大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第268話 ロー、スモーカー、ヴェルゴ……あとモネ

 

 

『麦わらの一味』と『ハートの海賊団』の海賊同盟。

 最初の目的を『シーザー・クラウンの誘拐』に据えた彼らの戦いは、ローの心臓を握っているヴェルゴと、周囲の空気を操って窒息させるシーザーによって阻まれ、一度はその主要メンバーほぼ全員が囚われの身になるという危機にまで直面する。

 裏社会のクライアント達に対する『公開実験』の名目で、檻に閉じ込められて毒ガスを浴びせられる状況にまで追い込まれた。

 

 しかし、それを見越して打開策を用意していたローが、状況を逆手にとって逆にシーザー達に奇襲をかける形にもっていく。シーザー達は、『実験』を強行してしまった手前外に出ることはできず、また海軍G-5の海兵達と、パンクハザードの『ケンタウロス』達も入り混じって、研究所内での大混戦が幕を開けた。

 その中で、ルフィ達はそれぞれの目的のために、障害を物理的に蹴散らしながら動き出す。

 

 ルフィは、この研究所の長であり、子供達を誘拐して実験台にしていた黒幕であるシーザーを捕らえて『誘拐』するため。

 

 スモーカーは、『G-5』の基地長でありながらドフラミンゴに通じていた―――正確にはもともと海賊だったのを隠して海軍に潜り込んでいた―—―ヴェルゴを倒し、落とし前をつけさせるため。

 

 そしてローは、己の頭の中に描いている『最悪のシナリオ』を現実のものにすべく、この研究所の最重要施設である『SAD』の製造装置を破壊するため。

 

 

 

 その中の一幕。

 ローの狙いが『SAD』だと知ったヴェルゴが、それを阻止するために製造室へ急いでいる最中のこと。

 

 手に持った電伝虫を、ドレスローザにいる自分の本当の主……闇の仲買人『ジョーカー』こと、ドンキホーテ・ドフラミンゴに繋げて話しているところだった。

 ヴェルゴから一連の事態の報告を受けたドフラミンゴは、しかし特段取り乱すようなことはなく、電伝虫の向こうで『フッフッフ……』といつも通り不敵に笑う。

 

『そうくると思ってたよ。ローの奴……これを狙って、何か月もかけてコツコツと準備をしていたわけだ。自分の心臓を担保としてシーザーに渡してまでな……フフフ、フフフフフ! オイオイ、何とも涙ぐましいことじゃねえか……』

 

「そこまでシーザーに譲ったことで、自分の存在を『ジョーカー』にも隠し、また自分の行動を、今の止まり木である『金獅子』にも隠して暗躍できている気になっていた。奴なりに頭を使おうとしたんだろうが……結果失敗していては世話はない。大丈夫だ、この先も思い通りにはさせん」

 

『フッフッフ……ああ、そこは心配も疑いもしてねえよ。残念だがローとはここでお別れだな……生まれてきたことを後悔するくらいに、無惨に、苦しめて殺してやってくれ』

 

「了解した。死体の写真でも撮って持って行こう。ドレスローザで買ったカメラでな」

 

『お前カメラなんか買ってねえだろう』

 

「そうだ、俺はカメラなんか買ってなかった」

 

 人の命を奪う話をしているというのに、まるで日常の何気ない雑談でもするかのような気軽さで言葉を交わす2人。

 そんな中、ふと思いついたようにドフラミンゴがつぶやく。

 

『それにしても……失敗。そう『失敗』だ……フフフ』

 

「? どうした、ドフィ?」

 

『何、重ねてローが哀れに思えてきただけさ。全く持っておめでたい話さ……きちんと『知っている』俺達だからわかることだが、本当に可哀そうなくらいに、あのガキの計画はお粗末で、穴だらけで……実行する前からすでに破綻している。『失敗』が確約されてるんだ』

 

