大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第279話 支配の終わり

 

 

 本来の歴史であれば、王の台地を1段目、2段目……と登っていき、その途中で並みいる幹部達との戦いを繰り広げ、最後にルフィとローがドフラミンゴの元にたどり着く……という展開をたどるはずだった、ドレスローザの決戦。

 

 しかしこの世界においては、地形操作を担うピーカが早々と倒されてしまったのに加え、『王の台地』そのものをアリスが破壊してしまったために、ドフラミンゴの元に行くのを遮るものがほぼ何もない状態。

 行く手を阻むはずだったファミリー達も一掃されており、仇敵は目と鼻の先まで来ていた。

 

 瓦礫の中でどうにか生き延びていたドンキホーテファミリーの幹部達の元に、ほとんど妨害されることもなく、同盟軍が殺到する。

 それでも、『原作世界』と同様、幹部達が立ちはだかるが、こちらも原作と同じく……しかし、台地を走破するための体力の消費もなくここまでたどり着いた戦士達が迎え撃つ。

 

 ラオGをサイが破り、グラディウスはバルトロメオが撃破。

 マッハバイスはハイルディンが粉砕し、デリンジャーはキャベンディッシュが斬り伏せた。

 

 ベビー5は……これも割と『原作』通りになった。

 彼女を巻き込んでグラディウスが攻撃を放とうとし、それを『必要とされている』と喜んで受け入れようとした彼女をサイがかばい……そのまま『もらっていく』流れに。

 

 ベラミーは……その意地でもって向かってきたところを、他の誰にも譲ることはなく、ルフィがその手で撃破。

 

 ディアマンテは、13年の時をめぐる因縁の対決の末、キュロスがこれを討滅。

 

 トレーボルは……

 

 

 ☆☆☆

 

 

「ドフィの……我らが王の邪魔をするなァ~~!!」

 

 その身から絞り出す『ベタベタ』の粘液を使い……多彩な攻撃を繰り出すトレーボル。

 大量に出てしまった瓦礫に粘液の鎖を付着させ、モーニングスターのように振り回して大勢を一度に薙ぎ払ったり、無差別にまき散らした粘液で敵を拘束しつつ、引火させて爆破したりと、一見すると汚らしい見た目ながらも、ファミリー最高幹部の名に恥じない戦いをしてみせる。

 

 しかし、相手の使う手札がわかれば、それに対応してみせる者も出る。

 

「全軍前進! 『盾』を掲げて前に出よ!!」

 

 軍師・ダガマの号令で、コロシアムの剣闘士達や、志を同じくする海賊達が、急ごしらえの『盾』を手に持って、トレーボルとの戦いに赴く。

 盾と言っても鉄板を張り合わせて作ったようなものではなく……大きな板に取っ手をつけて、その反対側に瓦礫や小さな板切れを張り付けたり括り付けて装甲にしただけのものだ。瓦礫の量や重さゆえに強度はそこそこあるが、すぐ壊れる。

 

 が、それで問題なかった。

 ダガマがこの時重視したのは、むしろその『すぐ壊れる』……ないし、『壊れてくれる』ところだったのだから。

 

 盾でトレーボルの瓦礫のハンマーや、粘液による爆発を何度か防ぐ。

 すると、トレーボルが今度は粘液のチェーンを直接飛ばして盾を奪おうとしてくるが……装甲が括りつけられただけの盾は、衝撃には強いが引っ張る力には強くない。

 

 トレーボルが『ベタベタチェーン』で引っ張ると、すぐに瓦礫がはがれてバラバラになる。

 

「壊れた盾はすぐに捨てろ! すぐさま次の盾を前に出して壁を維持するのだ! その間に……」

 

 指示通り、使い捨ての盾を幾度も前に出して、ベタベタの能力を防ぐ間に……そのさらに後方から、投石器(スリング)を使って何かがビュンビュンとトレーボルの方に飛んでいく。

 トレーボルが瓦礫のハンマーでそれを薙ぎ払うと、中から可燃性の液体が飛び散って燃え上がった。

 

「んなァ!? 火だとォ~~~!? しかも、これは……」

 

