大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第269話 ドリルは男の魂だ!

 

 

 場所は変わって……パンクハザードのタンカーが停泊している港。

 そこでは、もう1つ……激しい戦いが行われていた。

 

「すばしっこい奴め……だが、いつまでも逃げられると思うな!」

 

「またか……このっ!」

 

 毒ガスの中をものともせずにのっしのっしと歩く、夢の合体ロボ『フランキー将軍』。

 

 対するは、ドフラミンゴから差し向けられた、シーザー達を回収するための使者である2人……ベビー5とバッファロー。

 

 ロボットの左腕から連射される砲撃を、縦横無尽に飛んで動き回るバッファローがどうにか回避し、あるいは、上に乗るベビー5が迎撃して相殺、撃ち落とす。

 

 ちょっとした勘違いから始まった戦いではあったが、元々敵同士であるため結果的には問題ないというか、起きて当然の戦いと言えなくもない。

 いずれにせよその誤解がとけることは多分ないので、普通に両者は火花を散らしていた。

 

「ならこいつをくらってみろ……“将軍(ジェネラル)ブーメラン”!!」

 

 フランキー将軍の肩がパカッと開き、そこから、じゃらり、と音を立てて鎖付きの鉄球が出現。取り出したそれを、将軍はまるでハンマー投げのように勢いよく振り回し、投げた。

 結構なスピードが出ていたその鉄球をどうにかかわすバッファロー。

 

「っていうかどう見てもブーメランじゃないし! 鉄球だし! 当然のように戻ってこない!」

 

 ベビー5による当然のツッコミ。

 綺麗な曲線を描いて飛んだ鉄球は、派手に飛沫を上げて遠くの海に落ちた。

 

「俺がブーメランと言えばそれが鉄球だろうとブーメランよ! 細けぇことは気にすんな!」

 

「だいぶ大きなことだと思うだすやん!」

 

「さすがわけのわからない機械人形……話が全く通じないわ」

 

 会話内容は頭が痛くなりそうなものだったが、気を取り直して戦闘に戻る2人。

『グルグルの実』の能力者であるバッファローが回転の勢いを乗せて、『ブキブキの実』の能力でベビー5が変身した武器を振り回す、シンプルながらも強力な連携技。

 

「鉄球がお好きなら付き合ってあげるわ……『武器変貌(ブキモルフォーゼ)・“鉄球女(ハンマーガール)”』」

 

「んニ゛ィ~~~ッ!!」

 

 ベビー5が変化した人間大の鉄球を手に、体全体を高速回転させ、その勢いで加速した鉄球を、目の前の『鉄の兵士』にぶつける。

 ガゴォン!! とすさまじい音が鳴るものの、フランキー将軍は健在。受け止めた腕部分の装甲が少しへこんだかな? という程度で、全く効いたようには見えなかった。

 

「アゥ……中々の威力じゃねえか、響いたぜ……おめェらのブーメランも中々だな」

 

「ちゃんと私“鉄球(ハンマー)”って言ったはずなのに!?」

 

「投げすらしてねえし、むしろブーメランとの類似点があるなら聞きたいだすやん」

 

「次はこっちの番だ……見せてやるぜ、この2年間で新たに生み出した俺の新兵器の1つ!」

 

 全く意に介さず『新兵器』を作動させるフランキー。

 背中についたキャタピラ部分からせり出すように、何本ものドリルが現れ……それがせり上がって肩の上に一列に並ぶ。

 その切っ先は、一様にベビー5達の方を向いていた。

 

「ドリル……!?」

 

「“将軍(ジェネラル)”……ドリルミサイル!!」

 

 そしてその全てが、ギュィイイィン! と轟音を響かせながら高速回転し……飛んできた。

 回転するドリルが弾頭となって飛んでくるという凶悪な見た目だが、よく見ると弾頭のドリルではなくミサイルそのものが回転していることがわかる。

 

 しかし殺傷力が高いことに変わりはないため、ベビー5が変身した『ミサイル(ガール)』の爆風によって全て吹き飛ばすことで、2人はどうにかそれを防いだ。

 破片の状態から元に戻りながら悪態をつくベビー5。

 

「まったく、何から何まで無茶苦茶ね……意味わかんないわ。ドリルなのにミサイルって何?」

 

「強そうなものを手あたり次第って感じだすやん。実用に足る形になっているのが不思議だ……開発者はよっぽどの腕をもつよっぽどのバカに違いない」

 

「オゥオゥ、なんだァテメェら、冷めたこと言ってくれんじゃねえか。残念だぜオイ、せっかく俺の新兵器を見せてやったってのに……ロマンってもんがわからねえらしいな」

 

