悪いな、ありゃ嘘だ。
なんか妙に筆が進んだので更新します。
ドレスローザ編開始です。どうぞ。
第273話 陰謀・混迷・ドレスローザ
ドンキホーテ・ドフラミンゴ、『王下七武海』脱退を表明。
同時に、ドレスローザの王位を放棄。
『海賊同盟』の標的であるドフラミンゴが、ローの要求通りに『七武海』を辞めたことを確認した一同は、次なる作戦を進めるために動き出す。
目標は2つ。『SMILE工場の発見と破壊』と『シーザーの解放』である。
より正確に言えば、その途中で、錦えもんの仲間である侍の1人『カン十郎』を救出する、というのも目標ではある。
しかし、そのカン十郎の居場所も、そして破壊目標であるSMILEの工場も、どこにある(いる)のかがわからない。ローも、それだけは調べることができなかったとのことだった。
ゆえに、『工場破壊チーム』は、その工場の場所を探るところから始める必要があったのだが……入国して早々、トラブルが頻発し、散り散りになってしまったのだった。
とある盲目の博徒とのいざこざの際、盗まれた『秋水』を盗んだ犯人を追いかけて飛び出して行ったゾロと錦えもん、さらにそれを追うサンジ(迷子防止)。
残されたルフィとフランキーは、裏路地でドンキホーテ・ファミリーの下っ端を発見し、何人か締め上げて『工場』と『侍』の場所を聞き出そうとするが、下っ端程度では有益な情報は持ってはおらず、どうやって探したものかと首をかしげて考えていた。
しかし、全く何も情報が手に入らなかった……というわけでもない。
「コロシアムの地下、か……」
このドレスローザの熱狂の中心ともいうべき闘技場『コリーダコロシアム』。その地下には、地上部分以上に広大な空間が広がっており、その大部分はどのような用途に使われているのかが明らかにされていないのだという。
コロシアム自体の建物は、地下部分も含めて、かなり昔……それこそ、ドレスローザの建国当初からあるものを修繕しつつ使い続けているのだが、同じく当時からある地下空間や、それらを繋ぐ地下通路は、広大な上に複雑すぎて、ファミリーでもその全体を把握できてはいないらしい。
もちろんこれを聞き出した下っ端からは、『何があるかわからない』ということが聞けて分かっただけだったが、フランキーはそこが怪しいと踏んだ。
(パンクハザードの研究所の規模からして……『人造悪魔の実』なんてもん、作るにはそれ相応の設備が必要なはずだ。当然その工場、縦にも横にもデカくなるだろうに……ローが調べてもわからなかったっていうなら、場所そのものが普通に探してもわからないところにある可能性が高ェ……だとすると、その地下空間、怪しいじゃねェか)
「そのコロシアムの中に入るにはどうすりゃいい? 試合に出ればいいのか?」
「一般エリアだけなら入場料を支払えば誰でも入れる。奥の選手専用エリアには、試合に出場する剣闘士以外は入れねえ……らしい。俺はコロシアムの担当じゃねえんでな、細けえルールはよくは知らねえよ。行きゃ説明はあるはずだが……お前ら、試合に出るつもりなのか? ちょっと喧嘩に強いくらいのチンピラじゃ、コロシアムの屈強な剣闘士たちにぶっ殺されるのがオチだぜ?」
「何だとォ!? 俺は海賊おモゴモゴ」
「乗るな乗るな挑発に。……変装の意味がなくなるだろ(小声)。上等じゃねェか、出てやるよそのコロシアムの試合とやら……こっちにも色々と都合があるんでな」
「……そうかい、なら止めねェよ。コロシアムの興業は国の花形だ。ゴロツキだろうが余所者だろうが、それこそ海賊だろうが受け入れる。だが、今日出るなら覚悟した方がいいぜ?」
「? 何だ、普段と何か違うところでもあんのか?」
「今日は若様が特別な大会を開いててな。そのせいで今日はこの国だけじゃなく、他の国々からもえれェ面子が参加者として来てんのさ」
その後、下っ端のチンピラを解放してコロシアムに向かうルフィとフランキー。
なお、帰りがけにそのチンピラから、今日の大会についてかかれたチラシを強奪していた。
「コレが本当ならえれェもんだな……そりゃ各国から人もやってくるだろうさ」
「『悪魔の実』が商品なのか……でもコレ何の能力なんだ? よくわかんねェ……」
フランキーが手に持ったリストを横から覗き込みながら、ルフィは首をひねる。
「自然系『ズマズマの実』……体がプラズマになる能力か」
「フランキー、ぷらずまって何だ? 美味ェのか?」
「期待通りの反応ありがとうよ船長。当然食い物じゃねえ。説明がちっと難しいが……まァ、炎や電撃と同じで当たると痛ェもんだ。おめェの兄貴の炎と同じようなもんさ」
「そっか、じゃあどうでもいいや。俺食えねェし。それより、コロシアムに出場して選手のフリして奥に忍び込むんだろ?」
「そうなんだが……」
(ルフィはお世辞にも『潜入』に向いてるとは言えねえんだよな……かといって俺だと、このナリだから一発で海賊……麦わらの一味だってのがバレちまう。ルフィの方がまだ変装はしやすい。サンジかゾロがいてくれりゃまだ何とかなっただろうに……いや、ゾロは迷うから無理……いやでもあいつ迷った末にすげぇところに自力でたどり着くような奇跡起こすよな時々……)