「ガマハハハ!! 見覚えがあるだろうトレーボル!! そうとも、これは……お前らが我々をおもちゃに変えて運ばせたり作らせていた兵器の1つだ!」

 

 地下の隠し港から運び出した兵器の中から、可燃性の粘液を操るトレーボルに効果抜群であろうものを選別させ、ダガマは戦いに投入・利用していた。

 広範囲に可燃性の液体をばらまいて火をつける火炎瓶。それがトレーボル目掛けて何十個も降り注ぐ。

 

 それらは全て、トレーボルの瓦礫ハンマーで迎撃されてしまうが、飛び散った可燃性の液体は地面に……トレーボルの周囲に散らばってしばらくは燃え続ける。

 引火を恐れるならば、大きく動くことも能力を広範囲に使うこともできなくなる。

 

「こざかしい真似しやがってぇ~~~!!」

 

「何とでもいうがいい! 戦場において正しい者とは、最後まで立っていた者、また、より多くの味方を生き残らせたもののことを言うのだ! さあ畳みかけろお前達ィ!!」

 

「よっしゃあ、食らいやがれ鼻水野郎!」

 

「よくも俺達を奴隷にしようとしやがったな……てめェらの武器でくたばりやがれ!」

 

「リング上じゃいけすかねえ奴だったが、こういう場面じゃさすがに頼りになるな……ダガマ!」

 

 盾に守られながら、雨あられと火炎瓶を降らせ、徐々にトレーボルを追い詰めていく。

 加えて、隙あらば、ダガマがまた別に配置した弓兵が火矢を飛ばし、トレーボルがその身に纏った粘液を直接起爆させようとする。

 

 見た目に反して反射神経や動体視力が相当なレベルであるトレーボルは、それら全てに反応して防ぎきるが、前後左右から絶えず攻められ、こちらは思うように攻撃できない状況に、どんどん苛立っていく。

 

「あっったま来たァ~~~!! 調子に乗るな奴隷共ォ!!」

 

 叫ぶと同時にトレーボルは、何本もの『ベタベタチェーン』を伸ばし、周囲から大量の大きな瓦礫を引き寄せて、自分の周囲にバリケードを作る。

 ダガマ達が構える『盾』の陣形以上の密集度合いに、火炎瓶も火矢も届かなくなってしまうが……その中からトレーボルはさらにチェーンを伸ばす。

 

 そして、遠くにあったひと際大きな……建物ほどもある瓦礫を持ち上げる。

 

「で、でけぇぇええ!?」

 

「何だよありゃあ……あんなもの叩きつけられたらひとたまりも……」

 

「畜生、バリケードの向こうからあんなもの……おいダガマ!? どうすりゃいい!?」

 

 兵士達が混乱に陥る中、騒がしい所目掛けて、トレーボルは思い切り高く振りかぶった瓦礫のハンマーを叩き落そうとして……

 

「潰れろォ~~!! ベタベットン……“(メテ)”……」

 

 

 

「必殺緑星……“ドクロ爆発草”!!」

 

 

 

 ―――ドッゴオォオオオォォン!!

 

 

 

「ぎゃあぁぁああああえぇぇえ!?」

 

「「「え……!?」」」

 

 そのトレーボルすら知覚できない、超遠距離から放たれた狙撃が直撃。

 纏っていた粘液に見事に引火し、チェーンにしていた粘液もろとも大爆発を起こした。

 

 それをやったのは……地下で、絶体絶命の状態に陥りながらも、最後にはファミリーに大打撃を与える大金星の活躍を成し遂げた男。

 トレーボルにとっては、シュガーを守り切れなかった屈辱を与えられた仇敵であり、ドフラミンゴを最もイラつかせた、5つ星の『罪人』。

 

 その名は……

 

「ゴ……“ゴッド”ウソップ……また貴様かァ~~~!!」

 

「“ゴッド”だって!? 」

 

「“ゴッド”ウソップだと!? 俺達を助けてくれた、あの救世主か!」

 

「自らが傷つきながらも、ファミリーの幹部・シュガーを倒して、呪いを解いてくれた英雄!」

 

