大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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今回から最終章『ホールケーキアイランド編』始まります。


最終章 おかしの国のアポカリプス
第281話 動き出す計画


 

 

「……そろそろ……覚悟を決めねえといけねえかもな……ゴホッゴホッ!!」

 

 人工の空島・メルヴィユ。

 その中心部にある、金獅子海賊団のアジトの自室にて……湿った音で咳き込むシキの姿があった。

 

 その胸元は……彼自身の口から出たもので、真っ赤に染まっていた。

 

「お、親分……大丈夫ですか!?」

 

「ウゥ……だ、大丈夫だインディゴ、このくらいでガタガタ騒ぐんじゃねえ……」

 

 シキの姿に驚いたインディゴによって指示を受けた部下達があわただしく動く中、シキは口元を雑にぬぐい……ふと、何かを思うように窓の外を見る。

 

「さっさと帰ってこい、スゥ……俺は、お前に……話さなきゃ、いけねえことが……ゴホゴホッ!」

 

 噴いたばかりの口元を、そして胸元をまたさらに赤く染めながら、常よりも力のない、しかし、大海賊らしいぎらついた光を確かに宿しながら。

 シキは、娘の……スゥの帰りを待っていた。

 

 

 

 その頃、スゥは……

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ドレスローザを出た数日後。

 私は今、金獅子海賊団のナワバリの1つであるとある島で、仕事机について、いくつかの仕事の書類を眺めているところだった。

 

 仕事といっても、残念ながら作家としての仕事ではなく、あんまりやりたくない……『七武海』及び『金獅子海賊団提督』としての仕事である。

 

 まず目についたのは、数日前の『世界経済新聞』の朝刊に挟まっていた、何枚かの手配書。

『麦わらの一味』をはじめとして、ドレスローザの一件に関わった主な海賊達の、新しい懸賞金額が掲載されているものだ。

 

 ルフィの懸賞金額が5億ベリーに上がったのを筆頭に、他のクルー達や、同盟として戦った海賊達も、数千万とか億単位でアップ。

 ドレスローザの一件に直接かかわっていない、ナミ達の懸賞金額も一律で上がっていた(チョッパー以外)。

 

 そして、ギリギリ覚えている範囲でこれも原作通り……サンジがなぜか『ALIVE ONLY』……つまり『生け捕りのみ』の指定になってる。

 

 ただ……長らく謎だったその理由が、どうやら今、わかったかもしれない。

 

 そんなことを私は考えながら、机に置かれているもう1つの『仕事の書類』を……今さっき届いた、ビッグ・マムの『お茶会』の招待状を眺める。

 そこには、こう書かれていた。

 

 

 

 新郎 ヴィンスモーク家3男 サンジ

 新婦 シャーロット家36女 プリン

 

 

 

 今回のお茶会のメインは、結婚式。ビッグ・マム海賊団が勢力拡大のためによくやる、政略結婚のお披露目を兼ねたパーティーになるわけだ。

 私もそういうお茶会には何回か参加した。

 2年前には、ジンベエが所属してる『タイヨウの海賊団』の傘下入りに伴って、アラディンっていう人が結婚してたっけな。ビッグ・マムの娘で、同じ人魚のプラリネって女性と。

 

 そして、今回結婚するのが、サンジ……しかも、『ヴィンスモーク家』……。

 

「ユゥ、情報を。ヴィンスモーク家って確か……」

 

「はい、お嬢様。『北の海(ノースブルー)』に存在する戦争国家『ジェルマ王国』の王族の名字です」

 

 そばに控えていてくれたユゥが、すぐさま質問に答えてくれる。

 やっぱりその『ジェルマ』か……サンジって、そこの王族の出だったってことか? 原作ではそんな設定見なかったな……。

 

 いや、そもそもの話……私が知っているワンピース原作は、『ドレスローザ編』までだ。

 こないだそれが終結した今、とうとうここからの世界は……私が全く知らない展開に突入していくことになる。今まで見たいに、原作知識を使ってあれこれ先手を取るやり方は、もう使えない。

 

 もちろん、いずれそうなるのは覚悟してはいたし、備えもしてたけど……いきなりでかい情報がぶっこまれて来たなあ……。

 

 そんなことを考えている間にも、ユゥの説明は続けられる。

 

「ご存じかとは思いますが、『ジェルマ王国』は別名を『戦争屋』。報酬と引き換えに他国の戦争に参陣・介入し、敵国となった国を亡ぼすという、国家戦争規模の傭兵のようなことを生業としています。現国王はヴィンスモーク・ジャッジ。王妃は他界していますが、その王子であり部下達は、全部で4人。上から順に、レイジュ、イチジ、ニジ、ヨンジという名前だそうです」

 

「あからさまに間に1人入りそうな名前」

 

 こうして聞くとサンジがそこの王子様だってのも納得できちゃうわ。名前的に。

 

