大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第278話 ぶっちゃけマジギレ

 

 

 “ゲーム”開始後まもなく起こった、最高幹部・ピーカの脱落に沸き立つ市民や海賊達。

 

 対照的に、ファミリー側の動揺はそれはもう大きい。

 自分達側の最大戦力の一角であり、多数相手の殲滅戦でも無敵無類の力を誇ると思っていたピーカの敗北である。無理もない。

 

 それをやってのけたゾロは、悠々とルフィ達の元に戻り……

 

「おーいゾロー! どこ行くんだー!?」

 

「こんな時まで迷子になってんじゃねえバカ! こっちだこっちー!」

 

「あ? 何だお前らいつの間にそんなとこに移動したんだ?」

 

「「最初からだよ!」」

 

 ……戻れなそうな事態になっていたのを、ルフィやウソップが必死に叫んで呼び戻していた。

 

「はぁ……全くもう。“ゴッド”さん、コレどうぞ」

 

「え、何……ってうぉ!? お、お前、アリスって奴……え、何だコレ、くれるのか?」

 

 いつの間にか隣に来ていたアリスに驚くウソップだったが、差し出された何か……ビー玉のようなものがいくつか入った袋を手に取り、首をかしげて尋ねる。

 アリスは、耳を貸して、というジェスチャーとともにウソップにこそっと話しかける。

 

「この2年間、ゾロがうちにいたのは知ってるよね? それ、修業中にゾロが迷子になった時に使ってた信号弾。風が吹いてもしばらく消えない奴だから、呼び出すときに使うと効率よく戻ってくるよ多分。使い切るまでに自力で似たようなの作るなり調達するなりしてね」

 

「お、おう、そうか……ありがとよ。……ってか、やっぱそれ関係で苦労かけてたっぽいなあいつ……2年間もすまねえ」

 

「いえいえ、どういたしまして。修行相手としては最適だったからね♪」

 

 そう言って離れていくアリスを、ウソップは感謝しつつも……『ゾロが修行相手になるくらいあいつも強いんだよな……』と、やや緊張しつつ見送った。

 

 実のところ、似たようなものならウソップももう持っているのだが、まあありがたく受け取っておくことにした。

 2年間世話になった信号弾なら、条件反射的にきちんと戻ってきてくれるかもしれないし、普段の目的地指示や迷子防止にも多分役立つだろうと。

 

 そしてやっぱり、よくあの悪癖に耐えて2年間も面倒見てくれたと、スゥやアリス達に感謝することにしたウソップだった。

 

 

 

「ゾロすげえな! あんなことできるようになってたのか!」

 

「まあな……さて、一番めんどくせえ妨害してくる奴はどうにかしたし、ここから先は……」

 

「おう! ミンゴの奴もっかいぶん殴りにいくぞ!」

 

「「「うおおぉぉぉお―――っ!!」」」

 

 ルフィの号令に触発される形で、サイやキャベンディッシュをはじめとした、対ドフラミンゴの『海賊同盟』や、その他、キュロスやトンタッタ族の戦士達など、海賊ではないが一時的に組んだ者達が気勢を上げる。

 

 ついさっきまで、ピーカを両断したゾロの絶技に感動して滝のような涙を流していたバルトロメオも、切り替えて表情を引き締めていた。

 でもやっぱ何かあったらまた泣く気がするが。

 

「ところでルフィ、こんだけの騒ぎになってんのに、ぐるマユ達がいくら探してもいねえな……ひょっとしてあいつら、この『カゴ』の外にいるのか?」

 

「ああ、うん、そうみてえだ。ちょっと前にナミ達を助けに行っちまって戻って来てねえ」

 

「ナミ達……ってことは、サニー号か?」

 

「ええ。ファミリーと海軍の追っ手から逃れるために、ドレスローザの外周の海を回っていたんだけど……途中で『鳥カゴ』が発動して連絡が取れなくなってしまったの。囲っている糸が、電伝虫の念波を遮断する効果があるみたいね」

 

「あいつらには、いざとなったら先に『ゾウ』を目指せと言ってあるから、最悪そこで落ち合えるだろう。とにもかくにも、まずは『鳥カゴ』を何とかしてからだ」

 

