大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第31話 スゥ14歳、新しい船!

 

 海賊達は、能力者だった船長を含め、全員無事に鎮圧。

 これで今度こそ、今回の騒ぎを完全に収束させることができた。

 

 その後の顛末について、簡単にだが説明しよう。

 

 天国から地獄に突き落とされて、その後また天国に戻ってくることができた形になる町の人達は……そりゃもう喜んでいた。

 振れ幅が大きかった分、今度こそ助かったとわかった時の安心もひとしおだったんだろう。一時は本当に、殺されたりさらわれるようなところまで行ったっぽいからね。

 

 町長さんをはじめとした町の皆からは、前回の海賊討伐時以上にめちゃくちゃ感謝された。

 喜びと安堵のあまり泣いてる人が過半数超えてるっぽいかったからな……ちょっと引いた。

 

 ひとしきり感謝の言葉の雨あられにさらされた後は、町の皆さんに手伝ってもらい、前回と同じように海賊達を拘束。

 そのまま、町の牢屋にまた入れることになったんだけど……人数が一気に増えてスペースが足りないので、使っていない船の倉庫に、厳重に拘束した上で監禁することになった。

 

 こいつらの処分については、既に海軍に通報して――前回護送をお願いした船がやられちゃったらしいことも含めて――相談してある。また別な基地から、護送用の軍艦を回してくれるようだ。

 それが到着するのを待って、こいつら全員引き渡し……ってことになるそうだ。

 

 その引き渡しも、どうやら私の船が完成するよりも早く来るようなので……結局私は、この事件の始まりから終わりまでを見届けていくことになった。

 

 なお、町を守ってくれたお礼ってことで、滞在する間の宿泊費とか食費を全部タダにしてくれたのはありがたい。

 別にお金に困ってるわけじゃないけど……ご厚意なら素直に受け取っておこうと思う。

 

 ……ぶっちゃけそのくらいは働いたと思うしね。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 そんなこんなで数日が過ぎ、海賊達は無事に海軍に引き取られていった。

 

 そしてそのさらに数日後には……とうとう、私の船も完成した。

 

 完成品チェックも兼ねた進水式には、なんか町の人達が皆集まってくれて……なんだか嬉しいやら恥ずかしいやら。

 

 1人用の船なので、そこまで大きくはないが……航海中、何日も寝泊まりすることに変わりはないので、快適に過ごせるようなつくりになっている。

 広さはそれなり。設備はかなり充実。ゆったり寝れるベッドや、簡易的なキッチン、空きスペースを有効利用して結構な大容量の収納スペースなどがあり……ちょっとしたビジネスホテルくらいには色々整ってるな。

 

 加えて、賞金首を入れておくための牢屋(あるいは死体置き場)もきちんとある。

 つくりはかなり頑丈なものになってるから、拘束をきちんとしておけば生け捕りでの護送も十分可能だろう。

 ちょっと値段は張ったけど、海楼石製の拘束具も仕入れてもらったし。よく手に入ったな……。

 

 それともう1つ、これも特にお願いして作ってもらった……小さな書斎みたいな部屋がある。

 狭いけど、割と大きめで使いやすい1人用のデスクや、各種文房具その他を入れておく収納、壁と一体になっている本棚なんかがあるここは……私の仕事場と言ってもいい場所だ。

 そう、小説の執筆のための部屋である。

 

 航海中でも、いざ何かアイデア、ないしインスピレーションが降りて来て『今すぐ書きたい!』って思った時に、素早くそれを文章に起こせるように。

 

 その他、居住スペース以外の設備、ないし作りも見事なものに仕上がった。

 基本、私1人で乗る船だから、1人で操縦できるようになってるのはもちろんだけど……小型だから小回りがきくのはそのままに、強度は小型船とは思えないくらいに高い。

 

 色々な材料を用いて補強した上に、組み立て方も色々工夫してるんだそうだ。専門用語が多くていまいち理解まではできなかったけど……例の、ウォーターセブンで修業したんだっていう職人さんが自慢げに言ってた。

 町の恩人のためだからってことで、かなり力を入れて作ってくれたみたいで。

 

 そしてその中でも、今回、この船で一番力を入れてもらった特別な装置がある。

 

 それは、船の中……操縦室に備え付けられている、大きな風車である。

 まあ、大きなって言っても、直径1.5mくらいだけどね。室内に取り付けるものだから。

 

 一見すると、換気扇か何かかな、って思うだろうけど……コレの役割は実は、船の動力源だ。

 

 例えば蒸気船では、石炭とか燃料を燃やして発生させた蒸気でタービンを回し、それを船の動力に変えることで動く。風がなくても、人力で漕がなくても……それらよりもよっぽどパワフルに動くことができる。

 この船はそれと似たような仕組みになっていて……蒸気機関の代わりに、この風車が外輪につながって推進力を生み出す。

 

 もちろん、ただ風車を取り付けただけじゃ、船を動かすような力なんてどこからも生まれっこないけど……私の『パサパサの実』の能力を使えば話は別だ。

 

