『事件は会議室で起こってるんじゃない、現場で起こってるんだ!!』
……と、いうセリフが最近流行ってるらしいです。
出元は例によって私の小説なんだけどね。
こないだの『ドラム王国』での経験をもとにして、前世であった某有名刑事ドラマをインスパイアして作ったアイデアを小説にした結果である。
タイトルは『大雪山の英雄』。
ある『冬島』で起こった遭難事件。
遭難したのは、その島でスノーレジャーを楽しんでいた貴族の一行だった。
一刻も早く捜索して救助しなければいけないはずなのに、その指揮を行うはずの上層部の面々は、『安全管理が不十分だったんじゃないか』『この責任はだれが取るのか』というような、後回しにしろと言いたくなるようなことばかり会議で話していて、現場で戦う捜査員たちの足を引っ張ってばかり。
挙句の果てには『もし貴族達が死んでいたら利権はどう分配するのか』という、不謹慎にもほどがある話まで飛び出してくる始末。
それでいて、いざその被害者である貴族の居場所がわかって助けようとすると、今度はその貴族の覚えをよくするために『うちの部下を向かわせよう』『いやいやうちの部下を』と手柄を取り合ってまたしても現場の足を引っ張る。
それを現場が指摘すると『平民風情が生意気を言うな』などと言ってくる始末。
目先の利益や手柄のみを考えて、被害者のことを何も考えていない上層部にキレた主人公が言い放ったのが、冒頭のセリフである。
その言葉に心を動かされた現場の指揮官が、上の意向を無視して救助を命令したことで、被害者は無事に助かり、後遺症なども何もなく回復する。
そして、実は通信用の電伝虫が混線していたせいで、そのやり取りを一部始終聞いていた貴族は、腹いせに現場の指揮官を更迭しようとする上層部達を一喝し、正義に従って救助を命じ、それを実行した主人公と現場指揮官は賞賛され英雄となるのだった……というストーリーです。
『自分の正義に従って上の命令を無視して救助に行った彼らがかっこよかった』とか、『上層部の老害連中がきちんと『ざまぁ』な末路を迎えてスカッとした』とか、ファンレターもいっぱいもらった。
こういう読者の声が聴けるのも、作家の醍醐味なんだよなあ……1つ残らず読んで、執筆のための励みにさせてもらってます。
ただ、なんか一部の貴族からは『まるで貴族やその部下が愚か者みたいに書かれていて不愉快』『貴族には平民なんかじゃ想像もできないような事情がいくつもあるものだ』なんていう、アンチ気味な意見も届いたりしてるみたい。
……まあ、1つの意見として受け止めるけどね。そういう考え方もあるんだ、って。
……もしかしてだけど、身に覚えがある愚行が作中に出て来て不快な思いをしたのかな? ……なんて思ってしまうのは、穿った見方だろうかね。
でも、『上の立場の者をこき下ろす』的な話を書くと、一定数こういうの毎度出る気がするんだよな……。
さて、私の作家業の方に関する報告はこのへんにして……そろそろ次の取材、もとい冒険についての話に移ろうか。
今回はちょっと、単にワクワク刺激を求めての冒険じゃなく……ちょっと目的ありきで行こうと思ってる場所があるんだよね。
☆☆☆
と、いうわけでやってきましたるは……造船の町『エレナ』!
ここで私の、新しい船を作ってもらおうと思います!
今私が使ってる船って、出来合いの中古品を安く買ったものなんだよね。
なので、買う時に懐にはやさしいけど、性能はそこそこどまりだ。
ここ最近、賞金稼ぎを頑張って、さらに執筆の方も頑張って、結構貯金ができた。
それと同時に、そろそろ乗っている船にガタが来始めた。水漏れとか、目に見えて大きな破損こそないけど、ちょっと音が変だったり、不穏なんだよね。
なので、買い替えるかと思ったときに……せっかくだし思い切ってオーダーメイドにしようかと思い立ったのである。
『造船』と考えた時、まず一番に思い浮かんだのは、水の都『ウォーターセブン』だった。
ワンピース原作でも出てきた、世界最大規模の『造船』の町。世界政府御用達の造船会社『ガレーラカンパニー』が存在する場所だ。
ルフィ達の新たな船『サウザンドサニー号』もここで生まれた。
しかし、今私がいる場所からは、ちょっと遠すぎるんだよね……。私の拙い航海術だと……無事にたどり着ける自信がない。
それに、今ってまだ『ガレーラカンパニー』できてないはずだし……なんなら、うろ覚えだけど、まだ船大工トムが『海列車』の開発中なんじゃ?