考えた末に結論を出すフランキー。
「ルフィ、選手として出場するのはお前がやってくれ。ただし、正体はバレねェようにな」
「わかった。フランキーはどうすんだ?」
「望み薄ではあるが、一応俺は観客としてコロシアムのあちこちを回ってみる。俺なら『おもちゃ』に見えなくもないからな。あとルフィ、2つだけ言っとく。まず怪しいところがあっても調べなくていい」
「? 何でだ? コロシアムの地下に『工場』がないか探すんだろ?」
「調べるのは後で皆で一気にやるからだよ。1回忍び込んで見つかりでもしたら警戒が厳重になる……後でゾロやサンジと合流して一気に攻め込むからよ」
「ふーん……わかった。あともう1つは?」
「おう、コレ持ってけ」
そういってフランキーは、ポケットから取り出したチョーカーをルフィの首に巻く。
「何だコレ?」
「勝利のお守りだ……ってのは冗談で、それをつけてると、お前がどこにいるか俺が常にわかるようになるんだよ。なんかあった時に駆け付けるために、目印があった方がいいだろ。外すなよ」
「そっか、わかった。ありがとう」
そんじゃ行くか! と意気揚々とコロシアムの受付に向かって歩き出すルフィの後を追いながら、フランキーはチョーカーに組み込んだ装置を作動させる。
すると、今説明した通り、ルフィの現在位置(といっても目の前だが)に加えて……ルフィが今見ている目の前の景色が、フランキーが今かけているサングラスに映し出されていた。
(感度良好、と。ソゥ博士にもらった素材で『
そうして2人は、その後偶然、片足の『ブリキの兵隊』に出会った後、コロシアムの中に潜入し、それぞれに調査を始めるのだった。
☆☆☆
一方その頃、シーザーの引き渡しに動いたチーム。
ドフラミンゴに予告した通り、『囮として』シーザーを解放するため、指定した場所である『グリーンビット』に向かっていた。
その最中、思い出したようにウソップがローに尋ねる。
「なあ……さっきロビンが船で聞いてたことなんだけどよ」
「お嬢と大親分の確執の件か? さっき言った通り、それ自体は
「いやだからそれがどういう意味かって話だよ。確執が事実なら問題なんじゃないのか? 確かに今のこの作戦には直接は関係ないかもしれないけどよ……」
「そうでもない。そもそもそんなものは、『二代目』就任当初からあったらしいからな」
心配するような問いかけに、さらりとそう返すロー。
「穏健派のお嬢と、強硬派の大親分とでは、そもそも『海賊』としてのスタンスが全く違う。全く何の意見の食い違いもなしにいられるわけがないだろう」
「それは確かに。スゥにとっては、海賊の地位なんておまけみたいなもので、その名や地位に固執する気配もなかったわ。一方で、『金獅子』と言えば、ロジャーの時代から生きる『海賊らしい海賊』として有名……スゥとは根本的に考え方が合わないわけよね」
「それでもあの組織は上手いこと回っている。ロビン屋が言ったように、お嬢はほとんど成り行きで『二代目』を継いだようなもんだ。色々やってくれる部下ができて便利になった、くらいは思ってるかもしれねえが、その権力を使って何をしようとかはこれっぽっちも考えちゃいねえ。お嬢にとって重要なのは、自分がやりたいことをできるかどうか……それだけだ。後のことには何ら興味も持っちゃいねえのさ。だから組織の実際のかじ取りは、今も大親分がやってる」
「引退前後で実質的には変わっていないだけ。むしろ、スゥの『七武海』就任によって海軍と政府が手を出せなくなっただけ。一部界隈では当時、政府の失策だなんて言われていたけど……」
「実際、少なくとも表立っては『金獅子』が加盟国や政府関係の機関に手を出すことはなくなったし、しばらくすれば市民達もお嬢を『いい海賊』だとして受け入れた。もともとのネームバリューもあったからな。結果、誰も損をしちゃいない」
「なるほど、当時は『失策』でも、気が付けば『大成功』にもなってた。そしてその時から『確執』はあったけど、問題になるようなものじゃなかったわけか。金獅子は形だけ引退して海賊団で実権を握り続けてるが、スゥは海賊団の運営に興味はねえから何も言わず、互いに邪魔をしない」
「そういうことだ。わかったらさっさと進むぞ」
一応は納得したらしいウソップにそう言って会話を切るロー。
そんな3人を傍から見ていたシーザーはというと、
(シュロロロロ……おめでたい奴らだ。わかったつもりで全然わかっちゃいねえ)
表情には出さないようにしつつ、3人を、いや、『ジョーカー』と本気でことを構えようとしている『同盟』全員を心の中であざ笑っていた。
(互いが互いの邪魔をせず、そもそも興味も持ってねえ……それはつまり、見てねェところで誰が何をしてるかわかってねえってことだろうが。考えが甘すぎるんだよお前らは……海賊ってもんの悪辣さと、それがもたらす『最悪』の想定ができてねェ。今はせいぜいいい気でいるがいいぜ、シュロロロロ……!)
