大文豪に私はなる!   作:破戒僧

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第41話 スゥ16歳、マリージョア日記(2)

 

 

○月▼日

 

 『妻』が増えた。

 

 私が『妻にしてやるえ』された時、第27婦人って言われて捕まったわけなんだけど……この度、第28婦人が邸宅にやってきました。

 

 私の後輩(?)にあたるその人は、どうやら、あまりよろしくない過程を経てここに連れてこられたみたいで……初日からずっと沈みっぱなしだ。

 例によって見た目は整ってるんだけど、全身から悲壮感が漂ってて……雰囲気が暗かった。

 

 いやまあ、私達も含めて全員、拉致同然、あるいは拉致そのものでこんな場所に連れてこられたわけだから、こうなって当然と言えば当然なんだろうけどね……。

 

 詳しい事情は聞いていない(聞ける雰囲気じゃなかった)のでよくは知らないが……早いとこ立ち直ってほしいと思う。

 拉致なんて目にあった人に対して『さっさと元気出して』なんて言うのはひどいことだというのはわかるけど……それでも、そう思う。

 

 だって、この邸宅で『妻』として過ごす以上、最低限、バノサッカ聖の目を楽しませる程度には『華やか』でないと……それはそれで、余計に不幸なことになるから。

 せめて、恨みがましい目で見たりとかだけはしないようにしてもらいたいんだけど……

 

 名前も聞けてないので、どう呼んだらいいのかもわからないが……彼女については、1つ分とはいえ『妻』としての先輩として、ちょいちょい面倒見ていけたらな、と思う。

 

 もっとも……それも、私にまで火の粉が飛んでこない程度にさせてもらうとは思うけど……

 

 さすがに私も、身を削って他人の面倒まで見れるかって言うとね……。

 私だって、私の身がかわいいから。

 

 

 

○月●日

 

 私達の『夫』であるバノサッカ聖は、天竜人の中ではマシな部類に入る人なんだという話をよく聞く。

 

 ワンピース原作で見た、ドンキホーテ・ホーミング聖みたいに極端な善性は持っていないけど、必要以上に奴隷や使用人を虐げるようなこともせず、ペット同然の扱いとはいえ、こうしていい暮らしをさせてくれている。

 どの程度『虐げる』趣味があるか、あるいは他の方向に趣味を見出すか……その辺は天竜人の中でも様々みたいだな。

 

 時たま屋敷を訪れる他の天竜人なんかを見てると、やはりというか、虐待の跡がある奴隷なんかを引き連れてたりするし……目の前でそういうことをやってた場面も何度か見た(窓越しだが)。

 

 そう言うのを見ると、決して人間扱いされているとは言いづらいにもかかわらず、私達はこの人にもらわれてよかった、なんて心のどこかで思ってしまうから不思議だ。

 

 ただ……そんなバノサッカ聖も、天竜人なんだなと思わされるときは、割と頻繁にある。

 気分や気まぐれで、こっちの気持ちとかも特に考えずに、奴隷や妻を振り回したりするから。

 

 今日あったこともその一つだ。

 

 私達『妻』が、バノサッカ聖の目を楽しませるための観賞用ペットだというのは何度も話したとおりだ。そのために、普段着もセクシーなドレスや、それに準ずるものを用意されている。

 

 が、今日はなぜか、全員の服が……普段よりもさらに露出度の高い、踊り子の衣装みたいなものに統一されていた。

 もうほとんど裸っていうか……大事な部分だけギリギリ隠せてます、みたいなデザイン。

 

 これで踊りなんか踊ったら、動き次第で高確率でポロリが起こりそうな……むしろ、そういうお店用のコスチュームなんじゃないかって思えるようなアレだった。

 

 原作アラバスタ編で、ナミやビビが着てた衣装よりも露出度高いんだよ。

 見た感じ、各自の体型に合わせたものを用意してあって、微妙にデザインも違うけど……

 

 先輩達が『ああ、またか』みたいな表情になってたので、話を聞いてみると……たまにこういうことがあるんだそうだ。

 バノサッカ聖の気分とかマイブーム次第で、着る服を指定されるんだって。

 

