大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第275話 急展開

 

 

 コリーダコロシアム、貴賓室。

 間もなく始まろうとしている『決勝戦』。

 

 そこに戻ってきた部屋の主、ドフラミンゴは……部屋の後方に鎖で縛られ囚われている哀れな男の姿が目に入り、あざ笑うようにほくそ笑む。

 その縛られている男……ドレスローザ前王、リク・ドルドは、表情こそ変えなかったが、ドフラミンゴに向けるその目は鋭く、瞳は怒りと憎しみに満ちた光を宿していた。

 

 それを理由含めて知っていてもなお、ドフラミンゴはリク王の思いなど気にもかけず、用意されていた玉座とも言える椅子に座る。

 

「おかえりなさい、若様。ローとシーザーは?」

 

「シーザーは回収したが……ローには逃げられた。だがまあいいさ、協力者たちにも連絡を取って網は広げてある。港も全て押さえた。この国からは出られん」

 

「若から逃げおおせるとは……生意気な奴だすやん!」

 

 ローを取り逃がしたと聞いて、部屋に控えていたドフラミンゴの部下、ベビー5とバッファローは、それを聞いて驚いたり苛立ったりと反応を見せる。

 ドフラミンゴはそれを楽しそうに見ながら、眼下に広がる闘技場で着々と進む『決勝戦』の準備を見物していた。

 

「見ものだなリク王……お前の孫娘がこれからあそこで戦うわけだ。今日までの戦績は本当に大したもんだったが……ディアマンテが相手となっちゃあ、いよいよ悪運も尽きたな」

 

「ドフラミンゴ、貴様ッ……!」

 

「俺を恨むなよ。どいつもこいつも、身の程も知らずに生意気な夢を見るからこうなるんだ。母親と同じで頭の悪い娘さ……。勝者も敗者も、そして王者も……この世に生まれ落ちた瞬間にはもう決まっているっていうのにな。あぁ、本当にそれがわかってねえバカが多すぎる……フッフッフ」

 

 含むような笑い声を響かせるドフラミンゴ。ちょうどその時、闘技場の準備が整ったところだった。

 

 アナウンスが響き渡るのと同時に、選手達の入場が始まる。

 

(『黒ひげ』の大幹部に『海賊処刑人』、『前王の娘』、そして4億のルーキー……小娘以外は、ディアマンテでも楽な相手じゃねえだろうが……まあいい、試合なんぞ見せ札に過ぎん。さて、どんな形で終わりを迎えて、最後に立っているのは誰か……)

 

 敵の強さを認めながらも、己の勝ちを確信して疑わないドフラミンゴ。

 その見下ろす先で、ディアマンテ、バージェス、シュライヤ、レベッカが入場し……

 

 そして最後に、付け髭と兜で顔を隠した戦士……『ルーシー』が入場した。

 ……その背に背負った、1本の鉄パイプと共に。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 一方その頃……今現在、その主が留守にしている、ドレスローザの『王城』。

 

 今しがたその門を豪快に破り、王城に進入したルフィ達の姿を……その上層階から見下ろして、ガクガクと震えている者が1人。

 

「おぉぉぉおおぉい!? 聞いてねえぞお前らどうなってんだ!? 何であいつが……『麦わら』がここに来るんだよ!? 変装してコロシアムに出てるってさっき言ってたじゃねえか!?」

 

「やかましいシーザー! 黙ってろ、今こっちも若に確認してるところだ!」

 

 つい数十分前にドフラミンゴによって救出されたばかりのシーザーは、大したことはないとはいえ、一応怪我の治療をするためと、身柄を狙ってくる可能性があるロー達から守るため、この王城で保護されていた。

 

 しかし、できればもう二度と見たくなかった男の顔を見て、早くも泣きが入っていた。

 

 ドンキホーテファミリーの最高幹部の1人・ピーカは、顔と体に似合わないソプラノボイスでシーザーを一喝しつつ部下に指示を出す。

 

 その部下からの報告によれば、どうやらドフラミンゴも今の状況をよくわかっていないらしい。『麦わら』はコロシアムで行われている決勝戦に出場している……と、思い込んでいた。

 こちらの想定を外れた何かが起こっていることに嫌な予感を覚えつつも、ピーカは切り替えて目の前の問題の対応にあたることを決める。

 

「ここにいろシーザー。俺は少し出てくる」

 

「ちょちょちょちょっと待ておいピーカ! お前俺の護衛としてここにいんだろ!? 俺を残してどこかへ行くんじゃねえよ、あいつらがここに登ってきたらどうすんだ!」

 

「そうならないように、邪魔者共を排除して来るんだ……わかったら黙って待っていろ、ぎゃあぎゃあと耳障りだ」

 