 この風車は紙と木でできているため、私が触れれば、『能力』を使って動かすことができるのだ。止まっている時に一度触れれば、その後手を放しても念じるだけで動かせる。

 これを勢いよくグルングルン回せば、その回転が歯車を介して外輪に伝わり、船が動く、というわけである。回す速さも調節できるので、加速も減速も思いのままだ。

 

 あとついでに、舵輪にも同じような紙と木のパーツが組み込んであるため、こちらも一度触れれば、舵取りもフリーハンドでできてしまう。

 

 試運転してみたけど、正直、期待以上の出来栄えだった。

 『紙』を介してるからか、初めてなのに、すっごく手になじんで……淀みなくスムーズに動かすことができた。明らかに普通の船とかより動かしやすいよ、ホントに。

 

 なお、このシステムの欠点としては、風車が壊れやすい……とは言わないまでも、使い続ければ疲労が蓄積して壊れてしまうであろうことだ。

 紙と木で作ってるわけなので、私の能力で強度を補って大幅に強化することはできても……やはり消耗品の域は出ない。

 航海の頻度にもよるけど、数か月に1回くらいは交換が必要になると思われる。

 

 その際は、わざわざこの『エレナ』まで来なくても、最寄りの工務店とかで作り直して取りつければいい、とのこと。つくり自体は簡単だものだし、そのための図面もくれたから。

 もちろんここにきて作ってもらっても一向にかまわないとのこと。なんならその時は、無料で作ってやるとまで言われた。

 

 

 

 こうして、この町に来たそもそもの目的も無事に果たすことができた私は、新しく作った船に乗って、割と長いことお世話になった『エレナ』の町を出発したのでした。めでたしめでたし。

 

 出航するときには、また町の皆さん総出で見送ってもらっちゃったよ。いやーなんだか最後まで恥ずかしいというか、照れ臭い。

 

 

 出航後は、何事もなく航海して、拠点にしている島まで戻ってくることができた。うん、文句なし……いい船が手に入った。

 

 そしてその道中、私はさっそく書斎を使って、湧き上がる執筆意欲のままに作品を書き上げていた。到着するまでの、ほんの数日の間に。

 今回の旅の経験を元にして……ああ、海賊の襲撃とかその辺は関係なく、ただ単に造船所とかの見学して色々見て、聞いて、知れたことを元にして、ね?

 

 

 

 主人公は、もともと大きな町で造船技師をやっていた男の人。しかし、家の事情があってその造船所をやめ、今は故郷の小さな工場で船の部品を作る日々を送っていた。

 

 そんなある時、工場に海軍と世界政府の役人が訪れ、ここで作っている部品を詳しく見せてもらいたい、と言ってきた。

 

 海軍では今、海にはびこる海賊達と戦うため、さらに性能のいい軍艦の開発を推し進めている。そして、この工場が作る部品の技術力を高く評価していて、今後作る軍艦にそれらを搭載することを考えているのだと。

 

 自分達が作った部品が、世界を守る海軍の力になれるかもしれない。かつての情熱が再び燃え上がるのを感じる主人公。

 しかし、同じ部品を取り扱っている業界大手のライバル会社は、自分達の商品こそ最新の軍艦に搭載されるべきだ、小さな町工場の作る部品など相応しくないと考え、あの手この手で主人公達の妨害をして、部品搭載の栄誉を奪い取ろうと画策する。

 

 果たして主人公達は、陰湿で卑怯なライバル会社の妨害に負けず、世界に通用する最高の部品を作り出して届けることができるのか……!?

 

 タイトルは『下町戦艦』。

 

 さっそくエディちゃんにアポ取って提出しよう。面白いって言ってもらえるといいなー♪

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 ……あ、それと……もう1つついでに。

 

 見送りに来てくれた中に、『シュー』君もいたんだけど……『シュー君もいいお兄ちゃんになって、弟か妹を守ってあげるんだよ?』って言って頭をなでてあげたら、少し顔を赤くして手を振り払って、『わかってるよ!』って。男の子に頭なでなではちょっと恥ずかしかったかな?

 で、その時に一緒に、こんなことも話したんだよね。

 

「それと……今更だけど、シュー君シュー君って……俺の名前、シューじゃないからな?」

 

「え? そうだったの? 造船所とか町の皆が『シュー坊』って呼んでるからてっきり」

 

「あだ名、っていうか、略して読んでるだけなんだよ。だからまあ、全然間違いってわけでもないんだけどさ」

 

「ふーん……じゃ、本名は何ていうの?」

 

「シュライヤ。シュライヤ・バスクードだよ……あ、シュライヤの方が名前な?」

 

 とまあ……シュー君あらため、今度お兄ちゃんになるシュライヤ君と、そんな感じでお話ししました……ってだけの話。

 ワンピース世界って、だいたい『苗字→名前』の順番だから、その逆って珍しいんだけど……地域によってはそういう名前もないことはないみたい。

 

 しばらくしてからまた『エレナ』に遊びにでも来たら……その時は、お兄ちゃんになったシュライヤ君に会うことができるかも。

 その時は、生まれているであろう弟君、あるいは妹ちゃんにも挨拶したいな。

 

 

 

 

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