大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第35話 スゥ15歳、モルガンズの仕事

 

 

 基本的に私は、最初にコンクールで賞を取れた出版社に、仕事ではずっとお世話になっている。

 編集者としてのエディちゃんが在籍してるのもその会社だからね。

 

 しかし、その他の会社での仕事をする機会が全くないわけでもない。

 別に専属契約をしてるわけでもないし……有名になり始めてからは、ちょいちょいほかの会社からも『うちでも何か書いてみませんか?』なんて話が来るようにもなったので。

 

 そして、その中の1つが……『世界経済新聞社』である。

 担当、というか、仕事関係の相談窓口は……もちろんこの人。

 

「クワハハハ! 感謝するよスゥ、急な話だったが、受けてくれて助かった」

 

「いや、こっちもまた貴重な『経験』をさせてもらったし、全然いーよ。むしろ楽しかった」

 

「そう言うと思ったよ。相変わらずチャレンジ精神豊かなことで結構」

 

 機嫌よさそうに笑う鳥人間が目の前に1人。

 言わずもがな、『世界経済新聞社』のモルガンズである。

 

 シッケアール王国で奇妙な共同戦線?を張って以来、何度か連絡を取り合って、仕事の依頼なんかもしたりされたりするような仲になった。

 『世経』には何度か、依頼されてコラムみたいなのを書いたり、週一で連載小説的なのを一時期書いてた時もあった。

 

 あと、普通の新聞記者とかが見に行くにはちょっと危険な場所に行って、現状を調査してきてそれを記事に書いたり……という、ルポライターみたいなこともしたことある。

 『作家の仕事じゃなくね?』って最初は思ったんだけど、他にはない面白そうな経験ができそうだったし……その経験をもとに文章を作るっていうのも割と面白かった。

 

 同じ『読んでもらうための文章』でも、情景を頭の中に思い浮かばせる『小説』と、情報を的確に伝える『記事』は違う。

 九蛇の船で、新聞を要約して読んでもらってた経験が役に立った気がした。

 

 モルガンズ、私が文章力と戦闘力を相応の水準で兼ね備えてて、その上で『貴重な経験』ができると知ったら危険な場所でも割とためらわず行く性格だってことを知ってるからな。

 一応、リスク高すぎないか、自分の実力に見合った場所かとかは考慮しつつだけど、実際、いけそうなら割と迷わず行くし。

 

 それを知っててこの鳥は、『経験』を餌にライターとして私を動かすことが時々ある。

 

 まあもちろん、私も納得した上でそれは引き受けてるんだし、報酬もきちんともらってるし、そもそも楽しんでるんだけどね。モルガンズの思惑通り。

 

 そんな感じで、割と遠慮のいらない関係を築けたこともあり、今では呼び捨てにため口で呼び合う仲だ。

 モルガンズ、私より2周り近く年上なんだけど……不思議とそういう壁を感じずに接してられるし、向こうも小娘にそういう口を利かれても全然気にしてない。

 

 ちなみに今回依頼されたのも、ある意味でそういう『危険な場所』系の仕事である。

 

 

『海賊100人に聞きました! 今最もアツい、無法者御用達の飲食店ベスト10』

 

 

 ……読者的にこれは需要あるコーナーなのだろうか、と思った。

 いやまあ、割と内容そのものはまともで……実際に海賊に聞いて作ったらしいランキングの飲食店があって、そこがどんなものかを実際に食べに行ってレポートするっていう仕事である。

 

 ただ、『無法者御用達』ってだけあって、多少なり危険な場所にある店だから……堅気にとっては実際に食べに行くにも一苦労するわけなんだけどね。

 油断すると自分が食い物にされるし(上手い)。

 

 実際私も、食べに行ってみたはいいものの、行きと帰りで5回くらい人攫いや海賊に襲われた。

 そして5回とも返り討ちにして、うち2回は賞金首がいたので臨時収入に変えた。

 

 仕事で外食しに行ったら、2000万ベリーくらい予定外に儲かるという変な事態になった。食事代との差し引きで大幅プラスになるというね。

 いやまあ、嬉しいけども。

 

 それに、食事自体も美味しかったので、気合入れて文章は書かせてもらった。

 1人でも多くの人に『美味しそう』って思ってもらえて、その店に足を運んでもらうきっかけになったらしいな、と思う。

 

(……と言いたいところなんだけど、あの危険地帯に足を運んでほしいってのも変な話というか……レポートには周辺の治安の悪さとかその辺も書いたから、プラマイゼロであんまり期待できないかもしれないというか……)

 

 やっぱりテーマ的に色々な意味で無理がある企画な気がしてきた。

 

 まあでも、編集室側がやる気でいるならそれでいいと思うことにしようかな。

 

 ひとまずモルガンズに原稿は渡したので、引き換えに『今回もありがとう』と報酬をもらう。

 

