェの手が……突き出される前に、ルフィは横に跳んでその斜線から外れる。

 

 すると、今までルフィが立っていたそのすぐ後ろにあったサンゴ岩が、ボコォン! と音を立てて砕けた。

 

「何だかわかんねえけど、あの手が突き出された先にいるとふっ飛ばされんのか! よしわかった……もう食らわねえぞ!」

 

『ギア2』のスピードで、ジグザグに蛇行しながらパルフェに接近するルフィ。

 狙いが定まらず、パルフェの謎の遠距離攻撃は通じないが……

 

「ま、そりゃこんだけわかりやすくして差し上げてるんですし? これで完封なんてことになったらこっちが困るところでしたわ」

 

 気にした様子もなく、先ほどまでと同じように……拳を構える。

 そして、不可視の速さで懐に飛び込んだルフィは、加速した上に『武装色』で黒く染まった拳を繰り出し……それに当然のように反応したパルフェの拳とぶつかり合う。

 

 そこで止まらず、矢継ぎ早に繰り出される技の数々。目にもとまらぬ攻防。

 

「ゴムゴムの……“鷹銃(ホークガン)”!!」

 

「!  “ハード”……“反弾(パリィ)”!」

 

 先程までよりもより強力な一撃が飛んでくることを察したパルフェは、初めて技らしい技を使ってそれをはじいて防御する。

 “ドン!!”と重い物同士がぶつかったような、重厚な音がして、ルフィの拳は、同じく武装硬化したパルフェの裏拳ではじかれてそらされた。

 

 しかし、それでもその場所から動かないパルフェに対し、ならばとルフィも下がることはせず、そのまま連続で拳を繰り出し続ける。

 ラッシュが来るのを察したパルフェは、構えを解かずそのまま待ち受ける。

 

「“鷹銃乱打(ホークガトリング)”!!」

 

「……ぅわ、速……」

 

 覇気を纏って繰り出される高速の乱打。

 しかしパルフェは、やはりそこから動かないまま……

 

「“ソフト”……“空蝉(スウェー)”」

 

 ルフィの拳は、パルフェに当たらず……まるですり抜けたように、全て外れた。

 当たったと思った……感触すらあったのに、そのまま『殴った』感触にはつながらなかった。まるで、空中を舞う羽毛を殴ろうとして、ひらひらと舞って避けられ、あるいは、当たった衝撃が刺さらず受け流されたかのように、

 そしてその際、相対していたルフィには……パルフェがぐにゃりと変形して拳をよけた、あるいはすり抜けたように見えた。

 

 そして、それに驚いてしまったがゆえに、反応が遅れた。

 

 突き出した拳が戻るより早く……パルフェの縦ロールの髪の毛の1つがしゅるりと腕に巻き付き、そのままロールの形に戻った。

 がしっと強く締め付けて、ルフィの腕を固定する。まるで、手錠のように。

 

「えェ~~~!? それ、そうやって使うのか!?」

 

「こうやって使うこともできるんですわ! どーですか面白いで……しょっ!」

 

 そのまま、ゴムが縮む勢いを利用してルフィをさらに近く……ほぼゼロ距離まで引き寄せると、飛んできたのに合わせる形で蹴りを繰り出す。

 すらりと長く伸びた足は、当然のように覇気を纏っていて……槍のような勢いでルフィの胴体に突き刺さる。ゴムであっても無効化できず、ルフィの顔が苦悶にゆがむ。

 

 が、もともと覚悟済みだったのか、それで動きが止まることはなく……むしろ、待っていたとばかりに拳を握る。

 

「この距離なら外さねえ! “鷹銃弾(ホークブレット)”!!」

 

「あ、やっべ、速い。“ハード体幹(コア)”!!」

 

 みぞおちに突き刺さるルフィの拳。

 それにもパルフェは耐えるが……さすがに勢いを殺しきれなかったらしい。この戦いが始まってから、初めてパルフェの足が動き……一歩、後ろに後ずさった。

 顔は真剣だが、涼しいまま。ダメージが入っているかは微妙。

 

 そのパルフェに迫るのは……ルフィのさらなる追撃。

 超高速の一撃に、最初から続けて放つつもりだったのだろう、いつの間にかその後方に……大きく膨らんだ、黒く染まった拳が引き絞られていた。

 

 受けて立つとばかりに、パルフェも……これまでになく大きく拳を振りかぶって握りしめる。

 その拳は、いや腕は、肘のあたりまで黒く染まっていた。

 

 「ゴムゴムの……」

 

 「“ハード”……」

 

 

 

 「“象銃(エレファントガン)”!!」

 

 「“砲拳(スマッシュ)”!!」

 

 

 

 巨人のごとく巨大な拳と、細腕から繰り出された拳。

 ミスマッチなぶつかり合いではあったが、互いに想像を絶する威力のぶつかり合いは、野次馬達のところまで爆風が届くほどの衝撃をまき散らす。

 

 一瞬の拮抗の後、2人は……互いに弾かれるように後ずさりした。

 が、その瞬間……後ろに飛んだルフィに対し、パルフェが間髪入れずに一手仕掛けた。

 左手から、何かを飛ばす。先ほどの……突き出すような動きはせずに。

 

 

 ―――バシッ!