 ぎろりとにらみつけてシーザーに騒ぐのをやめさせると、ピーカはその『イシイシの実』の能力で、城の石壁に沈み込むように消えていった。

 残されたのはシーザーと、彼の世話役兼監視役として残された数人の下っ端構成員のみ。

 

「ちくしょお、あんまりだ……なぜ俺様がこんな……こんな……」

 

 シーザーは力なく、ガスの体でふわふわと滑るように動いてベッドに行くと、ぼすっとベッドに倒れこんで、布団を頭からすっぽりとかぶって、そのままふて寝するように……あるいは怯えて隠れるようにくるまってしまった。

 

「ジョ~~カ~~……! 早く、早く俺に安心をくれぇ……!」

 

 その様子を見て、下っ端達は呆れながらも、与えられた仕事を全うし続ける。

 幸いと言っていいのかはわからないが、シーザーの側から何か用件を言われない限りは、立っているくらいで何もする必要はないし、なんならこの変な男と話したり関わる必要もない。

 侵入者たちは間違いなく、最高幹部のピーカが撃退するだろうと疑わず、気楽なものだと笑っていた。

 

 …………が、

 

「あ、そうだおいお前ら!」

 

 かとおもえば突然布団から飛び出して、下っ端たちに叫ぶようにまくしたてるシーザー。

 

「は、はい!? 何でしょうか(マスター)・シーザー?」

 

「ピーカは行っちまったけど、他の幹部……ディアマンテは今コロシアムだとして、ええと、トレーボルはどこだよ? あいつに守ってもらえば……」

 

「い、いやトレーボル様は無理です。今は『幹部塔』でシュガー様と一緒にお仕事中ですので」

 

「仕事中なのはわかってんだよバカ共! 俺がそっちに行って一緒に守ってもらえばいいって話だ! 勝手に行くから場所を教えろ! 俺細けぇ場所までは聞いてねえんだよ!」

 

「そ、それは困ります“M”! 若様やピーカ様からは、何があるかわからないから、あなたを城から出すなと! 『麦わら』や『ロー』を甘く見るべきではないから、万全の守りを……」

 

「その麦わらがここに来てんだろうがァ! ピーカが強ェのは俺も知ってるよ! けどあいつマジで何するかわかんねえしどこにでも現れるしやべえんだよ! パンクハザードで散々痛い目に遭ったから知ってんだよ俺は! 万が一ピーカを出し抜いてここに麦わらが来やがったらどうすんだ! トレーボルとシュガーがいる『幹部塔』ってコロシアムの地下だろ!? ディアマンテ共々すぐにこれる距離じゃねえじゃねえか! 安心できるか!」

 

「頼むから大人しくしててください、あんたにあちこち動かれたら護衛の俺達が困ります!」

 

「あと『幹部塔』があるのはコロシアムの地下じゃなくてこの真下ですから、何かあればトレーボル様もすぐ駆け付けられますって! 安心して待ってうおぉぉおお!?」

 

 言っている最中に、城が大きく揺れ始める。

 ピーカが『麦わら』達と戦い始めたのだと、誰もが理解した。

 

「……畜生……ダメだ、今出て行ったら見つかる……ってか巻き込まれる……」

 

 さめざめと泣きながら、ようやく諦めたシーザーが再び布団をかぶって丸くなる。そのまま、いじいじとした愚痴のような呪詛のようなセリフが、時々すすり泣くような声が、布団の中から聞こえ続けていた。

 それを見て、納得してもらえたことを安心しつつも、やっぱり呆れる下っ端達だった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 一方その頃、コリーダコロシアム。

 決勝戦会場にて……各ブロックを勝ち抜いてきた猛者達が、壮絶な戦いを繰り広げていた。

 

「龍爪拳……“龍の鉤爪”!!」

 

「魚人空手……“3千枚瓦正拳”!!」

 

 闘技場中央にて、ルーシーの『爪』とシュライヤの拳がぶつかり合い、その衝撃波が周囲の石畳に盛大にひびを入れる。

 

 強大極まりない力と力のぶつかり合いに観客は熱狂し、声を上げる。

 

 ……ゆえに、気づかない。

 その本人達が、拳同士の鍔迫り合いのような状態にいる中で……口をなるべく動かさず、小声で何やら話していることに。

 

「ちょっと待てシュライヤ、お前なんか本気で俺のこと殴ろうとしてないか? 割とマジな殺気を感じるんだが!?」

 

「安心しろ、コアラの嬢ちゃんから許可はもらってる。大人しく殴られろこの要件人間。その場の思い付きで、協力者の俺に相談もなくポンポン作戦変えやがって、調整するのどんだけ大変だったと思ってんだ。テゾーロさんに言ってスポンサー降りるぞコラ」

