大文豪に私はなる!   作:破戒僧

285 / 306
第285話 地獄の『お茶会』

 

 

 

 ビッグ・マム主催の『お茶会』当日。

 時刻は午前9時45分。開始15分前だ。

 

 私ことスゥや、その他のゲスト数名を乗せている『豚車(ブしゃ)』が、ホールケーキ城についた時点でこの時間だった。

 何やらトラブルがあったみたいで、急遽ゲストの送迎スケジュールを調整したらしく、そのせいでギリギリの時間になっちゃったっぽい。

 

 ビッグ・マムはお茶会の欠員や遅刻が大嫌い。そんなビッグ・マムの御膝元でトラブルが起こるとしたら……例えば、怖いもの知らずのルーキーが暴れて色々壊れたとか……そんな感じかな?

 

 時間はないけど、かといって慌てて走ったりして出て来ても格好悪い。なので皆、あくまでゆっくりと優雅に『豚車』から降りて道を歩き出す。

 

 毎度おなじみモルガンズに加え、“歓楽街の女王”ステューシー、“闇金王”ル・フェルド、その他のそうそうたる面々。

 私を含め全員、表にも通じる顔をきちんと持ってはいるものの、裏の世界でもかなり大きな力を持っている者達ばかりのため、『裏社会の帝王達』なんて呼ばれている面子だ。

 

 観客というか野次馬の人達は、純粋に超有名人、お茶会のビッグ・ゲストとして受け止めているようだけど。

『モルガンズ様~!』とか『ステューシー様! なんてお美しい!』とか歓声が上がってる。大スターを前にしたファンとか野次馬そのまんまの反応だね。

 

 私もまあ……毎度のごとくきちんと正装してるし、決して見劣りしていないと信じたい。

 さっき言った中に、きちんと私の名前を呼んでる歓声もあるので、きちんと『ビッグ・ゲスト』できてるよね、私も。

 

 歩いていると、城の入り口で、ビッグ・マムの長男・ペロスペローが待ち構えていた。

 やはりこのまま城の中のルートで屋上を目指すと遅くなってしまいそうだからって、屋上まで直通のエスカレーターを『ペロペロの実』の能力で作ってくれた。

 

 見事だ、芸術だ、と周りからは歓声が上がる。

 私としても、造詣が見事なのはもちろん……これだけの規模のものをほぼ一瞬で作り上げられるっていうのは、能力の錬度が相当なレベルに至っている証拠だと思う。

『将星』でこそないとはいえ、長男にして7億の賞金首は伊達じゃないな。

 

「さあさあどうぞ、あんたらで最後のゲストです! ……おや、これは『海賊文豪』。ようこそママのお茶会へ」

 

「お招きいただきありがとうございます。ペロスペローさん」

 

 言いつつ、招待状をこそっと見せる。同封されていた、ビッグ・マムの手紙も。

 この人はきちんとそのへんの事情も知っているようで、便箋を見てにやりと笑った。

 

「くくく……それはどうも。もちろんそれも楽しみだが……今日のお茶会は『特別』だ。最初から最後まで、心ゆくまで楽しんでいってくれ」

 

「……? ええ、ご丁寧にありがとう。それじゃ」

 

 何か含みのある言い方だった気がする……?

 

 

 

 エスカレーターに乗って上に上がる途中、『見聞色』に引っかかった。

 どうやら、上の方……屋上のパーティー会場の前あたりかな? そこで騒ぎを起こした連中がいたらしい。……すぐに鎮圧されてたけど。

 

 同じ場所に、かなり強い気配が3つと、それらよりさらに頭一つって感じで抜け出て強い気配が1つ。何度か会ったことがあるから知ってる気配だ。

 カタクリと、オーブン、ダイフク……それに、ちょっと小さめの奴は、いつの間にか傘下に入ってた“ギャング”ベッジかな。

 

 この面子が揃ってるところで騒ぎを起こすとか……度胸あるのかバカなのか。そんなことルフィくらいしかしないと思ってたよ。

 

(気配からしてルフィはいないようだし……予定通り、サンジの結婚式をメインイベントに据えた『お茶会』が開催されるってことは、サンジのことは奪還できなかったのかな? だとしても、あのルフィが諦めるとは思えないし……『お茶会』の最中にいかにも何かありそうだなあ)

 

 ドレスローザ編をもって『原作知識』というアドバンテージが終わってしまった私には、わからない話です。原作ではどうなったんだか……。

 

 まさか『残念、サンジの冒険はここで終わってしまった!』的なエンドになるはずもないだろうし……ないよね?