「……言われてみればその通りだな。ローの狙いはシーザーの誘拐あるいは抹殺と、SADの製造設備の破壊。もちろんそうはさせないとはいえ、仮にそれをすれば、当然俺達の怒りを買うことはわかっているはず……それでも実行に踏み切ったということは、俺達にぶつける戦力の『アテ』があるということだ。それはおそらく……所属している『金獅子海賊団』」

 

『うちとは闇の市場に様々な商品を流す上での商売敵。まあ、利害の一致という点では、巻き込む理由にならないわけじゃないし、ロー自身もあそこのお飾りの『お嬢様』に気に入られているようだからな。もっとも、面倒ごとを巻き込んだ責任の追及は避けられないだろうが……フッフッフ、あるいはそれもあのガキの計画のうちなのか……』

 

「よそうドフィ。どうせ『失敗』するとわかっていることだ……言っていてもむなしいだけだ」

 

『ああ、その通りだったなヴェルゴ……ここからどう転んでも、そんな計画は成功しえない。何がどううまくいったところで、事態は好転などしねェし……そもそもあいつが期待する『味方』なぞ、元々どこにもいねえんだからな、フッフッフ……フッフッフッフッフ!! 何も知らねえ可哀そうなロー! もの知らずのガキが分をわきまえず、一丁前に悪だくみなんぞするからこうなるんだ!』

 

「………………」

 

『……? どうした、ヴェルゴ』

 

「悪いな『ジョーカー』……ローの前に、不肖の部下の始末からつけなきゃいけないようだ」

 

『月歩』で空中を走っていた足を止めて、床に降り立つヴェルゴ。

 その視線の先には……一目で激怒しているとわかる、白髪を刈り込んだ大柄な男が……手に長大な十手をもって立ちはだかっていた。

 

「今、急いでるんだが……用事なら後にしてもらうわけにはいかないかね、スモーカー中将?」

 

「あァ、早い方がいいね……あんたも新兵教育で習ったろ? 部屋の片づけ、特にゴミ掃除は早いうちに終わらせて後に残すなってよ」

 

「……ああ、確かにな。なるほど、それなら俺も……さっさと君を始末してから行くとしよう」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 一方その頃……子供達の遊び場『ビスケットルーム』。

 

 そこに、1人の女が―――とても人間には見えないが、一応『女』には見える―――倒れ伏していた。

 その体の大部分を『雪』に変えたまま、なかなか戻すことができないままに……起き上がろうとして倒れて崩れて、を何度も繰り返していた。

 

 彼女……モネは、先頃のこの部屋での戦いで、ゾロによって、覇気なしではあるが両断され……その際に叩き込まれた恐怖で身がすくみ、体の自由が利かない。

 それでもどうにか止めようとしたところを、海軍大佐・たしぎの一太刀によって切り伏せられ……あえなくリタイアとなった。

 

 それでも、どうにか時間をかけて、ある程度恐怖を抑え込み……傷が痛むのも我慢して、体を元の『ハーピー』の形に戻すところまでもっていった。

 まだ体の動きは鈍く、到底『戦闘』はできないが……それでも自分に何ができるか、何をすべきかを考えて、体を引きずるように歩き出す。

 

(ヴェルゴが負けるとは思えないけれど……万が一にも、“マスター”を奪われたり、殺されでもしてしまえば……若様やファミリーへのダメージは計り知れない……。そうならないために、万全を期すことを考えれば……)

 

 考えながら、ゆっくりと壁伝いに歩いて歩みを進めるモネ。

 まだ飛べるほどの力は戻っていない。仮に体の震えが止まったとしても、たしぎに斬られたのが翼部分だということもあり、しばらく飛行は無理だと考えるべきだった。

 

(若様を『海賊王』にするために……私がやるべきことは……)

 

 考えが頭の中でまとまり、同時に、その覚悟も決まった。

 モネは、お目当てのものが置いてある場所に向けて、痛む体に鞭打って歩き出そうとし……

 

 

 ―――プスッ

 

 

(…………え?)