 

「いやそれは悪かったって! けど、ルフィがいるならこれが最善だと思ったし、急いで手を打たなきゃいけなかったんだって! あいつはじっとしてるのが苦手だし、どう考えても『潜入』だの『調査』だのって静かな仕事ができる奴じゃないから……」

 

「それに関しては、俺がその『麦わら』ってののことを知らねえからノーコメントだがよ……にしたってもっと……っ!?」

 

「? どうし……っ!」

 

 ほぼ同時に2人は気づく。狙われていると。

 その2人を標的に据えて、ステージの向こう側でバージェスが構えを取った。その射線の先にいた観客達が慌てて避難し始める。何のためらいもなく、盛大に観客席を巻き込む技だと、彼らは身をもって思い知っていた。

 

「“波動エルボー”ッ!!」

 

 発生した衝撃波が、ちょうど中心にいた2人に襲い掛かる。

 

 ルーシーは素早く飛び退って回避するが、シュライヤはその巨大な衝撃波に全身を打ち据えられて……大きく宙を舞うことになった。

 

 その光景に、観客席からは歓声と悲鳴が上がる。

 

 衝撃波はなおも進み……先ほどと同じように、その先に合った観客席を容赦なく破壊し、多くの怪我人を出した。

 

 しかし、その威力にあらためて驚き戦慄する観客たちの目の前で……さらに信じがたいことが起こった。

 

 一番最初に被弾し、吹き飛ばされたはずのシュライヤ。

 未だ宙を舞っていた彼の体が……くるりと空中で一回転。体勢を整えて……そのまま、スタッ、とステージに着地した。何事もなかったかのように。

 

 全く効いていない様子で、余裕そうにぱんぱんと服についたほこりを払うシュライヤを見て、観客席からは困惑と興奮の入り混じった声が上がる。

 

『これだァ~! これぞこの男、海賊処刑人シュライヤの恐るべき謎の力! 先のBブロックの戦いでも、“戦う王”エリザベロー二世の『キング・パンチ』を、他の参加者達同様にその身に受けながら、彼1人があっさりと生還した! 全くわからない! いったいどんな手品なんだぁ!?』

 

「手品とは失礼だな……れっきとした技術だぞ」

 

「『消力(シャオリー)』だったか? 相変わらずずるいなそれ……打撃無効って、肉弾戦主体の奴からしたら悪夢でしかないよな」

 

 岩をも砕く威力の拳で殴られた時……それが、木の板や瓦、岩などの『硬い』ものであれば、直撃した瞬間、その衝撃に破壊されてしまうだろう。

 しかしこれが、殴られたものが布や柳の葉などの、しなやかで柔らかいものであれば……岩などのように『砕ける』ことはない。衝撃など、ほとんど素通りさせて受け流してしまうだろう。

 

 それを応用した技術が『消力』。

 通常、力を込めて体をこわばらせて敵の攻撃を受け止めるところを、逆に徹底的に力を抜くことで、宙に舞う鳥の羽のように、衝撃を逃がしてダメージを受けない技術。

 

 ルーシーの言う通り、多くの打撃使いにとって悪夢のようなスキルである。

 

「何でもかんでも無効化できるわけじゃないがな。まあ……便利な技だよ。どっかのライオン娘みたいに、肉体強度だけで無敵にはなれない奴には特にな。覚えたいなら今度教えようか?」

 

「機会があればな。最近は忙しいんで、いつになるやら」

 

 帽子をかぶり直し、ルーシーに軽口で……まるで、よく知った間柄であるかのように返しながら、シュライヤは次の標的を、今ちょうど喧嘩を売ってきたバージェスに定める。

 

 バージェスもまた、技が効かなかったことなど気にも留めず、受けて立つとばかりに拳を構え……

 

 しかし、その両者が激突する瞬間は……来なかった。

 

 それよりも前に……事態は大きく動き始める。

 

 

 

 

 

『ドフィ~~!! すまねえ、シュガーが……シュガーが気絶しちまったぁ~~!!』

 

「……っ!? おい、何の冗談だトレーボル!?」

 

 

 

 

 

『ドフィ! 俺だ、大至急報告しなきゃいけねえことが……』

 

「待てピーカ後にしろ! 今トレーボルの方で緊急事態が……」

 

『こっちも緊急だ! 速く対処しなければ……このまま放置したら、『ジョーカー』が……ファミリーそのものが終わっちまいかねない!』

 

「……っ……一体何だ!? 何が起きたって言うんだそっちで!」

 

 

 

 

 

『シーザーが……あいつが、裏切った!!』

 

 

 

「……何……だと……!?」

 

 

 

 

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