『ウォーターセブン』と『エニエス・ロビー』の時も、ロビンもウソップも2人とも無事に帰ってきたもんね。サンジもそうだと信じたい。

 

 そんなことを考えているうちに、エスカレーターは屋上に到着。

 おかしの甘いいい匂いに混じって、血と硝煙の匂いがそこらへんを漂ってる。やっぱ何かあったらしいな。

 

 いつも通り、巨大なゲートの前で簡単なボディチェックを受けて、武器である番傘を受付に預けて……という手続きの最中、ゲートの上に座ってこちらを見下ろしていたカタクリと目が合った。

 ただそれだけ。特に言葉を交わしたりすることもなかったし、私は軽く会釈程度に頭を下げて……そのまま会場に入る。

 

 余談だけど、カタクリの懸賞金って……数年前、私がビッグ・マムに政略結婚を申し込まれた時には既に『10憶越え』で、ビッグ・マム海賊団を支えるNo.2っていう立ち位置だった。

 それがその後、ここ数年でさらに上がっていて、今ではたしか12億5700万ベリーである。海賊団全体で見ても、ビッグ・マム本人を除けばぶっちぎりの額だ。

 

 本人の実力はもちろんだけど、彼がパルフェの戦闘の師匠だってことも鑑みて設定されてる部分もあると思う。彼女自身、短期間で大きく名を上げ、『最悪の世代』と同等かそれ以上に大きく世を騒がせた超新星として知られてるから。

 十代半ばにして10憶越えの天才だもんね。そりゃ、その師匠にも波及するってもんか。

 

 まあそれはいいとして……無事間に合った私達は、会場でスムージーからウエルカムドリンクを――もうすっかり、変なものを絞って出てくる液体を飲むのにも慣れちゃったな――受け取って飲んでいると、時間ぴったりに、奥の扉からビッグ・マムが姿を現した。

 

 

「今日は遥々よく来てくれたねェ~!! 右を見ても左を見ても、目に映るものはみ全てお菓子さ! 好きなだけ飲んで食って、楽しんでおくれよぉ~!! 今日ここで起きる全てをねェ~!!」

 

 

 こうして、今回も『お茶会』はスタートした。

 

 私はそこで……今はまだ、普通の招待客の1人として、いつもどおりに『お茶会』の美味しいお菓子やお茶を楽しませてもらうことにした。

 

 ……きっとこれが、最後の『お茶会』になるんだろうな……なんてことを思いつつ。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 そのまま、途中までは普通の『お茶会』として進んだ。

 

 もう何度も……っていうか10回以上は余裕で参加している『お茶会』なので、過ごし方も慣れたものである。参加者たちと適当におしゃべりしたり、時には情報交換なんかもしながら、楽しく食べて飲んで気ままに過ごすだけ。

 前にモルガンズに言われたことだけど、『四皇』とはいえあくまで海賊が主催のお茶会だ、堅苦しくマナーにこだわる必要なんかない。度を越えて失礼なふるまいさえなければ、好きに、楽しく、美味しく過ごせる。

 

 そういう意味では、私も割とこのお茶会は嫌いじゃないんだよね。超一流レベルのお菓子がそこら中にあって食べ放題だし。

 

 あと、最初に参加した時以来、私がチーズ系のお菓子が大好きってことは知られてるみたいなので、ビッグ・マムの子供達が話しかけに来てくれる時は、『今回はコレおすすめだぞ』ってお菓子の情報を持ってきてくれることも多かったり。

 特に、作家としての私のファンであるカスタードやモスカート、以前私の夫になる予定だったモンドールあたりがよく話しかけてくれます。

 

 それから、将星最年少のパルフェと、その妹のプリンちゃんもだな……2人とも、まだ小さい時から私のファンだって言ってくれて、嬉しかった。

 プリンちゃんは今日結婚する予定なわけだけど……果たしてその『結婚式』はどうなるのやら……?