いやまあ、だからどうこうってことでもないけどさ……造船会社なら、『ガレーラ』じゃなくても他にいくつかあるだろうし。
そうなると他に船を作ってもらえる場所は……と調べると、意外と近くにもう1つ、有名な造船の町があるということが分かった。
それがここ……『エレナ』だ。
ワンピース原作に出てきたっけ? 聞いたことない気がするんだよなあ……まあいいか。
ともあれ、無事着いたわけだし、船作ってもらおう。
事前に下調べして、どこの造船所に依頼するかはもう決めてある。
会社に出向いて話をすると、向こうも手慣れたもので、『どんな船にしたいのか』を具体的に聞き出した上で、製作期間と料金はだいたいこのくらいってことで、さっと見積を出してくれた。
予想してたよりずっと短かったし、お値段も十分予算内。迷わず依頼することに決めた。
そういうわけで、あとは完成を待つだけなんだけども……
「……まあ、暇だよね」
本当に『待つだけ』だと暇でしょうがないし、せっかく別な島まで足を延ばしたんだから……色々と見て回りたいよね。
ただ、この島はドラム王国とかと違って、雄大な大自然があるとかそういうわけでもないので……しいて言うなら、それこそ『造船』が島の名物だ。
けど、造船所の中とか見学するのもなあ……絶対邪魔になるもんね。素人がそんなとこウロウロしてたりしたら。
(ウォーターセブンとかだと、一般市民が普通に見学とかしてたみたいだったけど……あれはあの会社が特殊なだけかな? いやでも、造船所の中には入ってないみたいだったし……外から見る分には問題ないか?)
町の人に聞いたら、高台とかから遠目に眺めるくらいなら何も問題ないだろう、とのこと。
その言葉通り、高台……というか、宿屋の屋上からちょうど港が見える位置だったので、店でお弁当買って上がってみた。
そこから、携帯型の望遠鏡で造船所を眺めてみると……思いのほか面白いな。
『造船の町』というだけあって、色々な船があるな……。
よくあるタイプの帆船はもちろん、推進機関のついているらしい、どこかメカメカしい船、軍艦みたいなごつい、軍艦以上にやたら武装がいっぱいついている船……蒸気船まであるぞ。
帆船1つとっても、大きいのから小さいのまで……長くて流線型でしゅっとしたフォルムのものや、タンカーみたいに寸胴で巨大な、すごい大勢乗れそうな船もある。
小さなものでは、手漕ぎ式のボートやゴンドラみたいなものも。ああいうのも確かに『船』には違いないからな……そういうのも扱ってるのか。
川崎船とか救命用ボートみたいな感じで、『船に乗せる船』的な使い方もできそうだな。
けど見る限り……さすがにというか、海賊船っぽいのはないな。
アレも多分、金さえ払えば誰のどんな船だろうと見てくれる『ガレーラ』が特殊だったんだと思うけどね……町の人も、海賊相手の商売に全然慣れてる感じだったし。
さすがに普通の造船所で、海賊船は扱ったりしないか。
『偉大なる航路』の島じゃ、そういうのも珍しくないんだけどな。
ジャヤの『モックタウン』とかはその代表例だろうけど、海賊だろうが何だろうが、金を使ってくれるなら普通に客として迎え入れる、って感じの考え方の町、ないし島はそこそこ多い。
ただ単に政府も関わろうとしなくて無法なだけか、それとも致命的な何かが起こっても取り締まれるだけの力があるから好きにさせてるのか……そういう感じで分類はされてるみたいだけどね。
前者の代表例がモックタウン、後者の代表例がウォーターセブンかな。
けど、どうやらこの島はそういうのに該当しないみたい。
普通に、民間の会社とかから発注を受けて作ってる船だけみたい…………んっ?
(あれ、かと思えば……海賊船、いたぞ?)
一隻だけだけど、いた。
港のハズレの方に、ぽつんと止まって……ん? 違う。
止まってないな? むしろ今から止まろうとしてる感じに見える。
というか、今まさに港に入ってきたところか?
……港の人達は……なんかすごい慌ててるな。入ってきた海賊船を指さして……
海賊船の上では、海賊達が剣とか銃を構えて雄たけびを上げてる……
…………
(あ、そうか。アレ客とかじゃなくて普通に略奪に来たんだ)
なーんだそうか、どうりでなんか海賊達は殺気立ってる上に、港の人達がおお慌てで逃げまどい始めてると思った。
宿の下の方……町の中も、話が伝わったのか、騒がしくなってきたみたいだし。
なるほど、そういうことだったか。
………………
うん、『なるほど』じゃないわ。
こうしちゃいられない。この町を襲われたら私が困る。
せっかくこれから、新しい船作ってもらうところだってのに。
被害が出る前に、さくっと介入させてもらおう。
困ってるようだし、町の人達には文句は言われまい。
★豆知識★
造船の町『エレナ』
ワンピース映画版『デッドエンドの冒険』で、過去話の中でだけ出てきた町。
数年前、海賊に襲われて既に滅んでいる、という設定らしい。
今回、町の景観とか諸々の設定は適当に想像して創作の上、舞台にしてみました。