「あ、あんな遠くから撃ち抜いたのか!? 銃だって届くかわからねェ距離だぞ!? すげえ……」

 

「また俺達を助けてくれた……! かたじけねぇ、かたじけねぇよ……!!」

 

「「「“ゴッド”! “ゴッド”! “ゴッド”!」」」

 

 大声援が響き渡る中、トレーボルは今の間にどうにか立て直そうと、重傷の体に鞭打って立ち上がろうとするが……そこに、大柄な何者かが立ちはだかり、影を落とす。

 

「ドフラミンゴがこの国の王……ここがあ奴の国だと? 笑止千万……王とは何か、民とは何か、権力を持つことの意味とは何か……それらの意味を何一つ理解していないチンピラが王の器などと……趣味の悪いままごとだ。見ているだけでも虫唾が走る……!」

 

「……! プロデンスの、王……ッ!!」

 

「地下施設では世話になったな……貴様1人にはもったいない拳だが、存分に味わわせてやるわ……歯を食いしばれ、賊党めが!」

 

 鍛え上げられた体、丸太のような腕。

 頭の上に乗った王冠が飾りに見えてしまうような、戦う者の肉体を持った王が、握りしめた拳を大きく引き絞る。

 

 その光景を見た誰もが、コロシアムで見たあの一撃を思い出し、ごくりと唾をのむ。

 

「ま。待て……動けな……や、やめろォ~~!!」

 

 

 

「“キング”……“パァアァ~~ンチ”!!」

 

 

 

 堅固な城壁にすら風穴を開けて粉砕する威力の拳が、膨大な衝撃波を伴って放たれ……あろうことか拳そのものがトレーボルに直撃。

 トレーボルはその瞬間、自らの体にわずかに残った粘液に自分で着火し、自爆による道連れを測っていたが……王の拳は、その爆風すらも吹き飛ばしてしまった。

 

 インパクトの瞬間に、既に意識ははるか彼方に消し飛んでおり……悲鳴すら、断末魔すら上げることを許されず、トレーボルはその身で無数の瓦礫の山を粉砕しながら、数百mも殴り飛ばされ……ひと際大きな瓦礫の山に突っ込んで、それきり動かなくなった。

 

 声援の中、エリザベロー2世は、振りぬいた拳を元に戻すと同時に、くるりと振り向いて……高台の上に立つ、もう1人の英雄を見上げる。

 その男……“ゴッド”ウソップに向けて、互いの健闘を称える意味でのサムズアップ!

 

 ウソップもまた、ほぼ反射的にサムズアップを返した。

 

 声援がより大きくなり、中には感動でむせび泣く者すら出始めていた。

 2人の英傑が、遠く離れていながらも互いを認め、たたえ合ったその図は、1枚の絵画のように美しかったと、その場を見ていた者達は後に語った。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 一方その頃、戦場から少し離れた場所にて。

 

「“竜爪拳”……“輝く竜の鉤爪”!!」

 

「ぬぅぅううっ!?」

 

 革命軍参謀総長・サボと、黒ひげ海賊団1番船船長、バージェスの戦い。

 

 コロシアムでの戦いに勝利し、戦力アップのために狙っていた『ズマズマの実』を入手し、プラズマの能力をものにしたサボは、さっそくそれを存分に使って戦っていた。

 

 ただでさえ強力だったサボの体術が、驚異的なエネルギー量と攻撃範囲をもたらす『プラズマ』を帯びて、まき散らして放たれる。

 さすがのバージェスも防戦一方となるが、それに加えて……

 

「“嵐脚”……“白雷”!!」

 

 空中から猛烈な勢いの蹴りでもって『飛ぶ斬撃』が放たれ、バージェスの肩口に直撃。

 

 覇気でガードしたためにダメージは大きくないが、少しでも遅ければ、戦闘不能レベルの深手を負うか、あるいは頸動脈を断ち切られて致命傷だったことに戦慄するバージェス。

 そして、その一撃を放った男……空中をまるで地面のように自在に移動し立ち回るシュライヤをにらみつけ、警戒する。

 

 気にした様子もなく、シュライヤは『追撃は無理か』と判断して地面に降り立つ。サボと並び立つ形で。

 

