大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第33話 スゥ15歳inぼったくりBAR

 

 

 目を覚まして数分後。

 

 今、私の目の前では……白髪交じりの金髪のイケオジが、深々と頭を下げていました。

 

「本当にすまなかった。勘違いとはいえ、ハチの恩人に対して……」

 

「ニュ、俺からもごめんな、スゥ。レイリーも早とちりしちゃっただけなんだ」

 

「い、いえいえ……そんな、気にしてないです全然。仕方なかったと思いますし……」

 

 今私に頭を下げているこの眼鏡のおじ様こそ、ワンピース原作でも屈指の強キャラにして、主人公の師匠役として『覇気』やら何やらを教え込んで鍛え上げた御方。

 元・ロジャー海賊団副船長、『冥王』シルバーズ・レイリーその人である。

 

 今さっき再会したシャクヤクさんの、まあ、旦那さん的なわけだが……なんでそんなすごい人に、私は今、こうして頭を下げられているのかというと。

 

 

 

 数時間前、私は、檻の中のはっちゃんを助けるために、首輪を外してあげようとしていた。

 しかし、突如として気を失って倒れてしまった……のだが、コレの犯人が、何を隠そうレイリーさんだったのである。

 

 あの時、はっちゃんの首輪の鍵は外したものの、首輪の部品が髪に絡んで外れなくなってしまっていた。

 なので、噛んでいる部分の髪の毛を、ナイフでちょっとだけ切って外そうとしていた。

 

 しかし、何も知らない人がはたから見たらそれは……首輪をつけられて(実際はもうはずれているとしても)抵抗できないはっちゃんに対し、抜き身のナイフを持って近づいていく怪しい奴……的な感じに見えたことだろう。

 というか、実際にそう見えていたのである。レイリーさんからは。

 

 レイリーさんとはっちゃんは友達である。

 昔、海で遭難していたレイリーさんを、まだ子供だったはっちゃんが助けたことがあり、命の恩人というところから交流が始まって、それ以来の仲なんだそうだ。

 

 そのはっちゃんが、人攫い屋に捕まってしまったらしいという話を聞いて、レイリーさんは助けに向かい……そこで、前述の状況になっている私とはっちゃんを目の当たりにした。

 

 無事誤解した彼は、結構マジな『覇王色』で私を威圧。私、そのまま気絶。

 

 その後、はっちゃんから誤解だということを聞かされたレイリーさんは、このままにしておくわけにもいかないってことで、ひとまず手当をするため、私をこの店……『シャッキー'S ぼったくりBAR』に連れ帰った。

 

 そしたらそこで今度は、私の顔を覚えていたシャクヤクさんから、彼女の知り合いだってことを聞かされ……『何してくれてんのかしら?』的に静かに怒られたそう。

 

 で、まあ、私の意識が戻ったので、こうして謝られているわけだ。

 

「ホントごめんね、スゥちゃん。うちの人ったら割とそそっかしい上に、ノリとか勢いで突っ走るところあるのよ、もういい歳なのにね」

 

 さらりとレイリーさんを『うちの人』と呼ぶシャクヤクさん。

 やっぱこの2人、もう夫婦なんだなあ……事実婚っぽいけど。

 

 重ねて『気にしてないですよ』と言うと、ようやくレイリーさんも頭を上げて楽な姿勢になってくれた。

 

「けど、シャクヤクさん……本当に久しぶりなのに、よく私だってわかりましたね? 私、自分で言うのもなんだけど、だいぶあの頃よりは育ったと思うんですけど」

 

「ふふっ、女の子なんてのはね、見た目が違っても割とわかっちゃうものなのよ。特に、私達にとって、妹か、あるいは娘みたいなものだったからね、あなたは」

 

 おかしそうに笑っていうシャクヤクさんは、『それに』と続ける。

 

「会うのは久しぶりでも、スゥちゃんの活躍は前から知ってたもの」

 

 そう言って、ちらりと店の中の一角を見る。

 

 その視線の先にあるのは、本棚だ。喫茶店に新聞とか雑誌が置いてあるみたいなノリで、お客さんが自由にそこにある本を読んでいいという感じのそれだけど……よく見ると……

 

「あ、私の本……」

 

 『パイレーツスレイヤー』に『かいせん』、『大雪山の英雄』に『下町戦艦』……。少し前に出した最新作の『ファンザナオ・キース』まである。

 買ってくれてたんだ、嬉しい。

 

 なお、『ファンザナオ・キース』は、超やり手の銀行員が、上司の汚職やらミスやらの責任を押し付けられそうになったり、権力で仕事を妨害されながらも、あの手この手で上司の想定を上回る戦いを見せ、最終的に正面切って相手を叩き伏せ、公衆の面前で土下座で謝罪させるという、痛快でスカッとする系のお話である。

 

 まだ発売から日が浅いながら、私の作品の中でも屈指のヒット作になっていて、劇中の名台詞の1つである『やられたらやり返す……倍返しだ!』はあちこちで流行っているらしい。

 

 しかし、ああして集めてくれているってのは、作者として嬉しい……というのもあるけど、つまりシャクヤクさん、アレの作者が私……すなわち、昔『九蛇』の船に乗っていた『スゥ』だってことがわかってたのか?