「掘削用の工具に何のロマンがあるっていうのよ……」

 

「最近流行ってる絵物語にそんなのがあったが……影響されすぎだすやん。戦いってもんをなめてるのか……だが確かに、ドリルが優秀な『武器』になるのは否定しないだすやん」

 

「ええ、そうね……なら、私達もそれに応えてあげましょう……冥土の土産にね!」

 

 跳躍し、また姿を変えるベビー5。

 ぐにょーん、と伸び、ねじれるように形を変え……その姿は、二重らせんをその身に刻んだ、巨大な『ドリル』になった。

 

武器変貌(ブキモルフォーゼ)・“螺旋女(ドリルガール)”!!」

 

 その底面についた取っ手をバッファローが両手で握り……『能力』で上半身ごと回転し始める。

 

「だ~~すやんだすやんだすやんだすやんだすやんだすやんだすやんだすやんだすやん……!!」

 

『回転』はバッファローの能力のホームグラウンド。手に盛ったドリルがすさまじい勢いで回転し……巨大さも相まってそのプレッシャーは尋常ではない。

 触れれば人間など即座に血霧になってしまうのは想像に難くない威力。岩盤だろうと容易く貫いてしまうだろう。

 

 それが、空中から勢いをつけて突っ込んでくる光景を見て……フランキーは、将軍のコクピットの中でため息をついた。

 

「いい回りっぷりじゃねえか、あんちゃんよぉ……それだけにがっかりだぜ。お前ほどの螺旋力を持ちながら、男のロマンってもんを解することができねえってことがな……」

 

((螺旋力?))

 

 2人の無言の疑問に答えてくれる者は残念ながらいない。

 最悪ローでもいれば多少教えてくれたかもしれないが、残念ながらいない。

 

 確かにあの回転は、あの女が変身したドリルに強大な力を与えるだろう。

 しかし、ドリルとは……そんな単純なものではない。単なる力とか、重さとか、大きさとか……そんな簡単な要素で推し量れるほど浅くはないのだ。きっと。

 

「それでも歩み寄る姿勢を見せてくれたことに、俺からも敬意を表そう……お前らには理解できねえだろうが、本物の『魂』のこもったドリルの力を見せてやる! 右腕解放……圧縮変形リリース!」

 

 ばっ、と天に掲げたフランキー将軍の右腕。

 

 その先端の手が中に引っ込み……代わりに、ぎゅるん! という音と共に……金属の帯のようなものがせり出して長く伸び、絡み合って二重らせんの形になった。

 そしてそれはぐんぐんと大きくなり……なんと、フランキー将軍の腕よりも一回りも二回りも大きな直径を持つ、巨大なドリルを形作った。

 

 腕のサイズを考えれば、到底収まるはずのない巨大さだが……これもまた、フランキーが『2年間』の間に手にした技術であり、素材。

 その契機は、今から数か月前の……フランキー自身にとっても衝撃的だった、ベガパンクに迫るのではないかというほどの頭脳と技術力を持つ、もう1人の天才との出会い。

 

「あの時、餞別にもらった新素材……その名も『ワポメタルZ』! ワポメタル以上のスーパーな頑丈さに加え、一定の電気信号をトリガーに従来の形状記憶合金の常識を超えた圧縮と変形が可能になるこのスーパーな超合金が、俺とドリルにさらなる力を与えた!」

 

 腕の先ですさまじい勢いで回転しだす、巨大なドリル。

 その腕に左手を添えて構え……切っ先を、突っ込んでくるバッファロー達に向ける。

 

「とくと見ろ! これぞ『フランキー将軍』が持つ三大必殺兵器の1つ! そんな魂の乗ってねえドリルで受け止められると思うなよ!」

 

 背中と 脚から『キィィイイィィ……!!』と異音が響きだす。

 その内部では、大量の空気が圧縮され……今か今かと解放の時を待っていた。

 

 そして、『フランキー将軍』がわずかに身をかがめた直後……背中と足から吹き出した膨大な空気は、フランキー将軍をその手のドリルと共に流星に変えた。

 巨体は一直線に飛び、構えられたドリルの切っ先は……こちらに向いて突っ込んでくるバッファローらのドリルの切っ先と互いを狙い合う形で飛ぶ。

 

 迫りくる巨体のプレッシャーに、回転しながらもバッファローの頬に冷や汗が伝い――自らの回転の爆風ですぐに吹き飛んだが――しかし任務のため、ひるむことなく突っ込んでいく。