 そう締めくくって、ローは上を見上げる。

 ピーカが地形を作り替え、『王の台地』をはるか高い位置まで持ち上げてしまった……という状況は健在だが、これ以上地形をいじられて妨害されることも、前線を飛び越して後方の町を攻撃される恐れもなくなった。

 

 後はルフィ達の言う通り、袋のネズミになっているドフラミンゴを引きずり出して、あるいは城に乗り込んで叩き潰すだけである。

 もちろん、それが容易なことではないのは理解しているが。あと2人の最高幹部と数人の幹部、それに2千人のファミリーに守られ、地形的にもかなり攻めづらい位置にドフラミンゴはいる。

 たどり着くだけでも容易ではないし、抵抗も激しいものになるだろう。

 

 さらに、周囲から収縮して迫ってくる『鳥カゴ』や、『寄生糸』によって無差別に暴れる操り人形達という問題も未だに転がっている。時間は味方とは言えない。

 

 ドフラミンゴの首を取るべく走り出す同盟達。

 

 それを迎え撃つべく、『王の台地』で待ち受けるファミリーの部下達。

 それよりさらに前にも、欲に目がくらんだ、いわゆる『恩知らず』の海賊その他悪党達が『罪人』達を討ち取って金を手にしようと待ち受けている。

 

 それらを蹴散らしつつ、一刻も早く王の台地を目指すことになるだろうと、同盟側の誰もが思っていたが……

 

 

 ―――ザンッッ!!

 

 

 突然、『王の台地』を目指して走るルフィ達の眼前に……切り裂いたような大きな亀裂が走り、『おわァ!?』と全員慌てて急停止した。

 敵の攻撃かと思い、誰の仕業かとあたりを見回して……しかし、犯人は意外な人物だった。

 

「全員そこで止まれ! この先に行くな!」

 

「ロー!?」

 

「おい、どういうつもりだトラファルガー・ロー!?」

 

「まさかお前まで裏切る気じゃねぇよなあ!?」

 

 地面を切り裂いて集団の前進を止めたのは……ロー。

 その意図がわからず、困惑したり苛立ちを見せる『同盟』達を前に、ローは……冷や汗を流し、青ざめているようにすら見える表情で声を張る。

 

「要らねェ心配はするな、別にお前らに敵意害意はない……むしろ助けてやったんだぞ、今」

 

「助けただぁ? どういうことやい、一体!?」

 

「この先に何かあるってのか?」

 

「あるというか、いるというか……まぁ見てろ、すぐわかる」

 

 そう言って振り返り、『同盟』一同と同じ方向を見るロー。

 けげんな表情で彼らもその視線の先を追うように見るが……異変はその直後に起こり始めた。

 

(まあ、元々ブチ切れてたからな……今までよく我慢した方か)

 

 

 

 ―――ゴゴゴゴゴゴゴ……!!

 

 

 

「何だコレ……じ、地震か!?」

 

「お、おい、地面が動いて、だんだん盛り上がってきてないか!?」

 

「まさか、ピーカがまだ……」

 

「いや、違う……」

 

 ルフィ達の見ている前で、この先の……『ファミリー』の雑兵や『恩知らず』の海賊達が待ち受けていた大地が、突如として震え始め、盛り上がっていく。

 

 ……否、盛り上がるどころではなく……

 

「な、何だこりゃあ~~~!?」

 

「地面が……『王の台地』とその周りの地面全部が、浮かび上がっちまったぞ!?」

 

「こんなのさっきの石野郎だって無理だ、一体……」

 

「そ、空飛んでやがる……いや、コレ、地面が浮かび上がっただけじゃねえ! よく見ろ!」

 

 

 

「う、うわあぁぁああ~~~!?」

 

「畜生、何が……何が起こってるんだ!? か、体が浮いて……」

 

「何だコレ、空に……空に落ちていくぞ!?」

 

 大地だけではない。瓦礫も、武器も、倒れた兵士達も……

 海賊も、『ファミリー』も……そして、『王の台地』の最上層にいたドフラミンゴ達ですら、体が空中に浮かびあがり……空に向かって落ちていく。

 