「次もまた何かあったら頼むよスゥ。君に記事やコラムを書いてもらうと、雑誌にしろ新聞にしろ評判がよくてね。……いっそ正式にうちに所属しないか? いい給料出ると思うが」

 

「それはさすがにお断りかなあ。今の気ままな暮らしが気に入ってるんで」

 

 今のところはね。

 

「クワハハハ、その返答も残念ではあるが予想通りだな。まあ、気が変わったら言ってくれ、いつでも歓迎する」

 

 それじゃあな、と言い残してモルガンズは帰っていった。普通に歩いて。

 

 ……そういえばモルガンズ、鳥の能力者――『トリトリの実 モデル:アルバトロス』らしい――なのに、飛べないって前に言ってたな……ホントだとしたら、何でだろ?

 アルバトロスってつまり『アホウドリ』だよね……普通に飛行能力あるはずなのに。

 

 単に能力者としての錬度が足りないとかかな?

 『悪魔の実』……特に『自然系(ロギア)』や一部の『超人系(パラミシア)』は、体の一部を変容させるのにも相応の錬度が求められるらしいし。

 

 例えば、スモーカーの『モクモクの実』。原作では彼は、大量の煙を手足以上に自在に動かして、大勢の海賊達を簡単に捕縛していた。

 しかし、あれは単に『能力者だから』というだけでそこまでできているんじゃなくて、その能力を使いこなせるようになるまで彼がきちんと修行したからできるようになったことだ。

 

 設定だと確か、能力として『自然系』の力を持ってはいても、一朝一夕程度の錬度では、体の一部をその物質に変化させることすら容易にはできない、というものがあったはず。

 手足のように使いこなし、質量保存則を無視するレベルで発生させ、それに関連する様々な能力を使いこなす……という、悪魔の実の『最強区分』に恥じない実力を発揮できるようになるまでには、長い道のりが必要ということだ。

 

 ……さて、長々と説明しちゃったけども……今は『自然系』で例えたけど、『修行もしないでろくに使いこなせるようなものじゃない』っていうのは、『超人系』や『動物系』でも同じことだ。

 

 私も、最初の1回――漂流して死にかけて海賊船に襲われた時――こそ火事場の馬鹿力でなんとかなったけど、それ以降は、体を紙に変えて自在に操れるようになるまで、大変だったからなあ。

 

 なら、モルガンズも能力自体の錬度が足りないから飛べないのかな?

 でも、モルガンズ結構腕っぷしも強いし、修行とかさぼってるってのも考えづらいんだよなあ……うーむ、わからん。

 

 それはそうと……『力を持っているけど何かの理由で使いこなせずくすぶっている』って設定、なんか面白そうというか、使えそうだな。新作のアイデアが湧いて出てきそうだ。

 せっかくだし主人公も鳥人間……あるいは翼を持ってる何か種族みたいなのにして……そんな種族いたかな? 適当に鳥の『ミンク族』にでもするか、あるいは『ルナーリア族』……は実在するかどうかもわからないし……いや別に空想でも、何なら捏造してもいいっちゃいいんだけど……

 

「『飛べない記者はただの……』……いやキャッチコピーもっと他に何か……」

 

「あのー……お客様? お水、おかわりいかがですか?」

 

「えっ? あっ、はい、すいません、もらいま……いや、メニューもう1回ください。追加で注文したいので」

 

 ブツブツ呟いていた時にウェイトレスさんに話しかけられてちょっとびっくり。

 ちょうどいいので、メニューをもらって追加注文させてもらうことにする。ちょっと今いいアイデア出そうだから、脳に糖分を供給したい。

 

 『続きは家に帰ってから考えよう』って思って中途半端なまま移動とかして、いざ帰ってみると頭の中からアイデアが消えてる……っていうのはよくある話だ。そしてめっちゃ悔しい。

 類例としては、夜寝る前に思いついたアイデアや、お風呂の中で思いついたアイデアがすぐに頭から消えてしまうパターン。あれも悔しい。

 思いついた瞬間にメモしないとね。私はそのへん、何度も経験あるので徹底している。

 

 よって、このままここで(頭の中で)ネタ出しの作業をしていきます。

 

「かしこまりました。しかし、先ほどのお連れ様からすでにご精算をいただいておりますが……」

 

 あ、モルガンズ支払いしていってくれたんだ。

 

「大丈夫です、ここから先のは私が自分で払うので。伝票は新しいのお願いします」

 

「かしこまりました。では、今メニューお持ちしますね」

 

 

 

 この後、1時間くらいじっくりネタ出しした。

 その間きちんと店の迷惑にならないように適宜スイーツや飲み物を注文しつつ、新作(になるかもしれない)のストーリーをくみ上げ、きちんとそれをネタ帳に書き残した上で、私は店を出た。

 

 

 

 

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