 

 肩口に、刺すような痛み。

 その直後、何かが体の中に押し込まれる異物感を感じ……同時に、モネの体から一切の力が抜けた。

 

 先程までの『恐怖』とはまた違う、意思も何も無関係に、問答無用で体から力が奪われる感覚。しかし、それ以外に痛みや、息が苦しくなったりはしない。毒、とは考えづらい。

 

 困惑しながらも、モネはその感覚が何なのか……すぐに思い至った。以前に興味本位で、備品である『海楼石の鎖』に触れた時に感じたのと同じ感覚だったからだ。

 

「何が、一体……海楼石……!? 誰が……!?」

 

 周囲を見回してみても……誰もいない。

 モネの周囲には人っ子1人いない。影も形もなく、気配も感じ取れない。

 

 それでも、間違いなくそこには誰かがいる。

 その誰かによって、自分は何かを……おそらくは海楼石製の刃物で刺されるか何かして、体から力を奪われてしまっている。首を動かしてあたりを見回すことすら億劫な脱力。

 

 しかし、これからまさに『自分に最後にできること』を実行するつもりだったモネは、『こんなところで!』とこの窮地を抜け出すために力を振り絞るが……やはり、どこに誰がいるのかを把握することすらできないまま……

 

 

 ―――チクッ

 

 

 再度の痛み。今度は先ほどのそれよりも弱いが……首筋に。

 そして、流れ込んできたのは……今度は、薬品。

 

 それに気づいた時には……モネの意識は既に、急速に沈んでいくところだった。瞼が鉛になったかのように重く、とても目を開けていられない。

 目が閉じて視界が闇に閉ざされるだけでなく、意識も闇の中に落ちていくのを……妙にゆっくりと、残酷なくらいに鮮明に感じながら……モネは歯噛みする。

 ……実際に食いしばるだけの力もろくに残されてはいないが。

 

「……っ……だ、れ……なの……よ……?」

 

 当たり前だが……そんな、断末魔にも等しい、絞り出すような問いかけに……馬鹿正直に答えてくれる者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……寝た? ……よし、寝た」

 

 モネの意識が完全に落ちた後に……誰もいない廊下に、声だけが響く。

 もっとも……誰かがここを通りがかって、その声を耳にしたところで……それに『気づく』ことができる者はそうそういないのだが。

 

「海楼石のマイクロチップは埋め込んだし、その上で眠り薬も投与した……このまま丸1日は目を覚まさない。よし……今のうちにさっさと運んじゃおう。……う、体の形が独特だからなんか持ちにくいな……背も高いし、翼大っきいし、足も妙に長いし……」

 

 そんなことを呟きながら……ルププは、自分の『影』をモネの影にも潜り込ませて……以前くまにもやったように、『影を薄く』して……自分同様、他者に認識されなくしていく。

 ほどなくして、モネもまた……目の前にいても誰にも『気づけない』存在になった。

 

 ルート上の監視用電伝虫は全て事前に除去済み。障害はいない。

 漏れ出てくる可能性がある毒ガスにのみ気を付けて、ルププはとらえた『獲物』を運んでいく。

 

「……あ、そうだ、報告もちゃんと入れなきゃ。えーと、電伝虫電伝虫……もしもし? こちらルププ、作戦本部応答願います」

 

『はいはい、こちら本部のクロミですよぉ。どうしました、ルププちゃん?』

 

「報告です。現在、研究所内『ビスケットルーム』近くの廊下。標的名簿(カタログ)ナンバー62、ドンキホーテファミリー所属『モネ』を確保。あと、ここでの研究の関連書類はもう既に回収済みです。どっちもこれから持って帰ります」

 

『了解です! お仕事お疲れ様です、ルププちゃん。ボスからは、『いいのを持ち帰った人には一番に食べる権利をあげます』って伝言預かってますよ? 急いで戻って来ちゃってくださいね!』

 

「わかりました、全速力で戻りますので、もろもろ用意して待っててください!」

 

『もろもろって具体的には?』

 

「ベッド! お風呂! 各種おもちゃ!」

 

『安心してください、全て用意済みです。いつでもイけますよっ!』

 

「さすがクロミさん!」

 

 

 