「おいおい何だそりゃあ……“海賊処刑人”が、まさか革命軍の参謀総長と仲良しだったってのか? こりゃかなりのスキャンダルじゃねえのかよ!?」

 

「あほなこと言ってんじゃねえよボケ海賊が……誰と誰が仲良しだって!? 根も葉もねえ風評被害でグラン・テゾーロの売り上げが下がったらどうしてくれんだ。損害賠償請求するぞコラ」

 

「おいおいそんなに邪見にするなよ、初対面だってのにえらい言われようじゃないか?」

 

「話しかけんな革命軍No.2。テメェここじゃなかったら俺の獲物だぞわかってんのか」

 

「やれやれ……嫌われたもんだ」

 

 軽い口調で罵り合う2人。

 実際のところ本当に仲良しなのだが、それを表ざたにするわけにはいかないため、さも『初対面だし敵同士です』という感じで演技していた。

 

 バージェスも、どうも本当に仲がいいわけではないようだ、とそれを見て思う。

 

「なんでェ、本当に仲悪そうだな……だが、それならなんでそんな風に協力して俺をいじめにかかってくるんだよ!? 俺の目当てはそいつの『ズマズマの実』だ……邪魔しねえでくれるか『海賊処刑人』よォ!?」

 

「おめでたい頭だな……海賊であるテメェの言うことを聞く道理がねぇだろうが。そもそも俺が今、組みたくもねぇこいつと一緒にテメェをいじめてんのはな……」

 

 瞬間、シュライヤの姿が掻き消える。

 かろうじて動きが……その残像が見えたバージェスは、どうにかそれに反応して後ろを振り向き、カウンターを決めようとエルボーを放つが……既にそこにシュライヤはいない。

 

 フェイントをかけて、その足元に潜り込み……バージェスが再度反応するよりも早く、飛び上がって顎に飛び膝蹴りを叩き込む。

 

「“膝銃(ニーガン)”!!」

 

「ぐごあぁあ!?」

 

 さらに追い打ちとばかりに、顔面を蹴りつけてその勢いで離脱すると……それと入れ違いにサボが飛び込んできて、鉤爪のごとき形状の手でバージェスの顔を掴む。

 

「もう一丁……“輝く竜爪拳”……!!」

 

「っ……待……!」

 

 

「“竜の”……“煌爪”!!」

 

 

 ゼロ距離で放たれたプラズマの奔流が、バージェスの全身を包み込んで焼いた。

 その様子を遠く離れた、大量のプラズマ(しかも制御が未完成)に巻き込まれない位置から見ていたシュライヤは、ぽつりと、誰に聞かせるでもなく言った。

 

「今この国で、放っとくと一番余計なことしそうなのがテメェだからだよ……! ……本音だぞ」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 幹部格も全滅し、残る敵はドフラミンゴただ一人。

 仲間達に背中を押され、その戦いの場に歩みを進めたのは……2人。

 

「“超過鞭糸(オーバーヒート)”!!」

 

「“ラジオナイフ”!!」

 

「ゴムゴムの……“猿王銃(コングガン)”!!」

 

 ドフラミンゴが放った、糸を束ねた鞭を、ローが切り払ってバラバラにする。

 がら空きになったところに、『ギア4』のルフィが飛び込み、高密度の覇気で赤く染まった巨大な拳を叩きつける。

 

「っ……“蜘蛛の巣がき”!!」

 

 即座に目の前に、蜘蛛の巣状の糸の障壁を展開するドフラミンゴだったが『ギア4』のルフィの前では強度不足もいいところで、拮抗した瞬間に砕かれ、貫かれてその身に拳を受けてしまう。

 それでも、障壁で威力が減衰していたためか、意識を奪うまでにはいかなかったが……息つく暇もなく追撃がやってくる。

 

 ドフラミンゴが吹き飛ばされた先に……ローがその能力で瞬間移動して回り込んでいた。

 

「“ガンマナイフ”!!」

 

「っ……がぁああぁあ!?」

 