 以前にあったものだと、バニーガールとか、水着とか、チャイナドレスとか、ナースとか……

 変わり種だと、アマゾネス的な毛皮の蛮族ファッションだったり、海兵の服だったり……

 

 今回は、どうしてかは知らないけど、踊り子の服がマイブームらしい。

 

 正直動きづらいんだけど、文句を言うわけにもいかないので……仕方ないと思って諦める。

 逞しい先輩妻達の中には、さっそく踊り子っぽい艶めかしい動きで踊ったり体をくねらせて、窓から見下ろしているバノサッカ聖の目を楽しませている人もいた。

 

 ……あと、『っぽい』どころじゃなくやけに様になってる人がいるなと思ったら、元・本職の踊り子の人が混じってたのはちょっとびっくりしたな。

 せっかくだし、色々話を聞かせてもらいつつ、踊りのレッスンもしてもらった。私を含め、何人かの妻が面白半分でそのレッスンを受けて、踊ってみた。

 

 気分転換にもなって、割と楽しかった。

 

 

 

○月▲日

 

 筋肉痛になった。

 

 踊りのレッスンで、普段使わない部分の筋肉を、普段使わない形で使ったからだと思う。

 ガッデム。

 

 ……あるいは、アドリブで武〇士のCMみたいな動きを無理やり取り入れたのがまずかったんだろうか。

 

 ……このネタわかる人いるのかな。

 

 しかし、いくら慣れない使い方したからとはいえ、体力には割と自信あったのに……こんな生活が続いて、鈍ってきてるんだろうか?

 どうにかして、体鍛えたいなあ……せっかく強くなれたのに……

 

 

 

○月☆日

 

 今日は珍しく、嫌な緊張感のある1日だった。

 

 バノサッカ聖と……別な天竜人が一緒になって、別邸を訪れたのである。

 皆そろって踊り子コスチュームを着ている私達を見物するために。

 

 そういうこともある、って聞いてはいたけど……見るならせめて窓越しにしておいてくれればいいものを……ペットにストレスを与えすぎると体や心に悪いんだよ。

 

 バノサッカ聖以上に変な顔というか、ぶっちゃけ醜い顔で……いやらしい目全開でこっちを見てくるもんだから、不快な顔をしないようにポーカーフェイスを続けるのが大変だった。

 逞しい妻たちは、ものともせずに営業スマイルで普段通りの生活をしてみせていた。

 

 なお、我慢できなさそうなメンタルが弱い妻や、不快感をあらわにしそうな、ポーカーフェイスが苦手な妻は、今回部屋とかに隠しておいた。

 普段ならともかく、バノサッカ聖以外の天竜人が、しかもこんな近距離にいる時にそういう反応は……本当に命取りになりかねない。

 

 幸運にも今回は、何事もなく乗り切ることができた。

 最悪、『あの女がほしいえ、譲ってほしいえ!』とか言い出すんじゃないかってちょっと覚悟してたんだけど……そういうこともなくて。

 

 天竜人の暴虐には我慢も際限も全くないと思ってたんだけど……さすがに相手が同じ天竜人だとその限りでもないのかな?

 

 天竜人御一行様が返った後は、皆でクッソでかいため息をついて『おつかれー……』って互いの健闘をたたえ合い、慰め合った。

 

 

 

○月★日

 

 妻が減った。

 

 どうやら、バノサッカ聖が『飽きた』という理由で離縁されたらしい。

 3人の先輩たちが、下々民(しもじみん)に戻されたそうだ。

 

 しかし、これは……寂しさこそあれ、悲しむべきことでは決してない。

 

 むしろ、喜ぶべきことだ。

 大きな問題もなく、このマリージョアを出ることができたんだから。

 

 二度と故郷の土を踏むこともできず、この聖地で命を落とす奴隷なんかが後を絶たないことを考えれば……十分に幸運だと言える。元通り家族の元に戻って、幸せに暮らしてほしいと思う。

 

 あと、今回のことで、私の序列が変わり……『第24婦人』になった。

 というかもちろん、私以外の全員がそうなんだが。

 

 ……先輩方が『卒業』するたびにこうなるわけか。誰が第何婦人とか、覚え直すの大変だな……

 

 

 

○月■日

 