 あと、サンジの故郷って確か『北の海』だったな……原作でもそれはちらっと言ってたはず。

 

 横で聞いてたアリスも呆れた様子で、

 

「まあ、よそんちの家庭事情に口出しする気もないけど……何考えてそんな名前つけたんだろね」

 

「何も考えてはいないのではないでしょうか? 見分けがつけばいい、程度の理由で名付けた可能性もあります。どうも件の『ヴィンスモーク家』……普通の家庭ではないようですので」

 

「……っていうと?」

 

「国王であるジャッジですが、かつてベガパンクも所属していたという『MADS』なる研究機関に所属していた科学者だったようです。そこで培った知識と技術を生かし、人体の複製や強化改造の技術について研究を進め、自国の軍隊の強化に役立てているそうで」

 

「それは私も聞いたことある。……もしかして、兵士だけじゃなく……?」

 

「はい、おそらくは。子供達にも同様の強化手術を施したと思われます。ジェルマの幹部4名は、銃弾が効かない超人的な肉体を持ち、能力者でもないのに超常の能力を使い……『科学戦闘部隊』などという呼び名もついているようです。一説には、赤子あるいは胎児の段階から強化措置を施して『超人』を作り出した、とも……」

 

 ……ママと同じようなことを考えた奴が他にもいたのか。

 年季的には、私の方が一回り以上速く生まれてるわけだから、改造人間としては大先輩にあたると思うんだが……いや別に嬉しくもないな。

 

(でもそうなると、サンジも改造人間だってこと? めっちゃ強いのはともかく、それっぽい特徴なんて特になかったと思うけどなあ……)

 

 それはそれとして……多分、いや確実にコレ、ルフィ怒るよな……。

『東の海』から一緒に戦ってきた大事な仲間が、政略結婚なんていう勝手な都合で奪われそうになってんだから。

 ビッグ・マムのナワバリに殴り込みかけてもおかしくないぞ。というかむしろ、ルフィなら……堂々と行くにしろ、こっそり行くにしろ、確実にやるだろうという妙な信頼がある。

 

 主人公ではあるけど、今のルフィでビッグ・マムに勝てるかどうか……ハンコックから『すさまじく強くなっておったぞ! さすがはわが愛しき人!』って、のろけ10割増で色々聞いてはいるけど……アリスやローの話だと、ドフラミンゴ相手に、多少なり苦戦してたらしい。

 原作よりは強くなったけど、そこまで劇的な差はない、ってとこだろうか。

 

 決戦の時はローとの共闘だったから、割と一方的に攻め立てて倒せたみたいだが。

 

 だとすると……やっぱ厳しいだろうな。

 最低でも、ドフラミンゴ程度は一蹴できるくらいの強さがないと、『四皇』には食らいつくこともできないだろう。一発殴られて終わり、って可能性すらある。

 そのくらいの怪物だ、ビッグ・マムは。

 

 原作でこの先、どういう展開になったのかはもうわからないけど……今のルフィには、『四皇』はまだ早い。上から目線で言っちゃうけどね。

 

 それに……この後私達が何をするかを考えれば……実際にルフィのことを『上から』見ないと……見れないといけないわけで……

 

 

 

 ―――ぷるぷるぷる……ぷるぷるぷる……

 

 

 

「「「!」」」

 

 電伝虫の着信音。しかし、出所は私のじゃない。

 直後、アリスが懐から小電伝虫を取り出し、『ごめんお母さん、ちょっと外す』と断って一旦部屋を出た。アリスのだったか……部下の子から何か連絡でも入ったかな?

 

 アリスはその後、1分ほどしてから帰ってきて、

 

「お母さん、今、ボクんとこのエルザから連絡が入って……『ゾウ』での出来事についてなんだけど、今いいかな?」

 

「エルザって……あんたの部下の『四性獣』とかっていうのの1人の、ハイエナのミンク族の子だよね? どうかしたの?」

 

 私は行ったことないけど、『ゾウ』はミンク族が暮らす故郷で……巨大な象の背中に広がっている国というか里というか、そういう場所らしい。

 世界にはすげー場所があるもんだなって感心したよ。いつか行ってみたいと思ってた。

 

 ただ、噂に聞いた限りだと、あまり余所者が歓迎されないとかいう話な上に、ミンク族は1人1人がかなり戦闘能力が高い種族だから……訪問には慎重になってたんだよね。

 

 エルザちゃんがそこの出身らしいから、いつかは彼女に紹介してもらって行きたいなと思ってたところだ。

 

 ……で、そのエルザちゃんがどうしたの?