 

(平和に、普通に付き合ってくれるだけだったら、このままの付き合いを続ける選択肢も……あったのかなあ? パパの方針次第な部分もあるから、必ずしもそうとは言えないかもだな)

 

 なんてことを考えてたら、結婚式でおなじみの『パパパパーン』で始まるあの曲――曲名は忘れたけど、この世界でもそうなんだな――が流れて来た。

 そして、アナウンスと共に、白いタキシード姿のサンジと、ウエディングドレス姿のプリンちゃんが現れた。巨大なコーヒーカップに2人でのって、それをさらにゼウスが乗せて飛んでる。

 

 プリンちゃん、きれいに育ったなあ……数年前はまだ幼くて『かわいい』感じだったけど、今は……『きれい』と『かわいい』がちょうどいいバランスになったというか。

 花嫁としてのお化粧のせいもあるだろうけど、今日はちょっと『きれい』が強めかな?

 

 ……しかし……何かサンジ、普通に素で大喜びしてる風に見えるな……え、マジでこのまま結婚しちゃうとかある? ない……よね?

 

 その後、とんでもなく大きいウエディングケーキが登場。

 造詣ももう、精巧な上に荘厳で見事の一言だし、何より匂いから何からすごく美味しそうなんだけど……おめでたい席のケーキにドクロの飾りとか、十字架……あるいは墓標みたいに見える飾り菓子が乗ってるんだけど、アレはいいの?

 ……海賊だからいいのかな? ドクロはそれでいいとしても、墓標は何で? 結婚は人生の墓場……なんて言われることもまあ、なくはないけどさ。

 

 そしてそのまま、ケーキを祭壇にして式は進む。

 新郎新婦に加え、立ち合いの神父(強面)が一緒に上に乗り、『病める時も健やかなる時も……』のお決まりの誓いの言葉を……

 

(………………んっ?)

 

 気のせいか……ふと、会場全体がピリピリした雰囲気になったのを感じた。

 

 見ると、ビッグ・マムや、その子供達が……笑いながらサンジ達の方を見ていて……この微妙にピリピリした空気は、彼ら彼女らからただ寄ってきているらしい。

 これからくっつく2人を祝福して……って感じじゃないな、明らかに。何か……企んでる?

 

 そして、その中でも最もひりついた空気を発しているのは……カタクリ?

 

 結構な目力で、睨むように2人の方を見てたかと思うと、急に立ちあがって……そういやあいつ確か『見聞色』が未来視レベルだったな……何か見たのか? ……気になる。

 …………どれどれ。

 

 

「…………は?」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 もうほんの数秒、あるいは十数秒先まで迫ってきていた……誰も予想もできない、衝撃の未来。

 

 見聞色を極めた先の力である『未来視』によってそれを一足先に目にした者が、カタクリ、スゥの他に……もう1人いた。

 

(プリン……あなた……)

 

 彼女……パルフェがいた位置は、ちょうど、プリンとサンジ、両方の表情が見える場所だった。

 

 ゆえに、彼女の目には……数秒後、崩れ落ち、涙を流すプリンに加えて……その直前のサンジの顔も、口元も見えていた。

 

 ヴェールが外されたプリンの、あらわになった『第三の目』。

 それを見てたじろいだサンジを、プリンが銃で撃って仕留める……はずだった。

 

 しかし……

 

 

『……なんて、美しい瞳だ……』

 

 

(用意していた言葉じゃ、ない……思わずこぼした、心からの本音……にしたって、こんなセリフがとっさに出てくるものですか……!?)