 慌ててドフラミンゴが『糸』を使い、周囲にいるファミリー達を落ちないようにその場にとどめ……他の幹部達も、それぞれのやり方で大地や建物にしがみついたり固定して難を逃れる。

 

「わ……若様ぁ!? これって、一体……!?」

 

「知るか!? くそ、何が起こって……こんなことができるのは、“藤虎”か……!?」

 

 

 

「イッショウさん!? コレぁいったい……」

 

「いやぁ、あっしは何もしてやせんが……はて、一体何がどうなってんでしょうねえ……?」

 

「あんたじゃねェってんなら、一体誰がこんなことを……」

 

 瓦礫や地面を浮かび上がらせて操るというのは、大将“藤虎”の十八番だが、その藤虎も首をかしげており、彼がやっているわけではないようだった。

 彼以外にこんな芸当が可能な者に心当たりがなく、困惑と焦燥のみが海軍の間でも広がっていくが……

 

「待てよ……まさか、これは……そうか、あいつなら!」

 

 海軍中将、“鮫斬り”バスティーユ。

 とある縁で、ある海賊団……そしてそこのトップについてよく把握しており、その能力についてもよく知っていたがゆえに……彼だけが、その可能性に思い至った。

 

 

 

「何だコレ……全部、空に落ちてく……?」

 

「トラファルガー! これは一体何が起こってるんだ!? 誰の仕業だ!?」

 

「ひやはや……ものを浮かせる能力となると、思い浮かぶのは、『金獅子』のフワフワの実か、『藤虎』のズシズシの実だが……『金獅子』は違うな。ここに来ている様子もないし、そもそもあ奴が浮かせられるのは手で触れたものだけ、しかも無生物に限定のはず」

 

「ってことは、“藤虎”か!?」

 

「いや、そのどちらでもない。これをやったのは……」

 

 

 

 「“重力”……逆転。全部全部……空に、落ちろ!」

 

 

 

 やったのは……アリス。

 超人系『リバリバの実』の逆転人間。あらゆるものを『逆転』させることができ……その対象は物体のみならず、範囲指定した『重力』すらそれに含まれる。

 

 つい先ほどまで、シュガーの能力で記憶ごと自分の部下を奪われていたと……それを知って激怒したアリスが、ここにきて本気でドフラミンゴを、ファミリーごと叩き潰しに動き出していた。

 

 ちょうど『王の台地』の周辺を丸ごと、重力を『逆転』させて全てを浮かせる。普通ならば地面に向かって引っ張られ、落ちていくはずが、その逆……あらゆるものが空に落ちていく。

 人も、建物も、瓦礫も、大地も……何もかも。

 

 そして今、空には……

 

「お、おいアイツら、あのまま飛んで……いや『落ちて』いったら……」

 

「空には……空にも、糸が……」

 

 

 

「う、うわあぁぁああ、や、やめて、助けて……」

 

「落ちる、落ちる……やばい、い、糸が……『鳥カゴ』がぁ!」

 

「若様ァ! と、『鳥カゴ』を解除してくれぇ! このままだと……うぎゃああぁあ!!」

 

「い、痛てぇっ!? 刺さる! 斬れる!」

 

「やめて、やめてくれやめてくれやめやめやめ……あぁぁぁあ゛あ゛!?

 

「い、嫌だぁぁああぁああぎゃあぁぁああ!!」

 

「た、助けてくれあぁぁああぁああ!!」

 

 遮るもののない空に落ちて行ったファミリーが、海賊達が……展開しているままの『鳥カゴ』の糸に激突し、切り刻まれていく。

 さらにそこに、追撃とばかりに大量の瓦礫が飛んできて押しつぶし……流れ出た血もまた、空に向かって滴り、落ちていく。

 

 よりにもよって今、地上には……ピーカが破れた時に崩れ落ちた石像の残骸という、大量の弾が転がっている状態。

 それが全て、落石となってファミリーに、海賊に、そして『王の台地』のドフラミンゴ達にまで襲い掛かる。

 

 ドフラミンゴ達は、糸で『王の台地』を固定し、それ以上『落下』しないように止めつつ、落ちてくる大量の瓦礫をそれぞれが迎え撃って防いでいくが、それを漏れてしまった瓦礫が次々に着弾し、大地そのものが砕けて削れていく。