 

 フランキー将軍のドリルと、バッファロー達のドリル。

 轟音を響かせながら、2つのドリルは、絵物語の一場面のように、空中で激突し―――

 

 

 

 「“将軍(ジェネラル)”ゥゥ……“ドリル”ゥゥ……“ブレイク”ゥゥゥウウゥゥッ!!」

 

 

 

「んニ゛ィあぁぁ―――っ!?」

 

「きゃぁああぁあ―――っ!?」

 

 

 

 軍配は……“ロマン”に上がった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 その後、ルフィ達がフランキーに合流し、無事にシーザーの身柄を確保。あとついでにベビー5とバッファローの身柄も確保し……『パンクハザード』での共同作戦は無事に成功に終わった。

 

 そして、『さっさとここを出るぞ』というローの進言を完全に無視していつもどおり宴に突入。

 保護した子供達や、途中から行動を共にしていた侍・狐火の錦えもんとその息子・モモの助、さらには敵であるはずの海軍G-5までも一緒になってのどんちゃん騒ぎとなった。

 

 海賊と海軍という不俱戴天の敵同士であるはずの両者だが、もうなんかそのへん誰も気にしてないないので言うだけ野暮という空気である。

 たしぎ大佐が苦笑し、スモーカー中将がため息をついて頭を抱えていたのは言うまでもない。

 

 最終的には、その2人にローも加えた三者も『気にしても無駄』『疲れるだけ』と割り切ったのか、騒ぎに混じりこそしていないものの、普通に料理を口にして体を休めていたそうな。

 

 

 

 ちなみにその最中、

 

「……ところでトラファルガー、1つ聞かせろ」

 

「? 何だ、白猟屋?」

 

「途中シーザーが言ってたことが引っかかってるんだが……なぜあいつは、俺の心臓を持ってるつもりでいたんだ?」

 

 作戦に動く前、スモーカーは既にローに心臓を返却されていた。

『命を助ける代わりの取引』……その、対価の前渡しとして。

 

 つまり、スモーカーの心臓はずっとローが持っていた。にもかかわらず、なぜかシーザーは自分がそれを持っているつもりになっていた。

 

 なお、そのシーザーは『なぜ生きてる、スモーカー……?』と困惑している。G-5の海兵達に、割とレベルの低い拷問をされながら。

 

「今更な問いかけだな……聞く意味あるのかそれ?」

 

「まあ、別にねえが……教えたくなけりゃ構わねェ。途中で能力で奪い返しておいたとか、そんなところだろう」

 

「……いや、最初から渡しちゃいなかった。お前のはもちろん……俺の心臓もな」

 

「…………?」

 

 ローはおもむろに、懐から何かを取り出す。

 それは……ドクン、ドクン、と脈打っている心臓だった。ローが『オペオペの実』の能力で取り出したものだろう、透明な箱に、空間ごと斬り取られて入っているような見た目をしている。

 

「誰の心臓だ、そりゃ?」

 

「俺のだ。『スペア』のな」

 

「……何?」

 

 次の瞬間、その心臓は鼓動を止め……動かなくなった。

 それをローは再び懐にしまう。

 

「詳しく話すと長くなるが……まあ『能力』さ。シーザーに渡してあった心臓は、両方『スペア』……最悪潰されても、俺もお前も何の問題もねえ心臓だった、ってだけだ」

 

「……よくわからねえが、勝手に人の心臓増やすんじゃねえよ、気持ち悪ィ」

 

「ハッ」

 

 

 

 この2年間で能力を成長させたローが可能になったことの1つに、『代替臓器の接続』がある。

 

 簡単に言えば、現代医療で心臓などの手術をする際、一時的に人工心肺に患者をつないで生命維持を図るようなもの。

 仮に一時的に本人の心臓が止まっても、接続し同期させた『代替(スペア)』の心臓があれば、それによって体のポンプの役割はなされ、体中に血液と酸素は送られ続ける。

 

 遡ること数か月前。

 ローがこの島に来た時、シーザーから取引として提示されたのは……『自分の心臓を俺に預けろ』というもの。そしてその代わりに、シーザー側からは、モネの心臓をローに預けると。

 

 その条件を飲んだローだったが、その際に渡したのは……ロー自身の心臓ではなく、すりかえた『スペア』の心臓だった。

 

 ただの偽物ではない。その渡した方の心臓も、まぎれもなくロー自身の心臓ではあった。

 ただし、『金獅子海賊団』の研究部門で開発された発明の1つ……『人工臓器』の技術により、ロー自身の細胞サンプルを元にして培養・複製されたものだが。

 