 

「賞を取った時に新聞に写真が載ったでしょ? その時にはもう気づいてたわ。もっとも、その頃にはもう私は『九蛇』の船長の座を引退していたから、『女ヶ島』のコ達が気付いてるかどうかまでは……わからないわね」

 

「ニュ? でも、前にシャッキー、『女ヶ島』にも新聞読む奴はいるって言ってただろ? 遠征の時に買ってくるから、それ読んでれば気づくんじゃないか?」

 

「読んでれば、ね。あの島にはそういうのを読む趣味があるコは少ないから……ああ、そういえば……スゥちゃんがうちの船に乗ってた時も、新聞記事の要約なんてしてくれてたわね」

 

「あー、確かにしてましたね……懐かしい」

 

「あの後結局、スゥちゃんのお世話になってたコ達のほとんどが、また新聞とか読まなくなっちゃったのよね……まったく、いくらそういうのに触れる機会が少ないとはいえ、情報は知っておいて損はないって何度言っても……」

 

 昔を思い出しながら、懐かしがったり、笑ったり、呆れたり……そんな感じでしばし、雑談しながら過ごしていた。

 ふと見ると、窓の外が少しずつ暗くなってきてることに気づく。え、もうこんな時間?

 

「あー、やば、宿探さなくちゃ」

 

「あら、それならここに泊まっていけば? 久しぶりなんだし、もっとおしゃべりもしたいし……スゥちゃんの最近の話も聞きたいわ」

 

 そんな風に言ってもらえたのは助かった。

 ここには攫われてきたわけなので、宿なんて当然取ってないし……というか宿がどこにあるのかとかすら知らないので、今から探さなきゃいけないところだったよ。

 

 お言葉に甘えて、その日は泊めてもらった。

 

 晩御飯とかの時間帯になると、普通に客として何人かのチンピラさんがやってきた。このへんのマングローブは治安があんまりよろしくないらしく、客層もそれに応じた感じだ。

 

 しかしシャクヤクさん、さすがは元・九蛇の皇帝。一切物おじせずにそういう連中から、法外な料金を店名どおりにぼったくる。

 支払いを断ったり、逆切れして暴れようとしようものなら、その細腕からは想像もできない戦闘能力で返り討ちにされ、泣きながら『払います……許して……』という感じになる。

 

 店の端っこの方で、はっちゃんやレイリーさんと一緒に静かに飲んで食べてたんだけど、一晩の間に3回くらいそんな光景を目にした。

 もうなんか立派な1つのショーみたいな感じだったな、とか思ったんだけど……レイリーさん曰く、実際この店の名物と言っても過言ではない光景らしい。

 

 シャクヤクさんに締め上げられてめそめそと泣きながら財布からお金を取り出すチンピラ達を見ながら。おいしそうに酒を飲むレイリーさん。……人生楽しんでんな。

 

 

 

 その後は、閉店時間が過ぎた後、シャクヤクさん達と色々……お望み通り、私のこれまでのことを話したりした。

 

 海賊達に売られて奴隷になったと思ったら、意外といろいろな職業訓練積んでスキルアップできたこととか、漂流してる間に悪魔の実の能力者になって、覇気も使えるようになったこととか。

 海兵と仲良くなったとか、王下七武海に会ったとか、内紛状態の国のジャーナリズムとか、冬島で風邪ひいたとか、お金貯めて新しく船作ったとか、その他もろもろ。

 

 シャクヤクさんとレイリーさんはおおむね楽しそうに聞いてたけど、はっちゃんは色々な個所で驚いたり呆れたりハラハラしたりしていた。

 ……いや、この場合はっちゃんの方が普通というかまともな反応なんであって、肝が据わりすぎて普通に受け入れてる2人の方がアレなんだろうけどさ。多分。

 

 自分としても、中々ハチャメチャな旅、ないし『経験』をしてる自覚あるし。

 

 中にはドラムの時とか、今回みたいに、意図しないで色々な『経験』をすることになったこともあったけど……それらも含めて、得難い『経験』として私の人生の、そして作家としての肥やしにさせてもらっています。

 

 そしてその意味では、ここでシャクヤクさんやレイリーさん、はっちゃんに会えて、こうして言葉を交わしたり、一緒に過ごせたことも……何物にも代えがたい『経験』になったと言える。

 

 小説のネタになるかどうかまでは、わかんないけどね。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 翌日、私はきちんとお礼を言ってシャクヤクさんの店を後にした。

 

 出発する時は、レイリーさんとはっちゃんも見送りに来てくれて、『またシャボンディ諸島に来ることがあればぜひ寄ってくれ』って言われた。

 はっちゃんも、今度来た時は色々と案内してくれるって。

 

 シャクヤクさんからは、次来た時は久々に稽古つけてあげようかとか、何なら今度一緒に『女ヶ島』にでも行こうか、って言われた。

 

 どこまで本気で言ってたのかちょっとわかんなかったけど……もし本気ならありがたいと思う。

 稽古はもちろん、『女ヶ島』も……私は結局『九蛇海賊団』に入る決心ができなかったからいけなかったけど、行けたとしたらいい『経験』になりそうだと思うし。

 

 

 

 その後、昨日奪ってキープしておいた人攫いの船と、常に荷物に入れてある拠点の島の『永久指針』を使って元居た島にどうにか戻り、私の船も無事に回収できた。

 

 『エレナ』で作って以降、何度か『風車』を交換しつつも今日までお世話になってて、愛着もあるからな。きちんと取り戻せてよかった。

 あと、人攫いの船は売ってお金にしました。当然だね。

 

 それから、もう1つ。シャボンディ諸島を出る前に、色々と買い物したんだけど……その時に、シャボンディ諸島への『永久指針』を手に入れておいた。

 

 厳密には、シャボンディ諸島がある場所の地盤部分への、だけどね。『シャボンディ諸島』そのものは、マングローブの集合体であり、島じゃない。なので、磁気は持ってないから。

 まあ、その辺の細かいことはいいか。

 

 ともあれ、これからはコレを使って、シャクヤクさん達に会いに行ける。

 久しぶりに攫われちゃった時はどうなるかと思ったけど……怪我の功名というか、塞翁が馬というか……人生何がどう転んでいいこと、悪いことにつながるかわからないもんだね。

 

 

 

 

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