 守り切れなかったファミリーの兵士達が瓦礫に押しつぶされ、あるいは砕けた大地から零れ落ちて空に落ち、『糸』と瓦礫に挟まれて切り刻まれる。

 

 高度的にあまりに高いところで繰り広げられていることであったため、その『惨劇』というしかない光景は、地上の者達にはほぼほぼ見えていなかったことが、幸いと言えば幸いだった。

 唯一、『能力』を使えばその様子を見ることができたであろうヴィオラも……今は別の目的に力を使っていたために、その光景を見ることはなかった。

 

 範囲内の瓦礫という瓦礫が空に落下し、ようやく惨劇が終わったかと思った……次の瞬間、

 

 

 

「“逆転”……解除!」

 

 

 

 アリスの能力が解除され……逆転していた重力が元に戻った。

 すると……どうなるか。

 

「う、うわぁぁああああ!?」

 

「こ、今度は地面に落ち……落ちっ……!」

 

「も、もう嫌だぁぁああああ! 誰か助けてくれぇぇええ!!」

 

 空に向かって落ちていっていた全てが……今度は地面に向かって急速落下し始める。

 人も、瓦礫も、何もかも。

 すんでのところでドフラミンゴが止めていた『王の台地』も。

 

 さらには、先ほど降り注いだ後、『鳥カゴ』の糸に切り刻まれながら通り抜けて空に落ちて行った大量の瓦礫が……再び切り刻まれながら降り注ぎ、散弾となって襲い掛かる。

 

「ふ、っ……ふ、ざけるなぁぁああああ!!」

 

 怒号か悲鳴かよくわからない叫び声をあげるドフラミンゴの元に、石像だったピーカが姿を変えた無数の土砂と瓦礫が落ちてくる。

 二度目はとうとう耐え切れず、『王の台地』は、そこにいたファミリー達もろとも地面にたたきつけられ、それを埋め尽くす勢いで大量の瓦礫の雨が降り注いだ。

 

 さながらその光景は、瓦礫と土砂の絨毯爆撃。

 

 数分前まで確かに、石でできたウエディングケーキのような、多段の台地があったはずの場所。

 そこは今……瓦礫でできた山が広がるばかりになり果てていた。

 

 

 

「『声』の残りは2~3%ってとこか。ほぼほぼ片付いたな。けど、ドフラミンゴを含めて……幹部クラスはさすがにしぶといのと……何人か運がよかったのが生き残ってるみたいだな。そいつらもボクが狩ってもいいけど……」

 

 少し離れた高台。そのさらに上空にフワフワと浮きながら、その惨劇を見届けていたアリス。

 

 その視線が、ちらりと横に向けられる。

 見た先には……再び走り出すルフィ達の姿があった。

 この大破壊を見た後でも怯まず、ドフラミンゴを討ち取るのは自分達だと、アリスばかりに活躍させてたまるかとでもいわんばかりの勢いで、気合を入れ直して駆け出している。

 

 その光景を見て、おかしく思えてしまったのか、フフッと笑うアリス。

 

「今更だけど、やる気になってる男の子の邪魔しちゃ悪いか。ま、僕としてはだいぶすっきりしたし……ここから先はルフィ達に譲ってあげよ。やばそうだったら僕が皆殺しにすればいいし」

 

 

 

 

 

「……それはそうとアリスお嬢様?」

 

「あ、タンタル。ルププも。お疲れ。どしたの?」

 

「あの……ドンキホーテファミリーはまあまあ壊滅っぽくなったけどさ……一緒に王宮とか全部ぶっ壊しちゃったよね? その中にあったはずの物資とかも……よかったの?」

 

「ドフラミンゴを倒した後、本当の王様達が住む場所もなくなっちゃいましたけど……」

 

「………………どうしよう」

 

「ちょっ、お、お嬢様ぁ~~~!!」

 

 

 

 




ドフラミンゴ達がさんざん好き勝手やってくれたせいで、アリスの中のアレキサンダーさんはカンカンです。

そしてこのネタがわかったあなたはきっとハジケリストです。
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