 

 遠すぎて声までは聞こえなかった。しかし……唇の動きが見えていた。

 

 その後すぐ崩れ落ちたプリン。

 3つ全ての目から流れる涙。

 

(あんなこと言われたら、無理もありませんか……)

 

 プリンと同じく『第三の目』を持ち、それを普段は髪で隠しているパルフェ。

 それが原因でプリンがどんな思いをしてきたか、彼女はもちろん知っている。

 

 様々な種族がいる『万国(トットランド)』においても特に異質と言っていい『三つ目』という異形。

 大人も子供も、母親さえ気味悪がった。

 

 

『我が子ながら気味が悪いねえ……前髪を伸ばしな、パルフェ、プリン』

 

『ギャー、気持ち悪い! 化け物よ!』

 

『見ろよコイツ、三つ目なんだ!』

 

『覚悟しろ化け物~! 退治してやる!』

 

『その目で見るんじゃねえよ! 病気になったらどうしてくれんだ!』

 

 

 当時から人格的に独特というか、図太かった自分は特に気にしなかった。

 陰口なんて聞き流していたし、バカにして絡んできたやつは殴り飛ばした。

 どう思われようが『これが自分だ』と恥じることはなかったし、母の言いつけがなければ、髪で目を隠すことすらしなかっただろう。

 

 一方でプリンは……泣いて悔しがって、しかし『ただ笑われてたまるか』と、刃物を持ち出してやり返していた。

 その意味では一応、彼女も『強く』育ったのだろうが……一方で、そんな経験の連続から、彼女自身、自分のことを『醜い化け物』だと思って疑わなくなってしまっていた。

 

 パルフェもプリンも、この『目』を見て気味悪がらない者になんて、会ったことがなかった。

 無関心なら何人かいたが、総じて、化け物を見る目を向けてきたものだ。もう、そういうものなんだと諦めていた。

 

 

 そこに、あの言葉だ。

 

 

(だーめだこりゃ。無理。暗殺なんかもうできっこねーですわ)

 

 崩れ落ち、涙を流し……しかし確かにその口元が笑ってしまっている、双子の妹。

 当然、そんな状態で銃など撃てない。作戦失敗。

 

 だが、パルフェは……そんなプリンの姿を見て、情けないとか、みじめだとか、そういうことを微塵も思いはしなかった。

 

 むしろ……涙を流してうずくまり、演技ではない、自分の本当の感情があふれ出して抑えきれなくなっている彼女を……このまま祝福したい気分にすらなっていた。

 あの涙の向こうに、彼女の本当の幸せがあるのではないか……とすら思えた。

 

「………………」

 

 その、さらにもう少し先の未来を見て……しばし、色々と考えて……。

 

(まったく……世話の焼ける妹だこと。でも……)

 

 パルフェは、あることを心に決めた。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 未来を見た瞬間、思わず声が出てしまって、隣にいたモルガンズに『どうした?』って顔をされちゃった。

 

 けど、それに私が何か返すより前に……とんでもない速さで、というか勢いで事態は進んでいく。

 

 ヴェールを上げたと思ったら、プリンちゃんが泣き出して、膝から崩れ落ちた。

 

 その直後、銃声……じゃないな、そう聞こえるくらいの音が鳴り響いて神父が倒れた。

 銃弾じゃないけど、何か飛ばしたな……やったのは……カタクリか?

 

 突然の出来事に、何が起きてる!? と会場が騒然となりかけた時、祭壇になってるウエディングケーキがなぜか震えだして……

 

 

 

 「ビッグ・マム~~~~~!!」

 

 

 「「「えええええ~~~~~!?」」」

 

 

 

 ケーキの中から大量のルフィ達が飛び出してきて、まるで動物みたいにそこらへんで暴れまわり始めた。

 いや多分、みたいじゃなくてホントに動物だな? ワンワンとかニャーニャーとかピーピーとか言ってるし。……『ミラミラの実』の能力かコレは? だとすると、あのブリュレってのが……

 

 何匹かこっちにも来たので、軽くあしらいつつ……ついでに隣のモルガンズの分も払って守ってあげてると、その間もどんどん事態は進んでいく。

 

 ジンベエが傘下からの脱退を宣言し、ビッグ・マムは寿命を奪えず(かっちょええ)、

 

 マザー・カルメルさんの写真がブルックに破壊され(待ってそれ知ってるヤバい!)、

 

 なんかジェルマが囲まれて殺されそうになってて、ジャッジ王が号泣してて(誰得)、

 

 向こうを見ると、なんかサンジもプリンに撃たれそうになって、かと思えばダイフクと戦ってる……

 

 ……あ、これひょっとして、最初から結婚する気なかったってオチか?