 こうして、ゾロやたしぎといった敵達はもちろん、主である『若様』も含めた、誰も知らないところで……モネは回収され『お持ち帰り』に。

 ……人知れず、表舞台から永遠にリタイアさせられることになった。

 

 これより後、彼女がどこに消えて、どうなってしまったのか……それを知る者は、誰もいない。

 その『末路』に関して、直接関わっている、ごく一握りの者を除けば……だが。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 場面はもう1度戻り……SAD製造室へ続く通路。

 

 金属と金属がぶつかり合っているような重厚な音を響かせながら、スモーカーとヴェルゴが互いの拳や武器をぶつけあっていた。

 

 覇気使いであるヴェルゴにとって、スモーカーの『モクモクの実』の能力は問題にならない。むしろ攻撃する個所ないし面積が増えてやりやすくなるくらいだった。

 それを理解しているためだろう。スモーカーは、回避や移動といった最低限のことだけに『煙』と使い、攻撃はもっぱら、自分も『覇気』による肉弾戦によって行っていた。

 

 ゴキィン!! と、鉄の塊同士がぶつかり合ったのかと思うほどの轟音が響き……スモーカーとヴェルゴの拳がそれぞれ交差して、互いの顔面に突き刺さる。

 

 しかし、それを受けてややふらついたスモーカーに対し……頑丈さでは軍配が上がるのか、ヴェルゴはのけぞりこそしたものの、不動の様相で仁王立ちしている。

 切り返しも早く、すぐさま手に持った竹竿を『武装色』で黒く染めて振りかぶる。

 

「“(オニ)(タケ)”!!」

 

 元はただの竹竿とは思えないほどの威力と硬さで振りぬかれたそれは、咄嗟に殴って弾いてそらしてなお、十手越しにスモーカーの腕に、ビリビリと痺れが残るほどの衝撃を響かせた。

 

 そして、そらされたその余波だけで、通路の一角が『ベコォン!!』とへこんで歪んで崩れ落ちるほどの破壊をもたらした。

 直撃していれば致命傷か、そうでなくとも行動不能は免れなかっただろう程の凶悪な一撃。

 

「案外と粘るじゃあないか……俺の見立てでは、さっさと殺してローのクソガキを追えていたはずだというのに……想像以上のしぶとさだ、スモーカー君」

 

 いつもと変わらない、落ち着いた声音。

 

 しかし、ヴェルゴのことをある程度以上知っている者であれば、その声にはかなりの苛立ちや怒りが含まれているのを察することができただろう。

 

「基地長として、部下の実力を正確に把握できていなかったことは……恥ずかしい限りだよ。お前は本当に、普段からだが……俺の思い通りには動いてくれないな」

 

「テメェの本性を知る前は、振り回しちまって申し訳ねえとは一応思ってたんだがな……今となっては、思うだけ損してた気分だぜ」

 

「言ってくれる……苦労をかけられていたのは本当だったというのにな。……ローにもこの後言うつもりだったが……あまり俺の……」

 

 

 

「呼んだか、ヴェルゴ?」

 

 

 

 ふいに響くそんな声。

 肩で息をするスモーカーの背後から、それは聞こえた。

 

 ヴェルゴが少し体を傾けてそちらを見ると……声の主が、悠々とこちらに歩いてくるところだった。

 

「トラファルガー……お前の用事は済んだのか?」

 

「ああ……そして時間切れだ、白猟屋。どけ、選手交代だ」

 

「…………」

 

 意外にも、黙って道を譲るスモーカー。

 そうして、ローとヴェルゴが正面から相対する形になる。

 

「ロー……」

 

「待っても待っても来ないもんだからこっちから来てやったぞ、ヴェルゴ。随分とのんびりやっていたようだな」

 

「……答えろロー、今、その先の部屋で何をしてきた?」

 

「これ以上ないほど意味のねェ問いかけだな。わかってるだろうことをわざわざ聞いてどうする?」

 

 どちらも、まるで何でもない道端での雑談か何かのように、落ち着いた、静かな口調で話す。……少なくとも、見た目だけは。

 

 直後、

 

 

 ―――ズゥウウゥン……!

