けっこう物語の進み自体はスロースタートになりそうですが、楽しんでもらえるように書き上げていきたいです。よろしくお願いします。
というわけで第3話です。どうぞ。
どうやら私はまだ生きているらしい。
目は見えなくなるわ、耳も聞こえなくなるわで、割とマジで『あ、さすがに死んだわ』って思ったんだけど……目が覚めると、外で倒れたはずなのに、私はベッドに寝かされていた。
そう、『目が覚めた』のである。死んでなかったのである。
「…………知らない天井だ」
「お、目が覚めたのかい、お嬢ちゃん」
横からそんな声が聞こえた。
とっさに起き上がろうとしたんだけど、体がひどく重くて上手く動かなくて……どうにか首だけ動かして横を見ることができた。
ベッドの横に座っていたのは、見覚えのない女の人だった。
なんだか妙に露出多めの、しかし下品とか言う感じじゃない……ワイルドな服に身を包んでいたその人は、手を伸ばして私のおでこをぺたん、と触った。
「熱はなし、血色も多少戻ってきたね。体力はさすがにまだ戻らないか……コレ何本に見える?」
「えっと……3本?」
「正解。目もちゃんと見えてるね。おなか減ってるかい?」
「……はい」
聞かれるまで意識してなかったけど……胃袋の中が空っぽなのがわかるくらいには減ってるな、うん。
「食欲もあり……と。これならすぐによくなりそうだね。助けといてすぐに死なれちゃこっちも気分よくないからね、うん、よかったよかった。あ、飯は今持ってこさせるからちょっと待ちなよ」
女の人はそんな風に言いながら、バインダーっぽいものに色々と書き込んでいく。
どうやら私は、あのまま野垂れ死にするかと思いきや、親切な人に助けられてこうして命を拾うことができたみたいである。そして、このお姉さんはお医者さんだろうか。
この人が助けてくれたのか、それとも助けてくれた人がこの人に私を預けたのかはわかんないけど……どっちにしてもお礼は言わなきゃな。
「あの……た、助けてくれてありがとうございます」
「礼には及ばないよ。代金はもらったし……私は船長の指示に従っただけだからね」
(…………ん?)
……『船長』?
えっと……そういう呼び方をするってことは、この人は何かの船に乗ってる船医さんか何かなのかな? ていうかそういえば、なんか微妙に揺れてるような気も……え、もしかしてここ船の上?
そしてもう1つ今気づいたんだけど……このワイルドな装いの女医(推定)さん、頭にバンダナみたいなのを巻き付けてるんだけど……その側頭部に、見覚えのあるマークが描かれていた
真ん中にドクロマークがあって、その周りに蛇の頭が……1、2,3……9匹。
え、このマークって確か……
「おや、気づいたのかい? 案外目ざといみたいだね」
顔に出てしまっていたんだろうか、そのマークを見ていたことに気づかれたらしい。
「安心しな、別に取って食いやしないよ。さっきも言った通り、あんたを助けたのは気まぐれだからね……海賊にこんなこと言われても信じられないかもしれないけど、怖がっても怖がるだけ無駄だからそう思っておきな」
「か、海賊……やっぱり……」
「そ。『九蛇海賊団』……って聞いたことない?」
あ、やっぱり……『九蛇』だったか。
ワンピース世界におけるアマゾネス的な集団にして、『王下七武海』の1人、海賊女帝ボア・ハンコックが所属する海賊団。
もっとも、今は原作より時期的にだいぶ前っぽいから、まだハンコックは船長じゃないだろうけど……というか生まれてるかどうかもわかんないな。
その後、運ばれてきた食事を食べながら話を聞くと、私はやはり、道で倒れていたところを、たまたま通りがかった『九蛇海賊団』の偵察部隊の人達に保護されたらしい。
船に運び込まれて、この船医さんに診察・治療してもらって、今に至る。
その説明の途中で、『九蛇』の船長さんが様子を見に来たんだけど……
「フゥー……思ったより元気そうじゃない、お嬢ちゃん。大したものね、まだ子供なのに」
煙草をふかしながら、やさしい笑顔を向けてくる美人さん。一見すると、とても海賊には見えないような、穏やかで優しそうな人だ。服装は、船医さんとかと同じくワイルドみあるけど。
けどそれはさておき……この『船長』さんの顔、すごく見覚えあるんだけど。ワンピ原作で。
この人、シャッキー……もとい、シャクヤクさんでは?