 ドフラミンゴの胸目掛けて手刀を突き出すローだが、ドフラミンゴは間一髪体をひねってそれを回避。

 しかし、完全にはよけきれず、追ってきたローの手刀が、外傷なく内臓を傷つけ、そのダメージに悲鳴が上がる。

 

 そして、ローから離れることはできたものの、動きの鈍ったドフラミンゴに……巨大な拳が再び迫る。

 

「ゴムゴムの……“大蛇砲(カルヴァリン)”!!」

 

 ドフラミンゴの眼前に迫るルフィの拳。

 

「―――“盾白糸(オフホワイト)”」

 

 しかし次の瞬間、地面から突如として大量の糸が立ち上り……その一撃を防ぎきった。

 

「証明してやる、ひよっこ共……俺は、お前らなんざとは、生まれからして次元が違う存在なんだと……お前らが逆らっていい立場じゃねえんだってことをな!」

 

「何だ!? 地面や瓦礫が『糸』になってく……」

 

「“覚醒”か! 至っていてもおかしくないとは思ってたが……」

 

 あたり一帯の瓦礫が『糸』に変わり、ドフラミンゴの意思に沿って動き出す。

 さながらその光景は、白糸を束ねた大津波が襲い掛かってくるかのようなそれだった。

 

「“大波白糸(ビローホワイト)”!!」

 

 その糸の白波、1つ1つが『武装色』を纏い、鋭くとがった切っ先を向けてロー達に殺到する。そのサイズたるや、1本でも刺されば串刺しになってしまうであろうそれが、何十本も一斉に。

 

「ゴムゴムの……“猿王群鴉銃(コングオルガン)”!!」

 

 すかさずルフィが、巨大な拳をすさまじい勢いで連射し、それら全てを粉砕する。

 しかし、砕いても砕いても、後から糸が追加され、塗り潰すように襲い掛かり続ける。

 

 白波の向こうで笑うドフラミンゴは、このままローもルフィも2人とも串刺しにしながら押しつぶそうと、一気に糸を増やし……

 

 

「“K・ROOM”……!!」

 

 

 ……しかし、次の瞬間、腹部に強烈な違和感を覚えた。

 

 何か攻撃を食らったのかと視線を落とし……目を疑う。

 白糸の波を貫いて、いやすり抜けて……大きく伸びたローの刀が、自分の腹部に突き刺さり、貫通していた。しかも不可解というか、余計に不気味なことに……痛みが、ダメージがない。

 

「何だ、こりゃあ……!?」

 

「言っとくが、こいつは効くぞ……せいぜい歯を食いしばれ。衝撃波動(ショックヴィレ)”!!

 

 

 ―――ド ォ ン !!

 

 

「ご、ぁ……!?」

 

 突き刺さった刃から放たれた衝撃波が、内部からドフラミンゴの体を貫き……全身が爆発したかと思うような甚大なダメージをその身に叩き込む。

 口から、耳から、鼻から、そして目からも血が噴き出し……尋常ではないダメージが叩き込まれたことを、ドフラミンゴは嫌でも理解した。

 

 悲鳴すら上げることができず、意識が遠のく。

 

 すんでのところで、半ば意地で意識をつなぎとめたドフラミンゴだったが……操っていた白糸の大波は、纏わせていた『武装色』も含めて力を失い、はらはらと力なくほどけて地に落ちていく。

 

 そのせいで、大量の糸で遮られ、閉ざされていた視界が開け……その向こう側が、互いにあらわになる。

 

 片や……立つことすらできず、膝をついて動けないドフラミンゴ。

 

 片や……巨大に膨らんだ腕をさらに巨大化させ、大きく後方に引き絞るルフィ。

 

「ゴムゴムの……」

 

「っ……16発の聖なる凶弾……!!」

 

 1秒後には襲い来るであろう暴威を前に、ドフラミンゴは死力を振り絞って周囲の糸を操り……凝縮した糸で16本の鋭い矢を作り出し、『武装色』を纏わせて高速で前方に突き出す。

 

 あまりに強力な覇気ゆえに、周囲に稲妻を思わせる黒い波動がはじけるように漏れ出し、ルフィを串刺しにすべく飛来する。

 