 別邸から妻が数人、本宅に呼ばれた。

 

 しかし、それで何をしろとかそういう仕事があってではなく……ただ『そのへんに立って飾り物になっていろ』って感じの、置物というか、インテリアとしてだ。

 ……最低限人間扱いするとか、そういう発想がもうないんだな、と思った。

 

 こういうこともたまにあるそうで、お客さんが帰るまでひたすらそこにいるだけでいいらしい。

 動かないように置物に徹しなきゃいけないから、割とつらいことはつらいそうだが。

 

 なお、バノサッカ聖の踊り子ブームはすでに去ったようで、先日から普段通りのセクシードレスに戻っている。

 

 とはいえ、何もしなくていいなら、私としては楽だ……と思ってたんだけども。

 予想外に、私だけ、ちょっとした仕事をさせられることになってしまった。

 

 というのも、訪ねてきた天竜人が、余興として、奴隷に芸をさせたんだけど……その芸っていうのが、悪魔の実の能力を使ったものだったのだ。

 

 売れば最低1億ベリー、ものによっては数億、数十億で取引される海の秘宝も、天竜人にかかれば宴会芸のためのおもちゃに早変わりか……

 

 能力者の奴隷が、人と猫が混じったみたいな姿になって火の輪をくぐったり、

 

 体が鋼みたいに硬くなる能力者が、ナイフや鉄球をガンガン体に投げつけられて耐えていたり、

 

 壺の中に入った人間の女の子2人が蛇に変身して、一緒にいた黒髪の美少女と一緒に、蛇使いの芸みたいにして踊ったり、

 

 そんな感じで能力者を見世物にして遊んでいたんだが……そんな中でバノサッカ聖が、私も能力者だったことを思い出して、芸に参加させたのである。

 

 海楼石のアクセサリーを外した私を、男の奴隷が力いっぱい斧で斬り付けて、斬り殺されたと思ったら紙になって無事でしたっていう……それだけの一発芸だったんだけども。

 大丈夫だとわかってても、屈強な男奴隷が大きく斧を振りかぶるのを目の前で見てるのは、ちょっと怖かったよ……

 

 そして、天竜人の皆さんが、その様子を目を爛々と輝かせて楽しそうに見てたのは……やっぱり怖いと思ったよ。

 

 その日はまあ、無事にそれで終わったんだけど……

 

 ……その隠し芸大会(?)の最中から気になってたんだけど……蛇の芸の時に出てきた、黒髪の美少女と、その他の2人の女の子……あれ、ゴルゴン3姉妹じゃない?

 蛇役の2人も、キングコブラとアナコンダっぽい見た目だったし……

 

 ハンコックと、マリーゴールドと、サンダーソニア……もう捕まってたのか?

 

 ……もし機会があればだけど、少しでも彼女達の助けになれないかな、って思った。

 シャッキーを含めて、『九蛇』にはよくしてもらってたから。

 

 

 

○月!日

 

 妻の1人が『卒業』した。

 

 しかし、今回は残念ながら……前回のような円満退職とはいかなかった。

 

 同時に、バノサッカ聖もやっぱり天竜人なんだって、また改めて思い知らされる日になった。

 

 何が起こったのかというと……前々から危惧していた『プレゼント』だ。

 

 バノサッカ聖と親しくしている、別な天竜人の一家で、その家の息子が誕生日を迎えたらしいんだが……その誕生日プレゼントに、この別邸にいる『妻』がほしいと言われたらしい。

 そしてバノサッカ聖は、せっかくの誕生日だしいいか、と、その子が望む『妻』をあげてしまったのである。

 

 選ばれたのは私ではなく、先輩妻の1人だった。

 一人で過ごすのが好きだったから、私とはあんまり話す機会もなかった人だ。

 

 自分が『プレゼント』されることになったと知って、その妻は絶望した顔になっていたけど……逆らえるはずもなく、使用人達に促されるまま、別邸を出ていった。

 

 私達にできることは、何もなかった。それを黙って、見送るしかなかった。

 

 できることなら、ここと同じように……は難しくても、虐げられるようなことがないように、大切にされてほしいけど……

 

 ……望み薄だろうとわかっていたけど、考えないようにした。

 

 

 

 

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