大文豪に私はなる!   作:破戒僧

270 / 306
今回、諸事情により一挙2話更新しております。
この後投降する次話と合わせてお楽しみください。


第270話 ローの策

 

 

 海に浮かぶ救命ヨット。

 そこに、ベビー5とバッファローの頭部―――ただし、ローの能力で切り離されたものであるため、首だけでしゃべるし泣きもする―――と、電伝虫と発煙筒が乗せられて漂っていた。

 

 そこに降り立った、王下七武海の1人……ドンキホーテ・ドフラミンゴ。

『パンクハザード』を目指して『空の道』を進んでいた彼は、眼下にこのヨットを見つけて降りて来て……これが自分へ向けたローのメッセージだということを悟る。

 

 電伝虫は既につながっており、擬態した電伝虫がローのそれを思わせる目つきの悪さでこちらを見返してくる。

 

 シーザーを返すためのローからの要求は、ドフラミンゴが『王下七武海』をやめること。

『七武海』として、追われぬ海賊として築き上げた表の地位を全て捨て……ファミリー共々海軍に追われる身に戻ることだった。

 

 条件を飲めば。裏の仲買人『ジョーカー』としての立場は一応は守ることができる。シーザーをとりもどすことで『SAD』もまた作ることができるだろう。

 しかしそうなれば、今度は海軍がドフラミンゴを追う。地位を捨てたドフラミンゴの『危険度』を鑑み、『大将』が差し向けられる事態になる可能性が高い。

 

 しかし断れば、シーザーは殺され『SAD』は二度と手に入らなくなる。『SMILE』の製造もできなくなる。

 その結果……最も大切な取引先である『百獣のカイドウ』を怒らせることになり……消される。

 

 それを突き付けたローに対し、ドフラミンゴは……

 

「……フフフ……フッフッフ……!」

 

 笑う。

 煮えたぎる怒りを隠してのものか、それとも本当に落ち着いているのか……声音からはわからないし、見ているバッファロー達からも、顔色を見ても今一読み取れない。表面上は少なくとも、きちんと落ち着いている……ようには見えた。

 

「あの自暴自棄のガキが、一丁前のことを言うようになったな……嬉しいやら悲しいやら」

 

『昔話に応じるつもりはない。返答はいらない、行動で示してもらおう。明日の……』

 

「いいのかこんなことをして……『金獅子海賊団』に居場所がなくなるぞ?」

 

『…………』

 

 割り込むようにして言ったドフラミンゴの指摘に、ローの言葉が止まる。

 

「いくらあの『お嬢様』に信頼されているお気に入りとはいえ、今回のこれは、お前1人の判断で行うにはあまりに無茶が過ぎてる。お嬢様はこのことを知ってるのか? 大親分は? このことが知れた時……お前も、お前の今の立場も、無事じゃ済むまい」

 

『お前が心配することじゃない……いや、むしろ心配することが違うだろう。お前『こそ』だ。』

 

「……!」

 

『さっきは『海軍大将』と『百獣のカイドウ』だけを引き合いに出したが、お前にとって警戒しなければならないのはその2つだけじゃない。昨今有力な『商売敵』とかな……隙を見せれば、いつどんな形で切り込んできて、『闇』の利権を切り取られて奪われるかわかったものじゃあるまい。下手をすれば、『SMILE』の収益が吹き飛ぶほどの損害につながるだろう』

 

「商売敵って……『金獅子海賊団』のことを言ってるの?」

 

「あいつらは『七武海』の一味で、『闇の市場』に関わりは持ってないはずだすやん……!?」

 

「……表向きは、な。裏では何をどうしてるか分かったもんじゃねえ……何せ、実質の頭目は今もあの『金獅子』だ。顔を上手く隠して取引を行うくらいは朝飯前だろう……最近はそれがらみで、『お嬢様』との間で何かと騒がしいらしいじゃねえか? フッフッフ……」

 

『……? そこまでわかってるなら、お前がやるべきことはわかるだろう』

 

 話している最中に頭が冷えて来たのか、苛立ちゆえの声の調子も整って……元々の冷静なそれに戻っていくドフラミンゴ。

 その変化が少し気になったのか、やや間を開けつつも、ローは続ける。

 