 その技の危険度は、正面から相対しているルフィが誰よりもよくわかっていたが、彼もまた一切ひるむことなく、一歩前に踏み出して……拳を突き出した。

 

 

 「“大猿王銃(キングコングガン)”!!」

 

 「“神誅殺(ゴッドスレッド)”!!」

 

 

 ぶつかり合う互いの大技。

 拮抗は……一瞬だった。

 

 神に仇名す不届き者を誅殺すべく放たれた16発の矢は、ならず者の拳によって全て砕かれる。

 

 そして、覇気に染まったその巨拳が、ドフラミンゴの顔面に激突し……かけていたサングラスを粉々に粉砕して、その体を大きく吹き飛ばした。

 

 振りぬかれた拳の余波は、まるで紅海の奇跡のごとく、白糸の大海原を割る……どころか跡形もなく消し飛ばし、何も残さず。

 着弾の瞬間に意識を刈り取られた、堕ちた神の末裔は……とんだ先に合った瓦礫の山を粉砕し、地面を抉ってさらに飛び……そこにできていた、元・王宮である最も大きな瓦礫の山に……それをさらに半分ほども崩す勢いで激突して……ようやく止まった。

 

 自身が爆弾となって作り上げたその爆心地の中心で、あおむけに力なく倒れ、動かなくなる。

 

 さらにその直後、誰の目にも明らかな形で異変が起こる。

 

 上空から地表まで伸び、国全体を覆っていた巨大な『鳥カゴ』が……消失。

 それは、能力者本人……すなわち、ドフラミンゴが打倒されたということに他ならない。

 

 その光景を……皆が見ていた。

 かつての王も……それを守り戦っていた兵士達も。

 国を、民を、父を守るために耐え続けた王女も……罵声を浴びながら剣を振るい戦い抜いた王女も。

 10年間を孤独に戦ってきた、コロシアムの英雄も……彼とともに戦ってきた小さな戦士達も。

 

 海賊も、海兵も、革命軍も……もちろん、市民達も。

 

 皆が、その光景を前に息をのみ……ほんの一瞬、静寂が訪れて……

 

 次の瞬間、国全体で歓声が上がった。

 

 10年にも及ぶ長きにわたって続いた、ドレスローザ王国を襲った悪夢は……この日、この時、ようやく終わりを告げた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 ―――ぷるぷるぷる……ぷるぷるぷる……

 

 ―――ガチャッ!

 

 

 

『あーもしもし? 『海賊文豪』のお嬢ちゃんかい?』

 

「そういう君は海軍元帥・クザン」

 

『何だその言い方……なんか知らねえけど『お前じゃねえだろ』って言いたくなったんだが』

 

「いやノリで言っただけ何で知りませんけど……何か用ですか?」

 

『おう、マジで最近振り回しまくっちまって悪いんだが……また頼まれてくんねえか? ちょっと大至急行ってほしいところがあってよ』

 

「……行先、もしかしてドレスローザですか?」

 

『ああ……やっぱ知ってたか。なら話は早いな。ちょっと行って、そこに転がってるはずのバカの回収その他諸々頼めるか? ……諸事情で海兵に頼みたくねえ案件なんだよなコレ……』

 

「いいかげん身内に不安要素ありすぎじゃないですかね、海軍……いや、大体はその上の方のせいなのはわかってますけども」

 

『嫌味言われてるのに同時にきちんとこっちの事情も理解してくれてるのが嬉しすぎてお礼言いたくなってくるわ……』

 

「いやお疲れ様ですホント。……まあ、私個人的にも色々用事あって行こうと思ってたとこでしたから、問題ないですよ。で、行って何すればいいのか詳しく教えてもらえます?」

 

『おう。そのドレスローザによ、今うちの新入りの『藤虎』ってのが行ってんだけど、こいつがさー、まあ超面白れーことしてくれやがってぶふっフフフ……』

 

「こらこら海軍トップ。思い出し笑いしてないで説明ー」

 

『悪い悪い。いや、五老星の前ではなんとかこらえたんだけど、やっぱ思い出すだけでもうあーダメだこれしばらくツボるわー』

 

「……まあ、荒んだ職場が楽しそうになって何よりですよ」

 

 

 

 

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