 シーザーから、心臓を預ける取引を持ち掛けられるだろうことを予想して、あらかじめ『スペア』を用意してあったローは、そのスペアと自分の心臓を『接続』し、同期させた。

 これにより、本物の心臓に何かあった際は、スペアの心臓が繰り上がって『本物』になるわけだが……逆に、スペアに何かあった場合、その影響が一部本物の心臓にもフィードバックされる。

 

 例えば先刻、反抗的な態度をとったローに苛立ったヴェルゴが、持っていた心臓を強く握ってローを苦しめた。

 あの心臓は『スペア』だったわけだが、同期している間は、スペアを痛めつけられた痛みも一部がロー本人に来るようになっている。

 

 これにより、苦痛を与えられるというリスクはあるものの、逆にそのおかげでヴェルゴたちは、自分の手の中にある心臓が偽物であるということを疑うことはなかった。

 相手に『自分の心臓を握っている』と認識させておくには好都合なのだ。

 

 もし、単純に偽物をわたしておいて、不意打ちでそれを攻撃された際に自分に何のリアクションもなければ、即座に見破られてしまい、何らかの対処をされてしまうだろう。

 

 いざという時は『接続』を切るだけで、シーザー達の手元にある『人質』としての心臓は、何の役にも立たない肉の塊に早変わりする。

 万が一スペアの心臓が潰されてしまった時は、即座に接続そのものが切断されるため、これも何も問題はない。

 

 首輪をつけたつもりにさせて、いつでも鎖を引きちぎれる状態でローは動いていた。

 

 なお、シーザーに『スモーカーの心臓』として渡したものも、複数用意してあったローの人造の心臓である。それをスモーカーの心臓と『接続・同期』させたものだった。

 遺伝子、ないし『血統因子』的に別人の心臓であっても、同期率は下がるが接続自体はできる。人間の上半身に動物の下半身を接続することすら可能な『オペオペの実』、その能力を高レベルで使いこなすローであれば造作もないことだった。

 

(俺1人じゃたどり着けなかった技術や発想……『立場』を受け入れ、時間をかけて準備した甲斐は間違いなくあった。これが『プロフェッサー』ならさらに、スペア云々の問題じゃねえくらいに滅茶苦茶な『改造』までやったりするんだが……よくもまあ躊躇いなくあそこまで……まあ、別にどうでもいいが)

 

 そんなことを考えながら、ローはまた懐に手を入れる。

 今度取り出したのは、『取引』の時に預けられた、モネの心臓だった。不可視の箱の中でまだ脈打って動いており、それはつまり、モネが健在であることを示している。

 言うまでもないが、ここでローがこれを握りつぶしでもすれば、どこかにいて生きているモネも……確実に死ぬことになる。

 

 しばし考えて……ローはそれを、再び懐にしまった。

 

 

 

 事件の顛末としては、宴の終了後、『麦わらの一味』はシーザーとロー、さらに錦えもんとモモの助を乗せてさっさと島を出ることに。

 一路『ドレスローザ』へ、そして“取引”のため『グリーンビット』へ向かうこととした。

 

 誘拐され、研究所に監禁されていた子供達と、シーザーに騙されていたケンタウロス達……もとい、元・囚人の研究所スタッフ達は、海軍G-5の面々が連れていくことに。

 

 そのうち、子供達は、たしぎとG-5の一部の海兵の付き添いにより、タンカーで先んじて運び出すことに。

 子供達を助けることは、ナミをはじめとした『麦わらの一味』の意思でもあるため、タンカーは海軍が使うことで問題なく合意となった。

 普通の船には乗るのが難しいくらいに体格が大きくなってしまっている子も多くいるので、彼ら彼女らを運ぶ以上は、軍艦を待たないのならタンカーは必須だとすら言えた。

 

 残る海兵達とスモーカー、そしてケンタウロス達は、G-5から追加で到着する予定の応援の軍艦を待って戻ることになった。

 

 ケンタウロス達は特に拘束などされてはいないが、抵抗することもなく諾々と指示に従い、大人しくしている。

『茶ひげ』を筆頭とする彼らの中には、知らない間にさらにシーザーの人体実験に使われていた者もいた。ゆえに、その治療を受けるためと、助けられた恩に報いるためとして、大人しく捕まることを選んでいた。

 

 こうしてルフィ達は、子供達の笑顔と感謝と、そして海兵達の形だけの罵詈雑言を受けながら……『パンクハザード』を後にした。

 

 

 

 

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