『今回の件が知られて、対処するより前に『金獅子海賊団』に動かれれば、仮に取引自体が上手くいっても、大損することになるのはお前だ。闇の販路の争奪戦や、最悪武力衝突もあり得る。時間をかければかけるほど傷が大きくなる。……それがわかったら、せいぜいもっと焦るんだな』

 

「…………」

 

『リミットは明日の朝刊。お前の『七武海脱退』が報じられていればよし……こちらからまた連絡する。そうでなければ交渉は決裂だ』

 

 

 ―――ガチャッ……ツー、ツー、ツー……

 

 

「………………」

 

「……わ、若様……」

 

「すまねェだすやん、俺達がしくじったせいで……」

 

 うんともすんとも言わなくなった電伝虫を前に、ドフラミンゴをしばし沈黙を保ち……

 

「……フッ」

 

「「…………?」」

 

「大したガキだ。最悪は『金獅子海賊団』まで巻き込んで俺に嚙みついてくるつもりか……いや、あるいは俺を排除することのメリットを餌に『金獅子』を動かせると踏んだか……フッフッフ……」

 

 

 

「……バカなガキだ。一丁前の策士にでもなったつもりで、聞いてもいねえことをぺらぺらと……フフフ、おかげでこっちはかえって冷静になれた。換えの利かねえシーザーの身柄を押さえることで俺への優位を手に入れ、さらに『金獅子』も含めて敵となり得る者達を並べ連ねて俺を焦らせ、主導権を握ったつもりなんだろうが……」

 

 

 

「“わかってない”のはお前の方だ。何も知らない、哀れなロー……!」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 場面は移って、『サウザンドサニー号』の船上。

 

 ドフラミンゴとの交渉を終えたローは、『麦わらの一味』と『ハートの海賊団』の海賊同盟について、そして今後目標とすることになる『百獣のカイドウ』の打倒について説明していた。

 

 作戦の内容を単純に説明すれば、『ドフラミンゴとカイドウを潰し合わせてその漁夫の利を狙う』というもの。

 

 カイドウは今、ドフラミンゴから人造悪魔の実『SMILE』を大量に買い込み、海賊団内部の強化を推し進めている。

 彼の有する『百獣海賊団』には、すでに500人を超える『SMILE』の能力者がいるという。

 

 しかし、ドフラミンゴがこれ以降『SMILE』を販売できなくなれば、カイドウの怒りはドフラミンゴに向く。

 ロー曰く、カイドウは『話が通じる相手じゃない』とのことで、商品や流通に不備があれば、問答無用で取引相手のドフラミンゴを粛清しにかかるという見立てだった。

 

 そうして双方の力がそがれたところで、一気にカイドウを叩く、というのが作戦。

 

「でもそれ、当然だけど、シーザーを誘拐したり『SAD』とかいうのの製造施設を壊した私達にも『カイドウ』の怒りは向くわよね?」

 

「ああ。だが、先にやられることになるのはドフラミンゴだ。多数の顧客を抱える『仲買人(ブローカー)』という立場上、所在もはっきりしていて隠れることができない。下手に孤立すれば海軍に察知されるからな。俺達は勢力で劣る分、小回りが利く。一時的に身を隠し、タイミングを見計らって攻撃すること自体は難しくない」

 

「相手がカイドウとドフラミンゴだけならそうかもね。……でも、そこに『金獅子海賊団』が加わる心配はないの?」

 

「……!」

 

 ロビンからの指摘に、ローがぴくりと反応する。

 

「しつこいと思うかもしれないけれど……重要な内容だから、あらためて確認させて頂戴。今回のこの作戦、『百獣のカイドウ』の怒りは、ドフラミンゴや私達だけでなく、あなたが今所属している『金獅子海賊団』にも向く可能性もあるんじゃない?」

 

「そりゃそうだ……カイドウってのが、今聞いた通りの『話が通じない奴』なら、おめェの独断で動いたなんて弁明したところで聞くとも思えねえ。スゥやソゥに矛先が向くかもしれねえな」

 