 ―――ガシャアン、バリン、ガゴォン……!

 ―――ドカァン! ボカァン……!

 

 ―――ゴボゴボゴボ……バシャバシャ……!

 

 

 何かが壊れる音。崩れる音。割れる音。爆発音……。

 何かが泡立つ音、流れ出る音……。

 およそ破滅的な音を全部兼ね備えていそうな異音の詰め合わせ。

 

 聞こえてくるのは……今ちょうど、ローが歩いてきた通路の先からだった。

 

「…………クソガキが……!」

 

 ここに来てとうとう、ヴェルゴは表情と声の震えに怒りを隠さなくなった。

 

「大損害だ……『ジョーカー』に何といって詫びたらいいのか、考えるだけで頭が痛くなる」

 

「…………」

 

「だが……さっさと逃げればよかったものを、わざわざ俺の前に姿を見せたそのバカさ加減には……感謝してやる。おかげで、『ジョーカー』への土産の目途は立ちそうだ……ズタボロになったお前の死体を見せれば、少しは彼の気も晴れるだろう。その後はシーザーの回収と、他の連中の口封じもしなきゃならん……全く、忙しいことだ」

 

「見通しの甘さは『若様』譲りか? この期に及んで自分達に勝ちの目があると思えるとは……逆に見事なもんだ」

 

「………………」

 

「大方、シーザーさえ回収できればSADもまた作れるし、まだリカバリーは効くと思っているんだろうが……生憎とお前らの思い通りにはもうならない。お前が『ジョーカー』の役に立つ時なんざもう来ない、ここで永遠にリタイアだ。シーザーは麦わら屋が仕留める。偉そうに高笑いしていられる時間はもう終わりだと、いい加減理解したらどうだ」

 

 無言で、おもむろにコートを脱ぎ捨て、上半身裸になるヴェルゴ。

 その全身にすさまじいまでの『武装色の覇気』を纏い、頭のてっぺんから足先まで、全てが黒光りする『全身凶器』にその身を変えた。

 

 キレている。

 余りにもわかりやすく。

 

 口を開く気配はない。

 最早言葉など要らないとばかりに……全身から、覇気と一緒に怒りを迸らせて……床を蹴り砕く勢いで跳躍し、目の前の生意気な『クソガキ』の頭蓋をたたき割るべく、漆黒の竹竿を大上段に振りかぶり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……その、わずか1分後。

 

 そこには……全身バラバラに、パーツごとに『分解』されたヴェルゴが転がっていた。

 

「全身黒光りの怪人……一発芸としては、まあまあだったんじゃないか、ヴェルゴ()()

 

 対するローは……全くの無傷。

 

 

 

 こうなる少し前。

 

 殴りかかったヴェルゴの竹竿は、ローの愛刀『鬼哭』であっさりと受け止められた。

 

 顔面に風穴を開けるつもりで放った拳は、見切られてあっさりとよけられた。

 

 横に叩き割る勢いで薙ぎ払われた蹴りは、雑に放たれたローの蹴りで弾かれ、受け流された。

 

 何一つ有効打にならない。全く届かない。

 ヴェルゴの黒光りしている顔面に、『信じられない』とでも言いたげな焦りが浮かんだ。

 

「……生憎と、俺も昔の俺じゃない。特にこの1年と数か月……随分鍛えた」

 

 そして、その次の瞬間には……ヴェルゴの全身はバラバラになっていた。

 全身に纏った武装色でも、全く受けきれずに。

 

「お前より硬い奴……お前より速い奴……お前より巧い奴……何より、お前より強い奴……どれもこれもうんざりするほど経験する機会があった。昔はともかく……今、今更、お前を怖がれって方が無理なんだ」

 

 結局、戦いらしい戦いにならないまま、終わった。

 ローは、最後まで声の調子を変えずに、刀を鞘に納めた。

 

「さあ……歯車は壊した。もう……誰にも止められねェぞ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 ―――ドスッ!!

 

 

(シュロロロロ……お前も道連れだ……死ね、スモーカー……!!)

 

 

 

 

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