 ビッグ・マムのお目当てが、ジェルマの技術力とか科学力だっていうのは、最初からビッグ・マムは公言してた。けど、『政略結婚』で傘下に迎え入れて協力体制になるつもりじゃなく、全部奪って自分のものにするつもりだった。

 結婚はただのポーズ。結婚式の場に王族……つまりは幹部全員を集めて処刑するため。

 

 全員まとめてまんまと騙されて、今まさに処刑されそう……ってところなわけか。

 

 そのことを、涙も鼻水も流して悔しがってるジャッジ王に、『死んで我らの血肉になれ』ってペロスペローが追撃した……かと思ったら、また事態が動いた。

 

 ベッジが何か叫んで……またルフィ達が暴れて……

 

 そして、ビッグ・マム大絶叫。

 以前のお茶会で『マザー・カルメル』の写真が床に落ちた時と同じ、覇王色付きの絶叫だ。

 

 覇王色もさることながら、単純な音量だけでも鼓膜が破れかねない、というか衝撃波が出てるであろうレベル。

 その場の誰も動けない中……ベッジ達が、なんかロケットランチャーっぽい武器をビッグ・マムに向けて構えてて……え、嘘お前裏切るの? てかこの状況、さてはルフィ達とグル?

 

 しかし、発射された弾頭が衝撃波で爆発しちゃって……

 

 その後会場に、でっかい鏡を持って飛び込んできたシーザー。けど鏡も音圧でガッシャン割れて……

 

 最終的に、ベッジが城になって……なんだこのスピード感。

 

 しかし、ペロスペローのキャンディとカタクリのモチで固められて動けなくなり、そのまま籠城戦が始まったっぽい。

 おかげでこっちも、落ち着いて今の状況を整理する余裕ができた。

 

 状況を見るに……ルフィ達とベッジ達が裏で組んでビッグ・マムの首を狙ってた。

 暗殺を目的に手を結ぶ、ってのはルフィっぽくないから……おそらく、ルフィ達の主目的が結婚式をぶっ壊すことで、ベッジ達はビッグ・マムを殺すこと、って感じか。

 

 シーザーがいたのはそのための協力者として。

 ジェルマを助けたのは……サンジの家族だからか、それとも成り行きか。

 

 しかし全体的に失敗してしまい……逃げるのも無理だからひとまずベッジの能力で作った『城』に逃げ込んだ。

 今はあの城の中でどうにか、この絶望的な状況から逃げ出す手段を考え中ってとこだな。やれやれ……全く無茶苦茶やるなあ……

 

 …………でも……

 

(これ、もしかして私達(・・)にとっては……めっちゃチャンスになるんじゃない?)

 

 多分だけど、これで終わりってことはないだろう。ここからさらにどう転んでいくかにもよる。

 その展開次第では……うまいこと利用できるかもしれない。

 

 顔に笑みが浮かんでしまいそうになるのをどうにかこらえつつ……私は、耳に着けていた貝殻のイヤリングを触る。

 一見するとただのアクセサリー。しかし正体は、ママが作った超小型の通信機だ。品種改良で作った、『トランシージミ』とかいう面白い名前の『(ダイアル)』でできていて、対応した端末を持つ者同士での通話しかできないものの、子電伝虫よりもはるかに小型で持ち運びが容易。

 なので、アクセサリーに擬態させて、こういう場にでも簡単に持ち込んでしまえるわけだ。

 

 そのスイッチを入れて……と。

 

 

 

「あ、もしもし……パパ?」

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。