 

 

「あだっ!? 何だ!? 何か当たった!」

 

 着地しようとしたルフィの、ちょうど足元に直撃したその『何か』によって、足が明後日の方向に『ぐにっ』とひねって曲がって着地してしまう。

 ゴムゆえにそれ自体はダメージにはならないが、体勢を崩してできてしまった隙が致命的だった。

 その一瞬のうちに……

 

 

 パルフェの腕が、ゴムのように長く伸びて……ルフィの顔面をガシッとつかんだ。

 

 

「「「えぇ~~~!?」」」

 

 掴まれているルフィ本人も、それを見ていた観衆達も――ゾロ、サンジ含む――今日一番の驚きを見せる中、パルフェはさらにゴムのように、その腕をぎゅるん、と勢いよく引っ張って元に戻し……引き寄せたルフィに、その勢いも利用して顔面に拳を叩き込む。

 

 当然覇気が乗っていたその拳が直撃し、ルフィは相応のダメージが入り、鼻血を流して吹き飛ばされ……なかった。

 引き寄せた瞬間に、パルフェがルフィの足を踏みつけて、吹き飛ばないようにしていたせいで……殴って飛んだ分また戻ってきてしまう。

 

「やべっ!」

 

「“ハード”……“踵打(クラッシュ)”」

 

 戻ってきたタイミングで繰り出された踵落としを、とっさにルフィは、明後日の方向に腕を伸ばし……そちらに体を引っ張らせることで回避。空を切ったパルフェの踵は、そのまま地面に当たって蜘蛛の巣状のひびを大きく刻んだ。

 

 今度はそれを隙と見たルフィが、伸ばした腕をそのまま攻撃に転じさせ……ようとした瞬間、パルフェが抑えていた足を外したせいで、両方からゴムの戻る反動がきて『おわっ!?』と空中に投げ出される。それもまた、大きな隙だった。

 

 そしてそこに、今度こそ命中するパルフェの一撃。

 長く、鞭のように伸ばした足の一撃が、ルフィを薙ぎ払って向こうのサンゴ岩まで蹴り飛ばし、激突させた。

 

 

 ☆☆☆

 

 

「嘘でしょ……何なのよ、コレ……!?」

 

 いつの間にか観衆達に合流していたナミ。

 目の前で、自分よりもまだ年下に見える少女が、ルフィを手玉に取るように振り回し、蹴り飛ばしている光景を、愕然とした様子で見ていた。その頬には、冷や汗が伝っている。

 一緒に来たらしいウソップやチョッパーもそれは同じだった。動揺こそ少ないが、ロビンやフランキー、ブルックも驚いてはいるようだ。

 

 しかし、最も驚いているのは……ジンベエだった。

 

「あれは……パルフェ!? なぜここに……それに、なぜルフィと戦っておるんじゃ!?」

 

「おやジンベエさん、あのワイルドなレディのことをご存じで?」

 

 ブルックが聞き返すと、動揺がまだ収まらない様子ではあるものの、ジンベエは『うむ』と、こくりとうなずいた。

 

「シャーロット・パルフェ……『ビッグ・マム海賊団』の大幹部『4将星』の1人じゃ。懸賞金は……10憶を超えとる」

 

「『四皇』の大幹部~~~!?」

 

「10憶~~~!?」

 

「オイオイオイオイ、そんなのとルフィがなんで喧嘩なんかしてんだ!? これ大変なことになっちまうんじゃねーのかよ!? まだ『新世界』に入ってもいねえんだぜ!?」

 

「戦闘中という事実だけみれば、もうなっていると言った方がいいんじゃないかしら。手遅れというか」

 

「怖いこと言わないでロビン! サンジ君ちょっと説明して! いったい何があってこんなことになってんの!? ゾロも! あんた達財宝回収しに行ったはずでしょ!?」

 

「ああナミさん、それがですね、かくかくしかじかで……」

 

 

 

「あらあら、なんだか騒がしくなってまいりましたわね……さて、そろそろ出てきたらいかが? 覇気でガードしていたのはわかっています……大して効いていないでしょう?」

 

「当ったり、前……だぁ!!」

 

 瓦礫を盛大に吹き飛ばして、その中から復活するルフィ。

 あちこち擦り傷ができているも、さほど呼吸も乱れておらず、まだまだ元気な様子で……それを見たパルフェは、嬉しそうに、楽しそうに笑う。

 

「あらあらまあ、活きがよくって嬉しくなっちゃいますわね。身内以外でここまで歯ごたえのある殿方って、マジで久しぶりですわ」

 

「ハァ……ハァ……お前、何だ!? 伸びるし、硬ェし……俺と同じゴム人間か!?」

 

「この世に同じ能力は2つと存在しませんわよ。私のはあなたのとは別物、ただ、戦い方が似てるだけ……知りたければ、ジンベエにでも聞いたらどうです? そこにいるみたいですし」

 

「え? あ、ホントだ、ナミ達も来てんな……いや、今はいいや別に! 時間ねえし!」

 

「あら、そう。でも確かにそうでしたわね……タマゴ? あとどのくらいでしたかしら?」

 

 離れたところで見ているタマゴ男爵にそう尋ねるパルフェ。

 それを受けてタマゴ男爵は、手元にある砂時計――戦闘開始と共にひっくり返していた――を確認し、

 

「今ちょうど半分を切ったところ……残り2分少々でポン」

 

「あら、やっぱり楽しい時間が過ぎるのは早いですわね……あなたの言う通りゆっくりもしていられなさそうですわ。続きをしましょうか、『麦わらのルフィ』?」

 

「望むところだ! あと2分でお前に勝つ!」

 

「おほほほほ……期待していますわ。どうぞ遠慮なく、死力を尽くしていらっしゃいな! (わたくし)程度にてこずっているようでは、ママを“ぶっ飛ばす”なんて夢のまた夢でしてよ!」

 

 

 

 

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