「……おい、なんかシーザーの奴が変な顔に……ってか、悪い顔になってんだが」
「気持ち悪い顔、とも言えると思うわ」
「悪だくみでもしてるんだろ、放っとけ」
「いいのかよ。これからの取引にろくでもねえ妨害してくるんじゃねえのか?」
「そうならないために、『心臓』はこっちが握ってる。隙さえ見せなきゃ問題はない」
なお、『表情に出さずに』の部分は残念ながら成功していなかったようである。
それぞれの思惑を腹の中に抱えながら、ロー達は一路、『グリーンビット』へ向かう。
……そこでドフラミンゴが、こちらの想定を、いや前提を根本からひっくり返してくる罠を張って待ち受けているとも知らないで。
☆☆☆
ドレスローザ、とある裏路地にて。
先程まで、フランキーとルフィに詰め寄られていた1人のチンピラが、人目につかない裏通りの奥の奥まで、よろよろとふらつきながら歩いていた。
しばらく歩いた後、道端に置いてあった木箱に適当にどかっと座り込んで、ふぅ、と息をつく。
それと同時に、その男の腰のあたりから……にゅるん、と何かが出てきた。
それは、先端が槍のようにとがった……いわゆる、悪魔の尻尾のような見た目をしていた。
見た目はともかくとして、実際にそれは『尻尾』だった。
その尖った先端が、どすっ、と男の体に突き立てられる。
その瞬間、男の体が変容していく。大柄でゴツかった体が、急激に縮んでいき……水気がなくカサカサだった肌が、柔らかく瑞々しい少女のようなそれに代わり……ぼさぼさだった髪は。長く艶のあるストレートヘアに。
さらにその頭の横から、これまた艶のある角が生えて来ていた。
あっという間にそこには、数秒前まで男だった頃の面影が服装くらいしか残っていない、1人の美少女が姿を現していた。
そしてその少女は、懐から小電伝虫を取り出して、どこかにかけ始める。
――――ぷるぷるぷる……ぷるぷるぷる……ガチャッ
『俺だ』
「もしもーし、こちらタンタルだよ。指示通り、麦わらさんをコロシアムに誘導したけど……仲間、たった2人しかいなかったけど、いいの?」
『十分だ。残りの奴らについても、大半は居場所は知れてる……見逃すと万が一がありそうなでけェ戦力をある程度ばらして、位置を把握できていればそれでいい。手間かけたな』
「手間は全然問題じゃないけど……フォローよろしくお願いするよ? うちのボス、かなり機嫌悪かったから」
『あァ、悪いな、
「ホントだよ……うちに実害がないとはいえ、スゥお嬢様に隠し事して、半ば裏切るようなことまでさせてさぁ。まあ、今回の件はうちの奴が面倒ごとの発端の一部みたいだから手伝うけどさあ……それでも、うちのボス怒るとホント怖いんだからね? 手間賃期待してるよ!」
『ああ、期待してくれていい。そっちの『ボス』はもちろん、大親分にも喜んでもらえそうな、とびっきりの手土産を、美女何人かに持たせて送る。そのまま女ごともらっちまってくれていいぜ』
「…………美女もいいけど、かわいい顔で儚げな美少年とかもつかない?」
『……ご希望なら用意するが』
「楽しみにしてます! それじゃ!」
『…………おう。じゃあな』
―――ガチャッ。ツーッ、ツーッ、ツーッ……
エースが生きてるので、賞品は適当に強い悪魔の実になりました。
なお、『ズマズマの実』は、舞台版(?)のワンピースで出てきた能力らしいです。あんまりよく知らないんだけど……