名前聞いたら案の定……え、ちょっとあなた、あの……シャボンディ諸島でぼったくりバー経営してて、レイリーの内縁の妻的な感じになってるあの人。
え、九蛇海賊団の船長……ってことはイコールで、アマゾン・リリーの皇帝……そんな身の上の人だったの!?
ワンピース原作途中までしか読んでなくて記憶もあやふやだから、いきなり原作キャラと出くわすわ、不意打ちでとんでもない事実が明らかになるわでパニックになりそうだったよ。
原作だといつ頃明らかになった設定なんだろ……?
「あら、どうかしたの? 私の顔に何かついてる?」
「い、いえ、何でもないです! すいません、ぼーっとしちゃってて……」
「船長に見とれちゃってたんじゃないですか? 美人だから」
「こらこら、おだてたって何も出ないわよあなた達。それとお嬢ちゃん、ここが海賊船の上だって聞いてびっくりしたかもしれないけど、何も怖いことする気はないから安心しなさい。」
その後、簡単に状況を説明してもらえた。
シャクヤクさん曰く、私を助けたのは気まぐれらしい。
恐らくは、海賊に襲われて壊滅していた村の生き残りだと思われるけど、まだ小さいのにこんだけ自力で歩いて逃げれるなんて、中々根性も体力もあるじゃないか、って興味持ったそうで。
そして続けて、というかさっきもちらっと船医さんが言っていたことだけど、私が生まれ育った村は、壊滅してしまっていたそうだ。
住民の生き残りはなし。金目のものは片っ端から奪われていて、何件かの家は放火までされていて――そのうちの1件がうちの書店だろう――もう散々な状態。
一応立ち寄ってみたけど、めぼしいもの、金目のものはほとんど残ってなかったって。
当然、人が住めるような場所でもなくなってしまっていた。
何件か無事な家はあるけど、あちこち壊されてて廃墟一歩手前だし……ましてや子供、女の子が1人で暮らすなんていうのは無理と言ってよかったそう。
「あそこに置いておいても死ぬだけだと思ったからね……勝手で悪いけど、船に乗せたまま出港させてもらった。今はもう、この船は海の上よ」
「そうですか……」
私、丸2日近く寝てたらしいからな。
わたしが意識を取り戻すまで、既に滅んで何もない村に停泊して待つなんてことはできなかったんだろう。
できることなら、両親のお墓くらい作って弔ってあげたかったけど……贅沢言ってられる状況でもないか。もともと、村には戻れない覚悟で逃げ出したんだし。割り切ろう。
「お嬢ちゃん、名前は?」
「スゥ……です。ベネルディ・トート・スゥ。あの、私、これからどうなるんですか……?」
「さっきも言った通り、わざわざ助けたのにひどい目に合わせるようなことはないわ。お嬢ちゃんが暮らせそうな島に着くまではこの船に乗せてあげる。そこで下りればいい。そこからは……大変だろうけど、頑張って生きていくことね」
「はい……ありがとうございます」
「ただし、できる範囲で雑用の手伝いくらいはやってもらうけどね。それと、君が持ってたお金と宝石は、治療費としてもらっておくわね。船員達への示しもあるし、そもそも私達は海賊……無駄飯食らいを船に乗せておくことはできないから。」
はい、ごもっともです。
まあこれは仕方ない。命救ってもらった上に、しばらく船に乗せてもらえるんだからね。しかも海賊相手に。むしろ、あれだけで済んでよかったと考えるべきだ。
本来なら……お金だけ取ってポイされても文句は言えなかったはずだし。
「がんばります、よろしくお願いします」
「いい返事ね。素直な子は好きよ」
すると、シャクヤクさんは『ああでも』とふと何かを思い出したような様子で、ポケットに手を突っ込んで何かを取り出した。
そして、私の寝ている布団の上にそれを乗せる。
「これは返してあげる。多分だけど……大事なものでしょ?」
「……あ……!」
それは……形見として持ち出した、両親の結婚指輪と、お母さんのイヤリングだった。
この3つは、鞄の中じゃなくて、私が握りしめたまま気を失っていたんだそうだ。
その後、シャクヤクさん達は仕事があるから、って言って、船医さんも含めて皆で部屋を出て言った。
多分だけど、涙をこらえきれなくなった私に気を使ってくれたんだと思う。
こうして私は、一時的にではあるけど、海賊船に……しかも、かの『九蛇海賊団』の船に、雑用係として乗せてもらうことになった。
書いてから気づいたんですが、シャッキーが現役の海賊だった時期についてちょっと矛盾があるような内容な状況になってますが……すいません、二次創作ってことで見逃してください。
見切り発車の弊害が早くも……(泣)