 

「エルザには、里帰りを兼ねて、ローへのメッセンジャーを頼んでたんだけど……その『ゾウ』でひと悶着もふた悶着もあったみたいなんだ。なんでも……」

 

 かくかくしかじか。……ふむ、なるほど。大体わかった。

 

 二度も『百獣海賊団』の襲撃があって、国がほぼ滅んで……『ワノ国』の大名家の跡取りに、対『カイドウ』を見据えた麦わらの一味との同盟とは……いやホントに色々あったんだな。

 そしてモモの助君、そんなすごい身の上だったのか。

 

 そして、案の定ルフィはサンジの離脱を認めず、連れ戻しに行く流れになったと……どこまでも予想と期待を裏切らない主人公である。

 

「エルザを通して『ゾウ』に支援とかしたほうがいいか聞いたんだけど、ミンク族はなんだかんだで逞しいから不要だって言われたよ。食料とかも、別段不足してるわけじゃないし、ケガ人とかもルフィさんの仲間達が助けてくれたから、もう問題ないってさ」

 

「そっか。それはよかった。……ローへのメッセージはきちんと届いたの?」

 

「それも万事OK。それで、ルフィさん達は手分けして色々な対応に当たるみたい。一味のうちの何人かが先に『ワノ国』に向かって、残りのメンバーで『ホールケーキアイランド』にサンジさんをこっそり取り返しに行くって。あと、ミンク族も何人か彼らに同道したり、独自に動いたりするってさ」

 

「なるほど……忍び込んで取り返すなら、一度に大勢で押し掛けたら、それだけ騒ぎになる可能性も高いしね。そのへんが妥当な手か」

 

 ついでに言えば、『こっそり』やるなら、ルフィはそれに最も向いてない人選だとは思うんだけど……クルーの今後が関わってる事態に、ルフィが自分で関わろうとしないはずないし、ダメだって言われても100%聞きやしないからな、仕方ないだろう。

 はたしてその潜入、上手くいくのやら……あそこ、国中に溢れかえってる『ホーミーズ』に加えて、『ナワバリウミウシ』とかいう謎生物のせいで、侵入者対策がやばいくらい鉄壁なんだが……

 

(……私が心配しても仕方ない、か。こういう考え方はアレだけど、主人公だし、なんとかするでしょ。そもそも私は私で、ここから先、人の心配してる余裕はないからね……)

 

 私は、『お茶会』の招待状と一緒に届いた、というか同封されていた手紙を手に取る。ビッグ・マムから私宛にしたためられた手紙である。

 

 便箋は普通の人間サイズだから、ビッグ・マムが直接書いたわけじゃないだろう。部下の誰かに代筆させたんだとは思うが……その内容は、要約すれば、こんな感じだ。

 

 今回のお茶会の際、別件で色々と話したいことがあるので、時間を作るように。

 こちらからの話はもちろんするが、そちら側からこちらに何か相談したいことなどがある場合、力になれるかもしれないので、遠慮なく言ってくれ。

 将来『家族』になるかもしれない間柄として、仲良く、腹を割って話そう。

 

 ……連中、どうやらとうとう動き始めるつもりらしいな。

 

 サンジを……『ジェルマ66』を取り込んだ後は、今度はいよいよ『金獅子』に手を伸ばすつもり……ってことか。数年前に『一旦保留』になった、私への『政略結婚』を、もう一回持ち出すつもりだろう。

 そしてこの言い回し……どうやら、こっちで何が起こってるのか……より正確には、今、うちのパパがどういう状態にあるのかを把握したうえで……

 

「ビッグ・マム海賊団の情報網は海賊界随一……看板に偽りなし、か。まあ、今回の場合は、それ以前の問題なんだろうけど……」

 

 何にせよ……私達にとっても、『覚悟』って奴を決めなきゃいけない日は近い。

 それが、どんな形の『覚悟』であれ……ね。

 

「ユゥ」

 

「はい、お嬢様」

 

「パパに連絡を取って。大事な話があるからって。それとアリス……わかるね?」

 

「了解、お母さん。準備進めるよ。足が欲しいんだけど、ルゥを借りていい?」

 

「いいよ。ルゥ、しばらくアリスを手伝ってあげて。私はしばらく拠点での仕事になりそうだから、護衛は大丈夫」

 

「了解しました、母上」

 

「お願いね。……さて」

 

 褐色肌の幼女ビジュアルの『私』な見た目のルゥが、こくりとうなずいたのを確認しつつ……振り返る。

 そこにはいつの間にか、双子かと思うほどにそっくりな見た目の、緑髪と黒髪の『私』がいた。年齢は……十代中盤くらいだけど。

 

「ナナとサーヤは私の手伝い。必要に応じて、メルヴィユ内部限定だけどあちこち行ってもらうかもだから、よろしくね」

 

「「はい、お母さま」」

 

 よろしい……じゃ、各自がんばりましょう。

 そう遠くないうちに、『ひな壇』……いや、『二代目金獅子海賊団』始まって以来の大仕事が待ってるよ……!

 

 

 

 

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