「それだけではありませんよ。今回のローさんの独断行為は……『金獅子海賊団』側から見れば、半ば外患誘致……裏切りに近い行為です。ロビンさんがすでに指摘したとのことですが、海賊団を追放されるか……下手をすればローさんに刺客が送られる可能性も高いのでは?」

 

 フランキーとブルックも一緒になって指摘する。

 それを聞いたローは、何かに反応したようにぴくっと眉を動かすも、冷静な口調のままで1つ1つ説明していく。

 

「それについてはさっきも説明した通り……ああ、悪い、詳しくは保留にしてたんだったな」

 

 パンクハザードでの話の際、『作戦の第一段階が成功した後で』と言って後回しにしていたことを思い出し、説明を始めるロー。

 

「もうすでに述べた通り、この先の説明の段階で『金獅子海賊団』の不利益になるような要素はそぎ落としていくつもりだ。『百獣海賊団』が『金獅子海賊団』を目の敵にするような理由を取り去ることができればいい。手はいくつか考えてある」

 

「具体的には?」

 

「1つ例を挙げれば……『裏』の利権だ。知っての通りドフラミンゴは、闇の仲買人(ブローカー)として闇市場で大規模な取引を行い、莫大な利益を出している。奴が失脚することになれば、その顧客達は路頭に迷うわけだが……『金獅子海賊団』ならそれを、全てとは言わないがある程度カバーできる。新規の顧客から集められる利益は、規模にして軽く数十億ベリーにはなるだろう」

 

『数十億……』と、金額の大きさに一瞬ナミの目が『ベリー』のマークになる。

 しかしすぐに気を取り直して、今度はナミからローに質問。

 

「でも、スゥのところがそんな……あの連中がやりそうな裏取引に手を出してるなんて聞いたことないけど? 『七武海』の中でも特に政府や海軍に協力的で、クリーンで良心的な存在だって世間には知られてるはずだし……」

 

「お嬢は、な。だが、腐っても海賊団だ……裏では色々とやってんのさ。主に大……」

 

 

 

「あのさあ……そのへんにしてもらえる、ロー?」

 

 

 

「「「……っ!?」」」

 

 突然その場に響いた声。

 それは……この船上で聞こえるはずがない声だった。

 

『麦わらの一味』の誰とも一致しないのはもちろん、錦えもんやモモの助とも違う。捕まって縛られているシーザーとも……当たり前だがローとも違う。

 そして何より……その場にいる者達のうち、数名にとって……聞き覚えのある声だった。

 

 反射的に全員、その声が聞こえた方向を……『真上』を向く。

 

 サニー号のメインマストの上、そのてっぺんには、メリー号がそうだったのと同じように、見張り台が取り付けられている。

 その見張り台の底面に、重力に逆らって逆さに立っている者が1人いた。

 

「……あれ? あいつ確か……」

 

「お」

 

「……っ……もう来やがったか」

 

 ルフィ、ゾロ、ローが三者三葉の反応をする中、その人物はとんっ、と立っていた場所を軽く蹴り……そのまま落下。

 しかし、甲板に激突する直前で急減速し……くるりと一回転して体制を整えて着地した。

 

 そして、今のでわずかに乱れた髪……短く切りそろえた金髪を手櫛でさっと整えると、ローに向き直る……が、その前に一旦ルフィの方を向いて、

 

「勝手に船にお邪魔してごめんね、麦わらさん。ちょっとそこにいるうちの問題児に話があってさ」

 

「やっぱおめェかあ! 『頂上戦争』の時以来だなー……ちょっと背伸びたか?」

 

「あはは、育ち盛りだからね~! さて……」

 

 そして、今度こそローに向き直る。

 

「っ……『ひな壇』最強がいきなりお出ましとはな……。そんなにお嬢を怒らせちまったか?」

 

「お母さんじゃなくておじーちゃんの指示だけどね。そういうわけだから……説明してもらえる、ロー? お母さんにすら一言の相談もなく……何を考えてこんなことしたのか」

 

 そう言って、彼女……アリスは、甲板にあったベンチに腰かけて……にっこりと笑ってローの方を見据えた。

 顔は笑顔だったが……目は、決して笑っているとは言えないそれだったと、この場面を見ていた者達は後に語った。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。